【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。 作:黒い床
朝食を終えて。
俺たちは再び道具一式をレンタルし、昨日と同じ場所で集まっていた。メンツも昨日と同じである。
改めてこうして見ると、マジで豪華なんだよなぁ。
男子も俺以外は人気者だし、女子だってそれなりに名の知られた奴ばかり。花崎と土井、雫あたりは知名度的には劣るだろうが、花崎と土井は「実は好きなんだよね」ってこういう合宿で名前が上がりそうなキャラだし、雫も人気自体はめちゃくちゃ高い。ただ、特別目立つことをしていないだけだ。
その中でリーダーシップをとるのは、やはり入江先輩である。
「さて……確認だけれど、昨日練習してみんなある程度は滑れるようになった、と思っていいのよね?」
入江先輩がそう聞くと、昨日教えてもらう側に回ったメンツがそれぞれに反応する。どれも肯定の意を示すものばかりだ。
雫と来香については、やや判断に困るところだが……まぁ、遊べるくらいには滑れると言っていいだろう。
「みんな滑れるようになったんだし、どうせなら遊びたいよね。恵海ちゃん、なんかいい案ある?」
「またいきなり無茶ぶりを……どうしようかしら。ただ滑るだけでもいいと思うけれど、この人数だものね。速さで競ってもしょうがないだろうし」
三年生ズが二人で並んで話す。
こういうとき、二人は先輩って感じがするな。なんだかんだ一~三年生が揃っているし、この合宿の本来の意義も果たせているのかもしれん。
そんなことを考えている間に、時雨さんは何かを思いついたようだった。
「そうだ! じゃあみんなで鬼ごっこをするのはどうかな?」
「……鬼ごっこ?」
「うん。スキーしながら鬼ごっこ。スキー場は広いし、ある程度滑る速さに差があっても大丈夫だと思わない?」
なるほどな、と思った。
そういえば某アニメでもスキーしながら鬼ごっこしてる描写があった気がする。時雨さんがそれを思い出したのか、それとも単に閃いただけなのかは分からない。
オリジナリティってやつは難しいしな……(ちょっと難しいことを語ってる顔)。
「なるほど。悪くないわね。鬼ごっこが嫌って人がいれば別のことにするけれど、どうする?」
入江先輩が全体に呼びかける。
三年生の先輩の意見には異論を出しにくいような気もするが、まあ、そもそも分かりやすく問題がある案でもない。
誰も異論を出すことはなく、鬼ごっこをやるってことで話がまとまる。
「鬼ごっこやるのは全然いいんだけど、あんまり全力で移動するのはキツいかもです。できたら、捕まった人を監視する看守とかがいいなーって」
と来香が名乗り出た。
確かにそうだ。鬼ごっことなるとただ滑るだけではなくなってくるし、走らなきゃいけないタイミングも生まれる。来香のことだから無理はしないだろうが、無理かどうかを気にしながら遊ぶのは本人も周囲も具合が悪い。
「じゃあドロケイみたいな感じにしましょうか。見張りは月瀬来香がやるとして、他の警察役は――」
「ボクがやるよ」「私がやります」
入江先輩の言葉に反応して手を挙げたのは時雨さんと澪だった。
入江先輩は一瞥し、こく、と頷く。
「そうね。なら二人に任せようかしら」
「よりにもよって体力バカ二人が警察役なんですか!?」
「しょうがないでしょう、一瀬くん。この二人、多分どっちも譲らないわよ」
「恋人と弟子でしょ! ちゃんと手綱を握ってください!」
「できるわけないでしょう!」
当たり前のように開き直る入江先輩。
いや、まぁそうですけどね……?
「警察役のメンツが邪悪過ぎませんかね……?」
「ふむふむ、警察の誇りを穢す悪い子がいるみたいだね」
「いい度胸じゃん」
「国家権力を舐めちゃダメだよ♪」
見事に俺はロックオンされてしまう。ねぇこれ理不尽じゃない? 俺、ゲームバランスを考えて言ってるんですけど?
「友斗先輩。私、ちょっと夏休みのことが頭をよぎったんですけど気のせいですかね?」
「大丈夫、絶対気のせいじゃないから」
「ですよねぇー」
そうだよ、澪と時雨さんってビーチバレーで大人げも容赦も完全にロストしたプレイをして、遊びのつもりのゲームを軽いデスゲームに変えたコンビなんだよな……。
しかし、そのことを知っているのは当人たちを除けば俺と雫と大河だけである。
加えて、捕まった警察の監視には来香。監視だけならなんてことない気もするが……なんか不穏なんだよなぁ。
ま、所詮は遊びだしな。
他の奴がなんとも思わないなら、止めるほどでもない。
「なら俺に異論はないです」
「やった」「っし」「いえい」
やべぇ、三人の笑顔が悪魔にしか思えない。
苦笑している俺たちをよそに、入江先輩はルールを説明しはじめた。
斯くて、仁義なきケイドロが始まる。
◇
ケイドロのルールは簡単だ。
スキー板をつけ、滑りながらケイドロを行う。但し、これは場合によって外してもいい。着脱するタイミングでタッチをするのは面白くないのでなるべく自重すること。これは時雨さんと澪の裁量である。
ケイとドロの交代はなし。他のスキー客と見分けるために各自時雨さんが用意したリボンを腕に装着する。タッチされたらスタート地点の牢屋に投獄。来香は牢屋の近くに待機し、牢屋に近づく泥棒を見つけたらタッチする。捕まっている泥棒はタッチされれば復活。復活すると、来香は十を数え終わるまで追いかけてはいけない。
やったことがないため、このゲームのバランスがこれでいいのかはイマイチ分かっていない。まぁ時間はあるし、ルールに欠陥があれば別のことをやればいい。
そんな勢いで始まったゲームだったのだが、
「はぁっ、はぁっ……チッ。なんで俺ばっかり追ってくるんだよ…っ」
俺は警察官に狙い撃ちされていた。
気分はさながら指名手配犯。二人の凄腕警察官に狙われ、俺はただがむしゃらに逃げることしかできていない。
何が酷いって、始まる前の二人のやり取りが酷い。
曰く、
『ねぇ澪ちゃん。せっかくだし、勝負しない? たまには恵海ちゃんじゃなくてボクとも遊んでほしいな』
『望むところです。泥棒を一回捕まえるにつき、1ポイント。最終的に何ポイント獲ったかで争うのはどうです?』
『シンプルでいいけど……もう少し遊び心が欲しいかな。たとえば、誰かさんを捕まえたらポイント二倍、とか』
『乗りました』
とのことである。
その後の話し合いで何故かポイント二倍どころか、俺を一度捕まえるごとに5ポイント獲得できるルールが制定された。地獄すぎない?
かくして俺は、二人に追われまくることとなった。
一方は圧倒的な身体能力を駆使し、凄まじい勢いで迫ってくる。かと思えば他方は、そんな澪の行動も予想し、俺の逃げ道を潰そうとする。
身体能力でも思考能力でも勝ち目のない俺は、死に物狂いの泥臭い逃げ方をしていた。
……ちなみに、澪も時雨さんも、俺を追いかけながら他の奴もちょいちょい捕まえてスコアを稼いでいるっぽい。他のメンバーは適宜助け合っているようなのだが、俺はケイドロの本懐に意識を割くことさえできていなかった。
「って、こっち来るし」
状況を分析している猶予すら、ろくにない。
警察の接近を察知した俺は、バレないように移動する。
若干かくれんぼになりつつあるわけだが、そこを気にしてはいけない。すいーっと滑って逃げ、ちょうどいい物陰を探す。
「見つからねぇ……」
一応、かまくらはある。
だがかなり小さく、あれを物陰にするのは難しそうだ。中に入れば隠れられそうだけど、流石に勝手に使うわけにはいかないしな。他人様に「ちょっとだけ入れてもらえません?」とか申し出る図々しさも持ち合わせてはいない。
どうしたものかなぁ、と思っていると、
「せんぱーい。おーい、友斗せんぱ~い」
と、どこからか声が聞こえた。
この甘ったるい声、雫だよな? キョロキョロと辺りを見回すが、雫の姿を確認できない。ゴーグルをつけた程度じゃ雫たちを見失うことはなかったはずなんだが――ってあれ? なんか、かまくらから手が出てね?
「もしかして……」
まさか、と思いつつかまくらまで近寄り、中を覗き込む
するとそこには、
「えへへー。雪の妖精、雫ちゃんですっ♪」
「…………」
「あっ、ちょっと待って! なんで何も言わずに出ていっちゃうんですかぁー!」
「深刻なデスゲームの最中に電波ちゃんと出会っちゃった気分だったから」
「酷くないですっ!?」
可愛らしくちょこんとしゃがみこんでいる雫がいた。
まったく、何をやっているのやら。
俺が呆れて肩を竦めていると、雫がむぅと頬を膨らませる。
「そんなこと言ってると中に入れてあげませんよ? お姉ちゃんと霧崎先輩と地獄の追いかけっこします?」
「うっ」
「すぐそこに迫ってますよ~? そんなヘトヘトで逃げられるんです?」
「うぐぅ…………」
ごもっともだった。
あの二人から逃げ続けるなんて無理である。かといって、いざ遊ぶのであれば本気で勝ちに行きたいし……。
せめて、少しでいいから休息をとりたい。
「すみません、入れてください」
「はいっ、いい子ですね。スキー板外して上手いこと中に入ってください♪」
悪魔みたいな二人から逃れるために俺は小悪魔の手を取ることにした。
どっちも悪魔なんだよなぁ。