【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜 作:その辺の残骸
バトルロワイヤル開始直後アリスは狙い通り、四方八方から攻撃を受けた。
「ふぅっ――――おぉっと!」
フットペダルを踏み込み、軍服風ブレザーの死神少女が黒青色のACをかっ飛ばす。最大噴射による初動は弾き飛ばされるような動きになった。
急加速の激しい慣性を浴びてもアリスは獰猛に笑い、弾幕を切り抜けていく。同時に抜け目なくレーダーを確認する。
光点は依然として四つ。良い準備運動になる。
コアの迎撃機銃で進行方向上の邪魔なミサイルだけを撃ち落とし、デュラハンはその爆炎の中を通過。
「デュラハン、ミサイルジャマー最大出力!」
アリスは音声入力でミサイルジャマーを起動した。シーカーを麻痺させることでミサイルを無力化。
驚嘆する敵に対してデュラハンはミサイルとレーザーキャノンで応戦する。
小気味よい電子音がロックオンを告げ、黒髪の軍服風コス少女の白い指がトリガーを引く。
ミサイルポッドが開いて二発の小型ミサイルを解き放ち、レーザーキャノンは砲身で収束したエネルギーを撃ち出した。
発射されたミサイルのターゲットになった敵ACはブーストしながらの回避運動を取った。
小刻みなジャンプでミサイルの軌道から外れようとする、その動きは基本に忠実ではあるが回避行動に全力を傾けるのは悪手だった。
もう一機の獲物。レーザーキャノンを避けようと逆関節機は、脚部の特性を活かして高くジャンプ。
しかし、その動きが裏目に出て高出力レーザーに吸い込まれるように被弾。対エネルギー重視の装甲と防御スクリーンのおかげでギリギリ破壊を免れながらも、パニックに陥って落下する逆関節。
攻撃後も降下を続けるデュラハンは機体を傾けながら旋回し、ビルを盾にして残る二機の追撃を防いだ。
四機のうち最も火力が高く、パイロットも並みよりは腕の立つタンク型が投射する火力はビルを崩し、瓦礫を路上に散乱させるに留まった。
アリスはミサイルを振り切り安堵したACをまず潰す。デュラハンが大口径ライフルを二発射掛ける。
高初速弾は目標の頭部パーツを吹き飛ばし、続いてコアに着弾。高度を取って撃ち下ろしたこともあり、装甲と防御スクリーンが意味をなさない威力を発揮した。従来のACを有象無象として薙ぎ払う決戦兵器をコンセプトとした次世代型ACの武装だけある。
そのまま、流れるように次の獲物に襲い掛かる。錐もみ落下する逆関節に向かってブーストの最大噴射をかけた。瞬間的な高出力ブーストでデュラハンを跳ねさせてから、逆関節に蹴りを見舞う。
「せいっ!」
蹴り飛ばした逆関節ACが、ちょうど曲がり角から姿を見せたタンク型ACを直撃する。重い激突音を響かせ、衝突した二機が道路上でひっくり返った。
さらに敵機二機を纏めてレーザーキャノンで火葬する。高出力レーザーは着弾地点の周辺の大気をプラズマ化させ、それによる爆発がAC二機を包み込む。アリスの攻撃が引き金となり、さらに強い爆発が転がった二機の内側から起こった。炎が爆ぜ、黒煙が風に躍る。
あっという間に三つの敵性光点を消滅させ、デュラハンは残るACと対峙した。
最後の一機は新興企業製の重量級ACで、分厚い装甲に覆われた機体を脚部大推力ジェットホバーで浮かせていた。
『ひっひぃ!? 許してくれぇ!』
デュラハンの紅いアイカメラに睨まれ、戦意を喪失した重量級のパイロットは背を向けて逃走しようとする。
『殺す気で仕掛けてきたのですから、見逃すことはできません』
アリスは軍服風コス黒髪美少女のキャラを保ちつつ一気に踏み込んだ。
一瞬で至近距離に達したデュラハンは、新型レーザーブレードが数多く開発された現在であっても桁違いの出力を誇るブレード二基を発振。
試し切りとして振るったシールド内蔵ブレードは見事、目標の重厚な装甲を引き裂いた。
「こいつは凄いや。想像以上だ」アリスは特注したレーザーブレードの威力に大満足である。
爆発に巻き込まれる前に上昇。次のエリアに向かってデュラハンを飛行させながらナイトメアに通信を入れる。
『流石アリスね。まだ二分も経ってないわよ』
全参加者の撃墜数が表示されているが、バトルロワイヤルは開始されたばかりなので大半が0機。
開始早々四機撃墜というスコアは八年間続く大会ではじめてのことで、観客はおろか運営者達まで騒然となっていた。
『今の間に情報を集めておいたわ』
『おっ助かるぜ』
リグのメインシートに跨るウルスラはライブ映像から情報を抽出し、デュラハンのモニターに表示してくれた。
周辺エリアのACの情報、特に脅威度が高いパイロットの乗る機体をピックアップしてある。この辺りの手際はウルスラも流石というところだ。
『5-6に向かう。随時情報くれウルスラ』
『はいはい。とりあえず終了時間までに二十機を目標に撃破してね』
モニターに映った戦況分析と勘を併せて判断するアリスだった。
このバトルロワイヤルでは撃破数と生存時間に応じてスコアが付けられ、最終的な賞金が決まる。
戦闘を激化させるために、撃破したACのスコアは撃破者にそのまま加算されることになっていた。
多数のACを撃墜し、なおかつ消耗している者を落としてからリタイアすれば、それだけで多額の賞金を得られるわけだ。そして五機撃墜というだけでも相当なコームが支払われる。
四機という撃墜スコアを抱えたアリスが消耗していると踏んで、あるいは強者と死合うべく複数のACがデュラハンに接近していた。
『予想通りの展開ね』
『ああ。やりやすい流れだ』
黒髪の完璧な美少女の貌に微笑みが浮かぶ。
アリスとしては向かってくる相手だけを倒して目標数に辿り着きたいので、この展開は喜ばしい。
死の嵐の中心となり、アリス・ジャバウォックのデュラハンは向かってくる敵を切り刻んでいく。
四脚ACプリティキトゥンは幅の広い道路を疾走し、滑るような急カーブでバズーカを回避。大口径弾はビルにめり込み、建物を揺るがした。
滑走するプリティキトゥンは身を隠した建物の陰から飛び出ると、山猫の瞬発力で続く攻撃を避けて敵との距離を詰めていく。
バズーカで武装したACは砲口を向けるが、弾は発射されない。もう一発も残っていないからだ。
『ばっ馬鹿な! 時代遅れのレイヴン如きにこの俺様が! せっかく親父がくたばったってのにぃ!』
『はい、残念でした~♪――――とっとと死にな』
リンクスミンクスは目標の真横で背部スラッグガンを発射した。至近距離で炸裂した散弾は装甲を穿つだけでなく、敵を衝撃で吹っ飛ばした。
無様に転んでいるACに背後から散弾を見舞って追い打ち。急速に後退しつつ武器腕からレーザーを浴びせた。
高速で駆け巡って敵を翻弄し消耗させてからトドメを刺す。それが妖艶さと残忍さで知られる金髪の女レイヴンのやり口だった。
レーザーによって爆発を起こし、炎上したACを見下ろしてリンクスミンクスは嘲笑う。
ACに乗る際は普段の素肌の大部分を露出した服ではなく、ぴったりと体に密着するパイロットスーツを身に着けている。
透けるほど薄い、光沢のある紫色の保護被膜と流麗な漆黒の装甲によるスーツだ。肉体の妖艶さを強調しておバカさん達を惑わす、リンクスミンクスのお気に入りである。
『遊び過ぎだぞ、リンクスミンクス』
タンク型ACフェンリルから窘める通信が入った。
レイヴン、ヴォルフの駆る機体の背後にはガトリング砲弾で蜂の巣になった、悪趣味なカラーリングのACが複数転がっている。
激しい戦闘だったが重装甲なタンクACに損傷らしい損傷はない。ただの力押しではそうはならない。周囲の環境をも利用した巧みな戦術によるものだ。
『あら、ごめんなさいね。ヴォルフの仕事ったら退屈で欲求不満になっちゃった』
『ふん、自分から付き合うと言っておいて』
アリスの参戦を知ったリンクスミンクスは安全路線に転換した。
トイレから戻ってきた直後、同じくバトルロワイヤルに参加するレイヴン、ヴォルフの元を訪ねた。
いついかなる時でも野戦服姿の古参兵はパーティーに出ずに部屋で独り、今回の仕事に関する資料に改めて目を通していた。
そこに顔と体は満点なサディスト女がドアを蹴破る勢いでコンタクトしてきたわけだ。
ヴォルフはアリスと親しく、しかも今回の仕事内容のために、黒髪の死神少女のターゲットから外れる可能性が高い。
だからリンクスミンクスはタンク乗りのレイヴンが遂行するミッションの僚機となったわけだ。
『ターゲットは全て仕留めた。このような下らん殺し合いにもう用はない。退却するぞ』
ヴォルフの参加目的はバトルロワイヤルに参加したギャングなど犯罪組織の関係者を抹殺することにあった。
法で裁けぬ悪党どもはヴォルフが暮らすシティでも幅を利かせており、鬱陶しいのでこの機会に始末することにした。
バトルロワイヤルの参加者であるため頭目や幹部の死亡はすぐに報じられ、現地のシティガードはそれを合図に組織壊滅に動き出していた。
犯罪者達の首にかかった賞金の三割と大会のスコアによる賞金の二つがリンクスミンクスの稼ぎとなる。
予定していた収入から大きく減るが、それでも命には変えられない。
大会終了まで残り時間は半分となった頃、二機は廃都市から退避すべく指定エリアに向かう。
結構なスコアを出しているので移動中を狙われる可能性が高く、警戒している。
退避ゾーンが近くなったが他にリタイアするACの機影はない。
レーダーに注視しながらもリンクスミンクスはドリンクを取り出し、ストローに口をつける。
直後、アラートが鳴り響いた。多数の巡航ミサイルが廃都市に向かって飛来し、緊急展開用飛行ユニットを装備した機影がその後に続いている。
さらに飛び込んできた無線では警備部隊が交戦を開始したと告げていた。襲撃者はかなりの戦力を投じているようだった。
「ちっどこのアホだよ畜生が」
レーダーを睨みながら悪態をつく金髪サディスト美女。
ドリンクボトルを握り潰さんばかりの力が籠り、魅力的な腹筋が力強く引き締められた。
少し離れた場所では巡航ミサイルの炸裂によってビルの破片やガラスが降り注いだ。
アーダン・シティは突然の襲撃で大混乱に陥ってる。その最中、ウルスラはナイトメアを発進させ地上へのリフトに載せていた。
格納庫ではスミカが桜色の超高性能ACの発進準備を万端に整えている。
『襲撃者はガルムズよ! 連中バトルロワイヤルに参加している不穏分子を逮捕するって名目で部隊をぶっこんできたわ!』
金髪メガネの美女オペレーターはHUDバイザーに流れる情報に目をやりながらアリスに伝えた。
ミサイル攻撃で混乱させた後、ガルムズは機動兵器部隊をバトルロワイヤル会場とシティへの進入路に向けて進軍させていた。
さらに後方から空中空母が接近している。最低でも連隊規模の戦力による"強制捜査"であった。
『恐らく彼らの目的はシティの制圧です』
スミカはかつて追い詰められたウェンズデイ機関が執った強硬策からそう推測した。今回は治安維持の名目で居座る腹積もりだろう。
警備部隊はホワイトクィーン指揮の元で襲撃者の一部を撃退、部隊を二つに分けて廃都市とアーダン・シティに向かったガルムズを掃討すべく急行中だ。
シティそのものの防衛は企業軍が中心だがレイヴンなどへの協力が呼び掛けられているので、ウルスラ達はそれに乗っかった。
次世代機が投入されたのならば、キルシュバウムで迎撃するつもりだった。
『地上に上がったらすぐに出撃します!』
『了解したわスミカ。気を付けてね!』
バトルスーツに身を包んだスミカは拳を強く握って決意を固め、前傾姿勢でバイクハンドルタイプの操縦桿を掴んだ。
リフトが止まった。青空と荒野が広がる。既にシティ防衛隊とガルムズの無人ACが砲火を交わし合っている。
『スミカ・ユーティライネン、キルシュバウム、発進します!』
凛々しい声音とともに、ピンク髪のヴァルキリーは出撃。オーバードブーストによる超音速のスピードで突っ込んでいく。
アリスのスコア稼ぎが終わったのは、ガルムズ襲撃の直前であった。
撃墜数が二桁に入ってから交戦した相手が揃ってしぶとく時間がかかってしまったのだ。
ガルムズとの決戦の軍資金に十分なスコアを稼ぎ、撤退していたところで無人AC部隊と交戦することになってしまった。
訳も分からず撃破されている他の参加者を後目に、デュラハンはガルムズが繰り出した旧クローム製無人ACハンター及びハリアーの改修機を切り裂いていた。
『邪魔だっ!』
猛進するデュラハンは曲がり角から新たに出てきた灰色の無人ACをシールドでぶん殴り撃破。
そのまま、敵が出てきた方向に向かって進みつつウルスラに告げる。
『ウルスラ、悪いが合流には時間がかかりそうだ』
『えっ! 何かトラブルがあったのアリス』
『なんとも言えんがヤバい奴が来る感じがする。しばらく返事はできんぜ』
抽象的な事を言い出す黒髪の少女であるが、その口振りの真剣さでウルスラは納得した。
『わかったわ―――――とにかく生き延びてよね、約束よ!』
『ああ。そっちもな』
ぴっちりしたパイロットスーツに乳袋を形成した巨乳を弾ませ、叫ぶウルスラ。
「さて、やるぞデュラハン」
アリスは黒青色のACをターンさせ、急制動をかける。
これまで感じたことのない凄まじいプレッシャーをビルの陰から感じ、最大限の警戒態勢を取った。
少女の胸の鼓動が速まる。それは幻影のように突然、姿を見せた。
鋼色のアーマードコア、中量二脚だ。標準的なパーツで構成されたフレーム。
マシンガン、レーザーブレード、ミサイル、グレネードキャノンでバランスよく武装している。
アリスは思わず笑みを零した。
――――ACを確認。アンファングです
レーザーブレードを発振したデュラハンの頭上。
飛び上がった鋼色のACがグレネードキャノンを展開した時、戦術コンピューターがその名を告げた。
アンファング。二大企業を壊滅させレイヴンズ・ネストを消滅させたレイヴン、エーアストの乗機。ナインボールを打ち砕いたイレギュラー。すべてを真っ黒に焼き尽くす力を振るう者。
「こんな所で会えるとはな。初めましてだな、エーアスト!」
レーザーブレードを抜刀したまま、アリスはライフルを敵に向けて放った。
同時にアンファングのグレネードキャノンが咆え、徹甲榴弾が敵を撃つ。
デュラハンの頭上を砲弾が通り過ぎる。アンファングの真横をライフル弾が掠める。
邂逅した二人のイレギュラーは互いの背後で狙いをつけていた敵を攻撃していた。
目標となったのは赤と黒のツートンカラーで塗装されたアーマードコア。左肩に描かれた数字は9。
二機のナインボールは被弾を物ともせず素早く跳び、再びデュラハンとアンファングに襲い掛かった。