【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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4章#21 友達

 SIDE:友斗

 

【ゆーと:というわけで今日は雫と水着を買いに行ってきた】

 

 家に帰ってきてから、俺は大河にメッセージを送った。

 別にわざわざ今日やったことを報告する必要などないのだが、そうでもしないと大河とのRINEのやり取りが先生と生徒かって思うほど、勉強か生徒会の話題になりかねないのだ。

 

 ならRINEのやり取り自体しなければいいと思うかもしれない。が、俺には基本的に送られてきたメッセージにはきっちり返信をする主義なのである。なんかこう、投げっぱなしで終わる会話って気持ち悪くね? まだID交換したての頃、めっちゃレスポンスが早くて雫に驚かれたりした。

 

【大河:水着ですか……】

【大河:やっぱり百瀬先輩たちも海に行かれるんですね】

【ゆーと:も、ってことはそっちもなのか?】

 

 水着の話を前にしてきてたんだし、考えてみれば当たり前ではある。だが大河が海で遊ぶってのは、少しイメージに合わない。せいぜい雫とかとプールに行く程度かと思っていた。

 

【大河:父方の実家が海の近くなんです】

【大河:なので今年は海に行こうかなと】

【ゆーと:奇遇だな。こっちも実家が海の近くなんだよ】

【大河:やっぱりそうですよね。よかったです】

 

 ……?

 なにが『やっぱり』で『よかった』んだ?

 聞き返そうとしていたところ、俺の疑問に答えるようなメッセージが続いた。

 

【大河:雫ちゃんから聞いたんですよ。11日から帰省するんですよね?】

【ゆーと:まあな】

 

 なんだかチグハグだな、と思わなくもない。『やっぱり』な理由も『よかった』理由もイマイチ分からないから。

 ま、RINEのメッセージ一つ一つに意識を割く方が馬鹿らしいか。

 

【ゆーと:大河はいつから帰省なんだ?】

【大河:私は10日からです】

【大河:14日の夜には帰るので、15日の文出会には間に合うと思います】

 

 あぁ、と思わず声を漏らす。

 文化祭出店会議――通称『文出会』。文化祭準備期間の初日に行われるこの行事は各団体が生徒会にプレゼンを行い、企画の実施の可否が決定されるものだ。チアがは生徒会の見習いだしな。可能であれば参加してほしいところだ。

 

【ゆーと:流石はクソ真面目だな】

【大河:百瀬先輩には言われたくありません】

【ゆーと:俺は別に真面目じゃないぞ。その証拠にクラスの文化祭企画の準備も全然進めてない】

 

 どや顔をする熊のスタンプを送ると、

 

【大河:自慢することじゃないですから】

 

 ときっぱり返された。

 冷てぇ……。ま、こんなところも大河らしいけどな。

 

【大河:そろそろ家事をやって寝るので今日は失礼します】

【ゆーと:了解。頑張れよ】

【大河:家事に頑張るも何もないですが、頑張ります。おやすみなさい】

【ゆーと:おう、おやすみ】

 

 時計を見遣れば、割といい時間だ。まぁ夏休みだとこのくらいの時間から頭が冴えてくるんだけど。

 冴えた頭でそろそろ文化祭にも着手しないとなぁ……と思っていると、

 

 ――とぅるるるるるっ

 

 弄っていたスマホから着信音が鳴った。画面を見て、発信主に少し驚く。

 HARUHIKO――即ち、八雲からだった。

 タイミングがよすぎるだろ。一瞬無視してやろうかとも思うが、流石にそういうわけにはいかないので大人しく電話に出る。

 

「あー、もしもし?」

『お、出た! やっほー、友斗! 愛してるぜ』

「……切るぞ」

『いきなり!?』

「それ、どう考えても俺の台詞だからな」

 

 とか言いつつ、電話を切るつもりはない。雫や綾辻が電話の最中に入ってきて……なんてことが起きると困るが、今はリビングで二人してアニメを見ているので大丈夫だろうし。

 

「で、急にどうしたんだ?」

『ん、あーいやさ。ミュージカルの原稿どんな感じかなって思って』

「…………えー、お掛けになった電話番号は」

『これRINEだから。つーか今話してたんだし、無理あるから』

「チッ」

 

 しれっと誤魔化す作戦はあえなく失敗してしまった。

 舌打ちしつつ、俺はパソコンを起動して件のテキストファイルを開く。当然だがそこにはまだ何も書かれていない。まるで未来予想図のように、こいつにはどこまでも可能性が広がって――

 

『その感じだと、全然進んでないよな?』

「……なぜ分かった」

『今ので分からない方が不思議なくらいだっつーの』

「まぁ、そうか」

 

 だよな。俺だって気付くし。

 だがしかし、待ってほしい。ちっとも進んでいないのにも理由があるのだ。

 

 そもそも俺は脚本どころか物語自体書いたことがない。いや厳密に言うと一度だけ書いたことがあるのだが、それは黒歴史なので封印したいレベルのものなのでノーカウントだ。

 だというのに脚本を任され、プロットを書けと言われても無茶な話だと思わないかね? 幾ら俺がハイスペックとはいえ、物には限度がある。

 

 ――などと開き直れたら楽なのだが、実際にそんなことを言えるはずもなく。

 作業が滞っていることへの申し訳なさから、

 

「すまん。俺はこう見えてポンコツなんだ。俺なんかには荷が重すぎたみたいだから、後はネットで調べて外注することにしよう。今ならそれなりに金払えば脚本書いてくれるって人いるし、その支払いは俺がバイトして受け持つから」

 

 と、電話しながらペコペコ頭を下げる始末である。

 電話だから意味ないって分かっていても頭を下げてしまうあたり、俺も日本人だよな。

 

『うわぁ……友斗がそんな風になるのって珍しいな。マジで進んでない感じ?』

「一ミリも進んでない。っていうかどんな方向性にすればいいのかすら分からん」

『なるほどなるほど』

 

 俺がお手上げとばかりにベッドに倒れ込むと、けたけたと電話の向こうから笑い声が聞こえる。

 俺も一緒になって笑いたいところだが、そういうわけにもいかない。8月はもう、目と鼻の先なのだ。

 

 それに、プロットが進まない理由には見当がついている。

 慣れていないっていうのもあるけど、多分一番の理由は――。

 

『なんかさ、伊藤が多分進んでないだろうって言ってたんだよ』

 

 思考の泉に沈み込みそうだった俺を、八雲の言葉が引っ張り上げる。

 伊藤っていうと、あの作詞作曲できる隠れハイスペックギャルか。我ながら覚え方がクソだな。

 

『んで、だったら脚本家と舞台監督と衣装やら道具やらの制作指揮と看板女優の四人で、一回話し合った方がいいんじゃね?ってことになって』

「あー……なるほど」

 

 伊藤、八雲、俺、綾辻。

 その四人で集まるっていうのは、なるほど、合理的かもしれない。

 ありがたいな、とクスクス笑う。

 

「分かった。じゃあ頼んでもいいか?」

『えっ……ああ、おう』

 

 俺が言うと、八雲はなんだか驚いたような反応を取った。

 

「なんだその反応。別に嫌なら無理にとは言わないぞ? 一人でもやれるし」

『い、いや違う違う! 素直だなって思っただけだから』

「……お前、俺のこと馬鹿にしてるだろ」

『いい意味だって』

 

 いい意味、ねぇ……。

 八雲にもそう思ってもらえてるってことは、少しは変わり始めているのかもしれない。

 こっちの気持ちを悟られるのは癪なので冷たく返すが。

 

「じゃあ綾辻にはこっちから連絡しとく。場所とか時間、後で教えてくれ」

『了解。じゃーな、親友』

「…………あぁ、じゃあな」

 

 親友とまでは言えないだろうな、と苦笑する。

 それでも胸を張って友達だと言うために、頑張りたいと思った。

 

 ……まずはミュージカルの脚本を。

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