【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜   作:その辺の残骸

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テロ組織殲滅

 

 アンバークラウン下層区のガレージがスミカの拠点だ。

 ガレージに並び立つのは二機のAC。ウェンズデイ機関研究施設から脱出する際に一緒に奪還したムラクモ製AC有明のカスタム機コーラルスターと重甲冑の騎士めいた黒青色のデュラハンだ。

 

 スミカを依頼人として、アリス・ジャバウォックは仕事をこなしていた。

 先日は久々に大暴れだった。ウェンズデイ機関の演習場に突入し、そこに集まっていた戦力を一気に殲滅したのだ。

 重装甲付きの陸上イージス艦、とも形容出来る四つ足の大型MT"サガルマタ"など食いでのある獲物が勢揃いの戦場であった。アリスとしては楽しい仕事だったが、常識的に考えてAC二機でやる作戦ではなかった。

 

 そして、今日もまたレイヴンとして依頼をこなす。

 ウェンズデイ機関絡みではなく、アンバー・クラウンの治安向上のお手伝いである。依頼主はシティガード。テロ組織"ネバーランズ"壊滅作戦の先鋒役を頼まれた。

 

 それぞれの愛機のコクピットに収まり、AC輸送用トレーラーで移動中だ。トレーラーはコーラルスターに制御されている。

 

 白いレオタードのような戦闘スーツから一転、アリスはシックな黒のドレスを身に纏っている。一方、スミカは鍛え抜かれた魅惑のボディにぴっちり張り付くバトルスーツで生身の戦闘に備えている。

 

 スミカは集中していて、真剣な表情にそれが伺える。アリスは余裕の笑みだ。さっさと片付けて買い物にいくつもりでいる。

 

 レーションや缶詰、それにサプリメント中心の食生活はアリスには堪えたし、修道院で仕込まれた料理の技をスミカに披露したいのだ。

 

 作戦エリアは下層区画、建設途中に放棄された資源再生プラント。そこにネバーランズの拠点がある。

 

 トレーラーは複雑怪奇な通路を抜けて、エレベーターで目的のプラントがある階層まで昇っている。

 下層とはいえ、多くのレイヴンが巣を張る階層よりは上にプラントはある。

 

『改めて作戦を確認します。目標は資源再生プラントを本拠地とするテログループ、ネバーランズ。悪名高い組織だけど、戦力は中堅クラスというところ』

『ACなら余裕ってわけだな』

『だけど、ここ最近になって戦闘MTなどの強力な兵器を調達しているわ。油断は禁物よ』

『オーケイ、肝に命じておくぜ』

 

 アリーナの活況ぶりはアンバークラウンのレイヴンの実力を物語っており、ネストトップクラスの一人であるアリスからしても、目を見張るものがある。

 つまり、それだけレベルの高いレイヴンが育つ土壌だということだ。

 

 アンバークラウンの平和の影には数多の魑魅魍魎が蠢いており、ACを用いた本格的な戦闘も起こっている。

 時折、それはテロ事件や反企業活動集団の過激なデモとして一般市民に報じられた。

 

 行政府対企業あるいは企業対企業の暗闘。どちらにしても割を食いがちなのは、シティガードだ。

 都市の治安を守る警察機構である彼らは大きな事件が起こる度に大衆から非難の的になる。

 

 先のゲート強行突破事件で失った市民の信頼を取り戻すべく、シティガードはテロ組織の壊滅作戦に打って出た。

 ネバーランズは児童誘拐と少年兵の利用で悪名高い組織であり、アピールに丁度良い市民の敵であった。

 レイヴンを雇ったのは万全を期すため、そして何よりガード隊員の殉職者を抑える必要があるからだ。

 

 それにしても、とアリスは思った。

 信頼回復のための作戦に、信頼を損なった元凶を呼ぶという構図は、なんとも皮肉だ。

 

 ミッションは開始された。

 黒青色のAC、デュラハンはレーザーブレードの一閃で隔壁を切り裂き、永遠に完成することのないプラントがある地底洞窟に乗り込んだ。

 

 資源採掘後に残った空洞を再利用した空間である。

 

 ブーストジャンプで高く跳び、ロックオン。機関砲やランチャーに背部ミサイルを発射する。自在に動き回るACは迎撃を易々と避けるが、動きようのない防衛兵器はアリスの餌食になるばかり。

 

「おっ出てきた出てきた」

 

 隠れていたMTが出撃してくると、アリスはニヤリと笑った。逆関節型の機体に連装ビーム砲を積んだシュトルヒを三機確認。

 

 ネストの試験において、ACの実機に乗ったレイヴン候補生の最初の敵であり、最後の敵になることも多い、強力な戦闘MTだ。

 シュトルヒはネストが自衛用に独自開発したMTだが、組織の資金調達のため一般に販売されてもいる。高価だが、様々な後ろ暗い憶測が流れるほど高性能な機種だ。

 

(確かに油断できない相手ではあるが)

 

 ビーム砲を避けるため横にスライド。そのまま敵を中心に円を描くように動く。

 シュトルヒ自慢のビーム砲は、機体の旋回と跳躍が追い付かず、立体的に機動するデュラハンに当たっていない。

 

 アリスはマニュアル照準で敵機を狙う。スナイパーライフルから銃火が迸る。

 脚部の関節を打ち抜いて一機を擱座させる。

 続いて二機目を狙撃。ブースターポッドを爆発させてやった。倒れ込んだシュトルヒが最後に残った機を巻き込み、地面に転がる。

 

 アリスは慎重に狙撃して三機を無力化した。

 少年兵を殺さないようスミカに頼まれていた。狙撃は苦手だが、やってやれないことはない。

 

『こちらコーラルスター、突入します』

 

 別方向からスミカが突っ込む。

 軽量でしかもハンドガンだけの軽装のコーラルスターは、彼女の腕前と相まって流星さながらのスピードを発揮している。

 

 デュラハンが陽動と気付いて、慌てて迎撃しにかかったMTオーガーの銃撃を素早く躱し、時にコアの正面装甲で弾く。

 そうしてハンドガンの射程にオーガーを捉え、関節部を撃ち抜き、プラントに突き進む。

 

 その間にアリスは残敵を片付けている。

 

『くそ、役立たずのガキどもめ! こいつらを片付けたらまとめてバラしてコームに換えてやる!』

 

 喚き散らしながら、背中のカノン砲を撃ってくるのはムラクモ製砲撃機、東雲だ。デュラハンは砲弾を避け、側面を取るとスナイパーライフルで左肩を撃つ。

 

『おーお、粗暴なピーターパンもいたもんだ』

 

 通信回線を開き、アリスは煽る。

 

 指揮官らしき中年男は、相手が子供だと判るとスピーカーで罵声を浴びせながら攻撃してくるが、アリスとの腕前の差は歴然。

 攻撃はデュラハンに一発も掠っていない。

 

「こいつは殺していいやつっと」

 

 我知らず酷薄に笑いながら、アリスはトリガーを引く。

 

 スナイパーライフルとミサイルのコンビネーション攻撃で東雲を撃破。

 炎上した機体は狂ったように走り、やがて爆散した。

 

 確認できる全ての敵を片付け、デュラハンは着地。プラント側に機体を向けつつ、周辺を警戒。

 

「さて、お手並み拝見だ」

 

 

 プラントの制圧はスミカが身一つで遂行する手筈になっている。

 

 コーラルスターを降りたスミカはバトルスーツを纏った肉体一つでテロリストを倒していた。

 

「せいっ!」

 

 巨漢の顎を長い脚から繰り出されるハイキックで蹴り付け、一撃でノックアウト。

 格闘戦の間に銃で狙われているのを肌で感じ取り、跳ぶ。

 

「ッ!」

 

 スミカはフルオート射撃を俊敏に躱して、テロリスト達の度肝を抜いた。バトルスーツによる強化と尋常ではない鍛錬で培った身体能力によるものだ。

 

 ピンク髪のヴァルキリーを止められる者はおらず、ネバーランズのアジトは瞬く間に制圧された。

 少年兵は武装解除させ、拉致されていた子供たちと一緒に、やってきたシティガードの対重犯罪ユニットに引き渡す。

 

 

 スミカがコーラルスターのコクピットに戻ると、デュラハンが近寄ってきた。

 

『お疲れ様、アリス』

『おう、しっかし凄いなスミカは。ここまでの状況を一人でお膳立てしちまうんだから』

 

 アリスは感心しきった表情だった。シティガードがネバーランズの壊滅作戦を依頼したのは、実のところスミカの働きかけによるものだった。

 

 アンバー・クラウンでレイヴンとして活動する中で、スミカはシティガードの上層部や行政府の上級官僚にもコネを持つようになっていた。

 

 少年兵の今後についても手を打ってある。シティガードがネバーランズを市民のご機嫌取りに使ったのは、少年兵の存在が大きかった。

 

 洗脳され、戦わされていた彼らは新設された社会復帰プログラムを経て、アンバークラウンの一市民に戻ることになる。

 

 それは大々的に報じられ、慈善活動を通してアンバー・クラウンの人々の自尊心を満足させることになるだろう。

 

『褒められたやり方ではないとは自覚しているわ』

 

 立場とコネ、それに相手の弱味を使って状況を創り出す小賢しいやり口でしかない。

 それでどうにか手の届く範囲の者をスミカは救えている。

 

『いいや、だとしても大したもんだよ。尊敬するぜ』

 

 黒髪の死神少女の眼差しは真っ直ぐだった。

 

 

『それで、どうだった? こいつらとウェンズデイ機関には繋がりはあったのか?』

『予想はしていたけど、最悪の形で繋がっていたわ』

 

 スミカはネバーランズのリーダーを追い詰めた際、コンピューターのアクセスコードを要求していた。

 

 厳重にプロテクトされた取引データにはウェンズデイ機関が隠れ蓑にしているダミー企業を通して、ネバーランズに供給された武器・兵器の一覧があった。

 

 クロームとムラクモの軍用MTにレイヴンズ・ネストのシュトルヒ。アリスが撃破したものだ。

 

 ネバーランズ側が対価として提供したのは、実験素材。戦力にならないと見做した少年兵や拉致した子供をウェンズデイ機関に引き渡していたのだ。

 

 もっと早く動けていれば、救えたかもしれない命だった。

 

『そうか、そいつは残念だ。ウェンズデイ機関とかいう奴らは、ますますぶっ潰さなきゃだな』

 

 アリスはスミカの胸中を代弁するかのように言ってくれた。

 

 何であれ、ミッションは完了だ。あとはガードに引き継ぎ、アリス達は引き上げるだけだ。

 

『待ってくれ、スミカ・ユーティライネン!』

 

 しかし、対重犯罪ユニットの隊長機であるオーガーが二機を呼び止めた。

 

『緊急事態だ。我々が留守にしている間に中層部市街地でACを使ったテロが発生した。機数は二機、片方は見たこともない新型機で、ビショップではとても手に負えない!』

 

 つまり、スミカ達に現場に急行しろということだ。提示された報酬の金額は十分だった。

 

『いけるかしらアリス?』

『勿論。街で暴れてるんなら、そいつら片付けないと買い出しもままならねえからな』

 

 アリスは意気揚々と応えた。

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