「勝った……ふぅ。色々して悪かったね。ちゃお」
「え?フタガミさんどこ行くの?」
「ん?ちゃんと勝ったでしょ。帰るよ」
「もう!?少しは勝利の喜びを分かち合って……」
「吉井」
もう1人の観察処分者の背後から西村教諭の声が重くのしかかる。
「は、はいっ!て、西村先生!協力ありがとうございました!おかげさまで無事Bクラスに勝てました!」
「まぁ……それは素直に褒めておこう。まさか本当に勝つとは思わなかった」
「でしょう?僕らの力はまだまだ……」
「それはそれとして、だ。吉井!貴様勝つためとはいえ教室の壁をブチ抜くとは何を考えている!観察処分だけでは足りんようだな!放課後職員室に来るように!」
「ひっ!す、すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
あ……そういえば壁、壊してたや……
どうするか……シオンなら直すくらい訳ないけどそれは不自然過ぎるし……器物損壊、下手すれば退学……
「西村先生。壁を壊したのは私の作戦で、私も壁破壊に加担してます。彼は私の言う通りにしただけです」
「フタガミさん!?」
「本当か?お前は点数は低いがバカではない。その行動の結果がわからないとは思わないが?」
「ふふっ、そのセリフ、昔誰かに言ってた覚えがあります。結果なんて分かりきってますよ。停学、退学、通報……まぁ、そんなもんでしょう」
「お前はこの勝利のために今後の人生を捨てるのか?」
「捨てる?まさか。私達はそれだけは諦めない」
「待って下さい!これは全部僕が考えた作戦です!フタガミさんは関係無い!」
「バカは黙って。私の言葉を否定するな」
「でもっ!」
「……ここでは以上だ。放課後、2人とも職員室に来い」
それだけ言い捨て、西村先生は教室を出て行った。
「さて……やはは、残ることになっちゃった。どうしようか?代表さん?」
「ま、何はともあれ、戦後対談といこうか、Bクラス代表どの?」
「……」
相手代表はがっくりと項垂れたまま答えない。
「本来なら、お前らのクラスと設備を交換して、素敵な素敵なちゃぶ台をプレゼントするところなんだが……特別に免除してやらんでもない」
「またぁ!?私たちにまだあんな環境で過ごせと!?」
「まぁ落ち着けお前ら。あくまで目的はAクラス。こんなクラスに用は無い。だから、条件を呑めばそれで解放してやろうと思う。もちろん、反論があれば聞くぞ」
「……」
Dクラスの様にBクラスを使って何か策を弄するのだろうか。
反論を聞くと言ってもそれによって何をどうする訳でも無いだろう。
「……いいよ。反論なし」
「条件は何だ……」
私の言葉を聞き、相手代表が力無く答える。
「何、条件はお前だよ。負け組代表さん」
「俺……?」
「ああ。お前には去年から散々好き勝手にしやがってたし、この戦争でもやられたしな」
「……」
「そこで、お前らBクラスに特別チャンスだ」
「「「…………」」」
「Aクラスに戦争の準備があると伝えて来い」
『わ、わかった!すぐにでも!』
「待て。伝えるのはあくまで準備があることだけ。宣戦はするな、そうなれば戦争は避けられない。そしてもう一つ。使者は代表、衣装は……コレだ」
代表さんが提示したのは女子制服。
何故持ってる……?いや、私にも男女両方あったから基本的に両方持ってるのがスタンダードなのか。女装男子もそうだしな。
「ま、待て!ふざけるな!この俺がそんなバカなことを……!」
『Bクラス全員で必ず実行させよう!』
『私に任せて!そんな事で教室が守れるなら喜んでやるわ!』
『コイツに罪には罰をって意味を叩き込んでやろう!』
……蛮族だ……
「お、おう……」
代表さんも引いてるし……
それはそれとして、役割終了かな。
後はどうにかして退学を免れなければ……
そーだシオン?いい加減起きてる?急に寝ちゃってどうしたの?
……わからん。何故かトンでた。いいぞ、代わってくれ。
うい。じゃあ任せた。
♢♢♢
「……」
「ん?どうしたフタガミ。勝ったのはお前のお陰でもあるんだぞ。喜べよ」
Bクラス代表、根本がカスみたいなメイクと着替えされてるのを尻目に、須川がオレに話しかける。
「こんなのでは喜べないな。Bクラス代表の点数が200点代、Aクラスは末端でもそれ以上。400点なんてバグった点数はFクラスでも数えて数人しかいるまい。Aクラスに勝つなら……ただの召喚獣ではダメだ」
「……?何言ってんだ?ならどうするってんだよ」
「システムの解析を急ぐ必要がある。と言うわけで帰る。後の事は頑張ってくれ」
♢♢♢
「吉井くんっ!」
「ほわっと!?姫路さん、何事!?」
「ありがとうございます。私、私……どうしていいか、わからなくて……」
「うん……でもね、それを言うならフタガミさんだよ。決め手になったのは彼女なんだから」
「でも……私の手紙、取り返してくれたじゃないですか……」
「それは……うん。僕の意志だ。でも、その役割は、僕には重かった」
「そんなことありませんっ!吉井くんは私のために身を張ってくれてます!」
「……ありがとう。僕も、自分でそう思えるよう頑張るよ。姫路さん、そろそろ帰ろう。その手紙、良い返事が貰えると良いね!」
「……はいっ!」
♢♢♢
「ふふふ……ふはははは……!気絶時間が長かったからか頭が冴える……!試験召喚システム……!まだまだ難しくはないなぁ!近いうち、必ずモノにできるぞぉ!」
(てーんしょん上がってる所悪いけど……そーろそろがっこーだよ。準備しなきゃ……)
「……代表のペースだともう今日にもAクラス戦か。クソ……流石にそれは足りない。姉さん、悪いんだが代わりに行ってくれないか?」
(は……?あのさぁ?この世界だと同じ体使ってるんだよ?)
「前の世界もそうだっただろ。体が要るなら用意すればいい。方法は簡単だ」
前はたしか……ん……?どうだったっけ……
《ダブルガシャット!》
《ガッチャーン!》
《マイティマイティブラザーズ!XX!》
「お……」
「……な?」
《ガッシューン》
「コレで2人。面倒でもないだろう?じゃすまんが、Aクラス戦は何とかしてきてくれ」
「ん……?なにそれ?私が勝てる?」
「……いいや、勝つ必要は無い。今日挑んだとてFクラスは敗北する。戦犯にならない程度に立ち回れば良い」
「え……?なんで?見た感じFクラスが『主人公』でしょ?衛宮士郎みたくなんやかんや勝つんじゃないの?」
「……それは違いない。が、どう考えても無理だ。Bクラス戦の作戦は上等だ。だがそれをしてAクラスには児戯に等しい。そもそも戦場限定もできない上耐久もできない。護衛を引き離す戦力も無ければ代表を不意打ちで仕留められる力も無い。完全な不意を突いたとしても確殺で無い以上、その後の護衛に潰されて終わりだ。つまり、勝てない。流石は勉強至上主義の最上級。オレをしてまだ時間を取らせる要因があるとはな。ま、それもこの世界だけだが」
「んー……じゃあ何?今日は負けとくけど次は勝てる?」
「ああ。システムの解析が終わればボトルも使える。そしてドライバーの復元とともに……ビルドドライバーなら予備は山ほどある」
シオンがエボルドライバーに似たようなベルトを複数個ぶらぶらさせる。
「なにそれ」
「ああ……劣化版だが似たようなシステムで動かせる。このボトルも使える世界の物を持ってきたから、この2つで動かせるはずだ。ま、それでもたかだか2桁の点数で勝てるとは思えないが……コレでも使うか?」
「プライムトリガー……じゃないね?」
「ハザードトリガー。これも劣化版らしい。まぁ使えるだろ。持ってけ」
「ん……了解。使い方は同じでいいのよね」
「ああ。だろ。しらん」
「自分が使わないからって……」
「姉さんが負けるだなんて思ってねぇよ。ま、今日だけだ。行ってこい」
ベルトとボトル、トリガーを預かって家から押し出される。
「まーいいや。いってきまーす」
「……ああ。気ぃつけてな」