ポストアポカリプスな世界で周りが勝手に病んでくる 作:あさあさ
「ハーフを一試合、使用武器は一つで良い?」
準備を整え、プライベートルームに訪れた二人に尋ねる。
時刻はすでに8時を回り、訓練の終了時刻も近づいてきている。
「あぁ、だけどいいのか? 武器一つだと俺だけハンデなしで試合やるみてぇで気が進まねーんだけど」
「そのくらいのハンデで銃手が刃牙使いに負けると思ってる? こっちこそ、もっとハンデつけなくていいのかな? って感じなんだけど」
「「ちっ」」
うん。とてもいい雰囲気で試合ができてるね(白目)
男同士の友情的な感じで試合終わったら仲良くなってることを願いましょう。
「ま、まぁお互いやる気があるのは良いと思うよ。それじゃあ、時間も迫ってるしそろそろ始めるね」
言うと同時に、自分の中でスイッチを切り替える。
「それではこれより! プライベートマッチ! 柳アリスVS山本晴人の戦いを開始する! ルールはハーフ一本先取! 賭けるものは隊への所属権利とする!」
三人しかいないプライベートルームに、僕の声がやまびこのようにこだまする。
「それでは、両者準備はよいか」
「あぁ」
「うん!」
両者の同意を経て、ようやく試合を開始する準備が整った。
「ゲーム」
体を深く踏み込ませたハルトが
「スタート!」
開始の合図とともにアリスの元へと
***
長期戦になれば、ジリ貧になってこっちが負けるのはわかってる。
だから、俺が仕掛けるべきは短期決戦だ。
相棒の抜丸を磨きながら、ハルトはこの試合の勝ち方について考えていた。
柳のスキルは可視化。細かい概要はわからないが、その名前と使用武器、何よりアトラス1位を叩き出した銃の命中精度から、おそらく自分の銃の着弾点が
柳の攻撃力的に、俺が食らえるのは五発まで。銃の精度的に、受けに回るとどんだけ避けてもワンマガジンに一発は被弾する。
「やっぱり、スタートの合図と同時に超加速で懐入りこむしかないか?」
被弾を最小限にして倒すには、これしかないだろう。
ま、やることはいつもの中遠距離戦と何も変わんねーんだ。
結局、やることやるだけってこった。
そして、冒頭の一幕が起こった。
そもそものハルトが持つ恵まれたAGIに加え、スキルの超加速も合わさり,常人には追うことすらできない程の速度で柳に迫るハルト。
引き撃ちしながらこちらを退けようとしてくる柳の懐に入り込んだハルトは、迷いなくその刃牙を振り抜いた。
「ふっ!」
パリィ!
と同時に、柳が刃牙に向けて銃を放ち、パリィした。
「は?」
完璧な一撃だったはずだ。それこそ,
「可視化って、こっちの攻撃の可視化かよ……!」
「御名答。じゃ、これからは仲間なんだし、私のスキルの内容でも覚えてから」
柳のアイビーから
「逝ってね」
死の雨が降りそそいだ
***
「クソが、近づけねぇ」
「ほらほら、近づかないと勝てないよ?」
距離をとりながら弾丸の雨を降り注いでくる柳を前に,ハルトは防戦一方の様子で、家に逃げ込んだ。
無理やり距離を縮めることは不可能ではない。ただ、半ば不意打ちに近かった初撃と違い、今回は予備動作で近づくタイミングがバレてしまう。
そうなれば、おそらく近づく前に五発くらってお陀仏だろう。幸い、さっきのパリィのタイミングでは一発しか被弾しなかった。リロードのタイミングを狙えばまだ可能性はあるだろう。
触れていなかったが、今回のステージが比較的障害物の多いステージだったのもハルトに有利に働いていた。そうでなければ、先ほどのパリィのタイミングで逃げきれず、倒し切られていただろう。
ただ、
「たけぇんだよな」
その障害物の多い環境は、皮肉にも柳にとっても有利に働いていた。高所から弾丸を撃ち下ろすことで、最大限ハルトが反撃しづらい状態を作り上げていたのだ。
「マジでどうしようもねぇな」
今は市街地の家の中に隠れているため被弾していないが、このままだとエリア収縮のタイミングで家から出てきたところを蜂の巣にされて終わりだろう。
いや、諦めるな。考えろ。
柳がいるのはこの家から10mほど先にあるビルの屋上。高さが30メートルほどあることから、俺と柳の間にある距離は√1000m程だろう。
自分よりも高度の高いところに超加速しなければいけないことから、踏みしめる足場がないため、超加速は一度までしか使えない。
一度の超加速で縮められる距離は30メートルくらい、これでは柳に辿り着くまでに失速して終わりだろう。
一応無理矢理飛距離を伸ばす方法がないわけではないが、あまりに脳の負担が多すぎるので、死祭の時以外に使うつもりはない。
「てなると、やっぱあれやるしかないか」
成功率低いからあんまやりたくないのだが、こうなってしまっては仕方ないだろう。
このまま何も行動を起こさないと、今潜伏してる家ももうそろそろ柳にやって倒壊させられる。
「よし! いっちょやってやろうぜ!」
自らを鼓舞するため、頬をたたきながら立ち上がる。
大事なのはタイミングだ。圧倒的に有利なポジションにいることから、柳は今油断しているはずだ。そんな油断している柳が、最も無防備になる瞬間。つまり、
「今!」
リロードの瞬間だよなぁ?!
家から飛び出した俺は、柳が倒壊させた家の破片を10メートルほど投げ飛ばし、それに向かって
「何を馬鹿な。それじゃ私のところまで届かないでしょ?」
いや、でもこの相手が、そんな分が悪いどころか勝ち目のない賭けに出るだろうか。瞬間、アリスの背筋に冷たいものが走った。
「油断してんじゃ、ねぇぇぇ!!!!」
超加速を使わず、素の身体能力でその破片に飛んだ俺は、その破片を踏み締め、超加速をつかった。
「あ、まず」
予想外のところから現れた、予測不可の一撃は、柳の可視化すらもすり抜け、そのHPをきっかり半分まで削り切った。
「ゲームセット、お前の負けだ。柳」
完璧な一撃を叩き込んだ俺は、完全勝利を決めるのであった
「と、思うでしょ?」
柳の口元に不敵な笑みが浮かぶ。
「ゲームセットはお互い様。よくできました。ハルトくん♡」
その言葉を受けたハルトの体には、五発の弾痕が刻まれていた。
「そこは油断しとけよ。人として」
同様にピッタリ半分まで削られたHPを目にした俺は、
「DRAW!」
好評だったら続く!