【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜   作:その辺の残骸

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残党殲滅

 

 敵は空から攻めてきた。戦闘攻撃機バタフライアイの編隊が東、北東、南の三方向から接近してくる。チェックメイトⅢの背部レーダーで捕捉した敵影はチームに共有されている。

 

 四十機余りの赤い輝点に好戦的に笑む金髪ドSお姉様、リンクスミンクス。

 

『来たわね。クィーン、采配をどうぞ』

 

『二手に分かれて当たりましょう。私とスミカ、リンクスはアリスとお願いします。戦闘中の判断は各自に委ねます』

『あらそれだけ? 戦術の天才にしてはアバウトな指示ね』

 

 お手並み拝見のつもりだったが、予想外にざっくりした指示に怪訝な顔をするリンクスミンクスである。

 

『皆さんの技量ならば、各自が思う様に戦うのが最も効率的ですから』

 

『違いない。ガードや企業の連中みたいな集団戦闘は窮屈だ』

 

 戦闘に突入しても穏やかなホワイトクィーンの物腰。死神少女として丸眼鏡の女レイヴンの方針に異論はない。

 

『まっぶっちゃけ私だって賛成よ。聞いてみただけ』

 

 高速で駆け回る戦法を好む金髪サディストにとって、動きに合わせられない味方など邪魔だし、鈍いヤツに合わせるのは死んでもゴメンだ。

 

『スミカも異存ありませんか?』

『はい、大丈夫です』

 

 全員の意見を確かめてから、ホワイトクィーンが編隊を崩す。チェックメイトⅢとダイヤスノウは右に、プリティキトゥンとデュラハンは左に。

 

 バタフライアイに真っ向から突っ込むコースを取るデュラハンの隣に、迷彩緑のプリティキトゥンがきたかと思うと、追い抜いていく。

 

『お先に〜♪ アリスは無理しなくていいのよ、重い武器を抱えてるんだから』

 

 四脚であるプリティキトゥンは、開けた場所での高速戦闘を得意としている。

 

 凶悪な肉体美を黒紫色のボディスーツで覆った雌猫にとって、雪原は絶好の狩場だ。腕部一体型ミサイルランチャー、背部のスラッグガン。対空戦闘にも対応できる武装が揃っている。

 

 デュラハンは対大型兵器用に、巨大な銃を手にしている。二本のレールで弾体を電磁加速するレールガンだ。

 

 スミカが乗っているホバータンク、ダイヤスノウと抱き合わせで購入した武装である。

 ダイヤスノウと同時に製造されたAC用の装備で、車体に括り付けて内部に格納されたACが単機が行動する際、火力を高める意図で造られた代物。

 

 しかしホンバータンクが格納することを想定した軽量級のACではとても扱えないオーバーサイズだ。それどころか、既製品を別物レベルまでチューンしたデュラハンの積載能力でなければ保持できない。

 

 長大なレール、コンデンサ、大口径砲弾を詰めたマガジン、それらを統合した機関部。デュラハンの重心は大きく右に傾き、オートバランサが効かないので、アリスはマニュアルで常にバランスを取るよう操縦している。

 

 

 東からの編隊が攻撃態勢に入った。十数機のバタフライアイがミサイルを発射してくる。

 

 デュラハンとプリティキトゥンは、オプショナルパーツのミサイルジャマーを起動しつつ散開。円を描く回避運動を取りつつ旋回。

 

 黒青色の鉄騎、デュラハンはブーストジャンプを織り交ぜて立体的に、プリティキトゥンは四脚のスピードに任せて高速の平面機動で動く。

 

 レーダーを埋め尽くす勢いのミサイルにも慌てず、雪原というフィールドでACの機動性を余さず発揮する。

 速度で大きく勝り、強力な対地兵器を搭載した攻撃機はACにとっても強敵だが、上位のレイヴンともなれば、如何様にも料理できる。

 

 地表で爆発が次々に起こったが、アリスとリンクスミンクスは一発も被弾していない。

 

 空中で爆発。残骸が散らばり、黒煙を引きながらバタフライが堕ちていく。二機のACは、ミサイルを撒くとすぐさま反撃して、多数の敵機を一気に落ち落としていた。

 

 デュラハンの背部兵装は六連ミサイルと垂直ミサイル。軌道と速度が異なるミサイルでバタフライアイの回避先を潰して、確実に撃ち落としている。

 

『こいつら無人機ね。面白くない――ほら、追い込むから仕上げは任せるわよ、アリス』

 

 単調な動きから、リンクスミンクスはウェンズデイ機関の残党が繰り出した戦力の中身を看破した。バタフライアイは編隊の数が減ると機械的なパターンに沿って、隊を組み直している。

 

『詰まらない玩具はとっとと消えなさい』

 

 右にブーストスライドしながら、リンクスミンクスはトリガー。背中のスラッグガンから発射された散弾が、戦闘攻撃機を撃墜する。

 

 大口径機関砲を腹に抱えたバタフライアイは攻撃コースに入ろうと動く間に、横合いから殴られることに。

 

 爆散する僚機を後目に、四脚ACの対空砲火から逃れる戦闘機、そこにデュラハンが食らいつく。

 

「ありがたく頂くぜ」

 

 敵機の真下を通過しつつ、アリスは垂直ミサイルを発射。打ち上がった誘導弾が、残りのバタフライアイを破壊した。

 

 既に、後から来た北東の敵集団も殲滅している。

 

「本命前の肩慣らしにちょうどいい相手だったな」とアリス。繰り出された航空戦力は所詮前座だと悟っている。

 

 

 残る敵は南側の編隊だけだ。

 

 

 プリティキトゥンとデュラハンが繰り広げる対空戦闘に、スミカはランカーの実力を思い知らされた。操縦桿を握る手に思わず力が籠もる。白銀色のグローブの下に汗が滲んだ。

 

『スミカ、私のオーダーに沿ってミサイルを撃って貰えますか?』

「了解! 指示をお願いします!」

 

 ピンク髪のヴァルキリーはすぐさまホワイトクィーンの要請に従い、ミサイルを発射。

 

 ホバータンク、ダイヤスノウ車体左右のVLSセルが開き、白煙と共にミサイルが撃ちあがる。敵機は当然、散開して回避するが、そこに一気にブーストジャンプしたチェックメイトⅢが襲い掛かる。

 

 白黒金、高貴な色調の三色で塗装された仮面の巨人――そのように見えるチェックメイトⅢはパルスライフルを射掛けてからレーザーブレードを抜き放つ。

 

 そこにスミカのミサイル攻撃で追い立てられたバタフライアイが自分から突っ込み、プラズマの光刃に切断されていく。

 

 ホワイトクィーンにとっては、敵を自滅に導くのは容易なことのようだ。

 

 生き残った戦闘攻撃機の特攻染みた反撃も軽々といなして逆にブレードで斬り捨てると、雪原に華麗に着地するチェックメイトⅢ。

 

 それを追いかける残りの敵機はダイヤスノウのCIWSですぐに片付いた。スミカは疲労を何一つ感じることなく、戦闘を終えていた。

 

 

『新手が来ます。高熱源、高速のジェットホバー推進が二機。なるほど、あれがファンタズマですか』

 

 丘の稜線を超え、姿を見せた黄色の戦闘リグに、ホワイトクィーンは興味深そうな眼をしていた。二機のファンタズマが整然とした動きで接近してくる。

 

『へぇ、さっきの雑魚と違って楽しめそうじゃない』

 

『気を付けろ、火力も機動性も段違いだ。開けた場所の撃ち合いじゃこっちが不利だぜ……どうしたスミカ、具合が悪いのか?』

 

 アリスはリンクスミンクスに警告してから、通信ウィンドウに映るピンク髪の美女の顔色を心配した。

 

 ランカーレイヴンに実力を見せつけられ、スミカの自信は揺らいでいた。

 

 アンバー・クラウンで多くの難事件を解決し、愛機コーラルスターで強大な敵を倒してきたつもりだが、ホワイトクィーンとリンクスミンクスの戦闘技術は段違いだ。

 

『ねえスミカ、さっきから落ち着かない様子だけど、もしかしてお漏らしでもしちゃったの?

 いいのよ、貴女だけ先に帰ってシャワーで濡れた身体を綺麗にしていても。あんなリグ、すぐに私達でスクラップにしてあげるから』

 

 リンクスミンクスがサディストの貌で煽った。ピンク髪の美女の白い美貌が一瞬で赤く染まる。

 

「リンクスミンクス、下品よ!」とまず鋭い口調で言い返す。

 

 ちなみにスミカ、ホワイトクィーン、そしてリンクスミンクスのボディスーツは、股間プロテクターの下にトイレパックがあり、隙間なく密着している。

 

 もし解き放ってしまっても不快感は最低限に抑えられ、衛生も維持される。それが分かっていてリンクスミンクスはあえて下品に煽ったのである。

 

「私だけ引き返すわけにはいかないわ! このタンクだってファンタズマと戦うことを想定して用意したのだから必ず役に立って見せます!」

 

 さらにスミカは宣言する。彼女本来の勇ましい顔になっている。

 

『せいぜい頑張りなさい。今の貴女なら少しはアテにしてあげる』

 

 どうやら、発破をかけられたようだとスミカは悟った。

 

 直後、二機のファンタズマの砲口が光り、プラズマキャノンがまっしぐらに襲い掛かった。

 

『全機散開!』

 

 ホワイトクィーンが険しい表情で指示を出す。

 

 女レイヴンたちは強力なプラズマの爆発を避けたが、その威力は恐るべきもの。しかも連射してくる。

 

『ちょっ、これはちょっと不味いかも!』

 

 この私が避け切れないなんて!プリティキトゥンは近距離で弾けたプラズマの爆発でスピンした。

 

 流石はランカー、本格的なダメージは被っていないが超高温に炙られ、機体温度が急上昇。

 

「なによあの反則メカ、しかも二機だなんて」

 

 機体を立て直す。余裕の女王様スマイルを崩し、冷や汗を流しながら悪態をつくリンクスミンクス。

 

『まったく、やる気にさせてくれる良い獲物だわ。クィーン、何か考えがあるんでしょう?』

 

 屈辱を戦意に変えて金髪の女レイヴンは問う。

 

『三人で対処します。アリスはもう一機を』

 

『お任せあれ! レールガンの使い所だ!』

 

 ホワイトクィーンの指示は無茶振りなようだが、適切な戦力配分だ。それほどにアリスの戦闘力はイレギュラーなのだ。デュラハンが手にしたレールガンが青白く放電し、発射態勢に。

 

 スミカもホバータンクの高速で動き回るファンタズマ・リグをロックオンサイトに捉えようとする。

 

『ここからは貴女が戦闘の要です。最適の健闘を願います』

 

 作戦を伝達したホワイトクィーンは、最後にスミカにそう告げた。

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