【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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9章#22 お掃除大作戦(2)

 浴槽の栓をしめて、二人で作業着のままシャワーを浴びる。

 そうすれば自然とお湯を張ることができ、そこそこ貯まったらシャワーを止めるらしい。そういえば澪も、冬にシた後は似たようなやり方で風呂に入っていた気がする。綾辻家の作法なのかもしれない。

 

「ふあ……あったかいですねぇ」

「だなぁ。めっちゃ染みるわ」

「ですよねぇ。あ、温度上げますね」

「おう」

 

 じゃー、じゃー、とお湯が豪雨みたいに降り注いでくる。

 雫の作業着は当然のように濡れた。いや、濡れる、なんて言葉では物足りない。まんまぐしょぐしょになっているのだ。

 下着のラインももちろん浮かび上がってくる。修学旅行の夜に襲ってきたとき、雫が着けていた色だった。

 

 ぺったりと濡れて肌に張り付いた肌は色っぽく、むらむらと情欲が湧き上がる。

 けれども、ツインテールを外して無邪気に頭から水を被る雫を見ていると、男と女って気分ではなくなっていた。

 

「なんか、あれだな。初めて義兄妹っぽいことをしてるかもしれない」

「ふふっ、ですね~。嫌ですか?」

「嫌じゃないな。雫が義理の妹なのは事実だし」

「へぇ。あっ、また温度上げます」

 

 ぴっ、ぴっ、2度温度を上げる。

 43度。一気にお湯は熱くなり、肌に貼りつく作業着が熱を帯びた。なんだこれ、めっちゃ気持ちいい。背徳感がやばい。

 

「あ、ねね、友斗先輩」

「ん、どうし――ぐほぉ」

 

 じゃぼぉぉぉぉぉっ、と雫がシャワーノズルをこちらに向けてきた。

 

「あははっ! 『ぐほぉ』だって! 変なのー!」

「てめぇ……それ、百歩譲ってプールでやることだからなっ? 熱湯でやったら地獄だから」

「だいじょーぶですよ! 友斗先輩、地獄とか行き慣れてそうですし」

「行き慣れてねぇよ!? そこまでの修羅場を経験してないからな!」

 

 ……少なくとも、父さんや義母さんほどではないはずだ。

 くくく、くくく、と雫が心底楽しそうにお腹を抱える。

 そういえば大河ともこんなことをしたなぁと思い出し、俺は雫の手からシャワーをひったくった。

 

「あっ、ちょ――きゃっ」

「ふっ、因果応報だな」

「むぅぅぅ! いんがおーほうじゃないです! 美少女虐待です!」

「つい数十秒前の自分の行動を顧みてから言おうな!」

「ん~、なんのことでしょうね~」

「この鳥頭が」

「鳥頭言うなぁぁっ!」

 

 あ、しまった。

 そう思ったときには雫にシャワーを奪われていた。

 ノズルがこちらを向き、ぶしゃぁぁぁぁ、と勢いよく熱湯が襲い来る。

 

「こんのっ、そっちがその気なら……!」

「ふふーっ! 負けませんよぉ!」

「男子高校生舐めんなよ?」

 

 じゃぁぁ、ぶしゃぁ、ざぶーんっ。

 シャワーを取り合い、お互いにお湯をぶつけあう。

 思考の入る余地がないバカみたいなやり取りを続けて、続けて、続けて。

 そうこうしている間に――やがて、がらり、と浴室の戸が開いた。

 

「二人ともさっきから何して――」

「「あっ」」

 

 そこにいたのは、他でもない澪で。

 俺と雫の手を行ったり来たりしていたシャワーは運悪く両者の手から零れ落ち、ノズルが戸の方を向くようにして床のタイルに落ちて。

 そうするとどうなるかと言えば――澪がびしょ濡れになる。

 

「雫、お湯止めろ」

「はい!」

 

 咄嗟に雫に言い、シャワーは止まる。

 しかし覆水盆に返らず、時すでに遅し。

 浴室と脱衣場の境に立つ澪は、俺たちほどではないにしても、ぐっしゃり濡れていた。

 

「二人とも……なに、やってんの?」

「ひぃぃぃっ! ご、ごめんねお姉ちゃん! 全部友斗先輩が!」

「責任転嫁!? 違うんだ、澪。風呂掃除が終わって、雫が風呂に入ろうって言い出して――」

「ふぅぅぅん?」

 

 ぎろり、澪の眼が俺に向く。

 暗殺者のような冷たい目だった。笑い方が美緒と似てる、なんて思っていた自分を殴り飛ばしてやりたいほどの眼光である。

 

「うっ、いや、その……ごめんなさい」

「何がごめんなさいなの?」

「大掃除中に遊んでたこととお湯を澪にぶちまけたことですかねぇ」

「ふぅん」

 

 え、マジで怖いんですけど。目が怖い眼力で殺されそう。

 俺と雫がピンと背筋を伸ばしていると、澪は浴室に入ってきた。

 ぴちゃ、ぴちゃ、濡れたタイルを踏む音が鳴る。

 澪は俺を見つめ、満面の笑みで、

 

「は・ず・れ」

 

 と言った。

 

「えっ……?」

「はずれ、って言ったの」

 

 なら一体、俺は何を謝ればいいのか。

 ひくひくと頬を引きつらせていると、澪は貯まった湯船の水面にちゃぽんと触れ、ん、と頷いた。

 

「三人いるんだよ。私を仲間外れにするのはどうかと思うなぁ、お兄ちゃん」

「――っ……」

 

 澪の言葉が浴室に生々しく響く。

 かはっ、と顔をしかめてしまう。

 

 雫との義兄妹ごっこはよかった。男と女ではなかったから。

 でも――澪は違う。

 澪は妹としても、俺を愛してくれている。だから澪の口から零れる『お兄ちゃん』は少し意味が変わってくる。

 

「ふふっ! じゃあお姉ちゃんもいっしょにはーいろっ! もう服濡れちゃったし、いーよね?」

「うん、そのつもりだよ雫。あっ……けど、雫は言い出しっぺなんだから後で脱衣所を処理しておくこと。あと、友斗は罪滅ぼしとして後で私を手伝うように」

「はぁーい……」「お、おう」

 

 苦笑している間に、澪が湯船に入ってくる。

 三人は入ればもうお湯が零れてしまうほどには貯まっていたので、シャワーノズルは片付けた。

 澪と雫は、ざぽーん、と湯船に浸かった。

 

「……じゃ、じゃあ俺は先に出て――」

「――いかないから、ダメに決まってるから。友斗も一緒だよ」

「うっ、い、いや。三人は流石にきついだろ」

「大丈夫、私小さいし。但し『なるほど』とか納得しても許さない」

「どうしろと」

 

 少なくとも、抵抗は許されていないらしい。

 まずい、と思う。だって服を着ていても混浴には変わりない。さっきは雫と遊び感覚でシャワーを向け合っていたが、湯船に浸かるとなると話が違う。

 澪も雫も、湯船に浸かったせいで着ている服がふんありと膨らんでいた。そのせいで襟から下着を覗けてしまい、目に猛毒だ。

 

「あ、あの……友斗先輩。あんまりジロジロ見られるのは恥ずかしいので早く入ってほしいです」

「そうそう。そこで立ってる方がよっぽど変態だし、早く浸かりなよ。別に取って食おうって言うんじゃないんだから」

「…………そうだな」

 

 確かにこのまま上から見ているよりは、同じ目線の高さになってしまった方が見なくて済むかもしれない。ついでに見られなくて済むとも思う。何のことかは言うに及ばず。言わせないでほしい。

 

 二人が間にスペースを空けてくれるので、なるべくお湯が零れないよう丁寧に浸かる。

 それでもやっぱり、さぽーん、と少しだけお湯が漏れた。

 

「あははっ。友斗先輩が入ると結構逃げちゃいますね、お湯」

「ま、ね。友斗、図体でかいし」

「別にでかくはないだろ。男子の中じゃ平均的だ」

 

 測ったのは春だが、今も別に成長が止まっているわけではない。将来的には180cm台に突入する気もするが、今はそこまでじゃなかった。

 

「へぇー……でも、筋肉はついてますよね」

「まぁ、それなりには筋トレしてるしな」

「モテたい高校生男子の典型的な行動だね」

「違ぇよ。デスクワークが多いから身体が鈍らないようにしてんの」

 

 好きな女の子にこんなことを言われる心境はいかに。

 そう思っていると、どれどれ、と言って澪が腹に手を当ててくる……!?

 

「ちょっ、何を……っ」

「筋肉、確かめてあげようと思って。ほら力入れて」

「あ、じゃあ私も触るー♪ 友斗先輩、ぐっ、て力入れてください!」

「っっ……」

 

 あーくそくすぐったい気持ちいい変な気分になる……!

 半ば反射的に、見栄を張るようにして腹に力を込めた。

 

「お、硬い」

「だねぇ。ね、友斗先輩。割れてるんですか?」

「……一応」

「ほほーう……夏限定じゃなかったんですね」

「海のために腹筋割る方が痛いだろ」

「ナンパ対策はしてたくせにぃ」

「それ言うのはズルいんだよなぁ」

 

 むにゅり、もちり。

 小さいけど確かな柔らかさと、大きくてもちっとした柔らかさが両腕に当たる。なるべく考えまいとしてたけど、そうやって身体のことを言われると余計に意識しちゃうんだよなぁ……。

 

「ねぇ友斗」「ね、友斗先輩」

 

 奥歯をぐっと噛んでいると、右と左から呼ばれる。

 嗜虐的な魔女と悪戯好きの小悪魔。

 どくどくと身体が灼けるような感覚に陥る。

 

「私のも、触る?」「私のも触りたいですか?」

「っ……!?」

 

 両耳が、ぞわっ、とした。

 頭の枷が外れそうになる。もういいじゃないか、と思ってしまう。

 だって俺はちゃんと好きなんだから。

 二人だって認めてくれてるんだから。

 だから、もう我慢なんかしなくても――

 

「私のお腹、触る?」「お腹触りたいなら触らせてあげてもいーですよ」

「なっ……」

「あれ、なんか勘違いした?」「ん~? 何かと勘違いしちゃいましたか~?」

「お前ら……ッ!」

 

 あぶねぇ、おかしくなりかけてた俺を二人が止めてくれた。

 おふざけ混じりなその声色のおかげで、ほぅ、と溜まった息を吐き出せる。

 

「お前らは全然分かってないなッッ!? お腹ならエロくないとでも思ってんのかアアン? お腹ってのは生命の根源であり、生命を維持する場所なんだぞ。世から生まれ落ちようという無意識下の努力が実ったようなおへそ! 日ごろの活動量に比例するようにして変わる肉付き! どう考えてもエロいだろうが!」

「急にフェチズムを語りだしてどうしたんですか!?」

「あー……友斗、お腹フェチだっけ」

「そ、そうなんだ……変態さんだぁ」

「変態じゃねぇ正常だ!」

 

 と、いうのはもちろん半分は冗談で。

 こんな風にコメディーを続けていけたなら、間違えずに済むのに。

 俺はそんなことを思った。

 

 

 ……やっぱり、七割くらい本気かもしれない。

 お腹は最高だから。

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