「ありがとうございました〜」
「ふむ、一段落じゃの」
「…………2人はそろそろ準備に行くといい」
「そうじゃの。フタガミよ、作戦があるらしいの。作戦会議じゃ」
「……そうだね。じゃあごめんねみんな、しばらくよろしく」
「ええ、しっかり勝ちなさいよ」
「頑張ってくださいね」
木下弟と共に着替えのために教室を出る。
この学校、普通に空き教室とあるんだよな。普通あっても〇〇準備室とかじゃないのか?まさかFより下のクラスが予定されてるのか?
「で……どうするのじゃ?」
「うん?着替え?似た境遇だし一緒でいいよ」
同じ顔の姉がいて完全な女顔で男と認識されない点でコイツとは同類と言えるだろう。
「それはダメじゃ!儂は男じゃぞ!」
「……そーは見えない。こっちも男って言っても信じないでしょ」
「それはそうじゃ。フタガミはれっきとした女じゃ。そして、儂はれっきとした男なのじゃ」
「……そのこだわりがあれば少しは違ったのかもな」
オレは……オレ達は性別なんぞにこだわりは無い。そもそも生殖機能自体ある方が珍しい。
その辺の生命的な部分を獲得できれば何か変わったりするのだろうか。姉さんの破滅願望を少しは軽減できるんだろうか。
「なんじゃ?」
「いいや。なんでも。聞きたいのは作戦だよね。何もしなくていいよ。死なないようにしててくれれば」
「1人でやるつもりかの?トーナメント表によれば相手はCクラスペアじゃ、まともにやっては勝てんぞ」
「残念ながら、今後まともに召喚獣を使う事は無い」
「それはそれで問題発言じゃの……」
一度でも公式に使ってしまえば後は大抵なんとでもなるもの。許可は今回限りとした覚えは無い。
今後はエボルドライバーを当たり前の様に使用していくつもりだ。
「使うのは当然コレ」
「ふむ、Aクラス戦で奇天烈な姿になったやつじゃな。して、色が変わっておるようじゃが」
「その時使ってたのはコレの劣化版。コレなら私の持つ力を最大限に引き出せる」
「では本当に隅に立っておるぞ」
「もちろん。わざわざ参加してもらったんだからそれで十分」
そもそもFクラスの点数を期待してやいない。
結局は木下弟を空き教室に詰め、オレはそれっぽい能力で視認されずに着替えた。
「む、早かったのう」
「そっちこそ……何?中に着てた?」
能力を使って即替えしたはずがほとんどタイムロスなく木下弟が出てくる。おかしいだろ。
「何、儂は演劇で鍛えられた早替えじゃ。ちまちま着替えておったのでは間に合わんからのぅ」
「……それにしてもだが」
いくら早いとはいえな……おかしいだろどう見ても。
「まぁいいや、行こう」
「じゃな」
もう片手で数えられん世界を超えてきたんだ、早着替えくらいで動揺してたらキリがない。
制服姿で会場へ向かう。
手には当然エボルドライバーとフウシャボトル、試験召喚システムボトル。
『では第1回戦!次のカードは〜〜〜〜〜〜!?』
『なんと!2年Fクラス!フタガミウタネさんの登場で〜〜〜す!』
「……」
何故に名指し?
『みなさま喝采!我が文月学園は学力によりクラス間の格差を設けてはいるものの!それが絶対値ではありません!現に始業直後にはFクラスがAクラスに2勝3敗と接戦を繰り広げました!』
……謎のFクラス押し。
だがこれは解説個人の問題じゃないな。学園長か?
『さぁ皆様、フタガミウタネさんの召喚獣は特別製!』
……おいまじか。まさかドライバーのネタバレするんじゃなかろうな。
『彼女は学年最底辺の点数であり、その補習のため通常とは異なるシステムで召喚獣を操ります!その強みを存分に発揮して頂きましょう!それでは!勝負!開始!』
……どうやら物理干渉可能なのを拡大解釈してもらえるように差し向けたようだ。完全に学園長の差し金だな。
観察処分者と言わないあたりまともな倫理観を持ち合わせているのが学園長のやべーとこだ。
だが良い配慮だ。これで存分にやれる。
「では行くかの、サモン!」
木下秀吉ーー47点
木下弟はその見た目そっくりな召喚獣を召喚。
『よし、俺たちもだ!サモン!』
『サモン!』
Cクラスーー136点
Cクラスーー124点
相手も見た目のデフォルメ。
ドライバーの使用許可ではなく見た目の調整を願うべきだったかもな。
「サモン」
双神詩音ーー28点
今回は軍服に姿を包むオールバックの男。だから誰なんだよ。モデルを出せモデルを。
『すごい前口上されてたけど、大したコトない!速攻で潰すぞ!』
『よし!まず観察処分者からだ!』
点数の低い方から狙うようだ。
正解だが、失敗だな。
《エボルドライバー!》
《フウシャ》《試験召喚システム》
《エボリューション!》
『なんだぁ!?』
『このプラモの枠組みみたいなの、攻撃が効かない!』
「変身」
《プライム!》《プライム!》《エボルプライム!》
プラモの枠組みで前後から挟み、変身を完了。
「ほう、召喚獣の姿を……」
「フェーズ1、完了」
木下弟がプライム化した召喚獣を見て関心する。
そう、学園長のリクエストは達成した。
ドライバーに試験召喚システムボトルを挿入した時点でオレ本体には判定を無くし、召喚獣にドライバーの効果を発揮させるように調整した。
おかげでオレは腰にゴツいベルト巻いてる変人で済んでる。
「これが解説の言ってたシステム。そしてこれが!その能力!」
相手2人の持つ武器を両手に出現させる。
コレがフウシャボトルの能力。相手の能力を鏡映しに操る力。
『武器をコピーされた!』
『だが所詮は28点、怖くはない!』
武器単体に点数表示は無い。
だがこの武器は相手の武器と同じもの、つまり攻撃力は相手の点数。
「怖くない?だろうね、誰も自分自身に恐怖しない」
『……っ!早……!』
『点数は勝ってるはず……』
素早く2体の間に潜り込み、両手の武器でそれぞれ首を斬る。
流石に首が飛ぶ事は無いが、ダメージは自分の点数と同じ。クリティカルを食らえば当然、点数は残らない。
『けっちゃーく!圧倒的な操作技術を見せて頂きました!勝者、木下秀吉、フタガミウタネチーム!』
「一瞬じゃったの……とても28点とは思えん速さじゃった」
「武器の点数は相手依存だから、武器の反動で動ける」
「それがAクラス戦に間に合っておれば姉上を倒せたかもしれんの」
「……まぁ、終わった事だ。だがこの力はまだ第一段階に過ぎない。オレはまだまだ強くなる。この平和にこそ、更なる進化の兆しがあるはず」
「難しい事を言うのう……では、喫茶店に戻るぞ」
「そうだね」
トーナメント戦を自分で開発した新技術で瞬殺……かつてリリカルで鮮烈な世界でもしたなぁ……最強10代女子に首落とされんか心配だ。