【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜   作:その辺の残骸

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昔馴染み『ネスト・ランカーズ』

 

 アリス達のキャリアーリグ、ナイトメアはアーダン・シティの大型駐機場で他の車両と一緒にしばしの間休息することになる。

 

 パンクな白ゴスロリを着込んだ黒髪の美少女(狂暴)の先導でウルスラとスミカはシティに降り立った。迎えの車に乗り込み、ホテルに向かう。

 

 バトルロワイヤル参加者は開催までの三日間、地下複合都市上層の五つ星ホテル『ヴァルハラ』にて最高のもてなしを受けるのだ。

 そこではドレスコードが完全免除され、あらゆるファッションが歓迎される。この場に集まった戦士達の多種多様な装いがバトルロワイヤルの前夜を彩る、とのことらしい。

 

 

 

「しっかし派手だねぇ」

 

 絢爛豪華、かつ広大なパーティーホール。黒髪の死神少女アリス・ジャバウォックはそこに咲く一輪の華になっていた。

 

 着いて早々、盛大な宴が催されたのである。出席者はこれからバトルロワイヤルで殺し合う二百人ほどとその同伴者。つまり、ウルスラとスミカも出席しているわけだ。

 

 先ほどのアリスの独り言はパーティーそのものの華美さだけでなく、ウルスラとスミカの選んだドレスへの感想でもあった。

 

 ウルスラがホテルでレンタルしたドレスは日系企業ムラクモの元エリート、そしてウルスラ自身に日系の血が入っていることも示すようだった。朱色の艶やかな着物、しかも脇腹まで大胆なサイドスリットが入ったもので着飾っているのだ。

 

 前後に垂れた布をひらひらとさせ、肉感的な太股を剥き出しにしながら、金髪メガネ美女は長い脚でホールを闊歩していた。とても付き添いとは思えない威風堂々ぶりにアリスは感心した。

 

 この機会に新しい恋人探しをしているウルスラに対して、スミカは真面目だ。参加者に話し掛け、情報を集めている。

 

 横から見れば殆ど裸同然のスリットが入ったチャイナドレスを纏う、長身で色気のあるスミカの肢体はその役目を助けていた。下半身は前も後ろも細布が垂れているだけで、スミカのお尻は半分近く白い肌を披露している。

 

 スミカ自身としては動きやすいという理由一点でこの金色の装飾が施された白いチャイナドレスを選んでいた。着替えてアリスの前に姿を見せた時には、前垂れが捲れるのも厭わず、片脚立ちの構えからの演武を披露してくれた。

 

 華麗な演舞で、前後の垂れ布は大胆にはためいていた。一応、前と後ろだけ隠すタイプのインナーでセンシティブな部分をガードしていた。なんと防弾なのだという。ちなみに同じく腰回りが丸見えのウルスラもそのインナーを張り付いてる。

 

 アリス自身は漆黒のイブニングドレスを纏っている。

 過激な露出はないが、透き通るような白い肌と黒の対比が少女自身の美貌と相まって人を惹き付けた。

 

 そんな視線など意に介さず、アリスは見つけた昔馴染みの背後に忍び寄る。

 

 

「どの子も美味しそうね」

 

 胸と腰だけ覆ったような服装で、妖艶に引き締まった肢体を剥き出しにした美女は残忍に嗤う。この艶女はリンクスミンクスの名で通っている、かつてのネストのランカーであった。

 スラッグガンを背負った四脚ACプリティキトゥン。その可愛らしい名前とエンブレムに反して、情け容赦ないサディストである。

 

 参加者達の様子を窺いながら、虐め甲斐のある相手を物色している最中だ。挑発的に揺れるリンクスミンクスの尻が白く繊細な手に叩かれた。

 

「ふざけた真似をしてくれたのは誰かしら?」

 

 妖艶な笑みに怒気を滲ませながら振り返るリンクスミンクス。そこに立っているのは黒いドレスがよく似合う黒髪の少女だ。見た目だけなら清らかな乙女。しかし浮かべる笑みは好戦的な野獣のそれ。

 

「ようっ」

 

「あら、アリスだったの。なら許してあげるわ。その代わりバトルロワイヤルではお手柔らかにお願いね?」

 

 怒気を取り下げ、昔馴染みの少女と言葉を交わす。後半のお願いは割と本気である。格上は相応に恐れ、上手く避けてきたからこそ、この邪悪な雌山猫は今日までレイヴンとして名を上げてきたのだ。

 

「それは約束できんね。状況ってもんがあるからな」

 

 言ってからアリスはジンジャーエールを一口。

 

「ふふ、恐い恐い。なら、せいぜい貴女のデュラハンに近寄らないようにするわ。

 それと向こうにファルコンがいるわ。挨拶してあげたら?」

 

「そうする。それじゃまたな」

 

 アリスとの遭遇で大会当日が不安になり始めたリンクスミンクスを置いて去っていく。リンクスミンクスは独りになると、頂点捕食者の貌から臆病な雌猫に早変わりしてそそくさとトイレに向かっていった。

 

 絶対的なエースと持て囃されながら、突如現れたレイヴン、エーアストに呆気なく破壊されたロスヴァイセやバルタザールのようにはなりたくないリンクスミンクスであった。

 

 

 言われた通り、挨拶することにした。ファルコンはネスト末期に名を上げた若いレイヴンだ。自分のエンブレムを持たず、ヴィジランティと名付けたACにネストのロゴを貼っている変わり者でもあった。

 

「よう、アリス! 久しぶりだな」

 

「ファルコン、なんかちょっと太ったな」

 

 洒落たタキシードを着込んだ茶髪の青年がファルコンだ。少し太っているのは結婚したことによる幸せ太りで間違いない。

 

「結婚したってのにこんな戦争ごっこに参加したのか?」

 

 揶揄うアリスをファルコンは大袈裟な仕草で否定した。

 

「いいや。今の俺は堅実路線さ。警備の依頼で来たんだ。他にも懐かしい顔ぶれが当日の会場を警備することになってるぜ。

 このタキシードだって、三日月の野郎に見繕ってもらったんだ。話は合わねえが、センスは抜群だぜあの野郎」 

 

 同じくネストランカーだった三日月は紳士な人物だが、冷酷でさえあるプロフェッショナルであり依頼人からの信頼も厚い。あの伊達男なら警備にうってつけだろう。

 

 警備のレイヴン達のリーダーには、今やプロチェスの賞金が主な収入になっているホワイトクィーンが任命されている。

 

 近接戦闘に長けた剣豪の一人であり、同時に優れた戦術家でもある彼女は露出の少ない上品な白いドレス姿だ。ファルコンと話し込んでいるアリスを見つけると軽く手を振ってくれた。

 

 ホワイトクィーンは純白の髪におっとりした美貌。丸いメガネをかけた優しく美人なお姉さんだが、腰に帯びたサーベルは極めて剣呑。生身での腕前も衰えていないようだ。

 

「頼もしいな」

 

 ホワイトクィーンに笑顔を返しながら、アリスは呟く。

 

「ああ、しっかし相変わらずクィーンの姉さんは怖えや。

 俺達が声を張り上げるよりルーキーどもの頭を抑えてくれるだろうけどよ」

 

 広大な会場の警備にもレイヴンが多数呼ばれており、ネスト崩壊後にレイヴンを名乗り始めた新世代も加わっている。ホワイトクィーンの指揮下で戦った経験のあるアリスは、確かにリーダーに相応しいと考えた。

 

 戦術に長けているだけでなく、統率力があり血気盛んな輩を剣技で黙らせることもできる人物だからだ。

 

「エーアストとハスラーワンも居たら面白いんだが。まっそもそもあいつらの素顔は解り様がないんだが」

 

 不意にファルコンが口にした名前に、アリスはスミカから教わった真実を話すべきか迷った。

 

「じゃあな、健闘を祈ってるぜ」

 

「ああ」

 

 しばらく話してからファルコンは手にしたグラスのシャンパンを飲み干し、去って行った。それからもアリスはパーティーを気儘に楽しみ、酔い潰れたウルスラをスミカと二人で担いで部屋に戻った。

 

 

 

 開催日当日。早朝からガレージでアセンブルの最終確認と調整が行われている。

 

 そこは整備員の独壇場であり、オーダーを出したACのパイロットにできるのは待つことだけだった。

 

 アリスが今回の一攫千金大作戦のために発注しておいたパーツは馴染みのアルゼナ修道院から無事手配され、アセンブルが行われている。

 

 アイザック・シティ下層部にあるアルゼナ修道院は兵器ブローカーを担っており、一糸纏わぬ姿でシティを彷徨っていたアリスが一時期世話になった場所だった。

 

「デュラハン、アセンブル及び全チェック完了です」

 

「ありがとうございます。素晴らしい仕上がりですね、これならば最後まで生き残ることができます」

 

 アーダン・シティの整備員から報告を受けるアリスは黒を基調とするブレザー制服にベレー帽を被っている。

 

 ぴしっと着込んだミリタリー調の装いであり、アリス自身丁寧な口調で生真面目な軍人少女になりきっている。そういう気分なのと、整備員相手のウケを狙っていた。

 

 実際、老若男女問わずクリティカルだったようで、大会を前にデュラハンは完全に仕上がっている。

 

「いっいえ仕事ですから」

 

 黒髪の制服美少女の凛々しく可憐な美貌に赤面しそうになり、若い整備員は慌ててその場を後にした。

 

 デュラハンの両手の新武装を改めて見つめるアリス。右腕部に次世代AC向けの大口径ライフルを装備している。威力、弾速ともに優れ弾道も安定している強力な武装だ。

 

 左腕部にはクローム・マスターアームズ製ヴィクセンから転用したレーザーブレード内蔵型シールドを装備してある。仕込んであるブレードはLS-99-MOONLIGHTが二基。背中には小型ミサイルポッドとレーザーキャノン。

 

 

 発進許可が下りるまでアリスはデュラハンに乗り込んで待機した。

 

『発進どうぞ、アリス・ジャバウォック選手』

 

『了解。デュラハン、発進します』

 

 時間がくると発進許可が下り、アリスは機体を前進させて地上へのリフトを目指した。

 リフトで上がった先、荒野の遠方に見える巨大な灰色。大破壊以前の都市がバトルロワイヤルの戦闘エリアとなる。

 

「んっ、いい噴き上がりだ」

 

 フットペダルを踏み込むと、滑らかにブースターが可動して噴射を開始する。入念に施された整備をアリスは実感した。

 ブースターを吹かして低空飛行するデュラハンの他にも多数、参加者の乗るACが戦闘エリアを目指している。

 

 開始まで火器管制システムをロックするのがルールだ。殆どの参加者は大会開始までに潜伏地点を探し出し、そこに潜む。しかし、アリスは違った。

 

「あいっかわらず命知らずね」

 

 地下大型駐機場、ナイトメアのブリッジ。ウルスラはデュラハンをビルの屋上に待機させたアリスに呆れている。

 大会中のオペレートが許可されているので、サポートに回っているわけだ。もし万が一ガルムズの介入などの事態があればすぐに動き出せるよう準備もしてある。

 

 胸部臀部ともに豊満な金髪のナイスバディが、ぴっちりとした白いパイロットスーツに包まれ、シートに跨って豊かなお尻を突き出している。

 

 

 格納庫ではナイトメアの護衛を担うスミカが支度をしていた。ジーンズを脱ぎ捨て、素早く黒いボディスーツを引きはがす。

 

 一糸纏わぬ姿になって早々に白銀色に輝くアンダースーツでぴっちりと裸体を覆い、青に赤のアクセントが入ったハードシェル・ユニットを装着する。

 ピンク髪のヴァルキリーとなったスミカは居住性最悪なキルシュバウムのコクピットに滑り込み、肉厚な尻を突き出すライディングスタイルで待機した。

 

『アリス、通信は聞こえている?』

 

 開始一分前になり、ACとの通信許可が下りる。ACとのデータリンクに加え、多数放たれたカメラドローンからの中継映像の分析がオペレーターの利用できる情報だ。

 

『ばっちりだ』

 

 黒髪の死神少女がベレー帽を被り直しながら返事をした。既に周囲のACが身を晒す自分を狙っているのを肌で感じている。

 

 彼らはネスト崩壊後のニュービー達であり、【大鴉を戴く首無し騎士】デュラハンの死の伝説を知らなかった。

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