【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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終章#43 〈水の家〉会議(3)

「っと、これでひとまず俺たちの今後についてはまとまったってことでいいかな」

 

 話し合いはまだまだ続く。

 俺たちの関係を整理することはできた。複雑でぐちゃぐちゃだけど、俺たちは恋人だ。或いは、その関係こそが『ハーレムラブコメ』の参加券なのかもしれない。

 そんなことを考えていると、大河が手を挙げて言った。

 

「あの。ユウ先輩、気が早いかもしれないんですが……できれば一度、祖父のところに挨拶に行きたいです」

「ん、あの祖父さんのところにか?」

「はい。父と母はすぐに納得すると思うのですが、祖父は一筋縄でいかないと思うので……早いうちに話をしておきたいんです。姉のこともありますから」

「なるほどな」

 

 言いたいことは分かった。

 年齢的に考えても、今から結婚することはできない。だから結婚の挨拶なんて気が早いかもしれないが、何せあの家のことだ。普通の男女交際ですら簡単には認めてくれていないだろう。まして、入江先輩と時雨さんが突撃した後だ。せめて大河は普通の結婚を、と反対される可能性もある。

 

「うちもかなー。お父さんもお母さんも心配性だし、兄さんと婚約するって話は先にしておきたいな。なんなら今日一緒に帰ってくれても――」

「それはないから。てか、今日は来香も泊まっていくんじゃないの?」

「朝帰りってことで」

「しねぇよ! ……ていうか、え? 来香、今日泊まんの?」

 

 澪の口から飛び出した事実が衝撃的すぎて、話が脱線すると分かっていながらもツッコんでしまう。

 俺以外の面々は、当たり前じゃん、みたいな顔をしていた。

 

「だって、今日はこの後いっぱいやることあるでしょ~? どーせ入江会長が泊まってくのに、あたしだけ帰るのとかなんかヤな感じだしさー」

「ま、まぁ、そうかもしれないけど」

「ちゃんと『彼氏の家に泊まってくる♪』って言ってきてるから安心していいよ!」

「一ミリも安心できない報告をありがとう! ……よく許してくれたな」

「お父さんは怒ってたよ?」

「一ミクロンも安心できないな!?」

 

 ただでさえこの前やらかしたせいで来香の両親からの評判はあんまり良くないのに……まったく、思い切ったことをしてくれる。

 だがまぁ、来香が泊まっていくのはシンプルに嬉しい。部屋はどうするかとか、色々と考えなきゃいけないことは増えるが。

 

「でも確かに、大河と来香の家族には話をしに行きたいよな」

「それは私も賛成。けど、話すにも色々ある。どこまで私たちの関係を説明するの? 嘘を吐くなら、トラ子の方には私が行くことになるだろうけど」

 

 もっともな疑問を澪が口にした。

 離れたくないから一生ラブコメし続けます。そのために形だけ結婚して家族になります――そんなことを馬鹿正直に話せば、当然反対されるだろう。特に入江家と月瀬家は結構危うい。かたや厳しい家庭、かたや普通の家庭だ。

 

「私は」「あたしは」

 

 大河と来香の声が被った。

 来香が手を差し出して大河に先を譲る。一瞬気まずそうにするものの、すぐに大河は俺たちに向けて言った。

 

「私は、きちんと全てを話したいです。澪先輩と結婚することも、それが五人でいるための手段であることも」

「それで猛反対される可能性だってあるよ。特にトラ子の家は厳しいんだし、下手すれば実家に帰らされたりするかもしれない」

「それでも家族だから。分かってもらう努力がしたいんです」

 

 澪の指摘に、しかし、大河はきっぱりと言い返す。

 その姿はとても最近見た誰かさんに似ているように思えた。

 

『もう二重人格じゃないし、わざわざこんな風に説明する必要なんて多分ない。それでもあたしは分かってほしいって思った』

 

 その誰かさんも、自分が口にしたことを思い出したのだろう。どこか祈るような大河の横顔に、小さな苦笑を浮かべていた。

 やっぱり似ているんだろうな、と思う。

 根っこは真面目で、向けられた愛を無下にはしないんだ。

 

「あたしも入江会長とおんなじかな~。本当はあたしだけの兄さんじゃないのに、そこで嘘を吐くのはかっこ悪いからヤだ」

「へー、そこは正々堂々なんですね。友斗先輩と結婚したらしれっと私たちを蔑ろにしそうだなーとか思ってたんですけど」

「雫ちゃんも大概酷いな……そーゆうだまし討ち、したことあった?」

「ありましたよ!? スキー場で散々卑怯なことしてきたの、忘れたんですかっ?」

「あれはだまし討ちじゃなくて知略だからセーフ!」

「そうはなりませんからねっ!? ……まぁ、何となく分かりました。私も来香先輩の立場だったら、同じように思うでしょうしね」

 

 何はともあれ、大河も来香も、家族に嘘を吐くつもりはないらしい。問いかけた張本人であるところの澪も納得している様子だ。ま、今回もあくまで俺たちを想ったがゆえの質問だったのだろう。

 

「それじゃあ、どっちの家にも五人で行くとするか」

「ん、分かった」

「了解ですっ。……けど、五人だと流石に大所帯ですよねー。移動とか色々大変かもです」

「そこは……俺の方で何とかする。当てもあるしな」

 

 流石に入江家まで電車で向かうのは骨が折れる。かくなる上はあの人に相談しよう。一度だけ助けてくれるって言ってたしな。

 来香の方も冬夜さんと繋がっているので日程調整はしやすい。どちらも俺の方で予定を詰めるということで話が落ち着く。

 

「あ、あの。できれば、ユウ先輩たちのご両親にも挨拶させていただきたいです」

「「「あー」」」

 

 言われて、はたと気付く。

 こうなったことは父さんと義母さんにも伝えなきゃいけないよな。なかなか顔を合わせる機会がないだけで、家族仲自体は良好なのだ。

 

「お父さんか……あたしもフツーに会いたいな。結婚だけじゃなくて再会の挨拶もしなきゃだし」

 

 それもそうか、と思う。

 来香の中に美緒の部分があるのは確かなのだ。一度くらい百瀬美緒として父さんと話してもいいかもしれない。

 

「ま、そうじゃなくても可愛い娘を二人も嫁に貰うわけだしね」

「ですですっ、ちゃんと挨拶してもらわなきゃ困ります!」

「そうだな。きちんと挨拶して、嫁に貰うよ。四人まとめて、な」

 

 いざ自分で口にすると、羞恥心がヤバくてどうにかなりそうだなこれ。

 こほん、と咳払いをし、話を進める。

 

「まぁそういうことで、父さんと義母さんにも時間取れないか聞いとく。そっちも細かいことが決まったら伝えるわ」

「りょーかい♪」「分かりましたっ」「ん」

「……結婚の挨拶しにいく側が場をセッティングするのって考えてみるとおかしな話ですよね」

「マジでそれだけど冷静になると色々考えちゃうから言うな」

 

 実際、俺が話をまとめるのが一番早いしな。

 ともあれ、これで俺たちのことについては話し終えただろう。

 他にはないか?と視線で尋ねると、澪がやけに真剣な顔で手を挙げた。

 

「一つ、大切な相談があるんだけど」

 

 ……なんだろう、この感じ。

 そこはかとなく既視感(嫌な予感)がある。俺が眉をひそめていると、澪は見たことないほど真面目腐ったトーンで言った。

 

「エッチはいつから解禁?」

「ぶふぅぅっ!?」

 

 こいつ、案の定とんでもないこと言いやがったな……!?

 げふげふっと咳き込んでいる間に、澪はどこか不服そうに話を続けた。

 

「だって大切なことでしょ? 付き合うってことはそういうことだってしていいわけだし……っていうか、私は友斗と今すぐにでもしたい。エッチ、我慢してるもん」

「ッ……お、おう」

「でもそういうことで抜け駆けするつもりもないし。だからこそ確認してるの」

「い、一理なくもないのか……?」

「ユウ先輩騙されないでください」

「だ、だよな」

 

 うんうん、と俺は頷く。

 澪の欲求が半端ないのは俺にだって分かる。最近もほとんど毎晩一人でシてるのが薄っすら聞こえるしな。

 戯言だと一蹴してもいいのだが……考えなきゃいけないことの一つではあると思う。来香の一歩手前までシちゃったから突き返しにくいし、ぶっちゃけてしまえば俺だって今晩にでもシたい。思春期の男子、しかも女の味を知ってしまっている男を舐めてはいけない。

 

「俺はそういうことは、全部終わってからがいいと思う」

「挨拶とか感謝祭とか、ってこと?」

「あぁ。もちろん終わったらすぐシようって話じゃないぞ。俺や澪はともかく、三人は初めてなわけだからな」

「分かってる。目安として、それまでは考えずにいようって話でしょ?」

「そう考えてもらえるとありがたい。今は他にやらなきゃいけないことが多いしな」

「ま、妥当なところか……久々にシたら熱中しちゃいそうだし」

「…………」

 

 ねぇ誰か、うちの彼女がきわどい発言ばっかりするせいで俺の理性が悲鳴を上げてるんですけど、どうにかしてくんない?

 助けを求めて三人を見ると、雫と大河は恥ずかしそうに俯き、来香だけが前のめりだった。

 

「う、ぅぅぅ……友斗先輩も思ってたよりえっちぃよぅ」

「終わったら……貰ってもらう……?」

「あの日の続きかぁ……楽しみにしてる、ね?」

 

 ……来香はこういう話には意外と免疫があるらしい。顔が真っ赤な辺り、恥ずかしくないわけじゃないんだろうが。

 一方、雫と大河はすっかりのぼせているようだった。やや目の焦点が合ってないような気がするんだが、大丈夫か? おーい、と声をかけてみるが、返答がない。ただの屍のようだ。違う、ただの天使のようだ。

 

「二人はキャパオーバーっぽいし、続きはご飯食べながらにしよ。作ってくるから」

「あっ、姉さん。あたしも手伝うよ」

「料理できるの?」

「当たり前じゃん。運動以外であたしにできないことはないもん。だって天才だし」

「……ムカつくことに自信過剰じゃないんだよなぁ」

 

 ぶつぶつと言い合いながら、来香と澪がキッチンに向かう。

 幸せだなぁ、と口の中で呟いた。

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