【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜 作:その辺の残骸
アリス一行『格納庫にて』
隠しておいた居住カーゴと連結したナイトメアは古戦場を後にした。キャリアーリグの格納庫にはスミカの新たな愛機の他、四肢を破壊されたファントムを含む回収した資材を積み込んであり、溢れる寸前だった。
アリスよりもむしろウルスラの方が桜色の美しいACへの興味が強かった。流線形かつマッシブなラインの機体はスミカによれば旧ムラクモ・ミレニアムAC技術の集大成、閃桜なる機種だそうだ。
単独での作戦能力を極限まで高めたハイエンド機であり、自社の特殊部隊での独占的運用を想定していた。スミカはムラクモ崩壊のどさくさに紛れて流出した機体を予備パーツとオプションを含めて確保。キルシュバウムと名付けている。
「とんでもないモンスターねこのAC。うわ、こんなジェネレーター出力の値見たことがない……」
自分の古巣が開発していたACのスペックを端末で確認してウルスラは一人感心する。ムラクモが確保した《大破壊》時代の技術までも惜しみなく投じて建造された閃桜は、従来のACとは段違いの性能を誇っていた。
「コクピットの狭さも段違いだけど」
あの狭いコクピットでバイクのようなシートに跨ってACを操縦するスミカの苦労を想像する。素肌にぴったり張り付くスーツとはいえ、四肢などに装甲が施されているし、おの豊かな胸やお尻も引っ掛りそうだ。
スミカによると閃桜のコクピットが馬鹿みたいに狭いのは、性能を追求し過ぎた代償だそうだ。
一方、スミカはアリスと一緒にファントムのパイロットと対面していた。それはコクピットブロックから引っ張り出された小さな箱だった。
「省スペース化の極みって感じだな」
アリスは作業台の上に置いた新型のファンタズマらしいコアユニットを見下ろしている。拝む面がないので参っていた。
「これがネストの残党が進めている新世代のファンタズマよ」
ぴったりと体に密着するバトルスーツのスミカは悲痛そうに言った。僅かに身動ぎをしたことで、スーツがラバーのような衣擦れ音を立てる。
「人間の脳をチップに加工して制御デバイスに仕立てる。最適化された人工神経による伝達は従来の強化人間よりもさらに速く、耐G能力の面でも格段に優れているわ。
何よりも加工する側にとってチップ化の最大の利点は人格を操作したり、反射神経と戦闘に関する思考だけを抽出できることよ。レイヴンのように強い自我で反逆することのない理想的な兵隊を造り上げられるわ」
口にするのも憚られる悍ましさに負けないよう、スミカは努めて淡々と語った。しかし体温は上がっており、スミカのスーツの下で、白く滑らかな素肌に汗が滲んでいた。
「手足をちょん切って、機械に繋ぐトコから随分進んだな」
感情的にならず、素っ気無く感想を口にするアリスが今のスミカにはむしろ心地よかった。
ファンタズマの中身を実際に見ることはなかったが、ウェンズデイ機関から入手した資料はその様子をはっきりと記録していた。ウルスラに見せたら真っ青になりそうだ。
「しかし、これはどうにもやり過ぎに見えるぜ。なんというか、人間をこの形に押し込めることに意味を見出している気がする」
「ええ、彼らはヒトに価値を見出していないか、あるいは否定したいのかもしれない」
言いながらスミカはチップを収容している箱を開き、バトルスーツで強化された筋力でチップを砕いた。
ファントムのパイロットはこの世から消滅した。その時感じたのは絶望だったろうか、あるいは解放の喜びか。スミカ・ユーティライネンに知る術は、ない。スミカが少し震えているのがアリスには判った。こういう時、どういう言葉を掛けるのが適切なのか悩んでいると、キルシュバウムの方からウルスラの悲鳴が轟いた。
「どうした!?」
「今行くわ!」
アリス達は弾かれたように声の方向に駆け出した。
「たっ助けて~~~っ! それとごめんなさいスミカっ! ちょっと試しにコクピットに入ったら、おっお尻がつっかえて出られなくなっちゃったの!」
ノースリーブトップスにジーンズ姿のウルスラは金髪ポニテの才媛という外面を投げ出して、救援要請を出していた。
隙間に挟まるようにしてライディングシートに跨っているのだが、デカケツを後ろに突き出した時、綺麗にハマってしまい脱出不能に陥っていた。
「どうしてスミカより小さいケツで挟まるんだよ?」
ちなみにウルスラの尻は94cmでスミカの尻は98cmである。二人とも容姿と高身長が相まって、惚れ惚れするような美尻ではある。
「しょうがねえ、引っ張り出してやるよ」
「やっやめて! アリスのバカ力で引っ張られたら私の体が千切れるわ! 新しい恋人を作る前に死にたくない~~~!」
アリスが呆れながら少女らしい繊細な手で触れようとすると、ウルスラは必死で首を振って拒んだ。かつて、アリスが装甲服を着た兵士を引き千切った光景がトラウマになっている。
「ふふ」
それからしばらく二人が問答を続ける様にスミカは笑ってしまった。楽しい気持ちになったのは、久しぶりだ。カツカツとブーツ装甲の音を小気味よく響かせ、金髪のケツつっかえオペ子の目の前にくるピンク髪のヴァルキリー。
「大丈夫よウルスラ。私も最初にコクピットに入った時は貴女と同じようにお尻がつっかえて、出られなくなったわ。あの時はお腹が凄く痛くて、今すぐにトイレに行きたい状況だったから真っ青になったものよ」
「ほっ本当?」
艶めかしく見えるポージングで前屈みになり、白銀色のスーツに包まれた綺麗な巨乳を突き出しながら、恥ずかしい話を交えて優しく語り掛けるスミカがウルスラには救いの女神に見えた。その脇でアリスは腕を組み、腹痛のエピソードの真偽を疑っていた。
「コツを掴めばすぐに抜けられます。まず落ち着いて体の力を抜いて――――」
スミカの言葉に従い、コツを実践すると嘘のようにするりとウルスラはコクピットから脱出できた。
正義なき世界に正義を生きるスミカ・ユーティライネンの手に優しく導かれて外に出ると「たっ助かった」と一息つく。そして平常心を取り戻す。
「ありがとう、スミカ。お陰で助かったわ」
金髪を掻き上げ、その所作で豊かなバストを揺らす。メガネが怜悧さを引き立てる敏腕オペレーターは、クールな微笑みと態度で礼を述べる。これがウルスラ・ノイの凄い所なのだ。呆れつつもアリスは認めている。
「ちっ力になれて良かったわ」スミカはその変わり様に圧倒されていた。
「ところでアリス。回収した物資の売値を試算したのだけどやっぱり少し厳しいわ。多少条件が悪くても幾つか依頼をこなす必要があると思う」
ジト目のアリスに余計なことを言わせまいと、ウルスラは切り出した。
そこでスミカは一つ大事なことを思い出した。
「伝えるのが遅くなってしまったけど、資金ならある程度用意してきました。二人の判断で使ってください」
バトルスーツの機能でスミカは掌からコーム残高の立体映像を投影した。瞬間、アリスとウルスラは並んで跳び跳ねるようにして、スミカに平伏した。
「ははっ~~! スミカ様、なんなりとお申し付けくださいませ! ははっ~~!」
黒髪の狂暴系美少女と金髪のメガネ美女は揃って、滑稽なほど丁寧にスミカを仰いだ。少しどころではない大金であり、オートパイロットでナイトメアを向かわせているシティで物資を売れば十分な軍資金になるからだ。
私こそが企業だ平伏しろとほざく輩がいれば、どんな高性能機に乗っていようがレーザーブレードで切り刻み、爆散させるアリスであるが、下心なく金を提供してくれる相手であれば喜んで平伏する性分であった。