バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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清涼祭

 

 清涼祭とやらの初日。

 

「ホント、坂本の統率力はすごいわね」

「いつもはただのバカなのにね」

 

 どうやらオレが例の如く遅刻しているうちに出し物は決まり、オレのいないうちに教室の内装も変えていたようだ。

 いないとはいっても、登校自体はしていた気もするんだが……?

 

「フタガミさん、ありがとうございますっ」

「……ん?なんの事?」

 

 忙しく動く教室をボーッと眺めていると、姫路がオレに頭を下げる。

 

「だって、こんなに立派なテーブルを用意していただいて……」

「そうだよ、この前のBクラス戦の時だって色々と用意してくれたし」

「ひょっとしたら坂本より貢献してるわよ、アンタ」

「……別に。まさかダンボールで客に食い物を出すわけにもいかないと思っただけ」

 

 店名は『中華喫茶ヨーロピアン』

 いかにもバカな命名だがそれはそれで個性とも言える。が、まさか教室のダンボールを工作してテーブルに仕立て上げようとしていたのだから驚きだ。

 ダメとは言わないが社会的に考えるならアウト、連帯で拘束などされれば約束のチケット回収が不能になる。

 というわけで毎月期待値7倍になる姉さんの金で一通り正規に揃えさせて貰った。

 西村教諭には接客業だから、事が済めば寄付でも処分でも自由にと了承を貰っている。ぬかりはない。

 

「あの……フタガミさん、お節介かもしれませんが……無理されてませんか?」

「……無理?」

「その、出費というか費用というか……」

「そうよね、アンタの金使い凄いものね。この前だって映画代とか全部出してくれたし」

「そうだね、僕としてはありがたい限りだったけど無理しないでね」

「……お節介か。確かに出し過ぎたな。じゃあこのテーブルは回収……」

「わー!それは終わってからにして!?」

「それでいい」

 

 自分の境遇を無視して人を気遣う……美徳ではあるんだろうが、それでは成長も進化も無い。愚かな……

 

「…………試食」

「ムッツリーニ、何ソレ」

「…………提供予定の飲茶」

「へぇ〜、結構美味しそうじゃない。ありがと」

「わ、私も頂きますっ」

「儂も頂こうかのう」

 

 女顔3人がそれぞれ出された……ゴマ団子か?らしきものを口へ運ぶ。

 

「んー!すごく美味しい!」

「本当です、とろける……」

「外はカリカリでありながら中はモチモチとしており、程よい甘さじゃ」

 

 ムッツリーニの調理だろうか。見た感じにしても店に出して不満の無いレベルだ。

 

「あ、残り一個なんだ。じゃあフタガミさん、どうぞ」

「…………数が用意できていなかった、すまない」

「ん、いいよ、吉井。私、ゴマ苦手なの」

「え?あ、そうなの?じゃあありがとう。いただくよ」

 

 もちろんのことゴマ嫌いなど嘘だが……たしかコイツは食に関して貧困していたはず。多少なりカロリーの足しになるだろう。

 

「ふむふむ。表面はゴリゴリでありながら中はネバネバ。甘過ぎず、辛過ぎる味わいがとっても──んゴパッ」

 

 一口かじった吉井の口からは先の3人と全く異なる感想と反応が得られた。

 ……?食が細いと急な摂食で腹を下すそうだが……それが極まるとそうなるのか?

 

「あ、それはさっき姫路の使ってたやつだな」

「……須川。貴方も作ったの?」

「俺も作ったがそこには無い。ムッツリーニのが3つ、姫路のが1つ。吉井が引いたのは大当たりだ」

「…………!!!!」

「ムッ!ムッツリーニ!どうしてそんなに怯えた様子で僕の口に押し込もうとする!?無理だよ!?死んじゃうよ!」

「……?どうしたの、じゃあそれ、私が貰おうか?」

 

 倒れた吉井の口に団子を押し込もうとするムッツリーニの表情は只事じゃない。

 吉井の体内反応ではなく団子が原因なら異常だ、回収しておくべきだろう。

 

「だ、だめだよ!男が口をつけてるんだよ!?それでもいいの!?」

「……別に、それが何だ?口臭でも気にしてる?」

「…………フタガミには渡さない。コレは明久が責任を持つべき」

「おーっす、戻ったぞー」

「代表……」

「ん?お、美味そうじゃないか、どれどれ」

 

 ムッツリーニの持っていた食いかけの団子を躊躇いなく口へ運ぶ代表。

 この状況でその行動は観察力が無いというか自分がまだ死なないとでも思ってそうだな。

 

「ふむふむ、表面はゴリゴリでありながら中はネバネバ、甘過ぎず辛過ぎる味わいがとっても──んゴパッ」

 

 面白い事に代表も吉井と同じ反応。

 謎団子には違う個体にも同じ効果があるのか。

 

「あれ?坂本くん、どうしたんですか?」

「あ、あはははっ!雄二、どうしたのさ、そんなに美味しかった?……」

「……!そ、そうだな……」

 

 顔が引き攣ってるが何の肯定なんだそれは。

 ……この怯え方、尋常じゃないな。包丁を向けられても平然としてる奴がここまでなるとは何だ……?

 

「げほっ……すまんな、急いで来たもんで少しむせてしまった。ムッツリーニ、喫茶店はいつでもいけるな?」

「…………準備万端」

「じゃ、少しの間喫茶店はお前らに任せる。俺と明久は召喚大会の一回戦をすませてくるからな」

「あれ?アンタたちも出るの?」

 

 同じクラスで仲も良い様なのに島田も姫路も知らなかった様子だ。

 

「え?あ、うん、色々あってね」

「まさか……賞品が目的とか?」

 

 島田の目付きが鋭くなる……姉さんと同じでカンがいいのか?

 チケット回収が目的とバレると不都合だが……

 

「う〜ん……まぁ、そう言うことになるかな?」

「……誰と行くつもり?」

「ほぇ?」

「吉井君、私も知りたいです」

「だ、誰と行くって言われても……」

 

 この詰め方はヤバいな。回収後は学園長に渡すだけ、建前なんて用意して無いだろう。

 

「吉井は私と行くつもりなの」

「なんですとっ!?」

「え……アキ、木下や坂本じゃなくてフタガミと『幸せになりに』行くの……?」

「「「FFF団よ!今こそ集え!異教徒を亡き者にするのだ!」」」

「うお!?」

 

 突如増殖した黒ローブが吉井を抱え上げ即座に磔にし薪をくべ始めた。

 常用不能だろそれ。

 おい代表、何故つまらなさそうに見てる?怯えるべき現象が目の前で相方に起こってるんだぞ?

 ……仕方ない。オレの相方もまだ決まってないからな……

 

「待ってみんな、落ち着いて。私はただ如月ハイランドに行ってみたいだけ……だから……相手は別に、誰でもいいの」

「「「!!!」」」

「私も出ようと思ってる。けどまだパートナーが決まってないの。もし出てくれるって人がいれば……その人と行っても良い」

「「「ならば俺が!!!!!」」」

「「「ふざけるな!俺に決まってるだろう!!!!」」」

「……」

 

 即座に吉井をほっぽり出して我先にと立候補。

 ……言い方が悪かったか?

 

「フタガミ、やめとけよ。コイツら本気にするぞ」

「……ヤバそうな気はしてきたな確かにな」

「仕方ねぇ。お前ら静かにしろ!フタガミほどの美少女が!血迷ったとしても明久を!お前らを選ぶとは到底思えない!例えペアチケットを手にしたとしてもそれはお前らの自己満足!フタガミは他の客や職員から悲惨な視線を送られることだろう!それは今後のクラスでの雰囲気にも影響する!お前らでは釣り合わん!引け!」

 

 代表とはいえ何て言い草だ。

 雰囲気悪くなるだろ絶対。

 

「「「……たしかに、それはそうだ……」」」

「「「俺たちに向けられてる視線をフタガミにも……」」」

「「「それはできねぇ!!!」」」

「だからフタガミのパートナーは秀吉に出てもらう!文句は無いな!」

「「「了解!!!」」」

「わ、儂かの!?いきなり言われてもじゃな……」

 

 しかし冒頭言ってた代表の統率力が発揮され、黒ローブは霧散する様に消えていった。

 代わりに当てがわれた木下弟は何の用意も無いだろうから慌てている。

 

「木下……出てくれる?」

「むぅ、出てやりたいのも山々じゃが……喫茶店もあるしのう」

「秀吉、それなら大丈夫だ。お前らが離れてる間は姫路と島田が、逆はお前らで回せる」

「それなら良いのじゃが……儂にも点数などないぞ」

「いいよ。何もしなくていい」

「ほう?」

「ま、参加ありがとうね。実は2年生男子で登録してるから女子には頼めなかったんだ」

「任せておくのじゃフタガミよ。儂が必ず力になってみせる」

「……?」

 

 何かが木下弟を刺激した様子。

 まぁ、出てくれるなら何でもいい。

 さぁ……オレの能力を存分に見せつけてやる。

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