【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜   作:その辺の残骸

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再会『スミカ・ユーティライネン』

 

 キャリアーリグ、ナイトメアのブリッジ。

 

「ひっひぃぃぃ~~~!」

 

 ライディングシートに跨る金髪メガネ美女は見た目だけなら、颯爽とした女ライダーなのだが情けない悲鳴が絶えることはない。異性を魅了してやまない巨乳と巨尻が激しく弾む様は色っぽいというか、哀れっぽい。そんなウルスラは必死に《大破壊》時代の巨大人型兵器の猛攻撃を避け、側面に向け直したパルスキャノンや機関砲の弾幕で応戦している。

 

 だが、ダメージは微々たるものだ。丸みのある装甲に電磁パルスエネルギーが散り、機関砲弾は弾かれている。経年劣化しているというのに驚異的な頑丈さだ。時折、関節部や損傷が目立つ部位に着弾して小規模な爆発が起きているが、ウルスラ一人でこの危機を乗り切れそうにない。

 

「ミサイルは高いからもう使いたくないけど――――ええい!」

 

 通常の垂直ミサイルが撃ち上がり、敵に命中するもやはり効果は薄い。

 逃げ回りながらの応戦なので、リグ正面の主砲プラズマキャノンは使えない。

 

 一端、大きな残骸に回り込んで遮蔽を取ろうとするがその動きは予測されていた。巨大兵器右腕部のプラズマ砲が紫色に明るく輝いて三連射される。咄嗟に回避したがナイトメアは一発被弾した。

 

 

 

「わわわ~~~~っ! スッスクリーンはギリギリ持ってるぅっ!」

 

 着弾の衝撃で巨乳を揺らしながら、ウルスラはどうにか冷静に被害を確かめた。防御スクリーンが熱エネルギーを拡散させたので、漆黒の本体装甲は熱を帯びただけで済んだ。しかし警告音が鳴り響く。プラズマに包まれたことで一時的な電波障害が起こり、電波に依存する操縦補助も不可能になる。

 

 おまけにプラズマの爆発によって視界が塞がれているが、ウルスラは生存本能と勘を頼りにナイトメアを滑らせ、残骸に身を隠した。直後、反対側から敵の攻撃による轟音が鳴り響く。

 

 不意に砲撃音はナイトメアと別方向に向かった。アーマードコアのブースターの独特の排気音を集音センサーが拾って艦橋に伝える。

 

『待たせたな!』

 

「アリスッ! とっととそいつをやっつけて! お願いよ!」 

 

『わかってる。そこに身を隠したままでいいぞ』

 

 ブースターにエネルギーを大きく割り振り、残骸を蹴っての加速でカタログスペックの二倍以上の速度を叩き出しながら、デュラハンは敵と交戦した。ウルスラはデュラハンからのカメラアイ映像をぼーっと眺めることはせず、すぐにナイトメアが敵に与えたダメージをアリスに伝えた。

 

「おっこいつは助かるな」

 

 敵機の性能解析と一緒に、デュラハンのモニターに巨大兵器の被弾箇所と推定される弱点が表示された。

 

「さあて、オレの仲間を痛めつけてくれた礼はきっちりせんとなぁ!」

 

 十代前半の少女とは思えないほど艶めかしく唇を舐めてから、アリスは巨大兵器を弄んだ。追い縋る火線を急速上昇からの落下軌道で躱し切り、デュラハンの進行方向で起こったプラズマの炸裂を真っ向から突っ切る。

 

 敵は一時的な機能停止に陥った戦闘で脚部を破損しており、身動きができない。だが腰に360度回転の可動域が設けられているので、砲撃戦に不自由はない。アリスは回り込みではなく、正面突破を試み、弾幕を切り抜けた。

 

 交差と同時にレーダーと使用不能になった武装の余剰エネルギーを回し、ブレードの一閃で主砲プラズマキャノンをぶった切った。ウルスラが教えてくれた脆弱部に数万度のエネルギーによる刃を差し込んでやったのだ。

 

 デュラハンを追跡して腰を旋回させる巨大兵器だが追いつかない。デュラハンが反転する。今度はミサイルランチャーが爆ぜ、次に近接防御用の火器が切り裂かれる。

 

「そらよっと!」

 

 さらに胴体と一体化している頭部のカメラアイを蹴り、そのままブースター出力を引き上げる。デュラハンのメインブースターが吠え猛り、力の限りプラズマの白炎を解き放った。10メートル級の人型機動兵器に押され、重々しい音と共に、ACの五倍以上の全長がある巨体が横転した。

 

「あはははははははっ!! 本当に素敵な夜ですわ!」

 

 土煙に巻かれるよりも速くデュラハンは舞い上がり、空中にてブレードを構える。流動的に口調を切り替え、アリスは淑女のように哄笑していた。核融合弾頭全力フルバースト散財忘れようとする気持ちもあった。

 

「ですが、これにて幕引きといきましょう」

 

 相手が地面に叩きつけられた衝撃で駆動系を麻痺させている間に締めに入る。

 

 デュラハンが空中で急制動をかけ、レーザーブレードを振るうと出力調整と腕の動きによってエネルギーの刃が射出された。

 ブレード光波と呼ばれる、機体と直結して繊細な制御を可能にした強化人間だけが繰り出せるレーザーブレードによる遠隔攻撃だが、アリスは反則的な操縦技術によって、生身でこれを可能としている。

 

 一撃目の光波が巨大兵器の頭部に当たり、割れたカメラアイから内部に数万度の熱が浸透する。

 

「そら! そら! そら!」

 

 過酷な労働に疲労困憊した奴隷に鞭打つ残忍な奴隷の主人めいて、残酷に無力な敵を虐げるアリス様である。デュラハンは空中に機体を静止させながらブレード光波を次々と放ち、敵の巨体を滅茶苦茶に破壊したのだ。完全なスクラップと化した巨大兵器は、ついに誘爆を起こし内側から溢れた炎と稲妻で自らを葬った。

 

 撃破までの所要時間は交戦開始から二十秒弱である。人型機動兵器アーマードコアはその身に秘めた機動力と攻撃力を極限まで引き出せば、途方もない破壊者となるのだ。

 

「すっすごい」

 

 ウルスラはアリスが繰り広げた巨人殺しの壮絶さに全身から汗を滲ませ興奮していた。アリスが無茶苦茶な戦いを繰り広げる度に似たような感想を漏らしてしまう。

 

 不意に上から振動が響いた。デュラハンがナイトメアの甲板に降り立ったのだ。コクピットの中で出来る範囲でアリスは燃え上がる巨体に向かって優雅に一礼している。

 

「あっありがとうアリス。これで終わ」瞬間、新たな高エネルギー敵性反応が二つ起き上がる。「もう、今度は何なのぉ!?」とウルスラは悲鳴を上げて泣き喚く。

 

『おっ今度はもっと変なのが起きてきたぜ』

 

 起きがりつつある、一つ目のアイカメラユニットに重厚な二脚を取り付けた異様な大型兵器を指差してアリスは笑った。背中にはキャノンを背負っており、眼球を赤く光らせながらアリス達を睨み、やる気は満々。新たな敵は先ほどの巨大兵器より小さいが、それでもACを見下ろせるサイズだ。

 

『ナイトメアの弾は残ってるか?』

 

『大丈夫だけど』

 

『よし、なら操縦と火器管制こっちにくれ。ちゃちゃっと片付ける』

 

『わかったわ――――うう、嫌だなぁ』

 

 二機の一つ目メカとの戦闘プランを笑顔で練るアリスに対してウルスラの顔は引き攣っている。以前にもデュラハンが上に乗り、ナイトメアがその脚兼追加の火力になったことがあったが、その時金髪のオペ子はライディングシートにしがみつき、胸と尻をぶるんぶるんと大迫力で揺らしながら泣き喚くハメになったからだ。

 

 

 

 しかし、ウルスラを責め苦から救う者がそこに飛来した。二機のレーダーに新たな反応が出る。アリスがかつてスミカ・ユーティライネンと共有した敵味方識別信号のパターンであり、緑の光点で表示されていた。

 

『その二機は私が引き受けます! 下がっていてアリス! それとウルスラさん!』

 

 オープン回線でスミカ・ユーティライネンの声が響いた。ウルスラが初めて聞いたそれは凛々しい美しさの声音だった。

 

『アリス、これって!?』

 

『本物だな、言う通りにするぞ』

 

 ナイトメアはデュラハンを乗せたまま後退。闇夜のなかにジェットエンジン音を轟かせる機体に目をやった。

 フライトユニットを被っていたそのACは、ユニットをパージして桜色の装甲を露わにした。流麗な曲線で造形された新鋭機だ。両手で抱えている長砲身の大型レールガンで、起き上がりつつある二機の一つ目機械をロックオンする。

 

「発射っ!」

 

 極限まで空間を削ったコクピットにてライディングシートに跨るスミカ・ユーティライネンがレールガンの引き金を引く。蒼い稲妻が迸り放たれた極超音速の砲弾が二機を真横からぶち抜き、爆散させた。

 

 そのままACを着地させ、滑りながら減速させた。

 

『久しぶりねアリス。連絡の一つも寄越さずにいてごめんなさい』

 

 言いながら、二人の前でACの胸部装甲が開き、スミカが姿を見せる。

 

 炎に照らされ、その姿がウルスラにはっきりと見えた。「綺麗な人」と心から口に思った。

 スミカ・ユーティライネンはピンク色のショートヘアをしていて、長身で、非の打ち所の無い肉体美を備えた美女だった。それがはっきりと判るのは、ぴったりと体に張り付いたボディスーツに身を包んでいるからだ。

 

 極薄のアンダースーツは白銀色。全身の流麗な装甲には青を基調に赤のアクセントが配されてヒロイックでスタイリッシュなデザイン。筋力強化機能があるのが明白なバトルスーツだ。豊満なバストとヒップは白銀色のアンダースーツにそのまま縁取られていて、肉体を鍛え抜いたことを示す腹筋も浮き彫りだ。

 

 アリスとの再会に微笑みを浮かべるピンク髪のヴァルキリー。その瞳には強い意志と正義の心が宿っていた。腰に片手を当てたポーズも強く勇ましく凛々しいイメージだ。

 

 

 

 こうしてアリスはスミカと二年ぶりに再会した。アリス達はナイトメアの格納庫で顔を合わせていた。

 

「少し背が伸びたわね、アリス」

 

 スミカに言われ、お嬢様的な白ワンピース姿のアリスが「おう! スミカはチチとケツがまた少しデカくなったか?」と腰に両手を当てて胸を張りながら宣う。黒髪の、容姿完璧な美少女のセクハラ発言をクールにスルーしてスミカはウルスラに微笑みかけていた。

 

「改めて、初めましてウルスラさん。申し訳ないのだけど貴女のことは色々と調べさせてもらっています」

 

 ウルスラに謝ってからスミカはこの場にやってくることができた理由を説明した。

 

「少し前から私のコーラルスターに偽装した機体の目撃情報が出ていたの。それと、兵器マーケットで大量の機動兵器を仕入れる動きも。

 それらを貴女達の最近の動向と照らし合わせて、彼らが貴女達を狙っていると推定してこの古戦場を割り出したんです。フライトユニットと新型ACの調整に時間がかかって行動がギリギリになってしまったけど」

 

「凄い。アリスの百倍はIQが高い!」

 

「失礼だぞ、ウルスラ」

 

 独自の情報網と明晰な頭脳を持ち合わせるスミカに感心するばかりのウルスラだった。

 

「とにかく恩に着るぜスミカ。それでオレ達を狙った連中は何者なんだ?」

 

 腰に片手を当てた凛々しいポーズのままだが、スミカの表情は極めて深刻になった。

 

「彼らはレイヴンズネストの生き残りよ。膨大な資本と《大破壊》の技術、そしてかつてのウェンズデイ機関の研究者達を使って新たなファンタズマを創り出そうとしているわ」

 

 あまりに衝撃的な情報にウルスラは大袈裟に反応しているが、隣のアリスは腕を組んで神妙な面持ちだ。

 

 さらに詳細をスミカは話してくれた。アリスと別れた後も地下都市アンバークラウンを中心に世の悪と戦い続けていたスミカだが、ネスト崩壊の三か月ほど前にウェンズデイ機関の技術で造られた強化人間のレイヴンと交戦した。機関でなければメンテナンス不可能な高性能強化人間は正常に動作しており、愛機コーラルスターとの引き換えの勝利になってしまった。

 

 身一つでスミカは調査を進め、ネストとウェンズデイ機関の間に繋がりを見出した。ネストこそがウェンズデイ機関にファンタズマを始めとする次世代強化人間技術を造らせ、その成果を手中に収めた真の黒幕だったのだ。

 

 ネストはファンタズマ技術をより発展させることさえ画策するようになっていた。事実を公表しようとしたスミカはネストランク1、最強のレイヴンと畏れられるナインボールに襲撃されるも辛くも生き延び、潜伏しながら調査を続けていたそうだ。

 

「ネストは機関の技術で一部のレイヴンに強化手術を施し、対価として絶対服従を要求していたの。自由意志ではなく自分達の思い通りに動く駒としてよ」

 

 アリスは自分が最近処理した三人のウェンズデイ製強化人間の素性を察した。

 

(オレが倒した連中はネストが潰れたせいでサポートを打ち切られた手合いってトコか)

 

 二年前に作られた者達が今日まで偶然生き延びただけと判断せず、すぐに動くべきだった。あるいは、ネストが健在だった頃に交戦していれば――――

 

 衝撃的な情報はさらに続く。

 

「突然のネストネットワークの崩壊。その原因は一人のレイヴンが本部の中枢コンピューターを破壊したことにあるわ。ネストは《大破壊》以後の人類社会を裏から操り秩序を保つAIの手段であり、私達レイヴンはその実行役として仕組まれた存在だった。

 ナインボールもまたAIが操る駒の一つ。ハスラー・ワンはただの虚像に過ぎない。あれはACなんて生易しいモノじゃない、極めて強力な無人戦闘兵器なの」

 

「まっまさかそんな」

 

 トンデモ陰謀論めいた事を淡々と語るスミカに仰天するウルスラである。

 

「これは、ネスト崩壊の当事者から直接聞いた話よ。アンファングのレイヴン、エーアストは知っているでしょう? 彼はあまりにも力があり、事実ムラクモとクロームが潰える原因になった。だからイレギュラーとして命を狙われた」

 

「でっネストを逆に返り討ちにしたと」

 

 エーアストの名をネスト崩壊以前のレイヴンで知らぬものはいない。突如として現れ、殆どのミッションを完璧以上に成功させ、ハスラー・ワンに匹敵する、あるいはそれを上回る絶大な戦果を上げた正体不明のレイヴンだ。ネスト崩壊直後に姿を消しているが、その彼ともスミカはコンタクトを取り真実を教えてもらったのだという。

 

「今活動している残党はネストのAIにバックアップがあったのか、それともネストで働いていた人間によるものかはまだ調べがついていないわ。だけど、組織が潰えてなおファンタズマ計画を継続している現実の脅威よ」

 

 スミカははっきりと言った。

 

「それでそのネストの生き残りは結局何が目的なの? ただ新しい技術を造るだけではないはずよね。技術は使うためにあるのだから」

 

 ウルスラの指摘にスミカはクールに頷いた。絶世の美人さんで凄腕な正義のレイヴンに肯定され、金髪メガネのお調子者オペ子は内心で浮つく。

 

 一方、スミカはシリアスな表情のままだ。銀光るぴっちりスーツで乳袋を形成した豊満なお胸の下で腕を組み、質問に答えた。

 

「自分達が裏で糸を引く秩序の再構築、進化したファンタズマはそのための力よ。そして、邪魔になった私達レイヴンの完全な抹殺」

 

 どうやら事態は想像より遥かに深刻だと、アリスは理解した。まあいいさ、遅くなってしまったが、すぐに全部片づけてやる。黒髪の乙女の姿をした不可解なる怪物の顎は、このとき闇に潜むモノ達をはっきりと捉えた。

 

 

 

Part1・完

Next Part『アーマード・バトル・ロワイヤル//イレギュラーズ・デストロイ・ナインボールズ』

 

 

 

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