『それでは、Aクラス対Fクラス、5対5の代表戦を始めます。1人目、どうぞ』
補充も済ませ、いよいよ開幕。
この内3回勝てば、私の1年はほぼ保証される……勝ってくれ……
「じゃ、私から行くわ」
まず相手の先鋒、戦争交渉を受けた……双子の姉の方だ。
「ならばワシが行こう」
こちらから出るのはその弟。
双子の姉と弟……しかも見た目が姉寄り……やはは……どっかで見たことある組み合わせだな?
「ふーん……そこの観察処分者さんは出てこないんだ?」
「うん?」
明らかに私の方を見ての一言。
もう1人がまるで反応してないから間違ってはないだろう。
「いやぁ、秀吉なんかじゃ戦いにさえなんないから。Bクラス戦で勝ち星上げた方で万が一を狙ってくるのかと思ってたよ。マグレだったのかな?」
「ほう……私と、戦いたいと……?」
「まてフタガミ。挑発に乗るな、ここはメタ張れる秀吉に……」
「いいや。勝ちが確定してないなら私に出して貰う。実に調子に乗った良い挑発だ……良いよ。木下優子、私が相手になってあげよう」
「へぇ……ホントに乗ってくるんだ?貴女の点数じゃ、ひっくり返ったって私には勝てないわよ?」
「ふん、知ったこっちゃ無いね。殺すと言ったら殺す。私はそういう存在だ」
「フタガミ!お前じゃ無理だ!」
「無理?そりゃあお互い様だよ。自分そっくりな弟と戦えなんて、できれば遠慮したいものね?」
「なんの……ことかしら?」
絶対的に勝てると分かってても……弟とは戦いたくない。
分かるよ、その感情だけは……私も、シオンと戦うなんて想像したくない。盲目的にシオンを信頼してたのも、そういう感情がどこかにあったからだ……
そんな思い、まだ十数年の子供にさせるのは年長としては酷だ。私が負けるにせよ、受けるのが正解だろう。
「ま、いいわ。どっちでも変わらないもの。恥を晒すだけ」
「……」
「あら?名乗り出て怖気ついたかしら?」
「いや……もしかしたら、と思ってね」
試験召喚。
シオンが全く関係の無いアイテムを渡すだろうか?
無限にあるはずの並行世界からわざわざ数種だけ選んだビルドドライバー、この世界で作り出されたエボルボトル。
このドライバーを動かして召喚したらどうなる……?
私が変身して普通に召喚されるだけか……?
そうなった場合、私は不審人物として今後まともな学園生活を送れはしないだろう。
さて……どうするべきか……シオンを呼ぶ……は遅過ぎるな……
「行くわよ?サモンっ!」
──木下優子──387点
敵が召喚。
点数は平均と聞いてた200点を大きく超える。
今の私はー……何点だっけ。とりあえず召喚はするか。ワンチャン可能性くらい……
「サモン」
双神詩音──28点
致命だった。10倍以上て。ワンパン即死だ。
見た目は……緑髪ロングの白い服装。
だからモデルは誰なんだ……
「あらら……そんな点数なら秀吉の方がマシだったかもしれないわね。観察処分者だし、仕方ないけど」
点数差は圧倒的。
回避優先で戦っても……そのうち負ける。
やるか。
「振って……こう」
《ラビット》《タンク》
《エボルマッチ!》
《アーユーレディ!?》
何度かボトルを振り、腰に付けたドライバーへ挿入、ハンドルを回す。
この使い方は合ってるだろうけど……馴染みないエボルマッチなる音。エボリューションじゃないのか?
「んー……?まぁいいか」
《鋼のムーンサルト!》
《ラビットタンク》
すると姿が変化し……
「なっ……何!?その姿は……!?」
「……」
私がライダーになっただけ。
……だけ。
「えっと……えっとね……えぇ……」
召喚獣は変化無く謎の緑髪がポーっと突っ立ってるだけ。
点数の変化も無い。
私が……ヘマして恥を晒しただけなのね……
「うぅ……わ……私……棄権します……」
時間稼ぎならできるけど……無理くさいよね……
どうせ負けるし……
『フタガミさん棄権により、Aクラス勝利とします』
仕方あるまい……
ボトルを抜いて姿を戻す……もう……
そーだよ、このシステムに介入するようシオンが今引きこもってるんじゃん。今使ってもどーこーなるわけない。
「フタガミお前……鉄人に謎アイテム取られたんじゃなかったのか」
戻ると代表さんが呆れた表情で出迎えてくれた。
まだ生きてていいのか……
「うぅ……いや、キーアイテムは取られたんだよ……残りものみたいなので、こうなるのは若干分かってたけど縋ってみたっていうか……」
むしろ謎アイテムでこうなるのが想定されてるのが不満だ。
「ま、仕方ない。次だ!明久!行ってこい、観察処分者の不足は観察処分者が補うもんだろ?」
「ふっ、ま、仕方ないよね。女の子のサポートは常に優れた男子がするものだもんね」
「「ふんっ……!?」」
「えぇっ!?何で姫路さんと島田さんが殺意の波動を!?僕カッコいい事言ったのに!?」
何で……?私にもサッパリだが……?
「まぁそう言うな。明久、ここでお前の真の力を見せてやれ」
「「「……!?」」」
『真の力だって……!?』
『まさか、ヤツも同じ様に変な力を持ってるんじゃ……!?』
周囲がどよめく。その変な力ってこのドライバーの事言ってるんじゃないだろうな。その力で殺すぞ?
シオンの能力を変とか言うならコンマ以下で擦り潰すぞ?
「ふっ……なんだ、バレてたんだ?仕方ない。この大勝負、実力を隠すのも失礼ってものか」
「まさかあなた……」
「ふふふっ。そう、僕はこれまで、これっぽっちも本気なんて出していない」
2番手に出てきた相手がバカの妄言に怯む。
私が敗北した上で送り出したワケだし、まさかホントに……?
「ふっ……実は僕……左利きなんだ」
信じられない……召喚された召喚獣は……
「負けたよおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
ゴミカスの様に弱かった。
「このバカっ!テストに利き腕は関係無いでしょうが!」
「み、美波っ!フィードバックで死にそうなんだ!今だけは勘弁してぇっ!」
バカは所詮バカか……これで2敗。
「よし。勝負はここからだ」
代表さんからの信頼も同様だった様子。
「では、3人目、どうぞ」
5戦勝負というなら……もう負けられない。
今後は必ず勝たなければならない。
「…………」
「あ……カメラマン。ああ、保健体育か」
「よし、頑張れムッツリーニ!」
彼はBクラス代表を瞬殺した400点を誇るバグ。
Aクラス相手でも十分に戦えるだろう。
「じゃ、ボクが行こうかな」
「…………何者」
「一年の終わりに転入してきたんだ。工藤愛子。よろしくね♪」
短髪薄緑の女の子。
最強カメラマンを相手に余裕かますとは……
「では、Fクラス、教科の選択を」
「…………保健体育」
「土屋くんだっけ、随分と保健体育に自信があるみたいだね?」
「…………」
自信どころの話ではない。学年1をも争えそうだ。
「でも、ボクだってかなり得意なんだよ?……キミとは違って、実技でね♪」
ウインクしながらの発言。
保健体育の実技かぁ……ぶはは、すげーセクハラだなぁ。
「や、ヤバいよ雄二!僕がもう一度行かないと!ムッツリーニ!今からでも僕がリベンジを!」
「いいや明久!ここははやり俺が!」
「えぇ……?」
男性諸君はこれで喜ぶのか……なら私でも同じだろう?衛宮士郎……
「さっき負けちゃったキミ、やっぱり勉強しなきゃね?良かったらボクが教えてあげようか?もちろん、実技でね♪」
「ぐぼぁっ!」
バカは盛大に鼻血を吹いて倒れ込んでしまった。
「いらないわよ!このバカにはそんな機会一生こないんだから!」
「そうです!一点もいりません!」
クラスの女の子2人から熱い否定が入る。
「でも先に戦争だよね。行くよ、ムッツリーニくん!」
保健体育──工藤愛子──446点
おお……400点を超えてきたか……得意というか専門の部類だな?
「じゃあこれで戦争も終わりだねームッツリーニくん!」
「…………俺を舐めるな、サモン」
保健体育──土屋康太──572点
決着は一瞬、召喚獣が消えたと思えば相手が死んでた。
「そ、そんな……このボクが……」
相手もまさか500点超えが出てくるとは思わなかっただろう、放心状態だ。
私も思ってなかった。何したらそんな点数取れる?
「よし!よくやったぞムッツリーニ!」
代表さんも先ほどと違い確かな手応えでカメラマンを迎える。
バカ2人はただの前座だったか……
次に出るのは当然Fクラス最大戦力、姫路瑞稀。
400点ラインを平均とする意味不明な学力(?)を誇る彼女なら、有利不利なく十分勝ってくれるだろう。
「では、僕が相手しよう」
『出たぞ、久保だ!』
『学年次席が相手か……!』
『姫路さん!結婚してくれ!』
Aクラスから出てきたのはメガネをかけた知的男子。
見た目は凄く賢そうだ。勉強できそう。
「科目はどうされますか?」
教師が姫路さんに問う。
今の今までテキトーに決まってたけどそういえばこっちが選べるんだったよね。
「総合科目でお願いします」
「っ!ちょっと待った!何を勝手に──」
「構いません」
「ひ、姫路さん?」
突っかかったバカを姫路さんは止める。
選べる有利を自ら捨てた。この負けられない勝負に。
「姫路さん、悪くは言わない。今は勝っておくべきだ」
「大丈夫ですっ!」
「や、大丈夫とか根性論じゃなくね……」
この場をせめぎ合いの場だと勘違いしてはないか?
この場は先3ヶ月を決める勝負の場だ。学生らしい競い合いは勝負の場ではない学生の場でするべきだ。
勝負の場で負けるなら、それは生命でも死を意味する。
「それでは、総合科目、どうぞ」
無情にも相手の申し出は認められ、総合科目のフィールドが展開される。
互いの召喚獣が召喚される。
片やピンクがデフォルメされた西洋風大剣騎士。
片や大鎌を2つも持った殺意の塊。
おー……鎌2つあるのか。ひとつ貰えないかな……
総合科目──久保利光──3997点
oh……クレイジー。この学校何科目あるんだ。
私が30くらいとすると……130科目と少し。なワケ無いな。
総合科目──姫路瑞稀──4409点
あっはっは。もう終わりだよ私達。点数で競うとかシオンにも無理でしょ。
『マ、マジか!?』
『いつの間にこんな実力を!?』
『この点数、学年主席に匹敵するぞ……!』
『姫路さん、結婚してくれ!』
FクラスだけでなくAクラスからも驚愕の声が上がっている。
Aクラスでも騒ぐあたり、よほど……いや、主席に匹敵するって言ってたな……例外レベルだな?
「ど、どうして……姫路さん、貴女はいつの間に、そんな力を……」
「私、このクラスが好きなんです。みんなのいる、このクラスが……」
「……」
このクラス……とは恐らくFクラスを指すのだろう。
勉強もできない、する気もない、問題行動しかしない集団。文明の最下層。
私は……好きではない。
同様に、Aクラスも好きではない。
だが……どちらかと言えば、Aクラスの方が好みではある。
よくわからん……何考えてるんだ生命は……
「これで2対2です」
これで同点……
さて、後は代表さん。勝つ手段は言ってた通り……相手の代表は確実に間違える。それを狙う……
「よし、さぁお前ら、これが最後だ。いくぞ……」
代表さんが前に出る。
騒がしかった周囲も静まり返り、緊張感が高まる。
最底辺と最上級、2つのクラスの代表が相対する。
これで決まる……ようやく、望むものを得られる。
後はただ……眺めるだけ……