【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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9章#24 お掃除大作戦(3)

 我が家の大掃除が終わった翌日、29日。

 明日からは帰省しなくてはいけないため、俺は朝から起きて準備をしていた。

 今回の帰省は30日から1月3日までとなる。前回よりもやや長めだし、あちらでやることもそれなりにあるので荷物をまとめておかなければいけない。

 そんなことを考えていると、

 

 ――とぅるるるる

 

 と、電話が鳴った。

 最近これ多いな。

 そんな風に苦笑しつつ、スマホ画面を見て、目を疑う。発信主は入江先輩だった。

 

「あ、もしもし」

『もしもし、一瀬くん?』

「そうですね、100分の1になってるので厳密には間違いですけど」

『この程度の呼び方の違いで目くじらを立てるんじゃないわよ。それより、今いいかしら?』

「あー」

 

 いいかどうかと聞かれると、微妙なところである。

 朝から作業をしていたので荷物はそれなりにまとまったが、まだやることは残っている。だが入江先輩には頭が上がらないので、断るのも気が引ける。

 ま、いいか。

 

「大丈夫ですよ。今は暇です」

『あら、それはよかった。なら大河の家に来てくれる?』

「は?」

『聞こえなかった? 大河の家に来てほしいのだけど。あれ、家の場所を知らない?』

「い、いや……いつも送ってるんでもちろん知ってますけど」

 

 相手が相手なので、泊まったこともあるとは口が裂けても言えない。そんなことしたら何をされるか分からん。

 

『ならよかった。何分で来れる? 必要なら迎えに行ってもいいけれど』

「え……その前に説明してほしいんですけど。どうして大河の家に行かなきゃいけないんですか?」

 

 俺が聞くと、あはは、と枯れた笑みが電話の向こうから聞こえる。

 

『大河はね、自慢の妹なの』

「唐突ですね。知ってますけど」

『勉強も運動も私ほどじゃないにしてもできるし、何より一生懸命で真面目。一人暮らしをするのに問題ないだけの生活力はあるわ』

「はあ。ま、そうでしょうね」

 

 やや片付け面には問題がありそうだったけど。

 と、心中でツッコんで気付く。もしかして――

 

「――大掃除ですか」

『あら正解。大河のこと分かってるわね~』

「まぁ、何度か家に上がったことはあるんで」

『大河はそういうみっともないところを早々見せたがる子じゃないけれどね』

「……さいですか」

 

 からかいにいちいち反応し始めたら負けだ。

 ぐっと堪えて言うと、入江先輩はくすくすと笑う。

 

『と、いうわけで。今日、今からあの子の大掃除の手伝いにいくのだけど。十瀬くんを手土産に持っていったら『お姉ちゃん大好き♪』とか言ってもらえるかなぁと思って』

「あ、それは百パー言われないんで安心してください」

『酷いわねっ!?』

「人を手土産扱いした罰です」

 

 だいたい大河だったら、どうして連れてきたんだよ、と怒ってきそうだし。

 だが入江先輩の言いたいことも分かる。大河のことだから一人でもちゃんとやりそうだが、何しろあの一軒家だからな。何かと骨も折れるだろう。男手があって困ることはない。

 

「ま、了解です。あと45分ほどで到着できると思うんですけど、それでいいですか?」

『45分……分かった。私は先に家の中にいるから入ってきて』

「分かりました。大河をあんまりからかわないでやってくださいね」

『もちろん』

 

 ……絶対からかうじゃん、これ。

 大河のためにも早めに行こう。

 俺は、少し急ぎ気味で準備を始めた。

 

 

 ◇

 

 SIDE:大河

 

「ふぅ……ちょっと休憩にしようかな」

 

 一人暮らしを続けると、どうしても独り言が増えてしまう。

 まぁ、これは私だけなのかもしれないけれど。

 年末が近づいた今日、私は朝から大掃除をしていた。何しろこの家は広い。普段は使っていない場所ばかりだけれど、それでも埃は少なからず貯まってしまうので、昨日はずっといつも使わない部屋の掃除に時間を費やした。

 

 今日は朝から台所と風呂場の掃除をしてようやく部屋の整理に入れる。

 明日からは父方の祖父母の家に帰るため、まず実家に帰らなければならない。だから今日中に終わらせなきゃいけないんだけど……だからって、休みなしにやっても逆効果のはずだ。

 

「って、言い訳じみてるなぁ……」

 

 自覚している。

 私は、片付けがそこまで好きではない。忙しいからと秋までかまけていたせいで、散らかっている部屋にだいぶ慣れてしまったせいだ。

 流石にユウ先輩が泊まったあの日以降は意識して片付けているしちゃんとベッドで寝ているけど、それでも一度ついてしまった感覚はなかなか元に戻らないものだ。

 

 さて、と部屋の時計を見遣る。

 長針の指す時間は13時。気付けばもうお昼だ。そろそろお昼を作るべきだろう。

 台所へ向かおうとしたところで、

 

 ――ぴんぽーん

 

 と、間抜けなチャイムが鳴った。

 宅急便……ではないはずだ。

 嫌な予感がする。それでも無視するわけにはいかないので玄関まで向かうと、戸の向こうからあまり聞きたくない声が聞こえた。

 

「大河~。お姉ちゃんが助っ人に来てあげたわよ~」

「姉さん……何しに来たの?」

「言ってるじゃない。助っ人に来たの、大掃除のね」

「…………必要ない。明日には家に帰るから」

「ふふっ、そんなこと言っていいのかしら? とーってもいい手土産を持ってきてあげたのだけれど」

「手土産……?」

 

 えぇそうよ、と不敵に笑う姉さん。

 ムッとする私だけれど、手土産には惹かれる。片付いてない部屋を見られるのは嫌だけど……むしろ手伝ってもらえばいいだろう。

 

「……分かった。開けるからちょっと待ってて」

 

 戸を開けると、そこには姉さんが立っている。

 冬星祭の日ぶりね、と上機嫌に言った。

 

「そうだね。で、いいものって?」

「んーっとねぇ。それは後のお楽しみ」

「……?」

 

 嫌な予感がビンビンするけれど、聞いても意味がなさそうなのでやめておく。

 姉さんは楽しそうな笑顔のまま家に上がってくる。

 いいものとやらは、少なくとも食べ物はなさそうだった。

 

「姉さん。今からお昼作るけど、食べる?」

「もちろん! 大河の作ったものを食べたくないわけがないでしょうっ?!」

「その反応が食べさせたくないんだけど……分かった。カレーうどんでいい?」

「ええ! あ、三人分作ってもらってもいい?」

「なんで?」

「いいからいいから!」

 

 理由も説明せず、意味の分からないことを言う姉さん。

 お腹が空いているだけ……?

 首を傾げるが、姉さんは教えてくれる気配がない。ちょうど冷蔵庫のうどんも三玉あったので、言われた通りに三人分作ることにした。

 この押し切られる感じがあんまり好きじゃないんだよなぁ……。

 

 とん、とん、とん、とん

 ネギや野菜を切っていると、ねぇ、と姉さんが声をかけてくる。

 

「大河はあの子たちのこと、どう考えているの?」

「あの子たちって……三人のこと?」

「ええ。クリスマスのアレは、誰かが選ばれるためのものじゃないんでしょう?」

 

 なるほど、と思う。

 流石は姉さんだ。私たちが今望んでいることを見透かしているらしい。まぁ、冬星祭のステージに協力してもらったので、バレてもしょうがないんだけど。

 

「皆で幸せになる――『ハーレムエンド』を目指してる」

「へぇ? やっぱりそうなのね」

 

 とん、とん、とん、と包丁を下ろす。

 姉さんがどう思うのかが気になってそちらを見遣ると、物凄く癪に障る笑顔を浮かべていた。

 

「いいわねぇ! ようやく大河に欲しいものができた! 素晴らしいわ!」

「っ…別に、欲しいものは昔からあったよ。選挙のときもそうだったでしょ」

「そういう短期的な望みとは別よ。一生涯をかけても欲しいって思える大切な望み。人生に必要なのはそういうものなの」

 

 ……ちゃんとした姉みたいなアドバイスをされると少しムッとする。

 いや、姉さんのことは嫌いじゃないんだけど。

 むしろ応援してくれるんだなって分かって、嬉しいんだけど!

 

 ――ぴーんぽーん

 

 思考を遮って、チャイムが鳴る。

 また……?

 

「あ、来たみたいね。大河は料理してて。お姉ちゃんが出てきてあげるから」

「え、どういうこと? 姉さん、ちゃんと説明して」

「百聞は一見に如かず、よ」

 

 姉さんは、スキップ交じりで玄関へ行く。

 うっ、嫌な予感がする……。

 こめかみに手を添えていると、

 

「お邪魔します……あ、どうも入江先輩」

「こんにちは、一瀬くん」

「会話のたびに一と十を切り替えるのはやめません?」

「しつこいわよ」

 

 飄々とした――ユウ先輩の声が、聞こえた。

 は????

 

「ちょっと待って姉さん! どうしてユウ先輩がいるの!?」

「ん~? 言ったじゃない。手土産よ、て・み・や・げ」

「ってことらしい。邪魔するぞ、大河」

「……っ!」

 

 ちょっと姉さんと仲良さげすぎない? とか。

 ユウ先輩を手土産扱いするなんて許せない、とか。

 色々と思うところはあったけれど。

 

「ユウ先輩……来てくださって、ありがとうございます」

「お、おう。すまんな、急に来ちゃったみたいで」

 

 ユウ先輩を呼んでくれた姉さんには、少し感謝しないこともなかった。

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