バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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前作を読んで頂いた珍妙な趣味の方々、ありがとうございます。
初見の方々、前作の終盤10話くらいに軽く目を通して貰えるとふんわり理解ができるかもしれない。


プロローグ☆

「はっ……!?ここは!?」

 

 知ってるようで知らない天井とベッド。

 即座に周囲を確認し3秒で構造を把握、乱雑に床に捨てられている物品から見慣れた置き時計を発見し時刻を確認する。

 午前4時……通常通りなら私が起きるには12時間早い。

 

「次はここかー……どこの世界なんだ」

 

 極めてどうでもいい話だが、私はロクデモナイ神にオモチャとしてテキトーな世界に転生させられている。

 その神は二足歩行も困難な幼稚園児みたいなショタのくせして大学生をババア呼ばわりするロリコンだが、結構な地位らしく私みたいな社会不適合を暇つぶしのオモチャとして扱えるらしい。初転生の時とかは頻繁に手紙くれたりしてたけど飽きてきたのか段々と干渉も無くなってきた。

 前々回くらいまで神の間から転生ドアをくぐる際に足が数ミリ浮いてたとかいうカスみたいなこじつけで4桁キロからの落下を強制してきてたけどそれも飽きたのかな。私としては即死イベントを回避できて僥倖だが。

 

「とりあえず……まだ若いね?前回同様高校生くらいかな?鏡……うん、顔も多分変わってない」

 

 手や腕の感じからまだそんなに年食ってない。

 拾い上げた鏡に映るのは伸ばし散らかした白髪に輝きの無い赤い目、もう少し痩せてればミイラのコスプレでもできるだろう。どうでもいいが。

 前々回までは雲の上から叩き落とされて生きてれば続行、死ねば再転生とハチャメチャなシステムだったのでベッドからの生活というのは少しばかり気分もいい。

 

「多分転生初日だから……その辺に身分証明……学生証だ。高校2年生か」

 

 学生カバンらしいものの上に無造作に置かれた学生証、教科書、筆記用具。

 新学期らしいのは分かるがそれ以外には特に無い、つまり私は転校生などでは無く普通に進級したのか。じゃあこの私が目を覚ますまでこの世界に生まれて高校1年までをやりきった私がいたはずだ。知らんけど。

 小学生に転生した時は親なし独居で転校手続きとかいう不明な事態にも遭遇してるからなこれな。

 

「問題は制服だ。どっち着てたんだ、私」

 

 私自身の肉体と性自認は女だが、諸事情で男性人格もいるからどっち着ててもおかしく無い。

 しかも通常どちらかしか無いはずの制服が男女両方用意されている。

 

「なワケないか。女物でしょ」

 

 学生証には私本来の名前の『双神詩音(フタガミウタネ)』と書かれている。シオンと書いた2つ目は無い。

 つまりシオン……この体にいるの?おーい?

(……よ。大体は把握してる)

 いた。私のメンタル補強剤兼社会性の全て。シオンいないと私は無条件に引き篭もるからなこれな。

 

「多分学校シオンが行くんだよね?」

(……多分も何も今まで通りだろ)

「能力どんな感じ?使えそう?」

(……問題無いな。もう転生特典じゃなくオレ固有の能力にしたからな)

 

 シオンの能力は何かこう……並行世界がうんちゃらかんちゃらで色んな能力が使える。元々は神様転生の特典だったけどなんか世界に認識させて別世界でも使えるようにしたらしい。

『〇〇だったかもしれない』とかいう無茶苦茶な可能性で目の前の相手すらコピーする。大体多分何でもできる。

 そのせいで前の世界では肉塊になって消滅したし何個か前の世界ではエイリアンに洗脳された新選組に晒し首されてたりした。その時は同じ体だったから私も死んで転生した。

 

「それはよかった。じゃあどうしよう、取り敢えず二度寝でいいかな?」

(いいや、まだどんな世界かわからん。予備作るからオレが出る)

「ん。じゃあ」

 

 シオンに体を渡す。

 予備って言うのはシオンの好きな人形師の技術らしく、人と全く同じ人形を作り、今生きてるこの体が死んだらその人形に意識が移るっていう……まぁ残機だよね。自分の体なら半日くらいで生成できるみたい。

 

 ♢♢♢

 

 ブルルルルル……

 

「……あ?この携帯使ってるのか……坂本雄二(さかもとゆうじ)……?誰だ?」

 

 ガチャ

 

「ごほんふんほん……んん、もしもし?」

 

 一応姉さんの口調に調整して電話に出る。

 

『ああ、フタガミか?体調大丈夫か?』

「え……?体調?」

『いや、大丈夫ならいいんだ。今日は2年生初日だろ?お前、体調崩しがちだし、昼休み入っても見えないから代表として心配してな』

「昼……?えっ」

 

 腕時計の表示は……12時を5分と10分回っている。予備作りに集中し過ぎたか。もうすぐ終わるのに。なんなら2体目作っておきたい。

 ……しかし初日無断欠席か。優秀な学生ではないな。

 

「ヤバいかな?やっぱり」

『観察処分者が無断はな。体調に問題無ければとりあえず昼からでも来たらどうだ?て……西村先生に捕まるだろうけどな』

「……や……」

『早速だが明日、Dクラスに戦争を仕掛ける事になった。明日人数が減るのは困る。今日大人しく出頭しろ』

 

 状況が飲めず答えあぐねていると、命令口調での発言。その内容さえオレを混乱させた。

 

「……戦争ぅ?」

 

 最近の高校生はすべからく戦争をするのか?これだから人間は愚かだってのに。

 まぁ教育段階で選別しておくと社会がより良くもなるか。それなら悪くない。

 

「わかった。その先生に伝達お願いして良いかな。今から家出ますって」

『……だそうです』

「ん?」

『フタガミぃ!貴様、観察処分者が初日に無断欠席など解っておるのだろうな!』

「……っ」

 

 不意に耳元から放たれた怒号。

 まだ転生して間もないんだ……この体に慣れてないってのに。

 ……コイツが西村……声の圧にして相応しい体格の持ち主だな。いいだろう。

 

「……今から行きます。戦争とやらまでには解放して下さいね」

 

 ♢♢♢

 

「フタガミぃ!動きが遅い!学年が上がったからと怠けるな!」

「っ……!」

 

 待っていたのは『試験召喚獣システム』とやらを使った雑用だった。

 オレ……ウタネをデフォルメしたようなキャラクターがテストの点数をステータスに召喚され、召喚者はそれを使役できるというもの。観察処分などと言うおおよそ学園生活に使用不可能な称号にあるウタネは本来召喚獣同士でしか干渉できないところを人間や物にも触れるようになっている。それを用いて人間に難しい力仕事をやらせているようだ。

 観察処分だとか力仕事だとか奴隷かよ。ホントに教育機関か?

 そして奴らの言う戦争とはコレを使ったクラス設備の入れ替えを意味していた。

 この学園の2年生以降にはA〜Fのクラスが存在し、テストの点数によって上から振り分けられている。

 来た時にそれぞれのクラスを軽く視察したがそれはそれは明確な差を付けられた格差社会だった。

 最上のAクラスにはおおよそ新卒社会人にさえ、いや、中年に差し掛かるまで不可能と思われるほど高性能なリクライニングシート、ノートパソコンなどが置かれ、学問に必要な物どころか飲食物にさえ学園が支給するなどという卒業後金銭感覚ぶっ壊れて死ぬ優秀なゴミを生成するかの如くだった。まぁ、あのクラスならそうはならず優秀な一生を過ごせるんだろうが。

 そして段々とランクダウンを繰り返してウタネの所属するFクラス。

 腐りかけの畳にちゃぶ台、ワタの入っていない座布団、隙間風の吹き荒ぶ割れた窓。

 ……一瞬、このオレでも正気かと思った……一人暮らし底辺大学生でもここまででは無いぞ……

 ナマモノが嫌いなウタネがこんなとこ来たら発狂するやもしれん。

 まぁオレとしてはどうでもいいのでそれは無視だ。ウタネが来るにしても能力でなんとかするだろ。

 それはそれとして、この召喚獣、意外に扱いが難しい。

 人形を動かすって意味ではオレも自分の体で何度もしたが、サイズが違い過ぎる。テニスと卓球の様なリーチの差をこれまでの経験が邪魔して慣れるに慣れない。ウタネならすぐ慣れるのだろうが。

 

「……フタガミ、本当に体調不良か?先月は上手く使いこなしていただろう」

「いえ……すみません、やっぱり怠けているのかもしれません」

 

 色々と考えながらしていると教師に咎められる……というより、心配か。

 転生前の姉さんが、というより転生によって消滅したであろうウタネがどんな状態だったのか気にかかる。多少は学園生活できてたのか?

 

「観察処分者にもなる奴がそんな殊勝なセリフを口にするか。今日はもういい。明日の戦争に備えて今日は休め。無理させて悪かったな」

「……いいんですか?最底辺なんでしょう?」

「俺はあくまで教育者だ。確かに、勉強は大切だ。だが生徒の健康や成長を阻害してまで、というのは決して健全ではない。自分で生きていくため、そしてより良い生き方のできる人間に育ててやるのが、教育者としての使命だ。軍隊の様にできるまで何が何でも詰め込む、という方針では無い。したい事をできるよう、手助けしてやる事だ。だから、今日は休め。十全に回復すれば、またこき使ってやる。今日の残りは先生がしておく。そもそも雑用だ、無理に生徒にさせる必要も無い」

「……西村先生」

「なんだ?」

「……2年生初日、貴方と話ができて良かった。明日の戦争、楽しみにしててください。貴方のその誇りに見合う戦果をあげて見せます」

 

 コイツは、西村先生はオレの永遠に置いておきたい程の人材だ。教師ヅラした殺し屋より遥かに。

 

「ふん、それならば今から補充試験を受けさせてやろう!」

「……あ?」

「貴様の最終得点はあの吉井が優秀に見える驚異の全科目1桁!半数は記録無しときている!点数の無い者は召喚獣を召喚できず、戦争に参加できない!」

「……お、おいおい!なら今のコイツはなんだ!?ちゃんと出せてるじゃあないか!」

「それは貴様の点数が余りにも哀れなので学園長が雑用の際のみの条件で与えられた30点だ」

「……なん、だと……」

 

 驚異的も驚異的過ぎる。確かにここ数回の転生で学校に通っていた事もあったが、ウタネがまともに授業に出席、ましてテストなどするワケも無く……オレがテスト日に通って高得点を維持していたが……内申はゴミみたいなもんだった……

 とはいえ学園長の意思次第で点数は操作可能なのか……

 

「……そのテスト、戦争が始まってからでも可能ですか?」

「可能だが、いいのか?今受ければタイムラグ無しで参加できるぞ?」

「……構いません。それが自然。私達はたかだか十数年生きただけのガキ共に負けてやる気は無い」

 

 ウタネの存在年数を数えてみろ、ことごとくハタチかそこらで転生してるものの普通に生きてたらもう寿命だぞ。

 更にオレ達には転生により与えられた(神が与えてくれたとは言ってない)能力がある。この学園ごとブラックホールに沈めることだって簡単だ。

 

「ふむ……」

 

 西村先生が顎に手を当てオレを見る。

 しまった……少し地が出たか……

 

「よかろう!その心意気や良し!明日の健闘を期待する!」

「……ありがとうございます」

 

 ♢♢♢

 

「……さて、どうする?姉さん」

 

 帰宅命令を受け自室での作戦計画。

 

(どーするもさ。明日せんそーするんでしょ。皆殺しでしょ)

「……前の世界の鬱憤が溜まってないか?殺していいから殺すってんなら今すぐすればいいだろう」

(んー、戦争ってクラス間で行うんでしょ?しかもさして賢くない人類。シオン的にも殺して良いでしょ?)

「オレ的には極力殺さず流れに沿う気でいるんだが」

(えー……)

「戦争っても生徒同士の殺し合いじゃないぞ。あのクラス間での格差設備を賭けた競い合いの範疇」

(それを戦争っていうの?)

「今日西村センセーに使わされた召喚獣、点数を基準として能力に反映されてたろ、あれの戦いだからな。互いのクラスを奪い合うんだから戦争と言えるだろ」

 

 あんなもんが通常テスト点数……平均にして70〜80点くらいか?それが50人。

 今日の点数30でも男子運動部以上のパワーを持っていた。それが2倍3倍のパワーを持ち、数も50と集まればサーヴァント1騎に近しいものにはなるだろう。負けないにせよ安心安全に遊べる程でもない。

 

「とりあえずはDクラス、真ん中より下のクラスだ、様子見には十分だろう。明日の戦争を見てどうするか決めても遅くない」

(まぁ、今回は並行世界ごと消滅とか無さそうだしね……)

「前回も結局のところオレは無駄死にだったしな」

(まぁ……ドンマイ)

「あぁ。内部崩壊は初めてだったからな。対策はできた」

 

 前回の転生では聖杯戦争終盤、復活の為にサーヴァントを残機にしたら戦争終結して聖杯に取り込まれる形で死んだ。

 外傷以外の対応もそれを踏まえて考えておかなければな。いつどこで何があるかわからん。死ねば残機でも転生でも対策になる。だが死ねなかった時が最悪だ。どこまで能力を利用されるか分からん。永遠を生きる者にとってそれは命より致命的だ。

 そういう意味で初見対応出来なかったのは失態だ。今後永遠に晒し上げられる事になっていた。

 

(一応今の身体に保護しとこうか?)

「いいや、それはやめた方がいい。今日見た限り生活は普通の学生生活だ。少なくとも多少のダメージは覚悟して協調性を示した方が得策だ。西村先生の方針にも従うべきだ」

(んー?あの先生気に入った?)

「ああ。あの精神性なら永遠を生きられる」

(えー、また引き入れる気?)

「いいや。それは望まないだろう。ただあの先生には肯定する価値はある。風車を回せる風になれる人間だ」

(ま……それならそれでいいよ。お好きに)

「じゃ、姉さんは休んでな。後の準備はしておく」

(ん、おやすみー)




多分小説を基準にアニメを交えつつになるかと思います。知らんけど。
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