【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜 作:その辺の残骸
特に迷うこともなくアリス達はスミカの言う所のネスト残党と戦う、という方針を決定した。既に命を狙われているし、相手は手を引いたからといって見逃してくれないだろうとウルスラも覚悟を決めている。回収したパーツの売却と補給を行うべくシティへとリグを走らせていた。
その日の晩、スミカは久しぶりにぐっすり眠ることができた。ナインボールに襲撃されて以来、心休まる時はなかったからだ。スミカがアリスと共有することになったベッドで目を覚ました時、黒髪の少女の姿は既になかった。
軽やかな動きでベッドから出て、鮮烈なピンク髪の美女は大きく伸びをした。強化ガラス越しに陽光が差し込む。背が高く健康的な肢体はしなやかで、鍛え抜かれた腹筋が引き締まり、身動ぎで大きな乳房が軽く揺れていた。
バトルスーツを脱ぎ去った、生まれたままの姿でスミカはシャワーに向かった。カプセル型のユニットに入り、たっぷりと熱いお湯を浴びて寝汗を洗い流す。
ドアがスライドし、ダイニングに入ったスミカはベーコンの焼ける音と食欲をそそる薫りに出迎えられた。
「おはようスミカ」
タンクトップにカーゴパンツ姿のアリスはエプロンを付けている。黒髪は一本結びに纏められていた。
「おはようアリス」
片手を腰に当てたポーズでスミカは挨拶を返した。料理をするアリスの姿を見ると二年前の日々を思い出す。少し胡椒を効かせ過ぎるところがあるが美味しく、レーションやサプリ中心のスミカにとっては有難かった。
「おはよう二人と――――うわぁぁぁぁ、なんですっぽんぽんなのスミカ!?」
背後でドアが再びスライドし、金髪のメガネ美女の悲鳴が響いた。
「ごめんなさい! いつも朝はこうして過ごしているものだから!」
その時、スミカは自分の一糸纏わぬ姿とアリス、ウルスラのしっかり衣服を纏った姿を見比べた。ウルスラに見苦しい姿を見せてしまったと思いスミカは恥ずかしくなった。咄嗟に両腕で胸と股間を隠し、唯一持ち込めた衣類であるバトルスーツを取りに部屋に戻ろうとする。
「私の方こそ大声を出してごめんなさい! 服なら貸すわ! そこで待っていて!」
風のようにウルスラは自分の部屋に戻る。あんな途轍もなく綺麗なピンク髪の美女が裸族だなんて!とウルスラは感動を覚えていた。
「もしかして私、だらしなかった?」
アンバークラウンのガレージで共同生活をしていた時、アリスは何も言わなかった。
「いいや、全然」
朝食を皿に盛りながらアリスは淡々と答えてくれた。
こうしてスポーティーなトップスとショートパンツを貸してもらったスミカ。98cmの凛々しく上向きなヒップでショートパンツは張り詰め、今にも裂けそうだ。
インナーはGストリングなので破れることはないが、スミカは貸してもらった高級ブランドの服をダメにしないよう慎重に動くのだった。
シティで資金調達と補給。ついでに内装の更新を終え、再びナイトメアは出発した。
全てが順調に運び、時刻は午後二時。
アリスはスミカから提供されたキルシュバウムのデータとシミュレーションで何度も戦い、今は休憩中だ。
黒青色の愛機のコクピットで、死神少女が寛いでいると艦橋のウルスラから通信が入った。
「どうした」
ウルスラの次のセリフは予想できるので、ACのメインジェネレーターに火を入れ、慣れた手つきで起動プロセスをこなす。戦闘出力まで上がったジェネレーターがコクピットにその鼓動を響かせ始めた。
『緊急の救援依頼よ! 報酬は二万コーム。依頼人はノーラ・シティに変異型インフルエンザのワクチンを輸送している運送会社、北東120kmの地点を輸送リグで移動中、GARMSのAC部隊に追跡されている状況』
レイヴンの判断に必要な情報だけをピックアップして金髪のメガネオペ子は伝えている。
『引き受ける。詳細を頼む』
即答した時、デュラハンの集音センサは格納庫に響く硬質な足音を拾った。
「私にも手伝わせて!」
バトルスーツ姿のスミカだ。一人でも飛び出して行ってしまいそうな勢いだった。
筋力強化機能を使った俊足で超高性能ACキルシュバウムまで駆け、狭苦しいコクピットに滑り込む。ライディングシートに颯爽と跨った。
青い装甲が尻間に食い込む、白銀に包まれた肉厚な尻を奥に引っ掛らない、ギリギリの高さに掲げて突き出す。
ピンク髪の戦乙女は真剣な眼差しでウルスラが送ってきたミッション要項を確認する。
「正義の血が疼く、か」
二年前と変わらないスミカの姿が、なんとなく嬉してアリスは笑った。黒髪の美少女の容姿に相応しい、無邪気な笑顔だった。
ヘッドセットを装着してオペレーターとしての準備を完了したウルスラが詳細を伝え始める。
救援要請を出しているリグはウィルスが蔓延し非常事態に陥ったシティにワクチンを届けるべく急行している最中に、独立治安維持機構
ワクチンの製造元がムラクモから独立した製薬会社であるため、強化人間技術との関連ありと難癖を付けられ、停止と臨検の受け入れさらに、ノーラ・シティが必要としているワクチンの接収を要求してきた。
一刻を争う事態での不当な命令としてこれを突っ撥ねリグを最高速で発進させ、ガルムズの部隊に追撃を受けている状況だ。
複数の有力企業の出資で設立されたガルムズは、企業間抗争の深刻化防止と治安維持のための超法規的機構だが、実態としては対立する企業や組織への攻撃に使われる尖兵だ。暴走強化人間の鎮圧や対テロ任務では実績を上げているが、同時に強引なやり方で犠牲を出して批判されていた。
今回の依頼人が運んでいるワクチンを製造した企業はガルムズに出資していない。対立企業の妨害が目的と見ていい。クローム、ムラクモ、そしてネスト亡き後の世界ではガルムズと非ガルムズという対立構造が生まれつあった。
『スミカ・ユーティライネン、キルシュバウム発進します!――――くぅぅぅっ!』
ハッチが開くとキルシュバウムが真っ先に飛び出した。従来のACより遥かに高速なブーストだ。耳をつんざくような轟音が格納庫に響き渡った。加速によるGはバトルスーツを着ていても過酷だった。ライディングスタイルのスミカの白銀色に被膜された巨乳が弾み、我知らず豊満なヒップに力が籠って引き締まる。
「内装を新型に更新しておいて正解だったな」
アリスもデュラハンを発進させ、キルシュバウムの背後にぴったりとくっつき、スリップストリームを利用して加速することで距離を保つ。
二機は荒野を翔け、山間部に入った。救援対象のリグは当初からガルムズやその他の略奪者に備え、身を隠すように進んでいたのだ。
「なんて卑劣な!」
スミカはズームアップされた地点で起こっている蛮行に怒った。ガルムズ部隊の灰色塗装された旧クローム製ACヴェノムが銃を向ける先には、武装解除の上で整列させられた若い女性達の姿があり、その周囲には破壊されたMTの残骸が人数分転がっている。足元には最近名前が売れてきた警備会社のロゴが入った青色のパイロットスーツも脱ぎ捨てられてる。
輸送リグの護衛に雇われた十代後半から二十代前半の女パイロット達は、白色のハイレグインナースーツだけの恰好にされ、両手を後頭部で組まされている。屈辱的で憐れな姿にされ、瑞々しい肌が恐怖による汗で照かっていた。
人質を取られたリグのパイロット達は停止を決断した。どちらにせよ、護衛なしでは逃げきることができない。
「許せないっ!」
人の良心に付け込んだ、ガルムズのやり方にスミカは正義の怒りを燃やした。キルシュバウムは右腕に装備したガトリングレーザーキャノンを連射してヴェノムを次々に撃破する。大型兵器用の武装を転用しているため、ACの防御スクリーンと装甲は殆ど役に立たない。地を抉るように着地し、サイドブースターを噴射して桜色のACは反転。疑似反重力で空中に浮かぶ重MTを左腕のレールガンで撃墜した。
スミカの突撃と同時にアリスのデュラハンは人質の解放を行った。ブースターを切り、地表を滑走。ネスト規格フレームで構成された黒青色のACはスナイパーライフルを構える。
「面倒な仕事を増やしてくれる」
神経を使う狙撃が苦手なアリスだが下手ではない。放たれた150mmAPFSDS弾はマッハ6の初速で獲物に牙を剝き、アリスの意志を遂行した。ヴェノムのコアを打ち抜き、三機を一瞬で撃破する。
「っと爆ぜるな爆ぜるな」
損傷による漏電でジェネレーターが誘爆しつつある機体が一機あり、足元の人質に爆発の被害が及ばないように、急加速で駆け付ける。
勢いをつけて蹴り飛ばす。ヴェノムは空中で爆発四散した。
『こちらは救援要請を受けたレイヴンだ。このチンピラどもは任せてくれ』
人質とリグに伝わるよう、オープン回線でアリスは告げた。
残りの敵戦力もすぐに片付いた。リグとの距離があるので、パイロットスーツを取り戻した女パイロット達をデュラハンの掌に載せて運ぶ。彼女達は描かれたエンブレムで救援に駆け付けたACの正体に気付き声を上げたり、驚いたりなどしていた。
キルシュバウムが傍で警戒態勢を取っているリグまでACを歩かせながら、アリスは転がっているヴェノムの残骸を見やる。真紅の瞳には嘲りと嘆きが浮かぶ。
「こんなのがオレ達レイヴンの替わりか。なんか泣けてくるな」
スミカによれば複数の企業をスポンサーとする独立治安維持機構ガルムズは実際にはネスト残党が興した組織であり、独自の意志で動きイレギュラーを生み出すレイヴンを滅ぼし、新たな秩序の護り手とするためのものらしい。最終的にはファンタズマの後継を配備し、その絶大な力で世界を支配することを目論んでいるのだと。
ガルムズは軍事力を背景にあちこちの都市で幅を効かせており、アリスも何度かトラブルになってその度に向こうに痛い思いをさせてやった。まさかかつて自分が滅ぼしたウェンズデイ機関が関わっているとは。
『アリス』
『んっどうしたウルスラ?』
『まだ私にはスミカの言っていたことは全部信じられない。けど、改めてガルムズがろくでもない組織だって判ったわ』
ウルスラはガルムズが行った蛮行への怒りに震えていた。市民を救うためにワクチンを運ぶ業者への攻撃、護衛を務めた女性達への辱め。とても許せることではない。
それから、アリス達はガルムズの治安維持活動を横取りする形で各地のミッションを引き受けながら、裏で進めているファンタズマ計画を叩き潰すように動いた。
《大破壊》後、地下を人類生存圏とするべく進められた《百年計画》は紆余曲折の末、地下に謎めいた迷宮を幾つも造り上げていた。その一つにガルムズの兵器試験場があり、アリス達は強襲を仕掛けた。
地下トンネルから試験場に入り込み、データバンクの目の前でアリスのデュラハンは次世代ACと死闘を繰り広げていた。
ガルムズのイメージカラーである灰色で塗装された次世代機はキルシュバウムと同じく単独での最高性能を追求した機種であり、従来のACとは象と蟻ほどの性能差がある上にパイロットの負担をファンタズマ技術による脳チップ化で克服している。
ショットガンとマシンガンによる弾幕にギリギリで耐えながらデュラハンは猛禽の如く襲い掛かる。瞬間移動さながらのクイックブーストをかけて、昆虫めいた外装の有機的な次世代機は突進を回避しようとするが。
「動きが温い!」
アリスはそれを見越し、瞬間的に急加速。高出力ブレードを振って球形防御フィールドを抜き、敵が慌てて後ろにクイックブーストした所を狙ってレーザーライフルを撃ち込む。ブレードで切り裂かれ減衰したフィールドを貫通したレーザーがショットガンに誘爆し、制御を失ったところにデュラハンは蹴りを入れた。
壁に叩きつけられた次世代機のコクピットブロックが粉砕される。損傷のため各部から火花が散ったあと、複眼型アイカメラの光が消え次世代機は機能停止した。
「どうしてこの性能差で倒せちゃうのよアリスは」
アリスは理不尽な強さで真っ向から次世代機を撃破して、曲がり角に隠れていたウルスラを恐怖させた。データバンクへのハッキングと弾薬補給のため、兵装コンテナを背負った作業用MTキンジェロに乗り込んでいる。
金髪メガネのオペレーターはぴったりとした白色のパイロットスーツでグラマラスなボディラインを剥き出しにしている。狭いコクピットでは異性を引き付ける豊満な胸と臀部が邪魔になり、ウルスラを苦しめていた。
『弾くれ。補給前だったから苦戦しちまった』
デュラハンの装甲には戦闘の傷が目立っていた。額を汗を拭うとアリスは素早く損傷箇所へのエネルギー供給をカットしつつアクチュエーターの再割り当てを行う。
『りょっ了解』
ウルスラはキンジェロが背負ったコンテナを一つ落とし、アームを操ってデュラハンに弾を補給した。
補給を受けつつ、アリスは燃え上がる次世代機の残骸を睨んだ。
(こんな粗末なチップにされるとは無念だったろうな)
ファンタズマ技術によって機体に埋め込まれたパイロットの意志は加工され、人格が殆ど消去されているをアリスは感じ取った。それが原因なのだろう。自律制御MTと変わらない単調の動きであったため、次世代ACの性能を発揮できていなかったのだ。
キンジェロから這い出したウルスラは白いぴっちりスーツが張り付いたデカい尻を揺らしながらデータバンクに踏み込んだ。銃を構え、意外と様になるクリアリングで侵入しガルムズを追い詰めるために必要なデータを抜き出して戻ってくる。
『こちらスミカ、施設動力炉への破壊工作を完了。途中の試験場でファンタズマを二機撃破したわ』
『そいつは大したもんだ』
『強力なACに乗っているんだもの、前みたいに肝心な所をアリスに頼り切ったりしないつもりよ』
スミカはキルシュバウムの性能を遺憾なく発揮してかつてスティンガーが一体化した機体と同性能のファンタズマを二機撃破し、動力炉を暴走させた。建造ドッグにはファンタズマが複数機駐機していたが、ここで纏めて吹き飛ばせば、敵にとって大きな損害になるはずだ。
「はぁっ――――はぁっ――――っ!!」
激しい戦闘でスミカは消耗して全身に汗を掻き、ピンク色の艶やかな髪が濡れている。バトルスーツに籠った熱による蒸れは凄まじく、できるのなら今すぐにでも裸になってシャワーを浴びたいほどだ。隙間のようなコクピットに漂う匂いも濃厚で他人に嗅がれたら途轍もなく恥ずかしい。
『脱出します!』
最後の加速のためにスミカは全身に力を入れ、腹筋を引き締めた。最高速度で試験場を飛び出したキルシュバウムの背後で動力炉の爆発による青いプラズマの炎が大地を穿つ。遠くの崖に降り立ち、デュラハンと合流する。キンジェロはACの腕に抱えられていた。地面に降ろされるとコクピットを開け、疲れ切ったウルスラが出てきた。
アリス一行の三か月の活動でガルムズが大きな損害を受けたのは間違いなかった。ネストから持ち出した天文学的なコームを注ぎ込んだ施設や兵器は次々に破壊され、人気取りの治安維持活動でも目立った成果は上がらず、ガルムズを非難するシティや企業の勢いは日に日に強まっている。
スミカ達は掴んだ情報を元に最後の一押しをする段階になったわけだが、ここで彼女達にも問題が起こった。
「お金がないわ」
勝利を祝う豪勢な夕食の席でウルスラが静かに告げた。用意した軍資金は情報収集や大戦力を有するガルムズに対抗する大量の武器の購入、そして運用コスト莫大なキルシュバウムに消えていった。途中、ガル・シティ下層で繁殖する生体兵器バグの根絶などの大仕事で大金を稼いだが、それでも足りない。
「けど安心して、一攫千金のチャンスがあるわ」
端末を突き付けるウルスラ、画面を見つめるアリスとスミカ。
巨大な歓楽街を抱えるアーダン・シティではアーマードコアと実弾を用いた大規模バトルロワイヤルの参加者を募集しており、その申請画面だった。
「これにアリスが出場してコームを稼ぐ。私達向きのやり方でしょ?」
「あのウルスラ……この大会は実弾を使う危険なもののはずだけど」
優雅な所作での食事を中断したスミカの心配を余所にアリスはローストチキンを野蛮に噛み千切ってから一言。
「判った。出るぜ」
危険な大会への参加に二つ返事で了承するアリス様であった。