【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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7章#27 ネットショッピング

【大河:ということですみません。今日は久々に実家に顔を出しているので……】

【ゆーと:いやそういうことなら気にすんな】

【ゆーと:なら明日でもいいか?】

【大河:大丈夫です】

【ゆーと:了解。なら澪にも確認しとく】

 

 土曜日。

 俺は昼頃、大河とRINEでやり取りをしていた。〈水の家〉ではなく個人でやり取りしている理由は、簡単である。これが雫の誕生日プレゼントに纏わる話題だからだ。

 俺、澪、大河の三人で買い物に行くことに決まってから暫く。

 球技大会も終わったことだしこの週末に行こうと考え、こうして時間を打ち合わせている。三人でグループを作っても話が纏まらなそうなので、俺が仲介役に回った、というわけだ。

 

 それにしても、大河は今日実家に帰ってるのか……。

 入江先輩との関係がよりよくなっている証左だと思うと、嬉しくなってくる。選挙の件以来、大河も入江先輩に引け目を感じず接することができているそうだしな。

 それでも一人暮らしを続けているのは、自立は自立できちんとしていきたいかららしい。まぁ一人暮らしができる環境ならしておいた方がいい経験にもなるだろうし、止めはしない。たまにふらっと寄って掃除してるかだけチェックしに行こうと思うが。

 

 と、それはさておいて。

 大河と話していて大筋の予定は決まった。澪に相談しに行くべく、俺は部屋からリビングに降りることにした。

 

「ありがとうございます」

 

 階を降りると、玄関から澪の声が聞こえた。

 がちゃりとドアが閉まる音の後に、とてとてと澪にしては軽やかな足音が続く。手に持っているダンボールの箱を見て、なるほど注文した何かが届いたのか、と結論付けた。

 

「あ、友斗」

「よう。なんか荷物届いたのか?」

「ん、そうそう。ずっと迷ってたやつ、球技大会で勝ったご褒美に勝ったんだよ」

「ほーん」

 

 自分へのご褒美とかOLかよ、と思うが、まぁ大切なことだしな。

 そういえば選挙対策をしている頃から、やたらとスマホを真剣に見つめているときがあった。何かを買おうとしているっぽかったし、もしかしたらそのときに選んでいたものなのかもしれない。

 

「何買ったんだ? 服ってサイズじゃないよな?」

「ん? アダルトグッズだけど」

「は?」

 

 今、耳に深刻なエラーが生じた気がする。

 なんて?と視線で尋ね返すと、澪は真顔で再び答えた。

 

「だからアダルトグッズだってば。具体的に言うと、ピンクローターとバイブとディルド」

「…………あー。え?」

「もう一度言わせたいの? なに、そういうプレイ? 変態」

「――そうじゃねぇぇぇよ!?  同居者の口から信じがたい台詞が出てきたから現実逃避してんだよ!」

 

 色っぽい上目遣いを受けて、俺は堪らず大声を出す。

 雫が友達と出かけてくれていてよかった。雫がいたら非常に居た堪れない気持ちになっていたことだろう。

 澪はぱちぱちと瞬き、肩を竦めて苦笑した。

 

「そんなに信じがたい? 年頃の女子なら自慰用のグッズくらい持ってて普通でしょ」

「普通……なのか?」

「いや知らないけど」

「知らねぇのかよ!?」

「当たり前じゃん。友達にそういうこと聞けと? 変態」

「そこまでは言ってないし、とりあえず闇雲に『変態』って言えばいいと思ってるのやめろ」

 

 俺は変態ではない。変態なのは澪である。

 同居生活を送り始め、もう八か月ほどが過ぎようとしている。それでもなお一度たりともラキスケイベントは起きていなかったのに、どうしてここに来てこんなイベントが起きるのか。

 こめかみに手を添えて、はぁぁ、と溜息をつくと、澪はムッとして反論し始めた。

 

「そう言われてもさ。実際、ムラムラするんだししょうがないじゃん。好きな人が一つ屋根の下にいて、それでムラムラしないほど私が性欲弱くないよ」

「んなこと、堂々と宣言されてもな……」

「でも事実だし。お兄ちゃんだって私の性欲の強さは分かってるでしょ」

「それは……まぁ」

 

 分かっていないと言えば嘘になる。

 セフレだった頃。一番多いときには週三くらいでシていた。流石にそれだけすると澪もバテていたが、それでもまだできそうな顔だったのだから、性欲の強さは相当だろう。

 いつぞやのホテルでも一人でシてたし、最近も夜中にたまに部屋から声が聞こえてきたりするし。

 

 ……でもこの会話の中で『お兄ちゃん』呼びは色々クるからやめてほしいな。

 

「だからって、グッズを注文って」

「ホテル行ったとき、いいなって思ったんだよね。でも一人で行くわけにもいかないし、かといってお兄ちゃんを連れていったら襲っちゃいそうだし。それとなくママに頼んだら、『年頃だものねぇ』って言って注文してくれた」

「義母さん……」

 

 明後日の方向を見つめ、義母さんに思いを馳せる。あんたなにやってんだ……。

 一方の澪は、目をキラキラ輝かせていた。こんなに生き生きしてる澪を見たことがないかもってレベル。

 

「一番悩んだのはディルドのサイズ。実際に見に行ければよかったけど、流石にそうもいかないからさ。凄い悩んで、調べた」

「うわっ、マジかよ……あの真剣な顔はそういうことなのか」

 

 多方面に複雑な気分なんですけど?

 が、ここは話を変えた方がいいだろう。変にツッコんだ方がよほど精神衛生上よろしくない。

 こほん、と咳払いで話を区切り、本来の目的に戻る。

 

「あー、話は変わるけど澪。雫の誕生日の買い物、明日でもいいか?」

「ああ、そのことね」

 

 こくと頷く澪。

 ちょっと待って、と告げてから澪はスマホでスケジュールを確認し始める。流石に覗くのはマナー違反なのでそっぽを向き、少し待った。

 やがて澪は、うん、と呟く。

 

「明日なら大丈夫。用事ないし」

「そっか、了解。大河にも伝えとく」

「ん」

「時間は後で知らせるわ」

「了解」

 

 短いやり取りが終わり、部屋に戻ろうと踵を返す。

 そんな俺に、ねぇ、と澪は声をかけてきた。

 

「どうした?」

「えっと……少し真面目な話、してもいい?」

 

 澪は控えめに、窺うように言った。

 澪のこういう態度は不慣れで、少し動揺する。俺は身構えつつ首を縦に振った。

 

「あのさ。お兄ちゃんは大丈夫なの?」

「……? なんのことだ?」

「私に付き合ってたお兄ちゃんだって、人より遥かに性欲強いと思うんだけど。半分くらいはお兄ちゃんから誘ってきてたわけだし」

「っ」

 

 何を言いたいのか、嫌でも理解できてしまった。

 俺は澪並みに性欲が強くて。まして男子高校生なんて、性欲が強いに決まっていて。美少女二人と同居していて、しかもそのどちらも自分を好いてくれているという環境の中で。 

 

 ――しかし事故を防ぐために俺は一度たりとも一人でシてはいなかった。

 

 当たり前の話だ。俺の部屋は鍵がかからない。入るなと書いた紙でも貼っておけば入らないでいてくれるかもしれないが、それだって完璧じゃない。

 そんな状況で、もしも俺がシているところを雫や澪に見られてしまったら?

 明確に、どうしようもなく、強制的に、何かがズレてしまうだろう。

 

 それは、一人でシなくとも同じ。

 ホテルで澪に手を出していたら。先日、大河とシていたら。

 おそらくだが二人とも、拒みはしなかったんじゃないだろうか。そう思えてしまう空気はあって、そのことは俺も二人も分かっていたように思う。

 

 けれどもシなかった。

 一人でも二人でも()ずに今日まで来ている。

 最後にシたのは、いつぞやの打ち上げの夜だ。

 そんな状況で、本当に大丈夫なのか、と澪は問うているのだ。

 

「我慢は禁物だし。友斗が望むなら、私、少し外に出てようか?」

「……いや、その必要はねぇよ。大丈夫だ。もうそろそろ、慣れてきてるから」

「ふぅん」

 

 正直に言えば、大丈夫なんかではない。

 澪の言う通り、俺だって性欲は強い方だ。なんだかんだ今日までは我慢していたが――どうしようもなく、くすぶってはいる。

 

 けれどこの手の我慢は、一度誘惑に負けてシてしまうと再び堪える方がキツイ。中毒症状とまでは言わないものの、原理は同じだ。

 一度やってしまえば、なし崩しで我慢できなくなる。それくらいなら今の方が楽だ。

 

「ま、だからあれだ。気を遣うならもうちょっと夜に声が漏れないようにしてくれ、マジで。雫にもアレ聞こえてるだろうし」

「…………え、本当に?」

「多分だけど。少なくとも俺は、たまに薄ら聞こえる」

 

 澪は顔を渋く、赤らめた。

 

「善処する。布団被ってタオル噛むし」

「お、おう……そこまでディティールを伝えないでほしかった!」

「知らないし。変態」

 

 だから、俺を変態扱いすんなよ。

 俺はぼしょりと内心で呟いた。

 

「じゃ、私は部屋行くから」

 

 言って、澪は俺の横を通り過ぎた。

 その背中を見つめながら、俺はしみじみと口にする。

 

「……数学の勉強しよ」

 

 古典はよくない。あいつら、しれっとヤってるからな。

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