【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。 作:黒い床
それぞれスキー用具をレンタルした俺たちは、ひとまずスキー場の広場で集まることにした。既に気が早く走り始めている奴らもいるが、俺たちの中には未経験者もいる。まずはその辺を確認しよう、ということになったのだ。
……なったのだ、とか偉そうに言ってるけど、その辺のことは全部澪から聞かされたんだけどな。俺のいないところで諸々の打ち合わせをしていたらしい。
そんなわけで、スキーウェアを着込み、スキー板とストックを手に持って集まると、そこには既に女性陣がいる。
っていうか、そのメンツが割と凄いんだよなぁ……。
「なぁ晴彦、大志。スキーウェア着てても、美少女って隠れないよな」
「分かる。一発で白雪のこと分かったし、めっちゃ可愛いってなったもん」
「俺も分かるっすね。ってか、こんなこと言うのはあれっすけど、集まってる女子の美少女度がやばくないっすか?」
「「それな」」
のっそのっそと歩きながら、男子の間でうんうんと頷き合う。
雫と澪と大河と来香の四人は言わずもがな。如月だってかなり器量はいいし、今回はそこに入江先輩と時雨さんもいる。加えて花崎と土井の二人も参加しており、明らかに女子の比率が多くなっていた。つーか俺、同年代の男子の知り合いが少なすぎる。
「ふぅ……ようやく男三人も来たわね」
「あっ、すみません。待たせちゃいましたか?」
「そうね、少しだけ。まぁ急いでいるわけではないし、構わないわよ」
「ならよかったです」
入江先輩は俺らを一瞥すると、こくと首を縦に振ってから話し始めた。
あっ、入江先輩が仕切るんすね……。
まぁ時雨さんと来香には能力以前に性格面で仕切らせたら大変なことになりそうだし、大河は一年生で仕切りにくいだろうし、澪はそういう性格じゃない。入江先輩が適任なのだろう。
「ということで改めて確認するけれど……この中でスキーをやったことない人や苦手で教えてほしいって人は何人いるかしら? 手を挙げてもらえる?」
入江先輩が聞けば、ぽつぽつと手が挙がる。
大志を除く一年生と如月、あと来香か。
「大志、スキーできんのか?」
「そうっすね、前に家族で来たので。あと中学の卒業旅行でも」
「マジか……お前、なんで坊主なの?」
「坊主関係なくないっすか!?」
いや、坊主以外イケメン要素を揃えすぎなんだもん。この際、坊主も一周回ってイケメン要素に見えなくもないからな。
と、べちゃくちゃ喋っている間に入江先輩が話をまとめる。演劇部元部長ということもあってか、この手の話を進めるのはお手の物のようだ。
「じゃあそっちの一年生二人は私と時雨で教えるわ。雫ちゃんと大河、それから月瀬来香は、綾辻澪と一瀬くんに任せる。それで――」
「白雪は俺が教えます。去年もそうだったんで」
「――分かったわ。杉山くんは……そうね、私たちと一緒に来てもらおうかしら」
「了解です!」
……なんで入江先輩には普通の敬語なんだ?
もしかして俺、実は尊敬されてない……?
もにょりつつ、入江先輩が仕切った通りに分かれる。
「さてと……とりあえず分かれたけど、どうする?」
「はいはーい! あたしは兄さんに手取り足取り教えてもらいたいな♪ いいよね? あたしを独りにしないって約束したし!」
「なっ、月瀬先輩!?」
「……ふむふむ、こーゆう感じなんですね」
「ん~? 二人とも、どーかしたの? 二人は姉さんに教えてもらうってことでオッケーだよね。はい、じゃあ決ま――」
「決まりなわけないでしょ。自由人すぎるっての」
「澪が常識人みたいなツッコミをしてる、だと……?」
「澪先輩らしくないです」
「おいそこの二人覚えとけよ。……っていうか、元はと言えば友斗が来香に押されまくりなのがいけないんだけど?」
ぎろっと澪に睨まれる俺。
で、ですよねー。
「あ~あ~。滑れる自分が兄さんに教えてもらうことは絶対にないからって拗ねてるんだ~? 姉さんってば女の子!」
「っ、違うから。勝手に読み違えるなんて国語力ゼロなんじゃない?」
「はいはい、早口。役者志望のくせに全然隠せてないね」
「――ッ、ほんっと性悪」
にひにひと来香が煽れば、澪の口角がひくっと苛立たしげに上がる。
何となく予想はしていたが……この二人の相性は最悪らしい。澪と大河の言い争いは子供のちゃんばらごっこみたいなものだったが、この組み合わせにはそんな生易しさがない。
「むぅ」
「……ユウ先輩。雫ちゃんまでムッとし始めたので、早くどうにかしてください。私にはまとめられる気がしないです」
「なんで雫まで!? ってか、俺もどうにかできる自信ないんだが……?」
「月瀬先輩を連れてきたのはユウ先輩ですよね?」
「……うっす、なんとかします」
大河のド正論がぐさっと胸に刺さった。拾ってきた犬の面倒を見なさいって叱られてるみたいで多方面に失礼じゃね?と思わなくもないが、今は話を進めるとしよう。
「よし、澪も来香もいったん俺の話を聞け。提案がある」
「はーい」「ん」
「せっかくだからな。三人にスキーを教えながらゲームもしようぜ」
「「勝負?」」
「そのワードへの食いつきの良さ異常じゃない!?」
「来香に負けるのは癪だし」
「負かしてあげるのは妹弟子の務めだからね~」
「さいですか」
入江先輩から演技を教わってるらしいし、妹弟子ってのはそういうことだろう。『澪』ではなく『姉さん』と呼んでいるのも、そっちの関係を踏まえた上でのちょっとしたからかいなのかもしれない。
と、二人の関係を分析するのは後にして、だ。
「俺と澪でそれぞれスキーを教える。で、どっちの生徒が上達したかで勝ち負けを決める。もちろん、勝敗の判定のときは元々の運動神経も考慮するってことで。競争こそが発展を生むとも言うしな。ちょうどいいだろ?」
「……ん、まぁいいんじゃない?」
澪が首肯する。
不思議そうに呟いたのは大河だった。
「ユウ先輩って、スキーを教えられるんですか……?」
「あー、それね! 私的には友斗先輩がスキーみたいなリア充チックなスポーツをできるってだけでもびっくりなんですけど」
「お前らしれっと酷いな!?」
だいぶ不服な印象を持たれているらしかった。まぁリア充っぽいスポーツができるかって言われたらできないだろうけどな。フットサルとかよく分からん。サッカーと何が違うん?
しかし、高まった先輩欲がいいところを見せたいと言っている。最近は情けないところばっかりだったしな。たまにはかっこいいところも見せたい。
「いいだろう。だったら俺が大河と雫にスキーを教えてやるよ」
「兄さん!? それだとあたしが姉さんと組むことになっちゃわないかなっ?」
「澪とは息が合うみたいだし、マンツーマンで教わった方が早いだろうしな。ちょうどいいだろ?」
「ま、二人に教えなきゃいけない分のハンデとか考えたらこれくらいが対等か。私はいいよ。生意気な妹弟子を教育するチャンスだし」
「お、おう……無理はさせないようにな。その辺は分かってるだろうけど」
入江先輩の下で一緒にトレーニングをしているらしい澪の方が、俺よりもきちんと来香の限界を把握しているはずだ。
「ユウ先輩がそう仰るなら、私も異論はないです」
「私も……とりあえずオッケーです。友斗先輩のお手並み拝見ってことで♪」
「じゃあ、決まりだな」
「ん。負けた方は勝った方にジュース奢るってことで、どう?」
「ジュースか……了解。じゃあとりあえず二時間後に一回ここに集まるってことで」
話がまとまり、澪と来香の二人といったん別れる。ぶつくさ文句を言いながら澪についていく辺り、来香も真面目に教わる気はあるのだろう。
「さて、と。じゃあやるか――ってあれ? 雫、どうかしたのか?」
振り向けば、何故か雫が不満そうな顔をしている。いや、実際には帽子とかのせいであんまり顔は見えないんだけども。
「私、今の来香先輩とは仲良くなれないかもです」
「えっ?」
雫らしくない不穏な呟きがぽろりと零れる。
その呟きの意味を上手く汲み取れずにいる俺とは対照的に、大河は理解できたらしい。どこか感心したように大河が言った。
「あー。……雫ちゃんにもそういう気持ちはあるんだね」
「うっ、しょ、しょうがないじゃん! お姉ちゃんは私のお姉ちゃんだもん! あんな風に妹ぶられたら怒れてきちゃうのは当たり前だよ!」
大河に返した雫の言葉を聞き、俺はようやく理解する。
澪の妹みたいに振る舞ってた来香にヤキモチをやいた、と。
もしかして、メンバー分けを間違ったか? でも、来香と雫にも仲良くなってほしいとも思うし……ううむ。
どうしたものかと考え込んでいると、
「友斗先輩!」
と、雫に呼ばれる。
「来香先輩なんてこてんぱんにしちゃうので! スキー、みっちり教えてください」
「お、おう……それでいいのか?」
「よくなくなくないかもですけど、とりあえず負けたくはないので!」
「そ、そうか」
ひとまずは健全な方向に舵を切ったみたいだ。
ま、そうだな。二人の仲を取り持つのは後にして、今はスキーを教えるとしよう。ある程度は滑れなきゃ、合宿自体を楽しめないしな。
「うし。やるぞ、二人とも」
「はい! 絶対負けませんっ!」
「……二人とも、変なスイッチが入っちゃってません?」