『空崎ヒナ』は、もう居ない   作:焼け野原主任

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どうも、焼け野原主任です。

はい、何とですね、ドレスヒナちゃを20連で引けました。
クックック…、私の勝利です……。

では、どうぞ…。


風紀委員会の奇妙な共闘

「……」

 

 ガタゴトと揺られる荷台、今まで感じた事のない初めての感覚。

 鋼鉄のバイザーの付いた狭い窓から見える景色は地震でも起こったかの様な凄惨な光景で、これまで……そう、今日まで私が一生、見る事の無かったであろうえげつない光景が見える。建物は崩れ、ガラスの破片が散乱し、トリニティの生徒や正義実現委員会、アリウス、我らがゲヘナの、風紀委員会に万魔殿の制服など様々な学校の生徒が死体となって織り混ざっている。

 

 その燦々たる、……正しく死屍累々という言葉を体現した様な光景に苦い唾を飲み込む。

 

 ……だが、今、私の中にある訳のわからない、と言うべきか、私の脳を支配している一つの、蟠ったこの不可解さと緊張感の原因は目の前の凄惨な光景とは全く違う。

 

 私、便利屋68社長、陸八魔アルがゲヘナ唯一の法治組織こと、風紀委員会のトラックに乗り、目の前にはその風紀委員会の長にしてゲヘナ最強の称号を持つ……、そう、空崎ヒナが目の前にいるからだ。

 

 なぜこうなったか、遡る事40分ほど前……。

 

 

 


 

 

「社長! 早く!」

「わっ……、わかってるわよ!! ……ったく! なんで風紀委員会にここにいるのがバレるのよ!?」

「そりゃ〜、アルちゃんの詰めが甘いからでしょ、せっかく依頼を達成したからってトリニティに旅行に行くわよ〜……って、それで割と良いとこのホテル使ってんだからさ、風紀委員に見つかっても仕方ないって」

「あ、アルさまぁ〜!」

 

 カヨコに急かされ、ムツキに当たり前でしょ、と言わんばかりに言われて、私は自分の不運さに半泣きで絶叫しながら、着替えもままならず旅行カバンに荷物を投げ込む様に詰めていく。

 その時は……大慌てで持ってきていた旅行カバンに着替えにお金など……まぁ、言うなれば必要な荷物を詰めていた私を除き、みんな既に全部荷物を纏め終わっていた。

 もうすでに周囲には完全武装の風紀委員がパッと見ただけでも二百名……約一個中隊規模の歩兵の軍団がこのホテルを囲い込んでいたのだ。

 

 ……ちなみに、なんでこんなトリニティのホテルに居たかというと、さっきムツキが言った通り私たちは直近のとある大口の依頼、……まぁ、細かい所は企業秘密だけれど、簡単に言えばブラックマーケットの巨大武装組織の襲撃、殲滅を、割とあっさり完遂してしまった私たちはその前のアビドスの皆が化け物だったんだね〜なんて事を言いながら依頼料を受け取った。

 

 で、割と大口だったのも相まって結構な額の報酬をいただいたから、トリニティに旅行に行ったの、色んな所を回って、いろんな物を食べて、それで満足感を覚えながら皆で寝たのよね。

 

 ……でも、あの爆発があった頃かしら、私はまだその時目が覚めてなかったからあまり細かい事は知らないし、大体先に起きてたカヨコとムツキに聞いたくらいのだけれど……、そこから色んなとこから銃声が聞こえたの。

 別に、キヴォトスじゃ銃撃戦なんて珍しい話ではないし、その時も先に起きてた二人は特に怪しまなかったんだけど……、その時から耳が割れるんじゃ無いかと言うレベルの怒声が聞こえて、一体何事だとカーテンを開けてみればさぁ大変。

 

 万魔殿のロゴが付いた、あの……誰だっけ、生徒会長の……、誰だっけ、……思い出せないや、まぁいいや、その人が乗ってたであろう大きな飛行船が大爆発を起こして墜落して……、で、なんか巡航ミサイルのような物がトリニティの古聖堂に落ちたらしいの。

 

 ……そんな大変な事が起こったかと思えば幽霊みたいな集団と正義実現委員会が戦ってるし、そこら中で火の手は上がるし、まぁ……なんというかその時は実感はなかったけれど、何か危険な事が起きてるんだなぁ〜……って、そんな感じ。

 

 で、漸くその頃に私はカタツムリが伸びる様に大きな欠伸をしながら起き上がり、眠りから覚醒したの。

 

「ん……あ、おはほう(おはよう)……」

「社長、不味いかも、早く準備して」

「……え? 何?」

「ほーら、ハルカちゃん起きて〜」

 

 私が目覚めた頃、もうカヨコとムツキはきっちり着替えて銃を持ってたし、二人とも謎の緊張感を漂わせながら、カヨコは窓の先を様子を伺う様に観察しながら待機して、ムツキはもうハルカを起こしにかかってたのだけれど、その時まだ寝ぼけてたのも相まって全くその緊張感に気付かなかったし、今となればそこで何かを察しておけばよかったなぁ……って、思うわね。

 

 まぁその頃かしら、歯磨きだの洗顔だの、色々済ませて寝巻きからいつもの服に着替えようとした頃……。

 

「……社長、銃撃戦が起きてる」

「? どうしたのかしら、別に銃撃戦ぐらいいつもの事でしょう?」

「それはそうだけど……、いつもと様子が違う、早く着替えて荷物の準備して」

「はぁ〜い……、着替え何処に置いたかしら……」

 

 カヨコがこっちを一瞥してそう云うと、また再度窓の方に目線をむけ、窓際に寄って外の様子を観察している。

 ……その時私はまぁ別に他の人もいないし、寝巻きを脱いで下着姿のままいつもの服とジャケットを探してたのだけれど……、事件の発生はここからね。

 その時私は眠たい目を擦りながらスカートを腰まで引き上げ終わり、ブラウスを着ようかとしていた頃。

 

「ねぇねぇアルちゃ〜ん、外見てみな〜?」

「何よ……」

 

 ムツキがいつも通り揶揄う様な口調で私を呼んだ、一体何事だと目を細めてみてみれば、窓の外にはどこか見覚えのある様な、黒い軍服の様な制服が防弾チョッキの隙間から覗かれている。

 ……なんだか、どこかで見た事のある制服ね……。

 私が怪訝な顔で窓から見えるその、このホテルを囲う様に展開している集団を見つめていると、カヨコが呆れた様に頭を抱えて深くため息を吐き、ムツキはいかにも面白そう表情で私を見ている。……? 何かおかしいことでもあったのかしら? 

 

「あれ、風紀委員会だよ、アルちゃん?」

「……へ?」

 

 ムツキの放った言葉に私の思考が一瞬フリーズする。

 ……ふうきいいんかい? ……風紀いいんかい? …………風紀委員会? 

 

「ほんと?」

「うん、本当」

「ほんとにほんと?」

「うん」

 

 しどろもどろになりながらムツキに何回か聞き返すが、それにムツキはうんうんと面白そうな笑顔で頷き返す。

 

「……ななな、なっ、なんですって───!?」

「アッハハッ! アルちゃん面白〜い!」

「はぁ……」

「……アル様ぁ!?」

 

 驚愕のあまりブラウスのボタンを全部閉じる暇もなく、白目を剥いてその場に固まる。いつの間にここにいるのがバレたの!? てかなんでこんな所に風紀委員がいるの!? てか旅行の邪魔しないでよ!! 

 そんな私の驚愕をよそに、目の前の風紀委員会はどんどんとその包囲の輪を縮めていく。

 

「なんで……、こんな所に風紀委員会が?」

「え? アルちゃん知らないの? 今日、ゲヘナとトリニティが組む、エデン条約の調印式の日だから風紀委員会とか、万魔殿とか、ゲヘナの重要組織が一同に会してるんだよ?」

「え"っ……もっ、もちろん知ってるわ!」

「だったら、なんでこんな時に旅行に行こうって思ったの?」

「うっ……」

 

 ムツキの言葉に私は強がって、いかにも知っている様な表情で言ったが、ムツキの問い掛けに、考えてみればその通りだと、頭を抱えてうずくまる、なんでこの時期に私はわざわざ旅行に行こうなんて思ったっんだ〜! ああ私のバカバカ!! 

 ……いや、落ち着きなさい陸八魔アル、こう云う時こそ、ハードボイルドなアウトローの姿を見せる時よ、そう、風紀委員長がいなければ失礼だけどただの有象無象の集まりじゃない! なら、私らだけで勝てるわ! 

 

「にひひ〜、アルちゃん、ハードボイルドなアウトローなんでしょ? だったら、こんないっぱいの有象無象なんか、屁じゃ無いよね?」

「……そう! そうよ! 私達は便利屋68! あんな風紀委員会、屁でも無いわよね!!」

「は、はい! アル様!」

「はぁ……」

 

 ムツキに焚き付けられて私は顔を上げて立ち上がり、自信満々に、そう、数多くの戦を乗り越えた英雄の様に私はそう高らかに宣言した。私は適当に荷造りを終わらせ、隙間から着替えがはみ出ている旅行鞄を持ち、その窓に向けて突撃する。

 

「さぁ皆! 行くわよ! 私に続きなさい!」

「ちょっ! 社長! その先は窓……」

「あはは! やっぱアルちゃんおっもしろ〜い!」

「い、行きます!」

 

 私が飛び込んだ窓のガラスは盛大な音を立てて割れ、ガラス片が宝石の様に宙に舞い散り、私は上手な体制で着地。……ふっ、決まった。

 ……が、上から声が聞こえ、ふと見上げてみれば、M60マシンガンを装備し、肩に大きなバッグをかけたムツキが私の頭上にいた。

 

「いぇ〜い!」

「ぐへっ!」

「アル様ぁ!」

「あだっ!」

「はぁ……」

「あべし!!」

 

 同じ窓から飛び降りた皆が容赦なく私をクッションにして安全に着地する、こら! 社長を踏み台……じゃない、クッションにしないでよ! 

 とはいえ、そのまま地面で伸びてる訳にもいかないので、私はゆっくりと痛い腰を叩きながら立ち上がる。

 

「べ、便利屋68! 参上よ! やる気のある奴から……かかって来なさい!」

 

 人三人分の重みを食らって震える腰と足で立ち上がり、少し格好つかないが、愛用のRSGー1を構えて目の前の集団に向ける。子鹿のように足が震えるが、それを気にしていてもこうなったからには戦うしかない。

 

「い……、いないのかしら? じゃあ、道を開けていただこうじゃない……」

「じゃあ、私が行くわ」

 

 突然、その場に声が響きわたる、その聞き覚えのある声に自信満々で戦闘体制をとっていた私たちはまさかと驚き、銃を構えたまま目を見開いた。

 そうして、コンクリートに当たる靴の音が大きくなると共に、目の前に姿が見える。

 無造作に伸ばされた白い髪、濃い紫色の軍服の様な姿に、細い腕についた風紀の腕章。そしてその小さな体にアンバランスな程大きなマシンガンを持った一人の人影が、私たちの目の前に現れた。

 

「初めまして……ではないわね、便利屋68」

 

 そう、ゲヘナ学園最強、かの温泉開発部を指揮し、そう簡単に物怖じしないカスミですら、出会した時には泣き叫んで逃げ惑う程の圧倒的戦力を持った存在。

 そして、力だけではなくゲヘナでもトップクラスの成績を持つ、まさに文武両道を極めた様な存在。

 風紀委員会の力の半分は彼女が持ち、その頭脳に裏打ちされた卓越した指揮能力はゲヘナの宝と言っても過言ではない。

 

「あ……、あ……」

 

 唖然として、口からは呻き声のような、まるで信じられないものを、それこそ恐怖そのものを見るような掠れた驚嘆の声が誰かから漏れ出る。

 

「こうしてしっかり話すのは初めてね、風紀委員会の空崎ヒナよ。便利屋68社長、陸八魔アル」

「な……、なん、ですって……」

 

 驚愕と絶望のあまり膝から崩れ落ちそうになる、足が震える所為で余計に立っているのが辛くなり、今にも崩れ落ちそうなのをなんとか保っているに過ぎない。

 はっきり言って立つのがやっとでこのまま喋ったりはできない、だって、だって目の前にいるのは空崎ヒナよ! 元々委員会の中ではかなり数の多い風紀委員会の戦力の半分は空崎ヒナの戦闘力に依存してるのよ! 勝てる訳無いじゃない! 

 私が泡食った様子で立ちすくんでいると、埒が開かないと言わんばかりの様子で、いつもより三倍増しで目つきの鋭いカヨコが、前に出て口を開く。

 

「態々風紀委員長自らお出ましとは……一体なんの用?」

「……安心して、今、貴方達と争う気はない。……ただ、私達に協力して欲しいだけ、これは依頼だから」

「い……依頼?」

 

 カヨコが怪訝そうな表情で目の前の風紀委員長に問いかけると、静かに首を縦に振る。

 

「……本当なの?」

「ええ、嘘はつかない、報酬もちゃんと払うよ」

「……そっちに得がある様に思えないけど」

「それはそれ、今はこの事態を収束させるのが私達の目的、なら、戦力は多い方がいい」

「……って言ってるけど、社長……聞いた?」

 

 カヨコが後ろを振り向き、白目を剥いて驚愕の表情のまま固まっているアルを一瞥する。

 

「……ゥエッ!? な、何かしら……?」

「だから……、仕事だよ、し・ご・と……。社長、どうするの?」

「……えっ? どこからの?」

 

 これはさっきの話を全く聞いてなかったな……、と、やれやれと言わんばかりの表情でため息を吐き、どこかバツが悪そうに言葉を続けた。

 

「風紀委員会からの依頼だよ」

 

「……ななな、なっ……なんですって────ー!?」

 

 その今まで聞いたことの無い凄まじい叫びは、ここら一体に響き渡りそうな程であった。

 


 

 

 ……まぁ、そんな事があって今に至る訳。

 ま、まぁ? 本当の本当にその時は驚いたけれど、風紀委員会もこういう組織に頼らざるを得ないって事なのね? でも、その中でもこの便利屋68を選んだのは正解よ! なんだって、ハードボイルドなアウトローだもの! 裏切ることなんて絶対にしないわ! 

 ……とはいえ、なんだって一緒の車に空崎ヒナ委員長様が乗っているのかわからないけれど……。

 

「……それで、なんで風紀委員長がこんな所に?」

「? エデン条約で万魔殿と一緒に周辺警護目的で来てた、ただそれだけ」

「へぇ……、なら、この状況は一体?」

「ああ、それは___」

「風紀委員長! もうすぐ目的地に着きます!」

 

 未だに不信感を募らせながら問いかけるカヨコに、幾分かの余裕を持ちながら対面に座った空崎ヒナ風紀委員長は受け答えをする。

 カヨコが何か重要そうな事を問いかけ、委員長がそれに答えようとした時、運転席の方から声が聞こえる。

 

「……そう、じゃあ、準備しなきゃね」

「ちょっと、さっきの答えを聞いてな……」

「ねぇ風紀委員長、ちょっといいかしら?」

「……? 何?」

「私が戦う敵は何なの? 今まで聞くの忘れてたけど」

「……ああ」

 

 私がそう問いかけると、マシンガンの用意を始めていた目の前の委員長はそうだったと思い出した様に口を開く。

 

「万魔殿の重戦車連隊よ」

 

 

「……は?」

 

 その時私は、目の前の人が何を言っているのか一瞬理解ができなかった。




お読みいただきありがとうございます。

はい、今回ハルカの影が薄くなってしまいました、ハルカ推しの方々申し訳ありません。

そして毎日投稿ができなくてすみません…、いや、まじで、今回、昨日はもう五千字近く書けてたんですけど、その時に寝落ちして今に至ります。なので鱗滝左近寺と冨岡義勇が腹を切ってお詫びします。

高評価と、感想を糧に続きを書いて行きたいと思います。
では、また次回…。
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