【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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8章#23 みんなで

「でもさ雫ちゃん。今は常識とかルールとかなしで考えたけど、やっぱり無視できないこともあるよね?」

 

 ひとまず話がまとまって。

 思い出したように大河ちゃんが言った。もちろんこの話が出ることは分かっていたので、私は黙って先を促す。

 

「多重婚は法律で認められてないわけだし。たとえば子供とか……現実的なことって、たくさんある」

「うんうん、そーだね。私もそれは分かってるよ」

 

 友斗先輩が義兄になると分かったとき。

 まず真っ先に頭をよぎったのは美緒ちゃんのことだったけど、次に浮かんだのは義理の兄妹は結婚ができるという知識だった。

 だから大河ちゃんの言うことは、もちろん分かる。

 

「でもさ。法律で認められてる恋しか許されないなら、同性愛はダメだよね。色んな事情で実質婚になってる人もいるし。もちろんそういう人たちは結婚しないんじゃなくて色んな事情でできないだけだけどさ」

「それは……」

「倫理的には、どーだろ。不倫や浮気って話はあるけど、あれって芸能人とかじゃない限りは当事者がどうこうしない限り何も起こらないんじゃないかなぁ。もちろん家族には認めてもらわなくちゃいけないし、そこは考えるべきだろうけど」

 

 ハーレムの話になるとよく『一夫多妻制の国へ』みたいな感じになる。特にラノベや漫画だと、突飛なキャラが『総理大臣になって一夫多妻制にするんだ』って言い出したりね。

 でも現実的なことを考えたら、その前提は違う気がしてた。

 

「たくさん問題はあると思う。私はバカだし、子供だからさ。分かるのは『好き』って気持ちだけなんだ。でも……その気持ちがあれば、何とかなるんじゃないかな、って思いたい。今はそれじゃ、ダメ?」

 

 四人でいるには、どうしたらいいか。

 それは多分色んな方法があって、どれが正解かは分からない。だからもう少し考えるべきなのだと思う。

 

「ダメ、ではないけど……もう一つ、問題があって」

「問題?」

 

 聞き返すと、大河ちゃんは後ろめたそうな表情を見せた。

 黙っていてはダメだと自分を叱りつけるように唇を噛み、続けて言う。

 

「私の家、厳しいから。上手く問題を解決する方法が見つかっても、私が荷物になっちゃうかもしれない。だからそのときは私抜きで――」

「ダメだよ、大河ちゃん。四人じゃないなら、全部おんなじ。私とお姉ちゃんだけが選ばれても意味ないんだよ」

 

 大河ちゃんに最後まで言わせてはいけないと思った。

 家の事情はなんとなく察していたはずなのに、それを無視しそうになっていたから。

 あーあ、やっぱり私はまだまだだ。主人公(メインヒロイン)になったばっかりの私じゃ、何事も恙なくってわけにはいかない。

 でも、

 

「そのときは私たち三人が殴りこみにいくに決まってるじゃん。花嫁の強奪とか、あの気障男が好きそうな展開だし」

「澪先輩……」

 

 お姉ちゃんが明け方の星みたいに言った。

 流石だな、と思う。でも挫けてる場合じゃない。私が好きな人たちは皆、私の前を歩いてる凄い主人公(ひと)たちなんだ。

 

『が・ん・ば・れ!』

 

 おまじないが頭の中で反響する。

 頑張ります、と強く念じた。

 

「そーだよ、大河ちゃん! 友斗先輩一人じゃ無理でも、私やお姉ちゃんがいるんだもん。もう絶対、大河ちゃんを仲間外れになんてしないよ」

「雫ちゃんも……ありがとう。そう、だよね。もう一人じゃないんだ」

 

 いつも着けてる髪留めの花みたいに、大河ちゃんは純粋に笑った。

 もしかしたら私たちの願いを『傷つきたくないから逃げてるだけ』って馬鹿にする人がいるかもしれない。きっとその見方も間違ってはいなくて、その人にとってはそう見えているんだろう。

 

 けど、そんなの知らない。

 私たちは――季節を辿りながら、ちゃんと積み重ねてきたんだ。

 だからもう一人じゃなくて、三人で。

 誰かじゃなくて私たち皆で、考えて進んでいくべきなんだと思う。

 

 でも、その道を進むのは私たち三人だけじゃない。

 だから――

 

「――ま、結局そういうのはまず友斗を惚れさせてからじゃない? 三人どころか一人も好きになってもらえてないわけだし」

 

 と、私が言おうとしていたことをお姉ちゃんが言っちゃう。

 分かってくれてるんだなぁって思って、私はくすっと笑った。

 

「そーそー! それまでは捕らぬ狸の皮算用だし、友斗先輩なら小難しいことはなんとかしちゃいそうだからねっ!」

「え、えぇ……流石にそれはユウ先輩に期待しすぎな気も……」

「でもでも、友斗先輩抜きに考えてもしょーがないよね? 一方だけで考えても意味がないっていうのは、四人の恋でも二人だけの恋でも変わらないでしょ?」

「無茶苦茶な論理なのに、間違ってないように聞こえる……」

 

 無茶苦茶な論理とか言わないでほしい。二人に比べたら真っ当だからね?

 そう思いつつ、私は話を進める。

 今日はこっちも話したかったのだ。

 

「と、いうわけで! ここからは友斗先輩を惚れさせるための作戦会議をしたいと思いますっ!」

「その前にお腹空いたしお昼にしない?」

「……澪先輩。そういうところですよ」

「トラ子うっさい。お腹空いたんだからしょうがないでしょ」

 

 う、うん……まぁしょうがないよね。もうお昼時だし。

 

「それじゃあお昼食べてから話そっか」

 

 

 ◇

 

 

 何を食べようかと話し合って。

 ささっとできるものにしようということで、チャーハンを作ることになった。

 

「友斗、チャーハン嫌いだから普段食べないしね」

「あ、そうなんですか。そういえばトマトも嫌いだって仰ってました」

「そう考えると友斗先輩って割と好き嫌い激しいよねー。人も、食べ物も」

「「分かる」」

 

 と、仲良く話しながら。

 お姉ちゃんはチャーハンを、私は簡単な中華サラダを、大河ちゃんはたまごスープを作った。こーやって三人で料理するのは、やっぱり楽しい。

 それぞれがお互いの進行度を見計らい、ちょうどで終わるようにして盛り付け、テーブルに運んだ。

 

「「「いただきます」」」

 

 三人でちゃんと言って、食べ始める。

 どれも急ごしらえのメニューだったけど美味しい。私もだけど、二人とも料理上手いよね。友斗先輩って贅沢すぎない? 恨まれてもいい気がする。

 

 と、思いつつ。

 じゃあその友斗先輩を惚れさせる作戦を考えよう、と思考を切り替える。

 

「それで二人とも。友斗先輩メロメロ大作戦についてなんだけど」

「ネーミングセンス……」「作戦名……」

「二人とも判定が厳しいよ!?」

 

 友斗先輩もいつもこんな気分なのかな。

 って、そーじゃなくて。

 

「友斗先輩に好きになってもらう方法をね、私は色々と考えたの。それで、まぁ……あの人のことだからこのままダラダラ~と過ごしててもいつかは好きになってくれそうでしょ?」

 

 二人とも頷いた。だよね。だって友斗先輩、私たちのこと嫌いじゃないもん。女の子として見てはいるはずだし、明らかに私たち三人だけ特別扱いしてる。ならいずれは恋に落ちる。

 

「でも! 乙女たるもの待ってばかりじゃダメだと思う! 『ガンガンいこうぜ』だよ!」

「えっと……?」

「トラ子は気にしなくていい。オタク的なネタだから」

「あ、そうなんですか」

 

 普段は使わないけど、大河ちゃんほど近い相手にはつい言っちゃうよね。

 気にせずに私は続ける。

 

「そんなわけで! 今年中に! しかもロマンチックに! 友斗先輩のハートを掴む方法を考えたんだ~♪」

「今年中で、ロマンチックで……? そんな都合のいい方法があるの?」

「あるんだよっ!」

 

 えっへん、と私は胸を張る。

 んんっと声を作ってから続けた。

 

「『冬星祭の有志発表で聖なる夜の奇跡を起こせ☆』だよ」

「……? 『冬星祭の有志発表で聖なる夜の奇跡を起こせ☆』?」

「ごめんお姉ちゃん。声のトーンまで真似されると急に恥ずかしくなるからやめて」

「ふふっ、ごめんごめん。あんまり可愛かったから」

「うぅぅ~いじわるっ!」

 

 ああ、もう。なんか体が火照ってきた。

 パタパタと手で仰いで顔に風を送りながら説明する。

 

「冬星祭では、第二部で有志発表があるんだよね? だからそのときに三人でパフォーマンスするの」

「へぇ……。トラ子、有志発表って私たちでもできるの?」

「え、えっと…………可能です。冬星祭の有志発表は、そこまでたくさん希望が出るわけじゃないそうなので。ただ私が平日の放課後に練習できないので……やれることは限られてしまうかもしれないですけど」

 

 大河ちゃんが申し訳なさそうに言う。

 でも問題ない。どちらにせよ大したことはできないし、友斗先輩は不完全なくらいの方が頑張ってくれたんだなぁって感じるタイプだから。……あの人、チョロすぎじゃない?

 

「やることは考えてあるんだ。二人が嫌じゃなければ、三人で歌うのがいいかな、って」

「歌?」

「うん。お姉ちゃんは歌上手いし、私もお姉ちゃんほどじゃないけど歌えるし。大河ちゃんも、確か音楽の成績そんなに悪くなかったよね?」

「う、うん。そこそこには歌えるはず」

 

 よかった。カラオケにも来てくれなかったから歌うのが嫌いなのかな、とか思ってたし。

 でもそうじゃないなら、ぜひ歌がいい。

 お姉ちゃんが文化祭で歌ってたの、すっごく綺麗だったんだよね。だから今度は三人で立ちたいって思ってたんだ。

 

「練習も土日で充分だと思う。他の準備はお昼に三人で行ったり、放課後に私とお姉ちゃんで作業すれば間に合うんじゃないかな」

 

 というのはもちろん、私の甘い見立てだ。

 私はお姉ちゃんのように人前で歌ったことも、大河ちゃんのように学校行事の運営に関わったこともほとんどない。学級委員として決まったことをやってただけだ。

 どうかな?と二人の様子を窺う。

 お姉ちゃんはチャーハンをもぐもぐ食べながら、大河ちゃんはスプーンを一度置いて目を瞑り、それぞれ考える。

 

「私は別に用事もないし、いいと思う。曲とか衣装とか考えなきゃいけないことは多いだろうけど……作戦はどこかの優秀な生徒会長が考えてくれるでしょ」

「なっ、そんな無茶振りを!」

「えへへ。やっぱり無茶振りかな……?」

「っ!? う、ううん! 無茶じゃない! 放課後は全部無理だけどお昼休みなら使えるときはそこそこあるはずだし! それに雫ちゃんの案は凄くいいと思うから」

 

 やろう、と大河ちゃんは力強く言った。

 頼もしいなぁ、って思う。

 

「うんっ。私も頑張るから! 友斗先輩メロメロ大作戦、成功させようねっ!」

「その作戦名はやめて」「作戦名は変えよっか」

 

 ぐぬぬ……。

 いい作戦名だと思ったのに。

 

 まぁ何はともあれ。

 こうして私たちは、冬星祭に有志発表を行うことになった。

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