よう実 √松下   作:レイトントン

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満場一致特別試験③

 満場一致特別試験当日、昼休みが終わり試験の開始時刻が訪れる。

 私は適度に緊張しつつも、特に不安を感じることもなく、教室の扉を開いた。

 このクラスの絆は、入学当初からは考えられないほど深まっている。この内容の試験なら、突破することは難しいことじゃない。そう思っている。

 

 座席は普段の自分のものでなく、ランダムな箇所が指定されている。私は入り口側の一番後方の席となった。周囲には同じグループの寧々、また須藤くんや幸村くんが座っている。

 

「寧々と近い席で良かった。須藤くんと幸村くんも、よろしくね」

 

 軽く挨拶を交わすと、3人とも少し緊張が解けた様子で朗らかに笑った。

 

 やがて茶柱先生と、試験官らしき人物が教室に入ってくる。

 

「全員着席しているな。……では、これより『満場一致特別試験』を開始する。皆、ルールは頭に入っているな? 必要なら改めてルールを説明してもいいが、試験時間を消費することとなる」

「不要です。そうよね、皆?」

 

 堀北さんからの呼びかけに、皆が応える。

 

「そうか、頼もしいことだ。……では、試験を開始する。モニターに注目しろ」

 

 30秒の時間をおいて、モニターに課題内容が表示された。

 

 課題① 3学期に行われる学年末特別試験でどのクラスと対決するか選択せよ。()内の数字は、勝利した際、追加で獲得するクラスポイント

 

 Aクラス(100)

 Cクラス(50)

 Dクラス(0)

 

 これは……

 思うところはあるけど、まずは初回の投票。私語をすることなく、私はAクラス、つまり坂柳さんのクラスに投票する。

 その選択肢が妥当だと思ったからじゃない。堀北さんの戦略だ。

 いきなり初回で満場一致とするのはリスクがある。必ず一回は話し合いの場を設けて、その選択肢のリスクとリターンを全員で共有した上で決定したいとのこと。

 満場一致のパラドックスという言葉もある。ある程度人が集まれば、それぞれ違った意見も出るはず。にも関わらず満場一致するのは、逆にデータの信頼性を損ねるという話だ。

 

 それらを避けるためにも、初回は外しておくというのは良い戦略だと思った。だから、私は堀北さんの案に乗った。初回はかならず私が一番上の選択肢を、堀北さんが二番目の選択肢を選ぶことになっている。

 

 60秒後、投票結果が発表される。

 

 第1回投票結果

 Aクラス 18票 

 Cクラス 12票

 Dクラス  9票

 

 中々面白い結果になった。

 

「では、満場一致とならなかったため10分間のインターバルを設ける。その後2回目の投票を開始する」

 

 茶柱先生が告げると、すぐに堀北さんが立ち上がる。

 

「皆、投票ありがとう。まず私の立場から表明させてもらうわ。私はCクラスに投票した」

 

 決めておいた投票先を述べた、というわけじゃないだろう。堀北さんはこの選択肢の中で、Cクラスが戦うべき相手だと判断した。私も同じ意見だ。

 

「でもさ……Aクラスに勝てれば100クラスポイントだぜ? 選抜種目試験でも勝ってるし、Aクラスとの距離も縮まるならその方が良いんじゃないの?」

 

 反論したのは池くんだ。意外にもその意見は論理的で筋が通っている。彼も成長しているってことだね。

 他の多くの、実に18人もの生徒がAクラスに挑む気概を持っている。それは悪い要素じゃない。

 

「たしかにその通りね。ただ、坂柳さんのクラスは強敵よ。池くんの言った選抜種目試験、こちらが勝利したとはいえその内容はギリギリでの勝利だった。ボタンの掛け違い一つで敗北する差でしかないわ」

「フラッシュ暗算で高円寺くんが本気出さないと負けてたもんね……」

 

 悔しさが蘇ってくる。田宮さんには私も実力で勝利できたけど、坂柳さんにはまるで歯が立たなかった。正直、私と彼女の能力には埋め難い差がある。

 

「龍園くんのクラスは論外よ。勝っても追加ポイントが貰えないのに、彼のような難敵と戦ってもメリットはない。その点、一之瀬さんのクラスは下り調子で、明確な強敵も一之瀬さんや柴田くん、神崎くんくらいのもの。これが私が一之瀬さんのCクラスを選択する理由。どうかしら」

 

 時間がないから、若干早口で捲し立てる堀北さん。しかし、その意見に皆納得できたのか、投票の意思は固まったみたいだ。

 

「では、時間となったので2度目の投票を始める」

 

 茶柱先生の号令のもと、60秒の時間の中で投票先を選ぶ。タップする箇所を間違えないように注意しておかないと。

 

 第2回投票結果

 

 Aクラス  0票

 Cクラス 39票

 Dクラス  0票

 

 結果、全員がCクラスを選択し、見事に1問目をクリアした。

 良かった、懸念していた高円寺くんの反抗は起こらなかったみたいだ。

 

「満場一致により、第一の課題はCクラスで確定とする。ただし、他クラスの選択との兼ね合いもある。正式に決定次第通達しよう」

 

 実際の対戦相手がどうなるかは他クラスの投票にもよる、か。少しどうなりそうか考えてみる。

 

 まず、私たちに選ばれた一之瀬さんのクラス。向こうは私たちのクラスを相手にしたくないんじゃないかな。Aクラスになった経験もあり、しかも今はBクラスとなって、勝った時に貰えるポイントも多くない。

 ただ、坂柳さんと龍園くんのどちらを選択するかとなると……微妙だね。坂柳さんは言うまでもなく強敵。龍園くんもそうだけど、学力という大きな弱点はある。

 けど、龍園くんのクラスは現状最下位。勝っても追加ポイントは得られない。そうなると、旨味は少ない。

 

 それでも、追加のポイントと言われた以上、勝利した際にもらえる本来のポイントはきっちりあるはず。なら、学力勝負になれば最も勝ち目のありそうな龍園くんのクラスを選択しても不思議じゃない。

 

 うん。龍園くんのクラスを選びそう、かな。

 

 その龍園くんのクラスが選ぶのは、坂柳さんじゃないだろうか。龍園くんのクラスから見て、坂柳さんクラス、ウチ、一之瀬さんクラスと選択肢が並んでいる。とすれば、一番戦いやすいだろう一之瀬さんクラスは追加ポイントが0となっているはず。

 リターン重視の龍園くんは、旨みがない彼女のクラスを選ばなさそうだ。あとはウチと坂柳さんのクラス、どちらを選ぶかだけど、龍園くんは清隆くんを買っている。現状の戦力では、ウチには勝てないと考えるはず。仮に勝てたとしても、もらえる追加ポイントは50。旨味は少ない。

 それに、坂柳さんを倒せばクラスポイントは100プラスとなる。追加報酬を得ると同時に、ついでに坂柳さんを倒して格付けを終える……そんな青写真を描いているかもしれない。

 

 坂柳さんのクラスは……正直読めない。ただ、彼女は自分の実力に絶対の自信を持っている。加えて、私たちのクラスを狙うのが一番ポイント的には美味しい。

 なら、私たちBクラス狙いと考えられる。

 

 あくまで私の予想だけど、

 

 坂柳クラス→堀北クラス

 堀北クラス→一之瀬クラス

 一之瀬クラス→龍園クラス

 龍園クラス→坂柳クラス

 

 と指名されるんじゃないかな。

 綺麗に指名し合っていると言えるかもしれない。

 

 ともかく、私の予想が合っているとしたら、抽選で戦うクラスが決まる。

 追加ポイントはぜひ欲しいし、対決先が希望通りに行くことを祈るばかりだ。

 

 課題と課題の間、この時間はお手洗い休憩となっている。次の課題がどれだけ長引くかも分からないので、今のうちに行っておこう。 

 

 

 お手洗いから戻りしばらくすると、休憩時間が終わり次の設問へ移る。

 モニターに表示された問題を見て、皆きょとんとした顔を作った。

 

 課題② 11月下旬予定の修学旅行に望む旅行先を選択せよ

 

 選択肢 北海道 京都 沖縄

 

 気の抜けるような問題。しかし、だからこそ難しいかもしれない。

 とりあえず、堀北さんとの約束通り一番上の北海道を選択しておく。

 60秒後、結果が発表される。

 

 第1回投票結果

 北海道 17票

 京都   4票

 沖縄  18票

 

「満場一致はならなかった。インターバルを挟み2回目の投票に移る」

 

「じゃんけんで決めようか」

 

 私はインターバルが始まった瞬間、そう口にした。

 

「それぞれの行き先を主張する人たちがプレゼンしてる時間はないよね。代表者を決めてじゃんけんで決めよう。ただし公平を期すために投票人数の比率から、北海道4名、京都1名、沖縄4名を選出して勝ち抜き戦。どうかな?」

「うん、それが良いよ。ここで時間をかけても仕方ないし、僕は沖縄に入れたけど、正直皆と一緒に行けるならどこでも良いと思っているんだ」

 

 平田くんがここぞというタイミングで同意してくれる。相変わらず顔も発言内容も爽やかだ。

 

「私もさんせー。こんな課題、サクッとクリアしちゃおうよ」

「ありがとう松下さん。私も同じ提案をしようと思っていたところよ」

 

 恵、堀北さんとクラスの主要メンバーたちからも承認を得て、じゃんけんによる修学旅行先決定戦が始まる。

 

「オラァ! ぜってえ沖縄行くぞ!」

 

 沖縄派は須藤くん、小野寺さん、本堂くん、牧田くん。

 

「北海道でスキーやスノボやりたいもんね」

 

 北海道派は恵、長谷部さん、篠原さん、私。

 

「京都派の皆、俺に力を貸してくれ」

 

 単身挑む京都派は幸村くんだ。

 

「幸村、頑張れ。応援しているぞ」

「幸村くん、頼んだわよ」

 

 清隆くんと堀北さんが幸村くんにエールを送っている。京都派は数が少ないのに、濃い面子が集まってるね……

 残りのひとりは誰だろう。名乗り出ないってことは……高円寺くんとか?

 

「ふっ……おまえたちは知らないだろうが、じゃんけんには統計的に出しやすい手があるらしい」

「な、なにぃ!」

「そんなことあるの!?」

 

 驚く須藤くんと恵を前に、早速心理戦を仕掛けた幸村くんはくい、とメガネを上げる。私も聞いたことあるけど、そこまでの差は無かったような……

 

「じゃあ早速始めよう。じゃーんけーん、ぽん!」

 

 恵と須藤くんはパー。幸村くんはグーを出した。

 京都派は一瞬で敗退した。

 堀北さんは額に手を当てて天井を仰いでいる。

 

「幸村……」

「な、なんだよ綾小路。じゃんけんなんて所詮は運なんだから仕方ないじゃないか!」

「相手の手の動きを見て、出す手を予想するくらいのことはしてくれ」

「そんな異次元の視力があったら眼鏡なんてしてないんだよ!」

「綾小路殿はハンターライセンスをお持ちで?」

 

 清隆くんは、幸村くんと外村くんのメガネ村コンビにツッコミをもらっていた。

 その間にも激戦は続き、最終的には北海道派が勝利し、沖縄派も悔しそうに頭を抱えながらも互いの健闘を讃えあった。京都派は一瞬で敗れ蚊帳の外だったので、その輪に入れてない。

 

 インターバルはじゃんけんで終わり、全員が勝負の内容に納得の上、投票に臨んだ。

 

 第2回投票結果

 北海道 39票

 京都   0票

 沖縄   0票

 

 これで第2の課題も終了した。ここまで30分と少し程度しか消費していない。かなり好調と言える。

 

 お手洗い休憩も、それほど間も空いていない状況ではありがたみもない。

 

 

 次の課題が発表される。

 

 課題③ 以下の選択肢より1つ選べ。

①月初めにクラスポイントに応じて支給されるプライベートポイントが半年間0となる。代わりにクラス内のランダムな3名にプロテクトポイントを与える。

②月初めにクラスポイントに応じて支給されるプライベートポイントが半年間半分となる。代わりにクラス内の任意の1名にプロテクトポイントを与える。(この選択肢が選ばれた後に投票を行い指名する)

③次回筆記試験の成績下位5名は、月初めにクラスポイントに応じて支給されるプライベートポイントが半年間0になる。

 

 先程とは打って変わって真面目な課題だ。ある意味ほっとするけど、課題内容は悩ましい。

 ともかく、まずは投票だ。

 

 第1回投票結果

 ①  3票

 ② 34票

 ③  2票

 

 ②……半年間ポイントが半分となる代わりに、任意の1人にプロテクトポイントが付与される選択肢が圧倒的に多い。

 理由はよく分かる。なぜなら、元々清隆くんの提案で、毎月半分のプライベートポイントをクラス貯金に回していたからだ。普段から貰えるポイントは半分なんだから、デメリットを感じないこの選択肢を選びたくなるのは当然だ。

 実質デメリットはないようなものだからね。

 

「ほとんどの生徒は②に入れたみたいね。理由はよく分かるわ。時間に余裕もあるし、他の選択肢に入れた生徒は、良かったらその選択肢をプレゼンしてくれないかしら。場合によってはそちらを選ぶかもしれない」

「僕は①に入れたよ」

 

 堀北さんの言葉に挙手したのは、クラスのもう一人のリーダー格である平田くんだ。

 

「無人島サバイバルの『便乗』カードにより、プライベートポイントは潤沢にある。クラス貯金も2000万を超えている状態だ。ここから半年の皆の生活費は問題なく捻出できるよ。プロテクトポイントを3つ受け取れば、それだけ退学者が出る可能性は少なくなる」

 

 プロテクトポイントは最大2000万もの価値にもなる。それが3つともなればかなりの価値になるのも頷ける。クラス貯金という貯蓄のある今、十分価値のある選択肢だと私も思う。

 

「確かに、プロテクトポイントを持っているという安心感のようなものはあるかもしれないわね。それに、自爆特攻のような戦術にも使える」

「それは僕としては推奨できないけど……うん、そう言ったことも可能ではあるよね」

「ただ、ランダムな3人に、というのは懸念点ね。上手くプロテクトポイントを使える生徒に渡るのが好ましいと、私は考える。クラス貯金2000万も、極力減らしたくはないわ。万が一プロテクトポイントを所持している生徒が出た時、救済に必要になるもの」

「……その通りだね。①に投票したと宣言しておいてなんだけど、やっぱり選択肢②か③がいいのかもしれない」

 

 ……平田くんは、多分元から2000万ポイントを切り崩すつもりはなかった。

 プロテクトポイントももちろん魅力的だけど、堀北さんの言うようにランダムな配布となる。もしプロテクトポイントを所持していない人が退学すれば救済できない。

 だから、プロテクトポイントのためにクラス貯金を切り崩す①の選択肢だけは選ばせたくなかった。だからわざと①を選んだと宣言し、堀北さんに反論してもらうことで①の選択肢を除外しようとしたのかもしれない。

 

「③の選択肢に投票した人は、どうかな」

「オレは一応、③に投票した。プライベートポイントの方が、活用できる範囲が広いと思ったからだ」

 

 清隆くんが手を挙げる。

 

「成績下位の生徒にはクラス貯金から補填をすれば問題ない。現在クラスポイントは925、この試験をクリアすれば975ポイントとなる。付与されるプライベートポイントは97500。半分を徴収し、下位5名に補填したとしても毎月180万ほどの貯金はできる」

「たしかに、プライベートポイントでは様々な権利を買えるからね。清隆くんならそれを活かした戦略も考え付くと思うし、その選択肢を考えるのも頷けるよ」

 

 私はひとまず、清隆くんの案を肯定しておく。彼女として、清隆くんの案に賛同するのは何も不自然じゃないからね。どう思われるかはともかく……

 

「だが、別に②の選択肢も悪くないと思っている。クラス貯金も欲しい最低限の金額、2000万は貯まっているしな」

「良かった……それなら、皆②に投票ということでいいかな」

「いや、まずは誰にプロテクトポイントを付与するかを決めてからにしよう。そこが決まらないようなら③にした方がマシだ」

 

 たしかに、②の選択肢を選んでから揉めるより、③にも行ける状態をキープしておいた方が柔軟に対応できる。話し合いは今でもできるからね。

 

「じゃあ、次はプロテクトポイントを誰に入れるか考えよう」

「順当に考えるなら、綾小路か平田じゃないか」

 

 平田くんの言葉に対して、三宅くんが答える。他の生徒たちもある程度納得している様子だ。

 

「ちょ、なんでだよ! 俺もプロテクトポイント欲しいぜ!?」

「山内くんにあげるには価値大き過ぎるっての」

「んだと! なんで綾小路や平田なら良いんだよ!? 軽井沢、おまえ平田が彼氏だからって賛成してんじゃねーのか!?」

「じゃあ綾小路くんに一票。それでいい?」

「よくねーよ!」

 

 山内くんに与えることはないけど、自分に付与してほしいと内心思っている生徒は多いはず。言いづらいことを代表して言ってくれるのは、ありがたいかもしれない。

 

「綾小路と平田はクラスのリーダー格だ。こいつらが退学したらクラスの戦力は大幅にダウンする。守る価値は大きいだろう。堀北は既にプロテクトポイントを所有しているしな」

 

 山内くんに反論するように立ち上がったのは、幸村くんだ。

 

「じゃあ俺たちには価値がねえってのかよ!? 酷えじゃねえか!」

「おまえたちに価値がないなんてことはないが、優先順位はある。少なくとも、俺は自分より綾小路や平田の方が上だと思っている。OAAという客観的な数字として出ているものもあるしな」

「す、数字が全部じゃないだろ?」

「もちろんそうだ。クラスへの貢献度、リーダーシップ、戦略を考え付く頭脳。それらを考えた上で発言している」

 

 あくまで、幸村くん自身と比較しての言葉。そう言われたら、山内くんも黙るしかない。

 

「……ありがとう幸村。そこまで言ってもらえると思っていなかった。だが、オレは別にプロテクトポイントを欲しいと思っていない。もちろん、クラスの総意だと言うなら受け取るが、洋介に渡した方が良いんじゃないか」

「いや、僕は付与先が選べるのなら、プロテクトポイントは上手く使える生徒に渡すべきだと思うよ」

 

 暗に清隆くんのことを指しているのだろう……そう考えていたところ、平田くんの視線がこちらを向く。

 

「僕は松下さんにプロテクトポイントを付与するべきだと思う。どうかな」

「わ、私?」

 

 思わず、自分を指差してしまう。

 自分が選ばれるとは想定していなかった。けど、平田くんのことだから……

 と、考えを纏める前に、投票時間が近付いてきた。

 

「インターバルは終了だ。これより2回目の投票に入る」

「綾小路くんの言ったとおり、付与する先が決まらない内は満場一致は避けましょう。皆は②に入れて頂戴。私は①に入れるわ」

 

 堀北さんの指示通りに選択肢を選ぶ。60秒が経過し、2回目の投票結果が表示された。

 

 第2回投票結果

 ①  1票

 ② 38票

 ③  0票

 

「松下さんを選んだ理由は、本人が優秀で、クラスの大きな戦力となる人だってことだね。さっき2回目の課題で示してくれたように、必要な意見を素早く出してくれる人だ」

 

 そう表面上の理由を述べるけど、私は平田くんの意図がなんとなく掴めた。

 夏休みに豪華客船のプールで、鬼龍院先輩に言われたことを思い出す。

『先輩として忠告しておこう。気を付けることだ。綾小路本人を倒すのが極めて困難なら、君を狙うと考える者がいてもおかしくはない』

 たしかに、私を狙うことで清隆くんの動きを制限しようと考える人がいる可能性はある。坂柳さんなんかがやりそうなことだ。

 

 つまりは、清隆くんの憂いを除くためのプロテクトポイント付与。

 その意図を同じく察したのか、堀北さんと恵も平田くんの意見に同調した。

 

「そうね。松下さんにプロテクトポイントが渡れば、私としても心強いわ」

「うんうん。私も賛成」

 

 クラスメイト、特に山内くんなんかはまだ納得していない様子だったけど、恵や堀北さん、平田くんとリーダー格の生徒の意見に反対するつもりはなかったみたいで、私への付与で同意することになった。

 

「分かった。ありがたくプロテクトポイントを受け取ることにするよ。その分、必ずクラスのために貢献してみせるからね」

 

 なんだか申し訳ない気もするけど、これで清隆くんの負担が減るなら歓迎すべきことだ。

 

 第3回投票結果

 ①  0票

 ② 39票

 ③  0票

 

 満場一致が決まり、今度はクラスメイトの中から1名を選択することになる。インターバルの10分は無駄になったけど、こればかりは仕方ない。

 

「じゃあ、立候補するね」

 

 私が立候補し、投票には波乱もなく39票が私に入った。

 これで半年間得られるプライベートポイントは半減し、私にプロテクトポイントが入る。

 皆のポイントを犠牲にして得たプロテクトポイント。これに見合った働きをしなければならない。私は改めてクラスのために活躍することを心に決めた。

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