〜嘘を吐いた理由2〜
「ボク、嘘を付きました」
「嘘、とは?」
「それは今から話しますよ」
「申し訳ありませんなぁ、証人。せっかちな弁護人なのです。私からも後でキツく言っておきます」
「(アンタは俺の何なんだよ………)」
「………話を戻しますよ?」
「本当は最初に刺身包丁ではない別の刃物が使われて」
「別の刃物ですか?」
「ボクのハサミですね、はい。刃物なのでカウンターの服掛けに掛けてもらってます」
「クックック………、いつでもハサミを盗めた訳ですねぇ」
カン
「それで、ハサミを手に入れた被告人はどうしましたか?」
「それから刺身包丁を刺されて大将は帰らぬ人に………」
「被害者の死体の様子はどうでしたか?」
「そうですね………。まぁ、触ってはない訳ですし、皆さんが知っている感じじゃないですか?」
「もっと具体的にお願いします」
「う〜ん………カウンター側の棚にもたれかかってましたね」
《証拠品ファイル》
・弁護士バッチ
これが無いと誰も俺を弁護士とは認めてくれない。
・黒杉泰三の解剖記録
死亡時刻は、12月30日。
午後10時から11時の間。
腹部を刃物で刺された事による失血死。
刺し傷には別々の刃物で刺された痕跡あり。
・刺身包丁
刃渡り30センチメートルほどの包丁。
被害者の血と被告人の指紋が検出。
・現場写真
腹部を刺された被害者がカウンター側の棚にもたれかかる様に倒れている。
腹部には刃が見える刺身包丁が突き刺さっている。
《人物ファイル》
・雛菊一成(45)
俺の尊敬する所長。
・矢張政志(40)
今回の依頼人。
やけにだらしないような気がする。
居酒屋黒杉のバイト。
・黒杉泰三(52)
今回の被害者。
居酒屋黒杉を経営していた。
・亜内文武(68)
ベテランのようだが貫禄は感じない。
・髪尾斬人(39)
美容師。
平凡そうな人。
「(………ぐ!む、矛盾が見当たらないぞ………)」
「……………」
「うふふ、どうやら弁護人からの反論は無いようですな」
「ボクは見たままを話しましたからね。矛盾なんてありませんよ!」
カン
「弁護側にこれ以上質問がないならば、これでこの証人の尋問は」
待った!
「亜内検事!」
「しょ、所長?」
「な、何ですかな?」
「まだ被告人の動機について聞いていないぜ」
「あ!た、確かに!どうなのですか!亜内検事!」
「…………。これは、私としたことがうっかり。裁判長、先程証人が被告人が被害者と言い争いをしていたと証言していましたね」
「証言していましたな」
「その原因は、これです」
「それは………ノートですか?名前と、数字が書かれていますが………」
「これは被害者がお金を貸した人間のリストです。どうやら被害者は周りの人間にお金を貸して法外な利息を付けていたようです」
・黒杉泰三のノート
お金を貸した人間の名前とその金額が書かれてある。
矢張政志 50000
………………
「なるほど………」
「(なんてこった………。動機までバッチリ………)」
「………どうやら、被告人の犯行は決定的なようです。それでは判決に」
待った!
「しょ、所長?」
「諦めるのは早いぞビックリ。俺達にはまだ話を聞いていない人間がいるじゃねーか」
「どうしましたか、弁護人?」
「え!?あ、えっと………」
バン
「べ、弁護人は新たな証人を要請します!」
ザワザワザワザワ
カン
「あ、新たな証人ですと!?い、一体それは!」
《人物ファイル》
・雛菊一成(45)
俺の尊敬する所長。
・矢張政志(40)
今回の依頼人。
やけにだらしないような気がする。
居酒屋黒杉のバイト。
・黒杉泰三(52)
今回の被害者。
居酒屋黒杉を経営していた。
・亜内文武(68)
ベテランのようだが貫禄は感じない。
・髪尾斬人(39)
美容師。
平凡そうな人。
くらえ!
「ひ、被告人?」
異議ありィ!
「裁判長!これは弁護人の無駄な時間稼ぎです!被告人から話を聞くことは」
異議あり!
「我々は被告人の話を一度も聞いていない。その状態で判決は下せないと弁護側は主張する」
カン
「異議を認めます。被告人、矢張政志を証言台へ」
ザワザワザワザワ
カン
「それでは被告人、名前と職業をお願いします」
「矢張政志。居酒屋黒杉でバイトをしてた」
「それでは、現場で何があったのか、証言をお願いします」
〜現場での出来事〜
「俺、事件の日もあそこでバイトしてたんだ。んで、客も髪尾の兄ちゃんだけだったし、大将に借金について話した訳よ。もう少し利子を減らしてくれって………聞き入れちゃくれなかったけどな。んで、また仕事に戻ろうとしたその時だよ!大将がすっ転んじまってよ、キッチンで俺が使ってた刺身包丁が腹に突き刺さったんだ!俺携帯持ってなかったし店にも電話が無かったから近くの公衆電話までひとっ走りって訳」
「…………」
「…………」
「…………」
カン
「ひ、被告人!そ、それは本当ですか!?」
「嘘なんかついてねーよ!」
「これではまるっきり事故ではないですか!」
「んん、騙されてはいけませんぞ裁判長」
「ど、どう言うことですか!」
「現場には証人、髪尾斬人氏がいた。彼に頼めば良かったものを公衆電話まで走った」
「……………あ!ま、まさか!」
「そう!被告人は失血死するまでの時間を引き延ばすために公衆電話に走ったのです!」
「うわぁぁぁぁ!!!」
「弁護人もようやくわかったようですね。因みに、救急には二度通報がありました。一度目は証人、二度目は被告人です」
「受理します」
・救急への通報履歴
10時5分 髪尾斬人
10時8分 矢張政志
「……………それでは弁護人、尋問をお願いします」