百合の間に挟まるつもりは毛頭ないんだが 作:とくめい
まず基本として
その体格とか威容とかで魔物のように思う人もいるけど、牛やイノシシといったものと何ら変わらない生き物である。
だからといって無害かというとそうではない。
雑食性の上に大喰らいであり、農家にとっては害獣としては最悪の部類である。なにせ身体が大きいのだ。
訓練もしていない素人が鍬や鋤などで戦える相手ではない。
中にはそんな武器でも倒しちゃう猛者な農民も居るらしいけど、一般的な人たちには出来ない事だ。
なので
生半可な攻撃では固い皮に阻まれるし、体当たりなどまともに喰らえば自動車に撥ねられたような感じになる。
それでも魔物に比べるとまだ危険度は低い、かな? 魔物は魔法も使ってくるけど
さて。メトーデさんが農夫のほうに辿り着く前にヘイトを稼いでおこう。
腰から抜いた杖を向け、詠唱しつつ革袋から取り出した物をバラまく。
魔法陣がそれを集めて杖の先端に集めて円状に浮かばせる。杖の先端を円の頂点にした形で直径は十センチで数は十八。
杖の下にぶら下がるそれは、見る人が見れば『ドラムマガジン?』と思うだろう。オレは先端の魔法陣を発動させた。
『
杖の先端に火花が飛び散る。
その先にあった小さな石がその力で弾け飛び、
矢継早というからには一発では終わらない。残っている石をすべて叩き込むと、
ちなみに、ザクマシンガンならドラムマガジンは上だろと批判を受けるのは承知の上である。
火花の爆発で撃ち出す仕組みだから給弾が難しいのだ。
そのうち改良するか、専用の魔道具かなんかを作ったら解消できるとは思うけど……正直そこまで拘るつもりもないし。
この形だと名前はトミーガンに変えたほうがいいかと思うけど、どうせならガン◯ム繋がりにしたい。ドム・トローペンも使ってたからね!
実はこの仕組みのせいで本家ザクマシンガン=サンよろしく射撃速度はかなり遅かったりする。
遠距離射撃には向かないけど、逆に近距離ではかなり使えるとは思う。
主に音が大きいというのが一因だ。
もう一匹の方は、この音に驚いて足を止めていた。足止め成功。
メトーデさんは農夫を回収し、こちらへと戻って来る。
「なんだ? 今の音は!」
「派手な魔法ぶっ放しやがって」
音が派手なだけで、威力はそこまでじゃない。一発の威力はエーレの『
それでもまとめて叩き込まれた
「何にせよお手柄だ! いくぜ、野郎ども」
「おおっ!」
リーダーが掛け声と共に切り込んでいく。手負いはともかく驚いていた方は無傷なのだが、彼らとて何度も
「助かっただよ。ありがとなぁ」
「え、ええ。ご無事で何よりでした」
メトーデさんがハグされて感謝されている。この世界でも共通してるようで、女の子だろうとなんだろうと、喜んだり感謝したりすると抱きついてそれを表現するのだ。
オレはそういう文化圏の人間じゃなかったけど、今ではそう云うもんだと認識している。
わりと年齢のいった男性のハグだからか、メトーデさんの表情は少し精彩を欠いていた気がする。これがイケメンの若い男だったらまた違ったのだろうけど。
冒険者のみんなは
実は可食部位が多いし、街や村でも買い取りしている。魔物は倒してもなんにも落とさない事が多いけど、普通の動物とかは身体を残す。
農夫の人に聞いてみると、他の畑もやられていたらしい。四頭は居たらしいから、あと二頭は最低残っているわけだ。手早く解体して残りは地中深くに埋める。魔物や他の動物が寄ってくるのを防ぐためだ。
『穴を掘る魔法』
ナーベンの街の魔法屋で手に入れた民間魔法を使ってみた。
普通に使うと縦横一メートル、深さ五十センチの穴が出来るらしい。大きくしたり深くしたりするとその分魔力を食う。
掘られた土は横に置かれてるので、自分の手を使って埋めるか、『穴を埋める魔法』で埋める必要がある。当然のように大きいだけ魔力を使う。
ちなみに派生する魔法に『畝を作り種を蒔く魔法』と『畝を作り、苗を植える魔法』がある……農業魔法かな?
今回は埋めるのは冒険者達がやってくれた。たぶんメトーデさんにいいとこ見せたかったんじゃないかと思う。
「うふふ」
「……」
でも、残念。
メトーデさんは、なんかオレを抱きかかえて頭を撫でていた。だからそっちなんて見てるわけ無い。
なんでこんな事するの? と聞いたら、『かわいい成分の補給です。おじさん抱いちゃったので』とのこと。
そう言われたら、断わりづらいんだよなぁ……
「……」
でも、冒険者たちの無言の圧力がこわいのでそろそろやめてもらおう。やめてと言えばちゃんとやめてくれるのがメトーデさんのいいところ。問題なのは、すぐに『撫でていいですか?』ってくるとこだけど。
農夫の方と一緒に村へ行く事にする。被害状況とか目撃情報とか大事だからね。村は申し訳程度の木の柵で覆われていた。そこかしこに補修の跡が見える。
「おお、冒険者の方々ですか? お前も一緒だったか」
「いや、ついさっき
「そいつは災難だったな。まあ、これで一安心だな」
村人たちが農夫のおじさんと会話している。それを尻目にこっちは村長と対話中だ。どうも目撃情報では三匹以上、やってくるのは北の森からだそうだ。数が微妙に合わない気がするけど、どうせ殲滅するのだから気にしないでおこう。
「トローペンさんは、どう思いますか?」
すぐ近くからメトーデさんが話しかけてきた。どう思うか、か。自分なりの推論を言えと言うのなら簡単だけど。ちらりと見ると、彼女の表情は全く変化がない。わりと喜怒哀楽が分かりづらいので、少し苦手なタイプでもある。ラヴィーネぐらい分かりやすいとハリがないけどね。
「今の時期は繁殖期から外れてます。餌の確保だけとは考えづらいかと。目撃情報から三匹以上の成体の群れが確認されているので大規模な生息域の移動かと思われます」
ただし、大喰らいなので生息域に餌が無くなって移動してくる可能性はある。そう補足すると彼女はこくりと頷いた。
「概ねそうだと、私も思います。ですが、原因は違うかも知れません」
メトーデさんの言葉は、相変わらず丁寧で感情が読みづらい。けど、言わんとする事は理解出来た。
「……魔物、ですか?」
「或いは魔族か、でしょうね」
ほぼ確信めいた口調に、オレは少し慄いてしまった。魔物はともかく、魔族との戦闘は、初めてなのだから。
まさかの次回へ続く(笑)