【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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終章#07 シズクチョコ

 来香と共に自主休校した金曜日から続く連休も折り返しに差し掛かっていた。一昨日は澪、昨日は大河と出かけたわけだが、彼女たちと向き合う中で収穫もあったように思う。……なんて言うとどこか無機質にも聞こえるが、この二日間が幸せだったことは言うまでもない。

 

 と、そんな風に考えれば否が応でも二人とのキスを思い出してしまう。

 二人の唇の違いを述べられるほど余裕があったわけではないが、それでも、二人のキスの微熱は俺の唇に鮮明に残っていた。

 そのせいだろうか。

 今日は夢に澪と大河が出てきた。ぼんやりとした世界の中で二人と再びキスをしかけたところで、強引に夢から這い起きる。好きな子たちを夢で穢すのは本意ではない。

 

「ん、ふわぁ……」

 

 ベッドから起き上がり、ぐいーっと伸びをする。部屋のカーテンは既に開いており、眩しい日光が入ってきていた。おかげで欠伸を二つほどしたところで目が覚めてくる。後は軽くシャワーでも浴びればいいだろう。

 

「――いや、友斗先輩!? おうちデートがいいって言ったのは私ですけど、ちょっとまったりしすぎじゃないですっ!? なに優雅な休日感出してるんですか!」

「へっ?」

 

 突然聞こえた、ものすごく馴染みのある声。声のした方を見遣れば、そこには手に腰を当てて『私怒ってます』って感じの顔をしている雫がいた。

 ……あー。

 

「お、おはよう雫」

「おはよう、じゃないですからねっ? まず時計見てもらっていいですか? ってゆーか、今が何時か声に出して言ってください!」

「うっ……ええっと――」

 

 恐る恐る部屋の時計に目を向ける。

 短針が指していたのは……11と12の間だ。

 

「――11時45分、だな」

「そ・れ・で?」

「マジで悪い! 家だと思って気を抜きすぎた!」

 

 俺はベッドの上でエクストリーム土下座をした。いや、ただの土下座だけど。

 澪、大河と続き今日は雫の番。そんな彼女は昨日、俺にこんな風に言ってきた。

 

『お姉ちゃんとか大河ちゃんとのデートでもやしっ子の友斗先輩はヘトヘトだと思うので、明日はお家デートにします!』

『もやしっ子って……そんなに疲れてないし、どこか行きたければついてくぞ?』

『だいじょぶです! たまにはお家でまった~りしたいですっ♪』

 

 ということで、今日はどこにも行かず家にいることになったのだが。

 俺の体はそのことですっかり安心し、時間とか気にせず惰眠を貪ってしまったらしい。日が変わる前には寝入ったと思うので、ほぼ半日寝てることになる。やばすぎない?

 

「はぁ~。せっかく私は友斗先輩とのお家デートだと思って朝からワクワクドキドキしてたのに、友斗先輩はすっかり忘れて寝ちゃってたんですね~」

「うっ、ご、ごめん! すぐシャワー浴びて着替えるから30分……いや、15分待ってくれ!」

「しょうがないですねぇ。その代わり、シャワーもお着替えも私がお手伝い――」

「――勢いでもそれは無理だからな!?」

「えー。可愛い後輩がご奉仕、嫌なんですかぁー? 友斗先輩が疲れてると思ってこの時間まで起こさないでいてあげた健気でかっわいい後輩なのに」

「色々ごめんだからとりあえず部屋を出てくれ!」

 

 ぶつぶつと文句を言ってくる雫を宥めすかし、とりあえず部屋から追い出す。

 ……さもなくばベッドから出れなかった事情があることはぜひ察していただきたい。あの夢見た後の朝は無理だって。

 

 

 ◇

 

 

「まずは言い訳を聞いてあげます。被告、友斗先輩。何か言いたいことはありますか?」

「……ないです。完全に俺が悪かったです」

「ですねー。120%友斗先輩が悪いですねー」

「うぐっ」

「っていうか! 友斗先輩って私の扱い、結構雑じゃないです? そーゆうの、女の子は傷つくんですよ!」

 

 着替えまで済ませた俺は、二人っきりのリビングで正座をさせられていた。

 ちなみに澪は入江先輩に稽古をつけてもらいに行っているらしく、家にいない。あの師弟(ふたり)がどんな会話をしてるのか気になるんだよなぁ。大河は生徒会の仕事や勉強を進めてる、とのこと。

 

 って、今はそーでなくて。

 

「いや、それは違うからな。雫を雑に扱ってるつもりはないぞ。ただほら、雫とはだいぶ付き合いが長いからさ。気の置けない関係なりの行動になることが多いっていうか……」

「むぅ。いま付き合いの長さを引き合いに出されるとムカムカしちゃいますよ?」

「何故に……?」

「だってだって、友斗先輩にはもーっと付き合いが長い幼馴染がいるって判明したんですよねっ?」

「あっ……」

「まぁ別にいいですけどね~? 私は幼馴染ヒロインじゃないですしぃ? 小悪魔後輩ヒロインですしぃ?」

「全然いいとは思ってない顔なんだよなぁ」

「思ってないので、間違ってないですねー♪」

「可愛い笑顔ですげぇ冷たい声を出さないで!?」

 

 俺が言うと、ぷくっ、と雫が吹き出した。

 けらけらと笑う雫。その笑顔すら俺を責めるための演技のような気がしてくるが……幸いにも、そういうことではないらしい。

 けろっと切り替えた雫が言う。

 

「まぁ、半分は冗談です! もう半分はほんとにムカムカでしたけど……いつまでもうだうだ言っててもしょうがないですしねっ。たっぷり寝た分、これからは私に付き合ってもらいますよー?」

「お、おう。それはもちろん」

「ならオッケーです♪ ……次はないですけどねー」

「怖ぇよ……」

「冗談です♡」

「冗談には聞こえないんだよなぁ」

 

 と言いつつ。

 雫は寝坊のことはチャラにしてくれた。チャラってか、具体的な時間が決まってなかったから寝坊ではないしな。

 足を崩し、俺は雫に尋ねる。

 

「で、今日は何をするんだ? ゲーム?」

「……友斗先輩、私のことなんだと思ってるんですか?」

「え、オタク()優しいギャル?」

「ギャルはお姉ちゃんの方です!」

「だよなぁ…やっぱりそう思うよな……」

「ですです。まぁギャルっていうか、若干アーティス感出てますけど――って、そうじゃありません! ふざけるの禁止です!」

「悪い悪い、つい、な」

 

 普段ツッコミ役に回ることが多いだけで、くだらないことを垂れ流すのは俺の性分なのだ。許してほしい。あと雫も広義でギャルでは?とは言わせていただきたい。

 

 ――閑話休題。

 家で過ごしてるといつまでもだらだら駄弁ってしまいそうなので、話を先に進めよう。

 

「俺は雫と二人でだらだらゲームするのも楽しいと思ってたけど……今日は別のことをする、ってことだよな?」

「ですです。具体的には来月の準備を手伝ってもらいます!」

「来月?」

「はいっ♪」

 

 あま~くウインクを決める雫。

 

「バレンタインデーのチョコを一緒に作りましょう♡」

「なっ……!?」

「あ、もちろん友斗先輩に渡すやつですよ? 友チョコは毎年どんなのにするのか決めてるので、わざわざ変えるつもりもないですし。でも本命チョコは特別なのがいいので付き合ってもらいます!」

 

 ミルクチョコレートみたいに甘ったるい声で雫が言う。

 隠さない好意と小悪魔らしい仕草に心が揺さぶられる。本命でなくとも勘違いすること間違いないこのアタックを自分が本命だと自覚しながら受け止めるのだから、食らうダメージは当然すさまじい。ノックアウトされてしまいそうだった。

 

「……ふ、普通は本人と一緒に作ったりしないんじゃないか?」

「そーです? 好きな人にあえて練習を手伝ってもらうことでアピールするのも小悪魔的にありかなーって思うんですけど」

「小悪魔的ってなんだ、小悪魔的って」

「実際、結構効いてますよね~? 意識してくれちゃってますよねっ?」

「――っ、当然だろ。可愛い後輩にここまで言われて意識しない方がおかしい」

 

 そもそも意識してるんだから尚更だ。

 つーか、自分が渡されるって分かってるチョコを作る手伝いをさせられるってなかなかアレじゃないか? アレが何なのかは分からないけど。

 が、今日は雫の言うことを聞く日だと決まっている。気恥ずかしいには気恥ずかしいが断るほどのことではないし、素直に受け入れるとしよう。

 

「よし、任せとけ。雫のおかげで料理はそれなりにできるようになったからな。俺が本当のチョコってやつを――」

「あ、そーゆうのはいいんで。チョコの感想ください」

「ですよねぇ……」

 

 雫も大概、俺の扱い雑だよね?

 そんなことを思いつつ、雫のチョコ作りが始まった。

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