【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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終章#25 似てる

 ドロケイは警察サイドの圧勝で幕を閉じた。

 瞬殺すぎだから、と今度は時雨さんと澪がそれぞれ一人で警察役をやってゲームを行い、澪を除いて全員が疲れ果てたところで別のことをすることになる。

 

『かまくら入ってたら雪遊びがしたくなったので、みんなで雪だるまを作りましょう!』

 

 雫の一声で、俺たちは雪だるまを作っていた。

 雪の冷たさを掌で感じながらぼんやりと頭の片隅で考えるのは、さっき来香が言おうとしていた言葉だ。

 いったい、何を言おうとしていたんだろう?

 俺はあの眼と笑顔を忘れることができなくて、延々と紡がれるはずだった言葉を探してしまう。考えたって答えが見つからないことは分かり切ってるのにな。

 

「――ぱい、ユウ先輩!」

「うおっ……悪ぃ、聞いてなかった」

 

 大声で言われ、俺はびくっと肩を震わせた。

 顔を上げれば、むっとした顔の大河がいる。ころころと雪玉を転がす手を止めると、彼女は訝しげに訪ねてきた。

 

「さっきから様子が変ですが……もしかして、体調悪いんですか?」

「え? いや、別にそういうことじゃないぞ」

「じゃあ、何があったんですか?」

「何もないって」

「雫ちゃんとかまくらで密着してたって聞きましたけど」

「知ってんのかよ!?」

「さっき、雫ちゃんと月瀬先輩が話してるのを聞きました」

 

 話はあっさりと広がっているらしかった。俺の様子が変な理由は()()じゃないけど、今はこちらの誤解を解いておくことにする。

 

「というか、別にやましいことはしてないぞ? 澪と時雨さんから隠れるためにかまくらに入ってただけで……」

「抱き締められていたことは『やましい』の範囲にならない、と」

「うっ」

 

 やっぱりそこまで知ってるよな……。

 真実を言えば、俺はあくまで抱き締められてただけだ。俺自身は特に何かをしたわけではない。でも、あのときの背徳的な感覚が頭にこびりついているのも事実。耐え切れなかったからこそ、かまくらを飛び出したわけだし。

 つい顔をしかめてしまうと、ツンとした声で大河は続けた。

 

「まぁ、別にやましいことをしていてもいいと思いますけどね」

「……は?」

「雫ちゃんとやましいことがあったら悪い、なんて思いません。……私にもやましいことをしてくれてもいいのにな、とは思いますが」

「…っ」

 

 言われた瞬間、大河の唇に視線が引き寄せられた。

 彼女から口付けられたときの感覚がフラッシュバックする。

 

 ううん、『やましいこと』って言うならそこで止まりはしないのだ。もっと性的な、大河の女に触れることになる。

 見たことも、触れたこともない、大河の身体。

 服の下にあるその輪郭を知る機会があったのは、海に行ったときくらいのものだ。大河の家に泊まった日でさえ、そういうことにはならなかった。

 

「……ユウ先輩の目、すごくエッチです」

「――っ」

「でも、嫌ではないので。私も……その、ユウ先輩にそういう目で見られたいって気持ちはありますから」

 

 これはずるい。

 そんなこと言われたら、色んなことを想像したくなるじゃないか。

 熱を帯びかけた思考を誤魔化すように、俺は余裕ぶって返す。

 

「アホ。顔赤くしてるくせに何言ってんだよ」

「なっ、そ、それは慣れてないんですから許してください。というか、ユウ先輩の顔だって真っ赤じゃないですか。……言われ慣れてるはずなのに」

「……慣れてねぇよ、大河に言われるのは」

 

 相手が大河でなくたって、慣れた返しなんてできる気がしない。

 36度程度の微熱を分かち合えることの幸せを、今の俺は容易く想像できるから。

 

「はぁ――っ!!」

「ちょっ、ユウ先輩!?」

 

 熱くなりかけた自分を冷やすように、俺は頭から雪に突っ込んだ。

 柔らかな雪はキンキンと頭を冷やして、ニット帽越しにぐじゅぐじゅと濡らす。

 

「くぅぅ……冷てぇ」

「当たり前です。そんなことして、風邪引いても知りませんよ?」

「この程度で風邪なんて引かねぇよ。今日の夜、大事な約束があるからな」

 

 彼女たちは魅力的な女の子だ。澪とは体を重ねたことがあるし、雫や来香とは未遂に至っている。彼女たちのそういう部分から目を背けるのはむしろ誠実じゃないと思う。

 だがそれでも、彼女たちの女の部分に自ずから触れるのは理想を描き切った後でありたい。

 

「そう、ですね」

 

 大河がハッと思い出したような顔をする。

 転がしていた雪玉に触れながら、彼女はぽつりと呟く。

 

「昨日あのメッセージが届く前、皆で恋バナをしていたんです」

「恋バナ、か」

「姉さんの班も来て……皆で好きな人の話をしてました」

 

 女子部屋でも男子部屋と同じようなことをしていたのか。

 大河はさっきまでと打って変わった真剣な声色で、まるで自分に問いかけるように言う。

 

「話を聞きながら、思ったんです。月瀬先輩と私たちは似ているな、って」

「まあ、な。似てたからこそ、夏みたいなことになったわけだし」

「違いますよ。美緒さんの話じゃありません」

 

 俺の言葉にかぶりを振ると、大河は遠くで雫と雪だるまを作っている来香を見遣る。

 

「私たちの恋は、よく似ていると思うんです。

 ずっと傍にいた幼馴染同士で。

 分かり合っている妹同士で。

 しかも後から仲間入りした者同士です」

 

 なるほどな、と思った。

 確かにそういう意味でも、よく似ている。或いは、共通点を見出そうとしているだけなのかもしれないけれど。

 恋の在り様が似ていると気付いて、大河は何を考えたのだろう?

 それが知りたくて視線で言葉の先を促すと、真摯な視線を返された。

 

「ユウ先輩は、どう思いますか?」

「どう、って?」

「似ている私たちの恋をどう思うか、ってことです」

 

 改められても、やっぱりその質問は抽象的で答え方に困るものだった。何を求められているのかが分からない。

 どう思うか、なんて。

 ――嬉しいよ

 そう思う以外、ないのに。

 

「どんなに似てても、大河の恋は大河の恋だろ。来香の恋が来香の恋でしかないように」

「…………それはそう、ですね」

 

 たぶん求められていない言葉。

 でも言っておきたかったから言って、やっぱり違うな、ってなる。

 大河は何かを言いかけ、ふるふると首を横に振った。

 

「すみません、早まりました。……答えをいただけるのは今日の夜。そう思っていいんですよね?」

「ああ、そうだな」

「私が聞きたいことの答えも、きっとその答えに含まれていると思うので。今はこれ以上聞くのはやめておきます」

「そっか」

 

 だとすれば、と大河の聞きたかったことに見当がついてしまう。

 でも大河が今日の夜に出す俺の答えを信じてくれているなら、今は口にすべきじゃないと思った。

 

「ほら、雪だるま作ろうぜ。こういうのも楽しいだろ?」

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