体育祭の詳細が発表された初日。
ケヤキモール内、カラオケルームの一室。そこではAクラスの坂柳一派が座り、静かにある人物を待っているようだった。
「……どうすんの、坂柳。今回の体育祭、あたしたちはかなり不利じゃない」
重い沈黙を破ったのは、神室だった。
今この場にいるのは坂柳、神室、そして鬼頭。元々寡黙な鬼頭は当然として、坂柳が話を切り出さないのではこの場は沈黙に包まれたままとなる。
こういうのは橋本の役目だったな、とつい先日に学校を去った元クラスメイトを思い出す。別に橋本のことは好きでも嫌いでもなかったが、裏切ったのは彼だ。粛清もやむなし。
そう割り切ってはいるが、彼が便利に場を回してくれる存在だったのは事実だった。
「不利、ですか」
「そうよ。今、ウチの人数は38人。龍園と一之瀬のクラスには2人、綾小路のクラスには1人、人数差を付けられてる。元から運動能力はウチが一番低いのにね。それに、あんたも体育祭には出られないでしょ」
坂柳は先天性の疾患を持っている。普段の生活にも杖を使用する状態だ。特に練習もしていないのに、運動などできるはずもない。
しかし、坂柳の返答は神室の、鬼頭の予想を外れたものだった。
「参加しますよ、私も」
「え、いやそれは……」
「危険だ」
「ふふ、お気遣いありがとうございます。ですが大丈夫です、最低限参加が必要な5種目を厳選すれば、なんとかなります。たとえば100メートル走が難しくとも、フリースローであればボールを投げるだけの種目です。もちろん勝利はできませんが、最低限参加した実績は残せますよ。他にも、テニスのような対戦型のスポーツ。相手にストレート勝ちをさせれば負担は最小限で済みますから」
なんでもないことのように、坂柳は言う。たしかに、工夫をすれば体力の消耗は抑えられるだろう。
しかし、坂柳の醜態が周囲に晒されることとなる。
「あんたはそういうことはしないタイプだと思ってた」
「もちろん、しないで済むならそれに越したことはありませんけどね。しかし、今回は最下位を獲ればマイナス150ポイント。その可能性も高いとなれば、打てる手は打ちますよ。なにか特別な事情もない限りね」
「そう……この密会も打てる手の一つってわけ」
その通りです、と坂柳は微笑む。
鬼頭は納得していない様子だったが、それが坂柳の判断であるなら従う他にない。ただし、彼女に危険が及ぶようならその時は万難を排す覚悟だった。
しばらく待っていると、目的の人物が現れる。
「邪魔するぜ」
「遅れてしまい、申し訳ございません」
龍園と椎名ひより。そして石崎の3人だ。
頭を下げる椎名を尻目に、龍園は坂柳の向かいの席にどかと座り込む。
「龍園、貴様……」
「構いませんよ。いつものことです」
「クク、温情に感謝するぜ。涙が出るほどありがてえこった」
鬼頭は感情を抑えきれず立ち上がる。しかし、「鬼頭くん」という坂柳の一声で渋々と着座した。
「怖え怖え。犬の躾はしっかりしておけよ、飼い主さんよ」
なおも煽る龍園だが、鬼頭は彼に射殺さんとばかりの視線を送るに留める。これ以上は煽っても何も出そうにないと判断した龍園は肩をすくめた。
「それで、私たちを呼び出した理由をお伺いしても?」
「分かってんだろ? 体育祭についてさ。俺と組めよ、坂柳」
「ふふ、あなたたちと組んで私たちに得があるのですか?」
龍園からの同盟の申し出。それに少しも動じることなく、坂柳は龍園にメリットの提示を求める。
「最下位のデメリットは分かってるだろ? せっかく橋本のクズを切って得た100ポイントをまるまるドブに捨てるつもりなら止めはしねえぜ」
「ご心配ありがとうございます。ですが私たちも最下位に落ちるつもりはありませんから」
「おいおい、坂柳有栖ともあろう女が自分のクラスの戦力を理解していないのか? おまえのクラスは頭でっかちばかりで、運動能力に関しちゃロクな駒がいねえ。そこのバケモノが最高戦力とは泣かせてくれるぜ」
「あなたこそ、私のクラスの生徒たちの能力を過小評価しているようですね。本番で泣きを見るのを楽しみにしておきますよ。さて、クラスメイトを貶したいだけなら、話し合いは終わりでよろしいですか?」
「……龍園くん。Aクラスの皆さんに失礼ですよ」
様子を窺っていた椎名からの横槍。
坂柳は、椎名に応じない龍園から視線を外す。
「坂柳さん。先ほど龍園くんが言ったように、私たちと組むメリットは最下位の回避となります。あなたたちのクラスが単独で挑めば、最下位の可能性はかなり高いでしょう」
「ふふ、あなたの指摘は的外れですよ。私が指揮を取る以上、最下位になどなりはしません」
クラスメイトたちの中では、最下位の可能性を示唆していた坂柳だったが、龍園たち外敵との話し合いの最中、そんな弱味は見せない。
強気に強気を重ねる言葉遣い。椎名が目を細めた。
「それはどうでしょう。私たちには別の選択肢もあるということ、あなたなら気付いますよね?」
「……なるほど、龍園くんが連れてくるだけのことはありますね。新たなブレーンということですか」
遠回しに椎名を褒めそやす坂柳。石崎と鬼頭は話の内容に付いていけていない。
そんな内心を見抜いたのか、坂柳は椎名の言葉の裏を口にする。
「あなたたちは、私たちが同盟を拒めば他のクラスに話を持っていくつもりですね」
「ええ。綾小路くんや一之瀬さんなら分かってくれると思います」
「クク、てめえらAクラスは敵が多いなあ? 一方俺たちは組む相手には困らねえ」
「ふふ、本当にそうでしょうか?」
「ああ?」
坂柳は龍園の隙を突く。
「わざわざAクラスである私たちに声をかけてきたのは何故か? 理由は2つ考えられます。1つは、単純に他のクラスに断られた可能性。あなたの普段の態度を鑑みれば当然の反応ですね?」
「はっ、てめえらを潰すのに協力を惜しむクラスがあるとでも?」
「ええ。綾小路くんのクラスであれば、まず受けないでしょう。彼のクラスは今回の試験、圧倒的に有利。あなたたちと組む理由がありません」
個人戦という側面が大きい今回の体育祭のルール。それを鑑みるに、綾小路のクラスが他クラスと組む理由は薄い。綾小路、須藤、高円寺と学年でもトップを飾る運動能力を持った生徒たちを抱えているからだ。
高円寺のやる気も関わってくるだろうが、1位はまず間違いなく綾小路のクラスとなる。そこは、坂柳も龍園も共通の認識としているところだった。
「では一之瀬さんのクラスはどうか。彼女のクラスからはあなたは嫌われていますからね。それだけでも断られる理由になるでしょうが……まだ話を持っていっていないとすれば、その理由は彼女のクラスは運動能力もそれなりに優れているから。人数も互角……そうである以上、同盟を組めば2位争いに負ける可能性がある。その点、私たち相手なら2位を獲られる心配もない、といったところですか……侮られたものですね」
坂柳の予想は当たっていた。
今回、一之瀬のクラスの最大の強み、団結力はそこまで活きることのないルールとなっている。しかし、特別競技が団体戦である以上、運動能力の総合値がほぼ互角である龍園クラスが正面からぶつかれば、勝率は五分五分。
運次第では敗北する。たとえば、綾小路クラスの須藤にはたびたびちょっかいをかけているのが龍園のクラス。須藤が競技選択の際、無意識のうちに龍園クラスに負担のかかるような選び方をする、その程度のことで勝敗が別れかねない。
綾小路のクラスと組もうとしたところで、不要と断られるか条件を吹っかけられるかといったところ。龍園の選択肢には初めからなかった。
だからこそ坂柳のクラスを同盟相手に選んだ。
坂柳のクラスが独走しているのが現状だが、上のクラスを目指す綾小路クラスとはまたぶつかることとなる。そうなれば、坂柳クラスは自分が手を下すまでもなくポイントを失っていく。もちろん、いずれ坂柳を倒すつもりでいるが、今回の体育祭では一之瀬よりも坂柳と組んだ方が利がある。龍園はそう判断していた。
「だったらどうする? ムカついたから組むのはやめるか?」
「そう子供ではありませんよ。条件次第ですが、組んで差し上げても構いません」
「はっ、言ってみろよ」
「最下位は一之瀬さんのクラスとする……それ以外のポイントのやり取りは行わない。対等な契約です」
「おいおい、こっちはてめえらが最下位に落ちるのを救ってやろうって言ってんだ。報酬を支払うのが筋だろうが」
「おや、頼んだ覚えはありませんが? 対等な契約を結ぶ気もないのであれば、同盟は結構です。一之瀬さんのクラスと組めるよう頑張ってください。……彼女らと組む選択肢があるのは、果たしてあなたたちだけなのかは疑問ですけどね」
龍園はAクラスである坂柳のクラスは下位クラスと組むことはできないと読んでいる。
実際にその通りで、BクラスはAクラスの背後に付いている状態。虎視眈々とその座を狙っている以上、坂柳クラスを落とす可能性がある今回の試験、わざわざ組むはずもない。
一之瀬のクラスだって、Aを狙っている。自力での勝利は久しくできていない彼女のクラスも、当然1位を狙うだろう。
ただし、一之瀬のクラスの場合、リーダーは根っからの善人である一之瀬帆波。坂柳の体の事情などを盾にして訴えれば、考えに揺らぎが生じる。それだけで組むということはないだろうが、更なるメリットが提示できれば候補に入ってくるだろう。
「龍園くん、私は対等な契約で問題ないかと思います。元より、同盟を組んだとしてもお互いのためにできることはそう多くはないルールです。精々、特別種目でクラスの垣根を越えて協力する。特定の種目の参加枠を勝ち目の薄い生徒で埋める……その程度でしょう。条件で揉めるより、互いに程よい関係で同盟を結んだ方が、結果利益になるかと」
椎名の提案を受け、龍園は一瞬で考えを巡らせる。そして、にやりと口元を歪めた。
「はっ。吹っかけてやるつもりだったが、さすがに葛城のように簡単にはいかねえか。いいぜ、対等な契約なら人数と身体能力からしてこちらが有利だ。組んでやる」
「ふふ、いいでしょう。わざわざ一之瀬さんのところへ足を運ぶのも面倒でしたし、あなたのクラスで満足しておくとしましょうか」
とは言いつつ、坂柳も龍園のクラスと組めたことで、最下位から脱出する可能性が大いに高まったことは良い要素だと言える。ひとまず満足できる結果が得られた。
「一之瀬さんのクラスはどうなるでしょうね」
小さく呟きながら、坂柳はグラスに注がれた烏龍茶に口をつけた。
◆
迎える体育祭本番。
参加申請をした種目の練習、佐倉さんと長谷部さん、恵と寧々のメイド喫茶への勧誘などやることは多かったけど、なんとかここまで漕ぎ着けた。あとは成果を出すだけだ。
当日までの動きを見るに、坂柳さんのクラスと龍園くんのクラスが組んでいるのは、なんとなく分かった。あれだけ上手く身体能力の高い生徒の参加種目が分かれるわけがないからね。
しかも、特別種目には両クラスの垣根を越えたチームも参加している。これは強敵かもしれない。
私は既に幾つかの種目に参戦しており、全て3位以内の入賞を果たすことができた。堀北さんと一緒に綱引きにも参加したけど、坂柳・龍園クラス連合には敵わず3位となっている。
次は清隆くんとペアで参加するバドミントン。先に清隆くんが参加しているテニスシングルスの応援に向かう。
会場にたどり着くと、最低限の種目数のみ参加するらしい生徒たちや来賓といったギャラリーがちらほらとコートを囲んで応援していた。
参加人数は8人、時間を考慮してデュースなし、3ゲーム1セットマッチのルール。決勝は清隆くんと……鬼龍院先輩の試合みたいだ。
あれ、南雲会長と勝負するんじゃ……と思って周囲を探してみると、南雲会長は腕を組んで試合を観戦していた。
「南雲会長、こんにちは」
「おお、松下か。おまえの彼氏には2回戦でしてやられたぜ。まさかあいつもテニス経験者だったとはな」
南雲会長は悔しそうに眉根を寄せている。
清隆くんがテニス経験者?
「あいつも、ってことは南雲会長は経験者だったんですか?」
「ああ、中学時代にな。けど、綾小路のやつもそれを隠してやがったようだ……見ろ、あれだ」
クイ、と南雲会長が顎でコートを指す。
反対ブロックで勝ち上がってきた鬼龍院先輩のフォームはもの凄く綺麗で、そこから打ち出されるサーブも速い。
そんなサーブを清隆くんは難なく返す。いや、難なく、どころじゃない。
「返球のタイミングが早いですね」
「ああ、ライジングってやつさ。跳ね上がりを叩けばボールの回転を気にすることもないし、素早く攻撃できるからな。だが、言うまでもなく簡単じゃない。球威が落ちる前に叩く訳だからコントロールも難しい。それをあんな精度で打ててるんだ、間違いなく経験者だろ」
清隆くんは吸収率がとんでもないだけなんです……とは言えず、かと言って肯定もできない。私は黙り込むことしかできなかった。
鬼龍院先輩のサーブに対しキレキレのリターンショット。鬼龍院先輩は返球速度に対応できず、ボールに触れることができない。いわゆるリターンエースを獲った清隆くんは、マッチポイントを迎える。
ただし、鬼龍院先輩も意地を見せた。
彼女は渾身の一球、後ほど今日一番だったと語るサーブを繰り出した。サイドラインのぎりぎりにスライスサーブが突き刺さる。清隆くんは反射神経とダッシュ力で無理やりボールを拾った。いやいや、あれ普通はサービスエースだから!
と思ったのも束の間、鬼龍院先輩はネット際に詰めてきており、清隆くんの返球をボレーで反対方向に返した。
キレイに決まり、鬼龍院先輩にポイントが入る。上手い。見事なサーブアンドボレーだ。
その後も鬼龍院先輩は健闘したものの、清隆くんのドロップショットが決め手となり決着した。
女子生徒たちや、来賓の若い女性から歓声が沸く。……他学年ならまだ分からないでもないんだけど、なんか2年生の、それも他クラスの女子もいる気がするけど気のせいだよね。
「清隆くん、ナイスプレー」
タオルとスポーツドリンクを持って清隆くんの下へ駆け寄る。心なしか歓声がおとなしくなった気がする。
「ああ、ありがとう千秋」
「全く、テニスは私も幼い頃嗜んでいたんだがな。実家のテニスコートで上手い上手いと言われてきたが、使用人たちの世辞だったか?」
「まさか。鬼龍院先輩の技術はずば抜けていますよ。身体能力で勝る宝泉を下したのは伊達ではないでしょう」
「ふっ、完膚なきまでに倒されたあとで言われてもな。まあ、ありがたくその褒め言葉は受け取っておくとしよう。次の勝負はフリースローだが、そちらも楽しみにしておく」
鬼龍院先輩はそう言って次の種目に向かって行った。
「じゃあ、私たちはバドに向かおうか」
「ああ」
テニスコートから体育館に向けて歩き出す。幸い、開始時間までは余裕があるから、そこらじゅうで行われている種目を眺めながら歩いていく。
遠目に、ウエイトリフティングでバーベルを持ち上げる上半身裸の高円寺くんの姿が見えた。ええ……
「高円寺は相変わらずマイペースだな。まあ、働いてくれるようだからラッキーだった」
「あれで実力はトップクラスだからね。社会に出たらどんな風になるか想像もつかないよ」
まさか今の性格のまま高円寺コンツェルンを継ぐとも思えないし。……まさか、だよね?
「しかし、体育祭の種目もかなり多いのによく審判を集められたよな。校内では見かけない人が多いようだ」
「来賓も来てるし、外部から招致したんだろうね」
「来賓か……文化祭でも来るようだし、外部との接触の機会が増えてきているな。月城理事長も色々と考えていたみたいだ」
「月城理事長、ね……」
私は思い出す。
清隆くんを退学させろ、という理不尽な特別試験。あれは月城理事長から直接言い渡されたと宝泉くんは語っていた。
茶柱先生にそれとなく匂わせてみても反応はなかったし、月城理事長の個人的な判断で行われたものと考えられる。
そんな人が、ごく短い期間で退職……清隆くんと何かしら関係があることは分かる。
ただ、その辺は清隆くんは話したがらないだろうからなあ。
清隆くんは生い立ちや家庭の事情に関しては、あまり口にしたくないみたいだ。
知りたくはあるけど、清隆くんの心の準備ができるまで、ゆっくり待つしかないかな。
体育館ではバドのネットが張られ、準備が万端に整っていた。
早速対戦相手が発表される。相手は、坂柳さんと里中くんという男子生徒だった。
里中くんがどういう生徒かは知らないけど、坂柳さんと組んでいるということは捨て石となる生徒ということだろう。
「綾小路くんが相手ですか。一回戦で当たったのが私たちで幸いでした。その分、他の私たちのクラスメイトが上位入賞する可能性が高まります」
「坂柳。体のこともあるし、さっさと終わらせてしまおう」
「ふふ、お気遣いありがとうございます」
一回戦は本当に消化試合だったので、準備運動にはならなかった。サーブをこっちは入れて向こうは外す。それだけの試合だ。
「松下さん、付き合わせてすみませんでした」
「ううん、気にしないでよ。こういう競技だと坂柳さんも参加しやすくていいよね」
「あなたたちが私の身体的事情に配慮してくださる方だからですよ。今回龍園くんと同盟が組めてなければ、別の競技に参加していたでしょう」
試合形式での種目は、一回戦で楽に負けられれば坂柳さんの体でも問題ない。
ただ、龍園くんのような悪辣な手を取るタイプだと、試合をわざと長引かせて坂柳さんを晒し者にするようなこともやりかねない。その点、今回坂柳さんが龍園くんのクラスと手を組めたのは、彼女の体力的にもメリットだったことだろう。
「というか、龍園くんのクラスと組んでるのって喋ってよかったの?」
「考えれば分かることですし、隠し立てする必要もありませんよ。松下さんなら種目の予約段階で分かっていたのでは?」
「それはそうだけど……よく龍園くんと組む気になったね」
「信用したわけじゃありませんが、メリットも大きいと判断しました。今回、一之瀬さんのクラスには負けてもらおうと思いまして」
坂柳さんのクラスは、退学者を2名出した上に坂柳さんの体の事情もあった。かなり不利な条件での今回の体育祭。そこをカバーするための龍園くんとの同盟ってことだね。
「では、私たちはこれで失礼します。頑張ってください……というのもおかしな話ですが。Aクラスの生徒が勝ち上がったら、勝利を譲っていただいても結構ですよ」
「悪いけどボッコボコにしちゃうかな」
「ふふ、それは残念」
坂柳さんが去ったあと、私たちは無事に男女ペアのバドで1位を獲得。15点を得た。
清隆くんの予定としては、フリースロー、水泳400mメドレー、その他2種目、最後にMMAという流れ。
これまでの種目では全部1位だし、このままいけば学年トップを狙えるはず。南雲会長や鬼龍院先輩、宝泉くんと競っているのに、本当に凄い。
「そういえば、南雲会長とは今回賭けはしてないの?」
「ああ、条件を出したら飲んでくれた。オレが勝ったら……」
ごにょごにょ、と耳元で清隆くんが賭けの内容を囁く。
「そんなことできるんだ。生徒会長の権力ってすごいね」
「生徒会長の権利で行うのかは分からないけどな。単にプライベートポイントで権利を買い取るだけかもしれないし、別の方法もある」
「なるほど……」
南雲会長の財力と権力に驚きながら、私は次の種目に向かった。