【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

419 / 472
終章#18 話すこと

 結局、一日目は各自バラバラに遊ぶことになった。

 ずっとフルメンバーでいてもツッコミどころ的な意味で疲れそうだし、大人数で遊ぶときにはそれが必然なのかもしれない。

 

 俺をあっさり勝負で打ち負かすと、澪はスキー板をスノーボードと取り換え、颯爽と一人で上級者コースを滑っていた。マジでかっこよすぎてヤバい。

 その他の面々は俺を含め上級者コースを滑りこなせるほど上手いわけじゃないので、そこそこの斜面を滑ったり、雪をいじったりして遊んだ。

 

『……ねぇ友斗先輩。滑ってるだけで楽しいなら、売れないお笑い芸人は楽しくてしょうがないですよね』

『おむすびころりんのおむすびになって何が楽しいのかな』

 

 と、インドア派二人の迷言は今でも頭に残っている。

 それ、スキー来て言っちゃアカンやつや。

 

 そんなこんなで、時間が過ぎて。

 スキー場から帰ってきた俺は今、服を脱いでいた。

 ……やばい、テンションがおかしすぎて変な表現をしてしまった。

 違う違う、お風呂に入るべく脱衣場に来てるだけだからな。

 

「いやぁ~楽しかったなぁ、今日」

 

 隣で服を脱ぎながら言うのは晴彦だ。

 なんで友達多い奴って、広いのにすぐ隣で着替えたり脱衣したりしたがるんだろうな。嫌じゃないからいいんだけどさ。

 ちなみに流石はサッカー部というだけのことはあり、かなり引き締まった体をしている。うん、俺が見込んだイケメンだ。

 

「まぁずっと如月とイチャついてたもんな」

「イチャついてたわけじゃねーし! スキー教えてたんだし!」

「今日日スキーを教えながらイチャつくなんて分かりやすいカップル行動をする奴がいることに驚いたぞ俺は」

「ぐぅ、い、いーだろ別に!」

 

 ま、ダメとは言ってないけどね?

 恥ずかしそうに顔を赤くし、それでも開き直るその姿勢がちょっといい。やっぱり晴彦はこうでなくっちゃな。かっこいいところを見せてもらっては困る。

 そんなことを考えながら俺も服を脱ぐと、何やら不躾な視線を感じた。

 

「……どうした晴彦。その目、もしかして」

「もしかしてとか言いながら服で胸隠すのやめてくんない! 俺は白雪一筋だから!」

 

 そこで、男同士だから、じゃなくて、彼女一筋だから、ってのを言うあたりが人の心を慮れる友達多いマンたる所以なんだろうな。

 こっそりそう思いつつ視線の意図を尋ねると、晴彦は答えた。

 

「文化祭のときより体格よくなったなぁって思って」

「よく覚えてんな……」

「運動部入ってっと、自然と目が行くんだよ」

「そういうもんか」

 

 文化祭の衣装合わせのとき、俺は晴彦に裸を見られている。

 あのときと今を比べると確かに体格は変わっていると言えるかもしれない。

 

「暇なときは筋トレしてるからな。生徒会の仕事とか勉強とか、デスクワークやってるとどうしても体が鈍るし」

「なるほど……?」

「あと、超絶ストイックな澪が身近にいると鍛えなきゃいけない気がしてくる、ってのもある。」

「あー」

 

 ぶっちゃけ、後者の理由が大きい。

 三学期に入ってからは入江先輩との稽古にエネルギーを使っているみたいだが、澪はそれでも未だに早朝のランニングを続けている。アスリートかよってレベルで自分を追い込んでる澪も見ていると、部屋でする筋トレにも精が出るのだった。

 

「ジムとか行かねぇの? 最近だと駅前とかにあったりすんじゃん」

「そこまでがっつり鍛えてるわけじゃないしなぁ」

「つっても、軽い運動感覚で通ってる奴もいるぜ? 帰りにふらっと寄って、みたいな」

「晴彦の周りだけじゃないのか?」

「違うって。おーい、大志! お前の周りにもジムに通ってる奴、多いよなー?」

 

 晴彦に尋ねられた大志は、服を脱ぎながら頷く。

 

「そうっすねー。やっぱり男は筋肉があってこそっすから。モテたい奴は鍛えてるっす!」

「その文脈だと、まるで俺がモテたいみたいになるけどな……」

 

 と言いつつ、ジムに通うのはありかもな、と思う。部屋での筋トレにはどうしても限界があるものだ。さっき澪にぼろ負けしたのも悔しかったしなぁ……勝ちたいとは言わんが、あのチート性能に負けないように鍛えておきたい。

 

 そんなことを考えている間に、服を脱ぎ終えた晴彦がこちらへやってくる。

 おぉ……なかなか鍛えてるじゃないか。細マッチョって感じだ。って、人の体をジロジロ見るのもマナー違反だな――などと思っていると、

 

「すげぇ……流石、百瀬先輩っす……!」

 

 と、大志が目をキラキラさせた。

 

「まあな。でも、大志だって鍛えてるだろ?」

「鍛える? やっぱ、男たるもの鍛えるべきなんすか?」

「へ? あー、それは人それぞれじゃないか? サッカー部なら鍛えてんじゃねぇの?」

「サッカー部で!? そうなんすか、ハル先輩?!」

「お手本みたいな会話のすれ違いをすんなよ……」

 

 何故か噛み合わない俺と大志の会話を聞いて、やれやれ、と晴彦は肩を竦めた。

 晴彦は俺の体を上から下までじーぃっと見て、うお、と変な声を漏らす。

 

「確かに凄いな。これ、大志は悪くねぇわ」

「え? 何の話してんの?」

「何の話って……そりゃ、男同士で風呂に来たら見るだろ。な、大志」

「そうっすね。やっぱ、見ちゃうっす」

「……?」

 

 だから、さっきその話をして――と考えて、気付いた。

 青春ラブコメの男同士のお風呂イベントであったらちょっと楽しくて可笑しい、下ネタ系のイベント。

 小学生や中学生のノリだし、嫌な奴は嫌だろうが……まさに男同士って感じがするアレである。

 

「おお……! 今、めっちゃ男友達と話してるって感じがする!」

「急に目が子供みたいにキラキラしだした!? てか、反応するところそこかよ!」

「え? きゃー、えっち、とでも言えばいいか?」

「それはそれでぶん殴りたくなる」「キモイっすね」

 

 晴彦はまだいいとして、大志はいよいよ俺のこと尊敬してないだろ。

 別にいいけどね。男で懐いてくれる後輩っていなかったから嬉しいし。後輩なら無条件に好きだし。

 

「まあ、別に恥ずかしがることでもないしな」

「堂々としてる……これが大きい奴の貫禄か」

「そうかもな」

 

 ちなみに、恥ずかしがることでもなければ、誇ることでもない。

 あそこのサイズは個人差があって当然だし、そのサイズでどうこうって話でもないし、セフレ時代に調べたがサイズは重要じゃないらしいしな。

 と、思いつつも賞賛されるのは気持ちがいい。

 二人のあそこをチラ見してみる。……別に小さくはないな。

 

「ちなみに、隣に女子風呂があるから興奮してるってわけじゃないよな?」

「それでこの場で堂々とできてたら相当な変態だろ……」

「友斗ならワンチャンありそうじゃん?」

「百瀬先輩っすからね」

「オーケー、お前らが俺をどう思ってるのかよ~く分かった。言っておくが、デフォでこれだからな?」

 

 言って、二人の背中を叩く。

 このやり取り自体は楽しいが、変態の烙印を押されては敵わない。さっさと風呂に入るに限る。

 浴場には既に先客がいた。

 ちなみに、大浴場と部屋風呂はどちらを使ってもいいことになっている。大浴場の場合は時間である程度区切られてはいるが、基本的にはいつ入ってもいい。温泉ではないので、結構部屋風呂で済ませる奴も多いようだ。

 

 体と髪を洗い終え、俺はタオルを持って湯船に浸かる。

 しゃばーっと少し溢れるお湯。

 家の風呂よりもかなり熱いお湯が体に染みて、あぁぁ、と自然と声が漏れた。

 湯船から見えるように、大きな窓がある。

 露天風呂ではないけれど、外の景色は充分に堪能できた。雪ばかりだけどな。

 

 それでも、と思う。

 こうやって窓から外を覗くと、色んなことが想像できる。

 雪の向こうにある広い空とか、瞬く星とか、空の透明さとか、宇宙の果てしなさとか。

 ふと思い出すのは、来香と二人っきりで越した夜のこと。

 少し前のことでしかないはずなのに遠く感じるのは、前に進めている証左だろうか。

 

「はぁ~。気持ちいいな~」

「だな」「っすねぇ」

 

 気付けば、隣には晴彦と大志がきていた。

 三人並んでこうしていられることが、無性に嬉しかった。

 晴彦は、この一年間一緒にいてくれて。大志は逆に今日までほとんど関係なかったのに、友達みたいになっている。

 

「今、女子ってどんな会話してんのかな?」

「さあ。そもそも女子は食事終わってから風呂行くと思うぞ。髪乾かしたり、ボディケアしたり、色々と時間かかるだろうし」

「お、おう……」

 

 女子の風呂での会話を妄想したかったんだろうが、素で一蹴してしまう。

 いやほら、知ってることを知らないまま話すのもあれだからさ……。

 

「食事っすか……合宿の食事って、バイキングっすよね?」

「だったな」

「マジ腹減ったし、食うしかないよなぁ」

「っすね」「マジそれ」

 

 あぁ……お湯が気持ちよくて会話の知能指数がどんどん落ちていく。

 元から知能指数が低かっただろってツッコミは受け付けない。

 

「ふわぁぁ~」

 

 大志が、大きく欠伸をする。

 ぐいーっと体を伸ばして、湯船のへりに頭を乗せた。汗を掻いた天井を見上げた。

 

「なんかさ」

 

 晴彦が囁くような声で言う。

 うん? と視線を向けると、そのまま照れ臭そうに続けた。

 

「やっとだな。友斗とこうして、風呂に入ってまったりできたの」

「そんなに俺と風呂に入りたかったのか?」

「そーいうことじゃねーよ?」

 

 もちろん分かってる。

 肩を竦め、そうだな、と俺は返す。

 

「色々悪かったな。ほんとなら修学旅行で思い出作るはずだったのに」

「そのことは気にすんなって。友斗は友斗がしたいようにしたわけだしさ。それにこの旅行も、後輩も先輩も一緒で楽しいし」

「……だな」

 

 そういえば以前、澪と話した。

 雫や大河とは修学旅行に行けないし、時雨さんと卒業までの時を惜しむことはできない。たった一年の日々がもどかしい、って。

 

「なぁ友斗。……この前の約束、守ってくれるよな?」

 

 晴彦は、宝物を壊さないよう慎重に言う。

 何を指しているのかはすぐ分かった。

 

『その辺の話は、また今度。そうだな……合宿の夜なんか気が利いてて話すのにぴったりだと思わないか?』

 

 あのときは冗談めかしたし、スキー合宿に誘う口実にしたけれど、親友である晴彦には話すべきことを話したいと思う。

 

「約束って何の話っすか!?」

「うっせぇな。俺と友斗の話だっつーの!」

「……ふっ。ま、大志も一緒ってことでいいんじゃないか?」

 

 晴彦と大志を見つめ、俺はふっと笑って見せる。

 

「合宿の夜って言ったら、やっぱり恋バナだしな」

 

 ありふれた青春をなぞり書きするみたいに、この夜を楽しく過ごそう。

 その果てに最幸の光景が見えると信じて。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。