【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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6章#16 作戦会議②

「さてと。それじゃあ第一回選挙対策会議を始めていきまSHOW!」

「どんどんぱふぱふ~!」

「あの。雫ちゃんはまだしも、百瀬先輩のそのテンションは本当に分からないです」

「うっさい大河うっさい。こういうのはノリなんだよ。なぁ雫?」

「え、普通に私も今のはないなーって思いましたけど?」

「雫ッ!?」

 

 どうも、三人になるといつも一人側になってしまう百瀬友斗です。

 今日も今日とて雰囲気をよくしようとしたら滑ったぜ☆

 ……って俺は何をやっているんだろうか。冷静になると非常に居た堪れないので、げふんこふんと大仰な咳払いをした。

 

「あー、まぁ、あれだ。テンションを上げていくぞー、そうでもしないとあの三人には勝てないぞーっていうメッセージだ」

「つまり恥ずかしくなったからもう触れるな、と」

「一から十まで人の心境を解説するんじゃない」

「てへっ。分かっちゃう女でごめんなさい♪」

「一ピコメートルも可愛くねぇんだよなぁ」

 

 いっそ殴ってやろうかしらん?

 なんてことを考えつつ、本題に戻る。思うところはたくさんあれど、明日からは本格的に選挙活動をしていかなきゃいけないのだ。

 

「えっと……とりあえず、そうだな。会議の前に生徒会役員選挙の流れをおさらいするか」

「あ、助かります。実は私、よく分かってないんですよねー」

「だろうと思った。大河も、分かってるとは思うが改めて説明するぞ」

「はい、お願いします」

 

 俺はスマホのカレンダーアプリを立ち上げて二人に画面を見せ、説明を始める。

 

「今日は10月5日。最終演説と投票は三週間後の金曜日、つまり24日に行われる」

 

 24日に『投票日』と打ち込んだ。

 結果発表は翌25日。ただでさえ憂鬱な土曜授業だが、立候補者の憂鬱度は更に増すわけだ。

 ちなみに、選挙管理委員会は4月に各クラスで選出されている。まぁ選挙管理委員会の仕事はさほど多くないし、気にかける必要もあるまい。

 

「中間テストは13日から16日の四日間。その間は朝および放課後の選挙活動は禁止されてる」

「テスト……うわぁ。相変わらずうちって日程が鬼畜ですよねー」

「まぁな。雫は……勉強は大丈夫そうか?」

「もちですよー! 高校の勉強にもなれましたし、夏休みにも頑張ったので。今回は教えてもらわなくてもいけそうです」

「そっか。ならよかった」

 

 ふと大河と目が合うと、微笑ましげな、けど切なげな顔をされた。

 ん? 首を傾げるが、大河は取り合おうとしない。

 苦い気分になりつつも、今は話に戻る。

 

「で、ここからが大切なんだが……うちの高校の生徒会役員選挙は、ちょっと面倒くさい。来週から週ごとにイベントがあるんだ」

「立候補挨拶と討論会、ですよね?」

「正解だ」

「んー? ねぇ大河ちゃん、それってなにー?」

 

 雫が身を乗り出して大河に尋ねる。

 大河がこちらを見遣ってきたので、説明は任せる、と肩を竦めて伝えた。

 

「えっと。まず立候補挨拶っていうのは、来週――今週になるのかな――の金曜日に行われる行事。文字通り、その日までに立候補してる人と、あとその推薦人が挨拶をするの」

「つまり……他の学校で言う、演説会?」

「うん、そういう理解でいいと思う。公約もそこで話すはずだし……ですよね、百瀬先輩」

「ああ、そうだな。違いがあるとすれば、推薦人は本当に挨拶だけだってことと、各立候補者に与えられてる時間が短いってことくらいか」

「なるほどなるほど。まさに前哨戦! って感じですねー!」

 

 うむ、と俺は頷いた。

 事実、立候補挨拶はその時点での何となくの人気を測るのに役立つ。話している間の雰囲気やその後の評判を聞けばおおよその人気が分かるのだ。

 

「じゃあ討論会っていうのは?」

「その名の通り、討論会。立候補者が参加して、役職ごとに一つの議題について討論をするんだよ」

「へぇ……そんなのもあるんだ」

「まぁ競合してない役職はやらないんだけどな」

 

 俺が言い足すと、ふむふむ、と雫は首を縦に振った。

 討論会は、再来週の金曜日に行われるイベントだ。これも体育館で行われ、大河が話したように役職ごとに一つの議題についてを話す。単なる人気投票ではなく、あくまで素質を測ろうとするシステムなのだ。

 

「討論会は、来週の立候補挨拶に参加した立候補者だけが参加できる。議題は選挙管理委員会が決めるんだが……その発表も立候補挨拶のときだからな。ぶっちゃけこっちは、すぐにどうこうできるわけじゃない」

「なら今は立候補挨拶に集中した方がいい。そういうことでしょうか」

「ん、だな。とはいえそれだけじゃまだ弱い」

 

 大河の発言に、俺はかぶりを振った。

 立候補挨拶や討論会といった行事が生徒会役員選挙に於いて重要なのは事実である。

 しかし――

 

「その辺の行事にだけ集中できるのは、あっちみたいに既に人気と認知度があってこそだ。こっちのメンツを見てみれば分かる。クソ真面目なぼっちに、あざと小悪魔に、面倒臭そうな性格の学級委員長だからな」

「私は別に悪くない気がするんですけどー! っていうか、小悪魔なのは先輩にだけですしぃ」

「俺に対してもあんまり小悪魔じゃないよなってツッコミは置いておいて。雫も大河も、俺たちに人気や認知度がないのは分かってるだろ?」

 

 二人とも、こくと頷いた。まぁ今更確認することではない。

 如月は人気者というわけではないが、現生徒会っていう看板がある。時雨さんと入江先輩の威光も借りているのだから、相当な反発心がない限りは如月に投票するのが安パイになってきてしまう。

 

 では、どうするか。

 

「俺たちは戦い方を考えなきゃいけない」

「戦い方ですか。……私、如月先輩への悪評を流したり、そういう汚い策を使いたくはないです。わがままかもしれませんけど」

「わがままじゃなくて妥当だし、俺がそんなことすると思うか?」

「割と」

「先輩ならしそうですよねー。敵である以上恨みっこなし、みたいな感じで」

「一瞬頭をよぎったのも事実だから反論できねぇ」

 

 なんて言うが、もちろんそんな考えは速攻で却下した。

 如月は如月で、大河のことを考えている。時雨さんたちだって思惑がある。それを無視する勝ち方に意味はないし、何より大河が望まない。

 

「そういう汚いやり方じゃなくて……それよりもっと単純な話だ。得票率51%を目指すんだよ」

「うわっ、なんか先輩っぽい」

「百瀬先輩っぽい?かは分からないですけど。それはつまり、堅実に勝ちに行くような公約を作るってことですか?」

「有り体に言うとそうだが、公約を作る必要はない。むしろ公約を作るのは邪魔だな。実際に話に行って、思いを伝えて、信頼してもらうんだ」

「信頼……」

 

 ぼそぼそと大河は顎に手を添えて呟いた。

 うーむ、イマイチ理解しにくかったかもしれない。

 あのな、と俺は付け足すように言った。

 

「予算の話を出して、それで人気を勝ち取ろうって作戦は確かにできる。時雨さんに頼まれて会計クンを手伝ったこともあるから、俺もある程度の事情は把握してるしな」

 

 でも、と言って俺は声のトーンを変える。

 真剣な声色で、俺よりも遥かに優秀な誰かさんのことを思い浮かべて、続けた。

 

「時雨さんだって会計には詳しい。如月も会計クンを手伝う暇はなかったが、それでも無知じゃない。ってことは、まず間違いなく作戦が被る。そうなったらどうなるかは、分かるよな?」

「……実績がない私の公約の方が、信ぴょう性がないように見えるはずです」

「そう。だから狙う部活が違っていたとしても、作戦が被った時点で勝てない。あっちが行事に集中をしてくれたらいいけど、相手は降伏勧告までしてきたんだ。やれるところまでやってくるって前提でいた方がいい」

 

 正解したが、それで大河の表情が晴れるはずはない。

 

「「それに」」

 

 付け加えた言葉は、雫の声と被った。

 雫を見遣ると、にひー、と悪戯っぽい笑みを浮かべている。呆気に取られていると、俺よりも先に雫が続きを口にしてしまう。

 

「大河ちゃんが自分で会いに行って、なりたいんですって本気で挨拶しに行ったら、きっと思いは伝わるよ。もちろん皆じゃないかもだけど……大河ちゃんのいいところを知ってもらったら、絶対応援してもらえる」

「雫、ちゃん……っ」

 

 大河はきゅっと唇を引き結んだ。

 何かを堪えるようなその表情を見て、俺も頬を緩めた。

 

「ま、そういうことだな。大河は推せる」

「……その言い方をされると、少し複雑なんですが」

「先輩サイテー」

 

 くっそぅ。大人しく黙っておけばよかったかもしれない。

 俺が苦笑すると、大河は意を決したように口を開いた。

 

「でも、ありがとうございます。雫ちゃんも、ありがと。やってみます。直接会って、話して、応援してもらえるように」

「おう」「うん!」

 

 俺と雫は顔を見合わせて、二人で微笑む。

 俺は予め用意しておいたパソコンのファイルを開く。

 

「さてと。じゃあそういうことで、地盤として狙いに行く部活を考えてきたから説明するぞ」

 

 自然と口角が緩んで、楽しいな、と口の中だけで呟いた。

 ああ、本当に楽しい。

 色んな人の思惑がすれ違ってることなんて、忘れたくなるくらいに。

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