よう実 √松下   作:レイトントン

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パートナー試験②

 平田くんはじめ、部活動をしている生徒たちは順当に後輩と仲良くやっているみたいだ。須藤くんなんかは同じ2年生から優しすぎると疑われないか少し心配だったけど、後輩には面倒見の良いタイプ、という認識に落ち着いたみたい。

 私自身、下級生と思しき生徒には接触を持ちたいところだったので、校内で道に迷っていたり、食堂で注文の仕方が分からない様子の娘をそれとなく手助けし、何人かからはアドレスも貰った。

 

 そんな日々を過ごす中、とある日のSHR。

 茶柱先生から告げられたのは、OAAというシステムの導入についてだった。

 OVER ALL ABILITYの略称で、全校生徒の能力を数値化し、可視化されたモノ。これをアプリとして各生徒の端末にダウンロードさせられた。

 南雲会長の発案で導入が決定された、新しいシステムだ。これにより私たち生徒の能力がはっきりと分かるようになった上、低い能力のままの生徒には何らかのペナルティが課せられる可能性もあるみたい。

 今はAクラスになったとはいえ、能力が低い生徒は多い。総合値の低い順にソートすると、山内くんや池くん、佐倉さんの名前が下に並んでいた。

 自分だけでなく、他学年、他クラスの生徒の情報も顔写真付きで見ることができるみたい。プライバシーなんてあったもんじゃないね。

 

 私も、自分自身の能力値を確認する。

 

 松下千秋

 学力    A-(80)

 身体能力  B-(61)

 機転思考力 B-(60)

 社会貢献性 B-(69)

 総合力   B (67)

 

 各項目の定義もアプリ内に記載されている。

 

学力:主に定期試験、特別試験での筆記試験での点数から算出

身体能力:体育の授業や体育祭、部活動での活躍、特別試験での活躍等から算出

機転思考力:友人の数、立ち位置を始めとしたコミュニケーション能力や、機転応用が利くかどうかなど、社会への適応力から算出

社会貢献性:授業態度の良し悪し、遅刻欠席や問題行動の有無、生徒会所属による学校への貢献など、様々な要素から算出

総合力:社会貢献性のみ影響を半分にした上での、四つの項目から導き出した生徒の能力

 

 自分で言うことじゃないけど、かなりバランス良く高水準を維持できているように思う。清隆くんは……

 

 綾小路清隆

 学力    A+(99)

 身体能力  A+(98)

 機転思考力 B (70)

 社会貢献性 B-(69)

 総合力   A (86)

 

 うわ、凄っ。

 学力は当然のように最高値。身体能力もトップだ。

 総合力もA。学年で、同じ水準に達している人はいない。

 

 機転思考力が少し高いように思ったけど、多分学校からクラスのリーダーとして認識されているみたい。他クラスのリーダー格の生徒を見たところ、龍園くんや葛城くん、一之瀬さんも同様にB70という数値をもらっている。平田くんや坂柳さんはもっと高い。リーダー格とみなされると、この数値が保証されるってことかな。

 

 OAAによる能力の可視化。自分の能力値に一喜一憂する生徒たちを見ながら、茶柱先生は追加で説明を行う。

 それは今年度初めての特別試験についてだった。

 

 1年生と2年生で、パートナーを組んで挑む筆記試験。言うならばパートナー筆記試験ってところかな。そのまんま過ぎるけど。

 概要としては、

 

・1年生と2年生、1人ずつでペアを組む。どのクラスの誰と組んでも構わない。

 申請はOAAを通して行い、1日1度だけ申請できる。承諾された場合、やむを得ない場合を除きパートナー解消はできない。確定後の翌朝8時以降、申請は受け付けられなくなる。

 またパートナーが組めなかった生徒は試験本番の朝8時にランダムで組まされるが、総合点から5%がマイナスされる措置を受ける。

・試験本番は約2週間後の月末。5科目で1科目100点、合計500点となる。

・クラス、個人での結果があり、クラスの方はクラスの生徒とパートナー全員の点数、その平均点で競う。上から50、30、10のクラスポイントを得る。最下位は0ポイントだ。

 個人の方はパートナーとの総合点で決まり、上位5ペアに1人10万のプライベートポイントが、上位30%に入れば1人10000プライベートポイントが支給される。

・パートナーとの合計点数が500以下の場合2年生は退学。1年生は3ヶ月間、月初めのプライベートポイントが支給されなくなる。ただし意図的に点数を下げる、問題を間違えるなどの行為を行なった場合学年問わず退学となる。他の生徒にそれを強要した場合、強要した生徒も退学とする。

 

 加えて先生の話だと、このテストの難易度はかなり高いみたい。正確には、高得点を狙おうとすると難しい。高難易度の問題が複数用意されているため、OAAで学力A、つまりトップクラス扱いの生徒でも取れる点数は400程度が目安となる、とのことだった。

 もちろん、ある程度マージンを取っての目安だとは思う。けど、学力の低い生徒同士で組めば退学は免れない。

 学力の低い生徒が多いウチは大ピンチかも。

 

 早速、池くんや山内くんが清隆くん、平田くんに相談しに行っている。

 

「大丈夫、学力E判定の生徒は学力B以上の1年生と組めば安全だよ。もちろん、テストに向けた努力は必須だけどね。去年、皆は退学しないよう必死に勉強してきた。今回だって乗り越えられるよ」

「そうね。それに、須藤くんをはじめとして去年勉強に打ち込んできて、OAAの数値より実際の学力が上の生徒だって多いわ。気を付けなければいけないのはもちろんだけど、過度に恐れるほどの試験ではないわね」

 

 平田くん、堀北さんの言葉に、冷静さを失っていた学力下位の生徒たちは落ち着きを取り戻す。

 2人とも、この1年で貫禄のようなものが付いてきた。頼もしいね。

 

「ひとまず、学力C以下の人は学力B以上の1年生からパートナーの申請があった場合、即受諾して構わないわ。ただ、できれば学力B以上の余裕のある人は、1年生からの申し込みがあれば私か平田くんに相談してほしい。それまでは、学力C以下の人は極力勉強会に参加して」

 

 その言葉に全員が頷く。新学期早々、退学したくはないよね。

 私は隣の清隆くんの様子を盗み見る。難しい顔をして端末と睨めっこしていた。

 

「何見てるの?」

 

 問いかけると、彼は端末を差し出してきた。

 清隆くんの端末には、既に十数件ものパートナー申請が届いていた。

 1日1回しか申請できないというのに、大胆な……いや、これが学力99評価の力なのかも。

 分かりやすく学力の高い上級生が売れる前に確保しようと、そういう狙いだね。

 

「さっすが学年1位」

「オレの性格を1年生は知らないからな。無理もないか」

 

 学年1位の生徒が、相手を吟味せずに承認する可能性もないわけじゃない。それに賭けたわけだ。

 ……申請してきた相手のOAAも見られるみたい。

 

「堀北さん、平田くん」

 

 クラスメイトたちからの相談が落ち着いた段階で、2人を呼び出す。この情報は貴重だ。戦略を練る上で重要なピースになるかもしれない。

 

「……悔しいけれどさすがね。常に満点を取っていたあなたなら、最高評価も妥当だわ」

「OAAの発表、そして今回の試験で綾小路くんの名前は、もう下級生に知れ渡っているかもしれないね」

「厄介だな……」

 

 清隆くんは肩を落とした。目立たないように、っていうのは今更不可能だと思うけど、それでも1年生に顔が売れるのが予想より早かったのかな。

 

「申請してきた1年生は……意外ね、学力が低い生徒が多いかと思ったけど、B付近の生徒も多い。なんなら学力Aの生徒もいるわ」

「個人成績で上位を狙いたい子たちじゃないかな。綾小路くんがパートナーなら、上位5ペアに入る可能性は高いし」

 

 2人が唸っている間に、私はとりあえず申請してきた女子生徒の顔と名前を覚えておく。清隆くんの成績もそうだけど、顔を見て申請してきた可能性もあるからね。

 試験には関係ないけど、警戒しておくに越したことはない。

 

「……妙ね」

 

 堀北さんが、清隆くんの端末をスクロールしながら呟いた。

 

「どうしたの?」

「Dクラスの生徒からの申請が一件もないのよ。最も成績の悪い生徒が多いはずなのに」

「……確かに」

 

 私と平田くんも端末を確認する。Cクラスからの申請が最も多く、B、Aと続く。けど、Dクラスからの申請は一件もない。

 

「偶然じゃないよね。既にクラスを掌握しているリーダーがいる、ってことかな」

「この間の、1年生には既にSシステムについて通達が行っているという予想とも矛盾はないわ。クラス間闘争に備えてリーダー決めが行われた、そう思って良さそうね。だとするなら、Dクラス全体と組むことができれば話は早そうだけど……」

 

 堀北さんは考え込む。

 クラス同士での協力。それを結ぶことができれば、学力下位の生徒と上位の生徒を組ませ、退学を阻止することは極めて簡単となる。

 学力の低い生徒が多いウチは、今回の試験勝てる可能性は高くない。なら無理をせず、退学者を0に抑える方が有効だと判断したのかもしれない。

 

「オレたちは今Aクラス。最下位のDクラスと組むとなれば、交渉は優位に進められるかもな。元々Dクラスだったことも良い材料だ。上に上がるためのノウハウを教えてやるとでも言えばいい」

「必要なら特別試験の情報をある程度開示してもいいかもね。ペーパーシャッフルなんかは毎年行われているみたいだし。堀北さんが見つけた攻略法も特に口止めはされてないよね」

 

 前向きな意見を幾つか出してみるけど、堀北さんの憂いは晴れない。

 

「まあ、結局はDのリーダー次第かな」

「そこに落ち着くわね。龍園くんみたいなタイプだったら、交渉はやめておいた方が良さそう。ともかく、確かめるためにも今日の放課後すぐに1-Dに行ってみるわ。平田くん、今日は勉強会をお願いできるかしら」

「分かったよ。綾小路くんたちはどうする?」

「そうだな、堀北に着いていく。補佐とボディガードとして、千秋と須藤もだな。基本的にオレは今回ノータッチで行くから、そのつもりで頼む」

「ええ。よろしく、松下さん」

「うん、よろしく」

 

 放課後、私たちはすぐさま1-Dに向かうべく急いで教室を出た。そこでばったりと出くわしたのは、2年Dクラスの龍園くんだ。

 先日の学年末特別試験では、接戦の末一之瀬さんのクラスに勝利し、勢いに乗っている。

 

「龍園くん。あなたも偵察かしら」

「まあな。動き出しが早くなったじゃねえか、鈴音。いや、また綾小路の差し金か?」

「今回オレはノータッチだ。堀北の采配だな」

「そりゃ逞しいこったな。それにしてもぞろぞろと、Aクラス様は随分仲がよろしいらしい」

「そちらはあなた1人? 孤独な王様のようね」

「王ってのは孤高なもんなのさ。綾小路を倒してクラスの王になる度量も無いお前じゃ、分からねえかもしれねえがな」

 

 ぎろ、と龍園くんは清隆くんを睨み付ける。やっぱり、彼が最も警戒するのは清隆くんだ。龍園くんだけじゃない。一之瀬さんも、坂柳さんも、きっと同じだと思う。

 

「彼は仲間よ。仲間割れするほど私は愚かじゃない」

「はっ、そのつもりがないならそれでいいさ。一生綾小路のケツに張りついてな。悪いがお先に失礼するぜ」

「待ちなさい。あなたはどこのクラスを狙っているの?」

「おまえらと同じだろうよ」

 

 歩き出した龍園くんを、私たちもゆっくりと追いかける。ここで妨害するわけにもいかないし、走って追い越すのも変だ。結果、私たちは奇妙な一団となって1年生のフロアを訪れることになった。

 1年生の居心地悪げな視線に晒されながら、龍園くんは迷いなく1-Dを目指す。ハッタリではなく、龍園くんもDクラスの生徒と組もうと考えていたみたいだ。

 

 龍園くんは教室の扉を開こうとして……眉根を寄せた。

 何を思ったか、彼は無言、かつ勢いよく扉を開いた。中の生徒を驚かせるつもりなのかと焦ったけど、龍園くんの背中越しに教室の中を覗き込んだ私たちは絶句した。

 

「クク。こりゃあ交渉には難儀するかもしれねえな」

 

 楽しそうな龍園くんは踵を返して去っていく。あとに残されたのは、もぬけの殻の1-Dの教室と私たちだった。

 

「……なるほど。一筋縄では行かないようね」

 

 私たちは、他のクラスの動向も軽く観察した後、校舎を出て落ち着ける場所で今後の方針を話し合うこととした。

 しかし、1年生のフロアから降りた際、清隆くんが口を開いた。

 

「3人とも、振り返らず聞いてくれ」

「んだよ、ドラマみてえな口調だな。尾行されているとか言うつもりか?」

 

 須藤くんが軽い口調で問いかける。それに対して清隆くんは、

 

「よく分かったな」

 

 同じく軽い口調で、そう答えた。

 

「マジかよ」

「落ち着いて。この学校なら十分あり得ることよ。……龍園くんかしら」

「いや、2人組だな。1年の……」

「よう、綾小路」

 

 清隆くんが言う前に、尾行者と思しき生徒がこちらに接触してきた。

 体格の良い、大柄で粗暴な印象の生徒。反対に品が良く、きりっとした目付きが印象的な、利発そうな女の子。アンバランスな2人組だった。

 

「おまえは?」

「1年Dクラス、宝泉和臣だ」

「同じく1年Dクラス、七瀬翼と申します」

「そうか。オレの自己紹介は要るか?」

「いいや? 1年の間でも噂だぜ、とんでもねーのが2年にいるらしいってな。綾小路清隆。学力カンスト、身体能力もトップなんだってな?」

 

 飛び抜けた実力を持った清隆くんは、OAAからの申請の時も感じたことだけど、既に1年生の間でもその顔と名前が知れ渡っているみたいだ。

 

「過分な評価をもらって恐々としているところだ」

「加えてタヌキと来たか。いけすかねえ野郎だ」

「オレのことはよく理解できたか? なら、クラスメイトも紹介しておこう」

「必要ねえよ。七瀬」

「はい」

 

 宝泉くんが語りかけると、七瀬さんが端末を調べ始めた。なるほど、OAAがある以上は、こちらからの自己紹介は不要ってことだね。

 なんだか嫌な感じだ。

 

「堀北、松下に、須藤……はっ。学力E+かよ。粒揃いのはずのAクラス様にもこんなバカが紛れ込んでやがるのか」

「んだとッ」

 

 食ってかかろうとする須藤くんを、堀北さんが手で制する。

 

「あなたの学力は評価値より随分高くなっている。1年生の時の評価を気にすることはないわ」

「お、おう」

「なるほどなあ。そう甘い言葉で騙くらかして、馬鹿を番犬代わりにしているわけだ。賢い女だな、堀北よぉ」

「彼を侮辱すると後悔するわよ? 須藤くんは身体能力A+。あなたよりもかなり高いもの」

「ほう? 試してみるか?」

 

 ぎろりと、宝泉くんの鋭い目が堀北さんを射抜く。須藤くんがそれを防ぐように前に出るけど……良くない流れだ。この1年生、宝泉くんは体格も良い。学年でもトップクラスの身体能力を持つ須藤くんが負けるとは思わないけど、スポーツと喧嘩は違う。

 まして、須藤くんは監視カメラを意識しているけど、1年生である宝泉くんはどこまでカメラを意識しているか分からない。加減も分からない可能性はある。

 

 清隆くんはノータッチと言ったけど、怪我の可能性が出るのを許容することはできない。私は彼とアイコンタクトを取ると、彼は頷いた。

 

「堀北、やめておけ」

「綾小路くん……」

「へえ、やるじゃねえか。直接やり合う前から分かったか? その馬鹿じゃ俺を止められないってことをよ」

「てめえ……!」

「須藤もだ。本気でやり合えばタダじゃ済まない」

「けどよっ」

「借りはいずれ返せばいい」

 

 このままじゃ話が進まないね。私から話を切り出すことにする。

 

「それで? 私たちを尾けていたのはこんな煽り合いをするためじゃないでしょ、七瀬ちゃん」

 

 まだ宝泉くんよりも話が通じそうな、七瀬ちゃんに話を振った。

 尾けていた、のあたりで宝泉くんの目がこちらに向いたけど、気にせず七瀬ちゃんから目を離さない。

 

「ええ。先輩たちはなぜ私たちのクラスにいらっしゃったんですか?」

 

 やっぱり、そこから見られていたわけだね。

 

「1-Dには既にリーダーが立てられていると感じたからかな。この短期間でクラスを掌握するなんて、優秀なんだね」

「あんな雑魚どもを纏めるのに苦労もねえけどな」

 

 私の褒めには、宝泉くんが応えた。

 クラスリーダーは宝泉くんの方らしい。分からないでもない。OAAのやり取りだったりを見るに七瀬ちゃんはリーダーというより、補佐役なタイプだと感じた。

 

「やはりAクラスということですね。これほど早くクラスリーダーができていると見抜かれるとは思いませんでした」

「そう言う君たちも、Dクラスだとは思えないほど頭が回るみたいだね。なら、私たちの目的も分かるんじゃない?」

「クラス同士で手を組む、ということでしょうか」

 

 私は七瀬ちゃんの言葉に頷いた。

 七瀬ちゃんもかなり頭が切れそうだけど……怖いのは宝泉くんだ。

 この見た目、体格で、しかも学力B+?

 清隆くんがこっそり見せてきているOAAを見ながら、私は冷や汗を流す。

 

「うん。その方が手っ取り早くボーダーを割る生徒を出さずに済むからね。君たちを選んだのは、優秀な1年生には早めに恩を売っておきたかったから」

「恩だぁ? 恩を感じるのはてめえらだろうが。2年は退学のリスクがある。ヘボを多数抱えたてめえらがウチと組んでくださいって頭を下げに来た。これが今回の流れだ。そうだろ?」

 

 宝泉くんがニヤリと笑う。

 ……私たちのクラスがDから上がってきたことまで掴んでいる?

 何か変だな。さっきの須藤くんへの罵倒の時の『粒揃いだと聞いたAクラス』発言とも矛盾する。

 違和感を覚えつつも、口は止めない。

 

「違うよ。下位のクラスに手助けしてあげようかと思っただけ。既にリーダーを立てられるなんて、見どころがあると思ったからね。必要なら上にあがるためのアドバイスもしてあげようかと思ってたんだけど、要らないなら別に君たちでなくても構わない。君たちがダメならCクラスに交渉に行くだけだからね」

 

 強気に出る。

 こちらはAクラス。それもDから上がってのA。相手を選べる立場だ。少なくとも、クラス闘争を勝ち抜く秘訣を話す、と交渉すればCクラスは簡単に釣れるはず。

 他のクラスも皆が皆、この宝泉くんみたいなタイプがリーダーじゃないでしょ。

 

「……分かりました。先輩たちAクラスと組むこと、宝泉くんに前向きに検討させます」

「ああ? 別にこいつらと組む必要なんざねえよ。やめだやめだ」

「宝泉くん」

 

 七瀬ちゃんが宝泉くんを叱責する。彼女を睨み付ける宝泉くんだったけど、舌打ちするのみで特に何かを言うでもない。

 

「……まだ宝泉くんの体制は磐石とは言い難い状態です。1日時間をもらえますか。明日、皆に私たちから説明します」

「構わないよ、私たちも1日考えたいからね。宝泉くんが思ったより厄介そうな人だから、改めて組むに値するか考えさせてもらうよ。場合によってはこちらから断らせてもらうかもだけど」

「宝泉くんの態度が態度ですし、とても文句を言える立場ではありません」

 

 当初の目的通り組むにしても、Dより他のクラスの方が安全かもしれない。そう思い始めてしまった。

 

 1日時間をおき改めて組むかどうか決める。ということで合意し、その場は解散となった。

 

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