百合の間に挟まるつもりは毛頭ないんだが   作:とくめい

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途中で視点が代わったりするので読みづらいかもしれません。精進しないと。

追記
誤字報告ありがとうございます。今回色々間違ってて草。


第十四話

「質は問題ない。というか希少価値で言えばかなり高いな」

 

 おお。

 オレは心のなかでどよめいた。まさか適当に伸ばしてた髪の毛に希少価値とか言われるとは思わなかった。

 

「君は南方諸国の子かな?」

 

 リヒターさんがカマをかけるように言ってくるけど、これに引っ掛かってるようではこの先やってけないだろう。

 

「父方はそうです」

 

 あ、答えちった。ま、まあ詳しくは言ってないし平気だろ。

 

「ハーフなのか。それなら何となく分かるな」

「リヒター、お前そんな知識まで貯め込んでるのか」

 

 呟くリヒターさんにツァーンさんが呆れたように言う。しかし、リヒターさんはさも当然のように返した。

 

「魔道具を扱っている者なら素材の事も理解するべきだ。何か間違ってるか?」

「はいはい。本当に頭が硬いなぁ」

 

 さっきまでツァーンさんは真面目な人だと思ってたけど、リヒターさん相手ではこうなるのか。人の関係性というのは本当に面白いね。

 

「しかもきちんと手入れしている。毎日椿油を染み込ませた黄楊(つげ)の櫛で梳いていても、ここまで滑らかにはならないと思うぞ」

「トローペンの髪は私が手入れしてるんだ。椿油は高いからオリーブ油をちょこっと使ってます」

「ふむ。だとすると、君のお手柄かもしれないね」

 

 カンネの功績はかなり大きいようだ。というか、つげの櫛とか椿油とかあるんだね。本当にここファンタジー世界? 日本だったりしない?

 

「ラヴィーネもきれいな髪なんだけど、艶は負けるなぁ」

「おう、ディスってくれるじゃないか、カンネさんよぉ」

 

 その辺気にしてなさそうだけど、言われるとムカつくみたいだね。ラヴィーネって本当に子供っぽい。まあ、まだ十歳くらいだから子供なんだけど。

 

「しかし、良いのかね?」

「?」

 

 リヒターさんはこちらを見てそう言った。わりとマジメな話らしい。

 

「バッサリ切ると元の長さまで伸びるには六年は掛かる」

 

 あ、それでもそのくらいなのか。なら、問題はなし。バッサリイッちゃってくだせえっ!

 

 

 

 

 

 

「あうう……」

「泣かないでよ、カンネ」

「そうだぞ、カンネ。お前の髪じゃないんだから」

 

 めそめそと泣き崩れるカンネに少し罪悪感が湧くけど、気分はさっぱり、後ろ髪もさっぱり。

 やっぱり長い髪はメンドーだよなぁとつくづく思う。

 

「知り合いの散髪師を紹介するからそこでちゃんと切ってもらってくれ」

「? 別にこのままでもいいよ?」

「……さすがにぶった斬ったままじゃ体裁悪い。頼むから行ってくれ」

 

 リヒターさんに頼まれちった。そこまで言うなら、しゃーないか。

 

 手に入ったお金は銀貨四枚に銅貨が五十枚。これはカンネの所に支払いする家賃でいうと三ヶ月以上となる。子供の収入としてはかなり破格だと言えるけど、それだけ伸ばす時間を考えるとどうなのかな、とも思う。でも、前世だったら床屋でバッサリ切った髪はただのゴミだったわけだから、おトクだったとも言える。短慮を起こして切らなくて正解だったわけだ。

 

「ん? なぁに?」

 

 近くにいたカンネの頭を撫でてあげる。よく止めてくれた。

 

「……えへへ♪」

「おまえ、チョロいな……」

 

 カンネも泣き止んでくれたし、そろそろ行こうかな。

 

「寄り道しないで帰るんだよ」

「分かってるって」

 

 ツァーンさんはリヒターさんとお話があるようなので、ここでお別れ。オレ達は紹介された散髪師の所へ行くことにした。

 

 

 

 

≫≫≫

 

 

 

 

 その日、オイサースト魔法学園初等部の授業を終えたエーレは、気持ちが沈んでいた。協調性のない先輩のせいで魔法競技に負けたからである。

 

 しかもそれを指摘したらいじけてしまったのだ。男らしくない振る舞いにエーレは怒りを通り越して陰鬱になってしまっていた。

 

『……気晴らしでもしよ』

 

 こういう時は甘いものだ。女の子としての本能とそれまでの経験則から間違いない。エーレは制服姿のままでよく通うパン屋へと足を運んだ。

 

 このパン屋はバケットも美味しいけど、多種多様な甘いパンで有名だ。特にクラプフェン(ドーナツ)は絶品で、多くの人がお茶のお供に購入していく。祖父もよく買ってきてくれるけど、やはり自分の手で買う時の喜びはこの上ないと思うエーレであった。

 

「あら?」

 

 入った店内に、見知った顔の子どもたちが居ることに気がついた。

 

「あれ? エーレじゃん」

「ほんとだ。久しぶりー」

 

 気安く声をかけてきたのは確かラヴィーネにカンネだったか。では、もう一人も居るはずだ。

 

「ト、トローペンは?」

 

 ただ尋ねただけなのに、赤面していくのが分かるエーレ。同性だと分かって意識する必要もないと理解したはずなのに。初対面から起きたイベントのせいで、色々と妙な感情をため込んでしまったようである。

 

「そこにいるぞ」

「え?」

 

 ラヴィーネが指差した人物を見て、エーレは膝から力が抜けてしまった。

 

「お、おいっ?」

「どうしたの?」

 

 二人はいちおう気遣ってくれたけど、当の本人は何やらパンを物色するのに忙しいようだ。

 

「どれがいいかな……」

 

 そして、エーレはと云うと。

 

「なんで、髪切っちゃってるのよう……」

 

 何故か、泣いていた。

 

「うわ、泣いてるぞ?」

「と、とりあえず。席、借りますね」

 

 パン屋の中にはイートインスペースもある。カンネは店員に断ってエーレを連れて行くことにした。面倒臭そうにしていても、ラヴィーネはちゃんと手伝った。根はいい子なのである。

 

 

 

「おーい、一つなんだよな? て、アレ?」

「とりあえずこっち来い、トローペン」

 

 一人物色を続けていたトローペン。その腕を引っ張っていくラヴィーネ。

 

「ど、どしたん?」

「なんか知らんが、お前のせいだぞ」

 

 どこかのマチカドにいる魔族のような事を言われて、余計に分からなくなるトローペン。連れて行かれた先にいたのは涙ぐむエーレと、それをあやすカンネだった。

 

「なんで切っちゃうのよ……」

「そうだよね、もったいないよね」

 

 なんだか、めんどくさい状況になっていたらしい。

 

「……オレ、帰っていい?」

「原因お前っぽいから、それはムリ」

「マジデェ……」

 

 ラヴィーネに奢ってもらうつもりで寄ったパン屋だったけど、寄らなきゃよかったと後悔したトローペンであった。

 

 

 

≫≫≫

 

 

 

「なんで切っちゃったの?」

「お金に困ってたんで已む無く」

「幾らでも貢いであげるわよっ!」

 

 なんか、エーレの情緒が不安定になってるぅ。子供の言うことじゃないよね、そのセリフ。

 

 困惑するオレを楽しげに見てる二人(ラヴィカン)。傍観者っていいなあ。

 

「これが痴話喧嘩か。初めて見るな」

「うちはよくやってるけど?」

「カンネんとこも意外とケンカするのか」

「そりゃあ、するよぉ」

 

 そういうことじゃないと思うんだけど。でも、エーレはこっちを許してくれなさそうだし。

 

「しかも、ちょっと、カッコよくなってるし」

「そう? ありがと」

「、!」

 

 ツンツンしたベリショな感じで、わりと気に入ってる。褒めてくれるのはやっぱり嬉しいしね。

 

「男の子だったら、よかったのに」

「え、なんて?」

「ううん、なんでもないっ!」

 

 顔が赤いけど、大丈夫だろうか。風邪とかひいてなきゃいいけど。そう思ったら少し肌寒いことに気が付いた。

 

「ここ、お茶とか飲めるんだよね? なんか飲む? 奢るよ」

「い、いいわよ。自分で出すわ」

「臨時収入があったからね。このくらいなら全然平気さ」

 

 すると、乗っかってくるバカも居た。

 

「マジで? んじゃ、ハイセショコラート(ホットチョコレート)で」

「わ、わたしもいいの? それじゃミルヒカッフェ(ミルクコーヒー)、いいかな?」

「おうおう、頼め頼め」

 

 こうなりゃヤケだ。ラヴィーネに後でお持ち帰りのを二つ買ってもらうしかあるまい(セコい)

 

「そ、それじゃシュワルツァテー(紅茶)をお願い」

「んじゃ、オレもそれにするわ。すんませーん」

「はいよ、坊主ども」

 

 出てきた店員さんに注文をして料金を支払う……銅貨十四枚とか高過ぎやしませんかね? メニューをよく見ると一番高いの注文してやがるぞ、ラヴィーネのやつ。

 

「へへ♪」

 

 あ、確信犯だな、アイツ。

 こうなったら一番高いパンを持ち帰ってやるからなっ!

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。

 カンネの宿で飲む麦茶と比べると雲泥の差だったよ。それとやっぱり砂糖がいいね。甘い紅茶、美味しい。個人的に買って帰ろう。

 

 そんな事考えてたら、ラヴィーネに奢ってもらうの、忘れてた。

 

 

『お茶、ごちそうさま。美味しかったわ、ありがとう』

 

 まあ。

 エーレが笑顔になってくれたから、いいか。




パン屋での子どもたちを見て『ブルジョアじゃ……!』とつぶやいた女の子が居たとか。ちなみにこの頃は動物の形をしたパンは作ってません。アンパン◯ンみたいなのはあるかも知れないけど、ラヴィーネはやっぱり容赦なく頂いてます。
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