【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜   作:その辺の残骸

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ノルト・ハイランド

 

 連なる山脈を背景に、輸送リグが雪原を進む。

 

 リグの艦橋。黒髪の幼い少女は窓の外を眺めていた。黒青色の中量人型AC、デュラハンを駆るレイヴン、アリス・ジャバウォックだ。

 

 晴れ渡った青空と白一色に染まった景色に、大破壊の痕跡は見当たらない。

 地上が人類の生存に適さない地獄のような環境だという常識が、嘘に思えてしまうほど穏やかな自然が広がっている。

 

 ここはノルト・ハイランド。ウェンズデイ機関の残党が逃れたとされる北の地。

 

「良く飽きないわね。ずっと同じ景色じゃないの」

「これがいいんだよ。綺麗だから、いつまでも眺めてられるぜ」

「大自然に心洗われる、ねえ。アリスの趣味は年寄り臭いわね」

 

 操縦を担当しているのは嗜虐的な金髪美女、リンクスミンクスだ。意外にも自分から操縦を買って出た。

 アリスと違って、ノルト・ハイランドの景色に飽き飽きしたという様子。

 

 肉感的であり、雌の肉食獣の危険さを発散する肢体は殆ど剥き出し。

 四脚乗りの女レイヴンは胸にチューブトップ、腰をマイクロミニのレザースカートで覆ってあるだけ。一応、短いジャケットを羽織っていたが。ハイヒールのブーツでフットペダルを踏んでいる。

 

 リグを操縦するため脚を広げていた。

 そのため、マイクロミニの下が危険な状態になっていたが、とりあえず紫色の"I字"で最低限ガードされている。

 

 空調の効いた快適な室内だから露出度の高い恰好をしているのではない。リンクスミンクスは禄に暖房のない地下都市の最下層でも、この服装で出歩いているのだ。

 

「クロームとムラクモ、その他複数の企業が残党狩りに動き出したようです。捜索を開始した段階ですので、先を越される心配はないでしょうけど」

 

 通信席に座る丸眼鏡の美人お姉さんが最新情報を伝えてくれた。露出のない長袖のワンピースに、白い髪に戴くベレー帽という服装。トレードマークのサーベルを帯びている。

 

「元スポンサーさん方は投資した分、しっかり回収したいってことかしら。大急ぎで出発して正解だったわね、ねえアリス?」

「まあな。ウェンズデイ機関の技術は誰かの手に渡る前に始末しておきたい」

 

 スミカの事情や目的はホワイトクィーンとリンクスミンクスに説明済み。

 

 強化人間技術など非人道的で、危険なウェンズデイ機関の技術は闇に葬る。それがスミカと決めた方針だ。

 有難いことに、二人はそれを尊重してくれた。

 

 ノルト・ハイランドまでの移動手段はリグを搭載できるサイズの輸送機だった。おかげで他の勢力に先んじている。

 依頼主であるアンダー・クラウンのアングラ組織連合の本気度が伺える用意だった。

 

「リンクス、潜伏予定地点まで、後どれくらいかかりますか?」

「三十分」

 

 リンクスミンクスは素っ気なく返事した。リグは貸与されたものであり、帰りの脚でもあるので壊すわけにはいかない。

 なので、ホワイトクィーンが目星を付けた山間部に隠して出撃する。

 

 アリスはおもむろに立ち上がった。

 

「スミカの調整を手伝ってくる。相手はファンタズマ――そうでなくとも移動要塞級のを繰り出してくれるかもしれんからな。そうなったらデカい砲が頼りだ」

 

 そう言って艦橋から退出する。

 黒髪の少女は、まず自分の支度を終わらせた。

 

「よっしゃ、今日もばっちりだ」

 

 漆黒のドレスからレオタードスーツに着替え、プロテクターで四肢をガード。ヘッドセットを付けて、太股ホルスターにお気に入りのロングバレルオートマグを差している。

 

 格納庫。

 メンテナンスベッドに固定されているのは三機のAC、緑色の武器腕四脚"プリティキトゥン"、白と黒のカラーに金色のラインが気品ある二脚人型"チェックメイトⅢ"そして黒青色の重騎士"デュラハン"。

 

 レイヴンズネストの上位に君臨する鴉の戦騎が揃い踏みだ。

 

 アリスのランクは十三位とランカー三人の中では一番下。それはデビューからの日が浅く、しかもポイントにならない仕事を多く引き受けているため。出鱈目な戦闘力はランカー皆が認め、恐れるところである。

 

 珊瑚色のコーラルスターの姿はない。

 

 代わりに白色の寒冷地迷彩が施されたホバータンクが鎮座している。主砲は長砲身のレールキャノン。

 副兵装としてVLSミサイルランチャーや近距離戦用の機関砲も搭載されており、火力はACを大きく上回る。

 

 機動性よりも火力と装甲を重視したマシンのため、同じホバー推進でもリグとはカテゴリが違う――らしい。

 

 

 トリコロールカラーのぴっちりしたバトルスーツ姿が眩しいピンク髪のヴァルキリーはタンクの傍にいた。

 端末を手に調整している。

 

「ダイヤスノウの調子はどんな感じだ?」

 

 呼びかけにスミカが振り向く。白銀色に覆われた豊かなバストが向けられた。

 スーツが薄すぎるせいで、先端がつんと突き出ている。

 

「外からできるチェックはコンプリート。もしかして手伝ってくれるの? それならちょうど良かったわ」

 

 アリスが肯定するとスミカは端末を手渡す。素早くタンクのコクピットを解放して乗り込んだ。

 

 アンバー・クラウンのブラックマーケットで偶然仕入れたホバータンクには型番がなく、先ほどアリスが呼んだのはスミカが付けた愛称だ。

 

 開発元の中堅企業はレイヴン――それもトップランカーたるハスラー・ワンの手にかかり壊滅していた。特に製造された工場は徹底的に破壊され、資料は何一つ残っていない。

 

 試験のため運び出されていた一両がマーケットに流れたのである。

 プロトタイプ特有の不具合はあるが、市場に出回っている機種より高性能。特に強力なレールキャノンは対ファンタズマ・リグ戦で役立つと考え、購入した。

 

 コーラルスターで慣れた狭苦しいコクピットのレイアウトやインターフェースは、ACとは異なる。

 だが、スミカはすぐにホバータンクの操縦に慣れ、テストをこなしていく。外にいるアリスとやり取りしながら、最終調整を終える。

 

 最後に、ホバータンクの特異な機能をテストする。

 

「移乗シークエンス、開始します!」

 

 宣言してからスミカは天井のハッチを手動で開いた。

 スーツのプロテクターを引っかけないよう、細心の注意を払い、しかし素早く昇っていく。

 

 その先には見慣れたACのコクピット。

 うつ伏せになった機体のシートにスミカは勢いよくお尻を下ろすと、落下しないよう素早く体を固定する。

 胸部装甲を閉じた。コーラルスターの戦闘システムを起動。

 タンクの装甲が持ち上がり、内部が露わに。スミカを乗せた珊瑚色のACが立ち上がる。

 

 最終チェックを終わらせると、スミカはアリスに通信を入れる。

 

「コンプリート。異常なし」

『こっちのモニタリングでも変な反応は出てない。問題なし、かな?』

 

 ホバータンクはACの強化装甲システムにもなる優れものだった。コーラルスターのような軽量・軽装のACであれば内部に収納できる。

 

 先にやったようにコクピットは別物で、人力で移乗しなければならないが。

 もし、開発した企業が潰されていなければACの在り方を変えたかもしれない革新的な機構だった。

 

 

 リグが停止すると、ホワイトクィーンとリンクスミンクスが格納庫にやってきた。

 

「お待たせ~」

 

「お二人も準備万端のようですね」

 

 ボディラインにぴったりとしたパイロットスーツ姿だ。素肌に密着する全身スーツは、水着姿とはまた違った刺激的な装い。

 

 ホワイトクィーンは白色のボディスーツ。やはり腰にはサーベルが剣呑に携えられている。

 凶暴なサディストで名高いリンクスミンクスはセクシーさを押し出した黒紫色のスーツだ。脚プロテクターはハイヒール状。

 

「それでは作戦を開始しましょう」

 

 作戦中も穏やかな雰囲気の丸メガネのお姉さんが宣言。

 

「お願いします――ホワイトクィーン、リンクスミンクス」

 

 コーラルスターに乗り込む前に、スミカは頭を下げた。残党とはいえ、どんな強力な戦闘兵器を隠しているか分からない。

 危険な戦闘に二人を巻き込むようで、申し訳なかった。

 

「仕事でやってるのよ。別に貴女の正義に付き合ってあげてるわけじゃないわ。だからそんな真似しないで」

 

「顔を上げてください、ユーティライネンさん。お願いしたいのは私のほうですよ。貴女とダイヤスノウの力、頼りにさせてもらいます」

 

 白髪と金髪の女レイヴンに促され、スミカは頭を上げた。クィーンもリンクスの自信に満ちた姿が眩しく見える。

 傭兵とは、レイヴンとはそういうものだった。己の至らなさを痛感し、ピンク髪のヴァルキリーは恥じ入った。

 

「なっ? いい奴らだろ?」

 

 隣でアリスが呼びかける。片目を瞑った悪戯っぽい笑顔で幼い少女はスミカを見上げていた。

 

 

 女レイヴン達はそれぞれの乗機に乗り込んだ。格納庫のハッチが開き、雪原が広がる。

 

『チェックメイトⅢ、発進します』

 

 曲面で構成された、がっしりとした人型。十メートルの巨人が鎧を纏ったかのようなホワイトクィーンの愛機が飛び出す。

 パルスライフルにレーザーブレードという軽装備だ。

 

『リンクスミンクス、プリティキトゥン。出撃するわ』

 

 雪原でも緑の迷彩のままの四脚ACが滑り出す。遮蔽物がなくとも得意の高速戦闘で被弾しないつもりらしい。

 

『ダイヤスノウ、行きます』

 

 コーラルスターとスミカを乗せたホバータンク、ダイヤスノウがゆっくりと雪原に降り立つ。

 ホバー推進によって浮き上がる機体をスミカは慎重に加速させていく。コーラルスターと違い、重々しい操作感。

 

『よーし、いっちょやってやるぜ!』

 

 最後に元気一杯に気合の言葉を吐き、アリスが愛機を駆り立てる。

 黒青色に死の気配を纏った騎士。アルゼナ修道院の傑作たるカスタムAC、デュラハンは猛烈なスピードで飛び立つ。

 

 

『私が先導します』

 

 ホバータンクからスミカが通信。異論は出ない。三機のACはダイヤスノウの後ろにつき、ダイヤモンド編隊を組んだ。

 

『ここから目的地まで遠いわ。はぁ、退屈ね』

 

 リンクスミンクスが気怠そうに呟く。機関の残党が潜伏している拠点の見当は付いている。

 だが、迎撃を避けるためリグを遠ざけたので、時速300kmのACのブースト速度でも長い移動時間を要する。

 

『警戒は怠らないようにお願いしますよ、リンクス』

『はいはい。女王サマの仰せのままに』

 

 気晴らしにボトルのドリンクを啜るサディスティックな金髪美女。中味はアリスが淹れてくれた紅茶だ。美味しくて、喉を鳴らして飲んでしまう。

 

 雪原を疾走し、四機は空と陸からの襲撃に目を光らせる。

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