【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。 作:黒い床
「はい、じゃあ友斗先輩が好きなホームビデオ的感動展開も終わったところで、割と真面目なお話をしましょっか」
「すげぇ……たった一言で全部台無しにしたぞ。別に俺、ホームビデオ的な感動展開が好きなわけじゃないからな?」
「え~そうなの? そーゆうのが好きって聞いたから三人に合わせたのに」
「来香に至っては三人とろくに合わせられてなかったからな?」
「えへへ、新妻っぽかっただなんて照れるよ~」
「言ってねぇよ!」「言ってないから」
「……月瀬先輩って逞しいですよね」
玄関でのやり取りを終えて。
荷物を部屋に置いて着替えてきた俺は、リビングに降りてきていた。話すべきことを全部今日に丸投げした分、これからのことをきちんと話さなきゃいけない。
さてどう話したものかと考えつつ学校で貰ったチョコを冷蔵庫に仕舞おうとすると、
「……一個増えてる」
と澪に目敏く気付かれた。
「み、見間違いじゃないか?」
「そーやって誤魔化すんですかー?」
「ま、まさかぁ。一ミリも疚しいことなんかないんだし、誤魔化したりするわけないだろ? なあ、大――」
「ユウ先輩」
「はい、すみません」
この場に俺の味方はいなかった。
今更思うんだけど、ハーレムって男がぼっちなだけじゃない? 俺ってば、圧倒的な子軍なんだが……?
「まぁ、いーですけどね。私たちがいるからって理由で女の子のチョコを食べずに捨てるのもサイテーですし」
「そ、そうだよな」
ほっと胸を撫で下ろす俺。晴彦も如月と付き合ってるくせに、他の女子から本命チョコを貰っていたしな。もちろん告白はきっぱり断るべきだろうが、相手の想いまで無下にしてしまうのは違うような気がしていたのだ。
ただ、と時雨さんとの話が脳裏にチラつく。
『その『もしも』次第で答えが変わるなら、これから『もしも』が積み重なるかもしれないよね。六人、七人、八人……って。キミの答えが変わらない保証なんてどこにもない』
誰も選ばないことはつまり、後から入ってくる誰かを拒まないことにもなってしまう。
恋人や夫婦であれば、その関係を理由にできる。交際している相手にアプローチすることは世間一般の考えからすれば、『悪いこと』だ。大抵は片思いのまま踏み止まる。
だけど、そういう関係がなければ。
彼女たち四人も、他の女子も、名目上は同じということになってしまう。
もちろん気持ちの上では全く違うのだけど。
その辺も話し合って決めていかないとな。
そんなことを考えながら適当なところに腰を下ろすと、澪と来香が俺を挟んで座った。
「な、なあ。澪も来香も近くないか?」
「さあ。気のせいじゃない?」
「あたしは家ではこの距離感がデフォだもん。甘えん坊なんだー」
「ま、寒いからね。うちはこたつないし、こうやって固まってた方があったかいでしょ」
「そーそー! あたしのこと、ぎゅってしてくれてもいいんだよ♪ あったかくしてほしいなぁ~」
「ちょっ、二人とも!?」
言ってる傍からどんどん近づいてくるし。それどころか、腕まで絡めてくるし。澪が右腕を、来香が左腕をホールドし、ほとんどハグみたいな形になっていた。まるでサンドウィッチである。
……どっちの腕にも慎ましやかな感触が当たっていて、色々とヤバい。相手が雫と来香じゃなかったのが救いか――痛っ!?」
「つ、強ぇよ! 腕が、いたっ」
「今、変なこと考えてたでしょ。そういうのすぐ分かるから」
「ちっちゃいって思うなら、その分いっぱい押し付けて柔らかさを感じてもらわなきゃいけないもんねっ」
「なっ……」
「……雫ちゃん。二人とも何やってるの?」
「貧乳ヒロインは貧乳いじりに敏感だからね~」
「なるほど」
「説明してないで二人を止めてくれませんかね!?」
いや、手加減はしてくれてるからちょっと痛い程度で止まってるんだけどさ。胸の感触を味わえてトータルではプラスだし。
「ふむふーむ。ね、大河ちゃん。あのさ――」
「うん、うん…うん。……了解」
「おい待て何をこそこそ話してるんだっ?」
こちらの質問など聞き受けもせず、大河が後ろに、雫が前にちょこんと座った。
えっ、えーっと……?
「じゃあ、私は友斗先輩の前を貰っちゃいます♪」
「わ、私は後ろからです。……恥ずかしいので」
「なっ、はっ、はぁ?」
大河の両腕がやや遠慮がちに俺の腰を抱く。ふにゅっと背中に柔らかいものが当たる……だけならまだよかったのだが、大河の吐息がほぼダイレクトで耳にかかってめっちゃこそばゆい。
一方の雫は、前を向いたまま俺に寄りかかってくる。まるで椅子の背もたれにでもなったようだった。首だけを回してこちらを見る顔には媚び甘えるような色も見え隠れしており、めちゃくちゃ可愛い。
「ぐぬぬ……雫ちゃんもなかなか策士だね。そーゆう甘え方もありか……」
「ふっふっふー♪ 萌えシチュの知識なら、数ある作品を制覇してきてる私が有利ですからね。メスガキ先輩みたいにグイグイいくだけが正解じゃないんですっ!」
「ふんっ、あたしだって負けたわけじゃないもん。ね、兄さん?」
「っ、来香――んっ」
いつの間にか服の裾から来香の手が入ってきていた。
脇腹や腹筋をつーっと指先でなぞられ、何とも言えないゾクゾクとした感覚に襲われる。変な声が漏れないように口を閉ざした。
「ふぅん? 来香がその気なら私も――」
「なっ、澪まで!?」
「気持ちイイとこ、私は知ってるしね」
好戦的に笑って、服に手を入れてくる澪。しかも脇腹の辺りを這った指先は、そのまま胸の辺りに向かおうとしていた。
ねぇそれはやりすぎじゃない!?
「ユウ、先輩? どうかしましたか……?」
「~~っ」
大河が喋ると息が耳にかかる! しかもその恥ずかしそうな声が可愛すぎる!
左も右も後ろも刺激がヤバい。
せめて逃げ道は――と雫へ視線を遣れば、
「えへへ、友斗先輩可愛いっ♡」
「~~~~っ」
蠱惑的な笑みが待っていた。
これ、やっばいな……!? マジで四方八方囲まれていて、どこにも逃げ場がない。幸せの
「――って、そーじゃねぇ! っぶねぇ、流されそうになった……! これから真剣な話するんだし、これじゃどう考えても話にくいだろうがっ!?」
「ちっ、バレたか」
「バレるわ普通! いいから四人とも離れろ。ちゃんと話し合うんだから」
「兄さんのけちんぼ」
「ちょっとくらいいいじゃないですかー」
「ちょっとじゃねぇんだよなぁ!」
どこか『ちょっと』だったのか教えてほしい。
めっちゃ可愛いことこの上ないんだけど、ここは心を鬼にする。節分は何もせず終わったけどな。
「ケチでもなんでもない。つーか、大河。お前が唯一のツッコミ要員だろうが」
「うっ……だってしょうがないじゃないですか。私だって、たまにはユウ先輩と密着したかったんですもん」
「――っっ!?」
だーかーら!
そういうのはズルいって言ってるよね? ……いや言ってねぇな。一言も言ってないわ。言えるわけもない。負けを認めてる感じになっちゃうし。
けぷんこぷんと咳払いをしてアピールすると、四人は渋々といった感じで離れてくれた。離れたら離れたで名残惜しくなるんだけどな。全員で雑魚寝とかできたら幸せだろうなぁ……。
と、そんなことを考えつつ、五人で卓を囲む。
「えー。じゃあ第一回〈水の家〉会議を始めるぞ」
「そのダサい名前はやめて」「真顔でその名前を言うのはやめてもらっていいですか?」
「辛辣すぎる……」
「どんまいです、友斗先輩。私はナイスな名前だと思ってますよ!」
あっ、そう……。クソダサいセンスの雫に肯定されると複雑だ。
と、来香が不思議そうに首を傾げていることに気が付く。
「ねぇねぇ。〈水の家〉ってなに?」
「あれ、話してなかったっけか」
「されてないよ~? あっ、でも見覚えがあるかも。ライングループにそんな感じの名前がついてた気が……」
以前、来香にスマホを貸したことがある。月瀬家に泊まることを澪たちに伝えようとしたときだ。あのときライングループを見たのだろう。
隠すことではないし、むしろ来香にも〈水の家〉の一員になってほしいと思う。俺は手短に〈水の家〉のことを説明した。
「――ってわけだな」
「ふーん……兄さんらしいね。そーやって入江会長のことも連れ込んだんだ?」
「人聞きが悪い言い方だあ……」
「でも事実でしょー? ほんと寂しがり屋さんなんだから」
ふっ、と仄かに大人びた微笑を浮かべる来香。
そうやって不意にブランケットみたいな温かい表情を見せるのもズルいと思う。ふにゃふにゃと心が腑抜けそうになり、こほん、と咳払いをする。
「そんなこんなで、来香も今日から〈水の家〉だ」
「もうすぐ百
「月
「姉さん、いちいち細か~い」
「ツッコまないと正妻面するからでしょ」
「はいはい、話を進めるぞ」
言い争う彼女たちを見てるだけでも楽しいっちゃ楽しいんだが、いつまでも話が進まない気がするので間に割って入ることにする。
「議題は今後どうするか、だな」
「アバウトすぎる」
「しょうがないだろ、他になんて言ったらいいか分からなかったんだから」
考えるべきことは山ほどある。つーか、俺自身が余計に増やしてる部分もあるしな。対バンライブとか、マジでどうするんだよって感じだ。
とはいえ、最初に話したいのはそちらではなく、もっと重要なことである。
「まずはやっぱり、俺たちのこれからについて話したい。いいか?」
四人それぞれがこくりと頷く。
俺はどう話したらよいものかと迷いつつ、口を開いた。
「制度的な繋がりは昨日話したような方向で解決しようと思ってる」
「私が澪先輩と、月瀬先輩がユウ先輩と結婚するってことですよね」
「そういうことだ」
無論、パートナーシップ制度は完全ではない。っていうか、もしこの制度が完璧ならそもそも日本は同性婚が認められている。未だ実際の結婚と同格ではないのが口惜しいところだ。とはいえ社会の流れを見れば、これから更にパートナーシップ制度が拡充されていくことは予想できる。
いずれにせよ、そんな社会情勢はどうでもいい。俺たちはただ出来合いの制度を都合よく悪用するに過ぎないのだから。
「今日話したいのはそういう制度のことじゃない。実際にどんな関係になっていきたいかってところを擦り合わせたい」