【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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2章#22 出場競技決め

 翌日。

 LHRを迎えた二年A組は、体育祭の参加種目決めに取り組んでいた。綾辻に黒板への書き込みを任せ、俺は話し合いを進める。

 

「――というわけで、今年の競技は今説明した感じになります。全体競技以外は、原則一人二種目ですね」

 

 体育祭の種目には様々なバリエーションがある。

 長距離走やリレーを始め、騎馬戦や二人三脚、玉入れや借り物競争など……まぁ色々だ。ルールにおふざけ要素が混じるレクリエーション的なものもある。借り物競争とか、毎年結構大喜利と化しているらしい。

 

 そんな状況だが、どのクラスも本気で勝ちに行く。

 うちの学校では一学年につき8つあるクラスを4つずつに分け、A~D組が赤、E~H組が白になって争う。

 

 前にクラスごと八組でやろうとしたら、色々と混乱が起きたので断念したそうだ。クラスカラーが、売れない地下アイドルのメンバーカラー並みに区別つかなくなったとのこと。どうでもいいね、うん。

 

 とにかく。

 二年A組は燃えているのだ。何しろさっき、担任が『A組の戦績がよかったら、クラスの皆にハーゲン〇ッツ奢ってあげるわよ』的なことを言ったからな。動機が不純とか言ってはいけない。

 

 暫く待ってから、まずは希望を取ってみることにした。

 

「よし、じゃあ希望者を募ります。これやりたいよって競技があったら手を挙げてください」

 

 一つ一つ、挙手を求めていく。

 この一か月ほどでクラスメイトの名前は把握した。顔を見れば出席番号と結びつけることもできるので、綾辻に番号を伝えて記入してもらう。

 

 そうして最後の競技まで希望を取ると、だいたいクラスの半分ほどが手を挙げることになった。

 逆に言えば残り半分は一度も手を挙げていない、ということ。

 別にやる気がないわけではない。むしろ手を挙げていないのは、身体能力に自信があるメンツだった。

 

 予想できていた、というかこうなることを意図していた。

 体育祭にやる気があると言っても、運動が苦手な人は少なくない。そういう人が選ぶのはまずレクリエーション要素の強い競技だから、その中で好きな競技に出てほしかったのだ。

 現にリレーや長距離走、騎馬戦、二人三脚などのガチ競技には誰も立候補していない。

 

「オッケー。とりあえず今手を挙げてもらったところは決定でいいかなって思うんですけど、どうですか?」

 

 しん、と教室が鎮まる。

 クラスの声を代弁するように声を上げたのは八雲だった。

 

「いいんじゃねぇの、それで。借り物競争で彼女を連れて行きたかったけど、そんなことしたら別の行事になっちゃうしな」

「そうですね、八雲くん。それ以上惚気るようなら私たち男子で協力してあなたを一狩りいかねばなりません」

「「「そーだそーだ!」」」

「いつの間にそんな団結してんだよっ⁉」

 

 いやほら、人が団結するのに必要なのは敵だって言うじゃん?

 美少女と仲がいいことより、彼女がいることを堂々と惚気ることの方がギルティーなのである。

 だから女子たち、そんな呆れたような溜息を吐かないで。ぼっちが折角クラスに馴染めてるんだから祝福しよ?

 

「とはいえ問題は他の競技か……やっぱりメイン五競技が悩みどころですね」

 

 メイン五競技とは、リレー、長距離走、二人三脚、綱引き、騎馬戦のことを指す。

 このうちリレー、綱引き、騎馬戦の三種目は学年混合となっている。長距離走は男女一人ずつ、二人三脚は男女ペアで一組出さねばならない。

 これらの競技は、体育会系の部活に所属している奴らが大活躍することで知られる。まぁ時雨さんみたいな例外はいるけど。

 

「やっぱり綱引きは力がある奴らがいいよな」

 

 と言うのは、柔道部の剛山くん。下の名前が武史(たけし)だと知ったとき、あまりにも似合いすぎてて大爆笑したのは内緒だ。

 

 うんうん、と周囲の奴らも同調する。

 その声を受け、剛山くんとその周りの二名が手を挙げた。

 

「そういうことなら俺たちに任せてくれよ。力には自信があるんだ」

 

 柔道部とレスリング部か。

 どちらもめぼしい成績を出せてはいなかったはずだが、俺なんかよりも体格がいいのは明白だ。マジでごっついもんな、こいつら。

 特に否やの声は上がらないので、綾辻に彼らの出席番号を伝えた。

 

「同じ理由で今の三人には騎馬戦の土台をやってもらいたいって思ったんだけど、どうですか?」

「そういうことなら俺、騎馬戦の騎手やるよ。去年も騎手やったしな」

 

 と言い出したのは八雲。

 サッカー部のくせに手を使う騎手なのか。イケメン眼鏡のせいで似合っているように思えるからズルいな。

 騎馬戦は男女で一機ずつ出せばいいことになっている。バレーボール部とテニス部の女子が立候補してくれたことで、騎馬戦の出場選手も決定した。

 

 あとはリレーと長距離走と二人三脚か。

 たった三種目になったことで、まだ出場競技が決まっていない奴も限られてくる。

 ……俺とか。

 

 ミスったなぁこれ……俺がこのうちの二つに入らなきゃいけないとか地獄すぎるだろ。二人三脚でやんわりと女子から拒絶されたら軽く死ねるし、長距離走はガチ辛い。唯一マシに見えるリレーも、体育祭のラストにやることが決まっているので荷が重い。

 

「ええっと……うーん……あー……あと、どうしましょうか」

「友斗、どうして急に歯切れが悪くなったんだ?」

「な、なってねぇし」

 

 嘘だけど、今は嘘をついていることに対して良心の呵責を覚えている余裕はない。

 三つのうち一番NGなのがどれかを考えているのだ。

 

「俺、長距離走やるよ」

「イケメンなんだから二人三脚やれよ」

「急に口調が雑なんだけど⁉ っていうか、俺を長距離走にしないのは勿体ないぞ? 自分で言うのもなんだけど、去年は長距離走で一位だったし」

「ぐぬぅ……」

 

 ぐうの音も出ない、とはこのことか。『ぐぬぅ』の音なら出たけど。

 まぁ二人三脚って密着するしな。八雲を二人三脚に選んじゃったばっかりに恋人とギクシャクしてしまうのは申し訳ない。勝利のためにも甘い展開のためにも、ここは渋々我慢するか。

 

「分かりました。そういうことなら八雲が長距離走ってことで。えっと女子は……」

「あっ、それなら私がやりたい」

「え?」

 

 その声は、俺の後ろから聞こえた。

 綾辻はちょこんと手を挙げている。

 

「私走るの好きだし。去年の体力テストでもいい感じだったよ」

「そっか。じゃあ綾辻に任せる。それでいいですか?」

 

 綾辻の運動神経のよさは、クラス全体の共通見解のようだ。快い肯定が返ってきたところで、話を次に移す。

 残るは二種目。

 クラス的にも、俺の出場枠的にも。

 

「え、ええっと……に、二人三脚やってくれる八雲」

「ついさっき『まぁ彼女とトラブルになるのも申し訳ないしな』的な顔で長距離走に出ることを認めてくれた学級委員はどこいった?! というか残り二つは必然的に選手が確定するじゃん」

「なぜに?」

 

 はてと首を傾げると、綾辻と八雲が、はぁ、と溜息をついた。

 

「あのさ、百瀬。ここに書いてあるじゃん。長距離走とリレーは、健康の観点から出場選手が重複できないの。だから私は必然的に二人三脚に入るしかない」

「で、友斗はまだ一種目にも出てないから他の男子が二人三脚には入れない。そしたら残りは男子も女子もリレーで決まる」

「…………そういう、ことか」

 

 完全にハメられた。いや誰も策略を巡らしていないので勝手にハマっただけか。クラスのことを考えすぎて自分のことは失念していた。

 でもまぁ……最悪の事態は避けられているかもしれない。

 二人三脚の相手が綾辻ならメンタルにダメージを追うことはなかろう。せいぜいリレーで荷が重いことくらいだが、二年生の後に三年生が走るので戦犯感は弱い。

 

「分かりました。じゃあそういうことで」

 

 しょうがないから、結果オーライというありきたりなハンコを捺しておこう。

 そんなことを考えながらその他諸々の連絡事項を伝え、LHRは終わった。

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