バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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清涼祭 ④

「次だな、肉まんか……中身は何にする?具か。メニューに記載が無いが」

「ああ、基本的には肉餡にしている」

 

 店も良い感じに回る中、オレは全ての調理工程を覚えた先から平行して効率を加速させている。

 レシピについての疑問は須川が専属で付くことになった。

 コイツは中々器用で自分の仕事をしつつオレの質問に答える余裕がある。

 

「了解だ。すまないがそこに置いてる団子を出して来てくれないか、ナマモノと平行はできん」

「ああ。スムーズに進んで助かる……ええと、フタガミ……」

「……?ああ、オレはシオンでいい。字は同じだ」

「そうか。わかった」

 

 名前の説明するのも随分と久しぶりな気がするな。

 

「…………シオンも昼を済ませてきたほうがいい」

「気遣い無用だ。オレ達に食事は無い」

「…………痩せ我慢は健全な成長の阻害になる」

「……わかったよ、ついでに2回戦も済ませてくる」

 

 健全な成長ねぇ……嬉しいやら呆れるやら。

 人間と違ってオレは意識ある限り半永久的に活動できる。精神的疲労こそあれどエネルギー不足なんてのは起きようがない。

 

「木下は坂本たちと一緒にAクラスに向かってたはずだ。合流してきたらいい」

「……確か姫路と島田も行ってたか、ホールが中々大変だな」

「まぁでも、おかげで少し落ち着いてきたしな」

 

 流石に女子だけでは圧倒的に人数不足だったため、比較的顔が良く清潔感のあるメンツ数人がホールを担当になっていた。

 今では少し休むくらい問題無い余裕が生まれている。

 

「ムッツリーニ、お前スタンガンか何か隠し持ってるだろ。一回見せてみろ」

「…………持っていない」

「……上着の左内ポケットを見せてみろ、と言えばいいか?」

「…………何故バレた」

 

 隠し場所まで言い当てれば観念したのか素直に差し出した。

 出てきたのは割とガチでスタンするレベルの物。

 コイツ……何者なんだ……?

 

「まぁいいだろう。姉さんがキレてそうだったら遠慮無くやれ。暴走するとクレームでは済まん」

「…………女子に使えば死ぬかもしれない」

「……そう思うなら持ってくんなよ……死んでもいい。使え。絶対だ。不穏な気配を感じればお前判断で殺せ。責任はオレが取る。須川、お前が証人だ。いいな」

「急に言われても困るんだが……何かあるのか?」

「姉さんは虫ケラの様に人を殺す。オレがいない間は頼んだ」

「お、おう……」

 

 殺人級のスタンガン……だが、姉さんなら大丈夫だろ。首落としても即死しねぇんだからな。

 後を任せ、Aクラスに向かう。

 

「木下弟、食事は済んだか?次の勝負に行くぞ」

「フタガミか。そっちこそ食事は良いのか?」

「オレはいい。姉さんと同じであまり食う必要はない」

「そうか。では行くかの」

「談笑中悪かったな」

「構わん。明久も雄二も件の悪者を追って行ってしまったからの」

「……妨害の件か。目星はついたのか?」

「ムッツリーニの情報と合致した2人組を見つけたのじゃ」

「……ま、それで解決するならいいだろう。じゃあな、姫路、島田」

 

 Aクラスの豪勢な教室から出て会場へ向かう。

 

「次は……3年生?」

「うむ、この大会は学年混合じゃからの。とはいえ3年生は受験を控えておる。2年生が大半を締めておるが」

 

 トーナメント表を軽くみたところ2年生がほとんどだったから学年別なのかと思っていたが……そこまでする時間もねーだろな。

 

「なるほど。よっぽどバカか余裕のあるやつくらいしか出てこねーってか」

「そうじゃな。儂のように巻き込まれた奴もおるかもしれんの」

「……悪かったよ。優勝したら願いをひとつ叶えてやる」

「なんじゃそれは。まるで漫画の話じゃの」

 

 嫌味に真摯に返したら笑われてんだが。

 漫画だからな。オレの能力を待ってすれば高校生の願いくらい叶えてやれる。

 

『さぁでは2回戦!2年Fクラスフタガミウタネ、木下秀吉コンビVS3年生Aクラス高城雅春、小暮葵コンビの対戦です!』

 

 会場に到着してさぁ2回戦スタート。

 相手は美男美女のペア。Aクラスならアピールの為にだろうか?

 

「Aクラスか。余程ヒマなんだな」

「ええ。ヒマなんです」

「高城くん、真面目な顔でそれはやめていただけます?」

「すみません。本当のことだったので」

 

 ヒマらしいな。男の方。

 

「……高城3年生、初対面で悪いがあんた少し天然だろ」

「フタガミさんでしたか。少しではありませんよ、究極の天然です」

「……そうか。あんたが躾役か」

「そうなります。とりあえず始めましょうか。サモン」

「そうじゃな、サモン!」

「では私も。サモン」

 

 3A──高城雅春──328点

 3A──小暮葵──275点

 2F──木下秀吉──46点

 

「328?おお、意外と賢いじゃないか、高城3年生」

「一応彼は3年生の首席ですので」

「ほう?」

「ですので、優勝も私が」

「いいだろう、ならお前らに勝てばオレが最強だな。サモン」

 

《フウシャ》《試験召喚システム》

《エボリューション!》

 

 フタガミウタネ──28点

 

《Are you ready? 》

 

「変身」

 

《プライム》《プライム》

《エボルプライム!》

 

「点数はクラス相応のようですが?」

「オレの強さは相手依存なんでね」

 

 相手の武器をそれぞれ手に。

 当然点数は相手と同じ。鏡に映るのは常に相手自身。

 自分と戦うなら勝敗は無く、引き分けしか有り得ない。

 そしてそれにオレが介入するなら、オレが勝つしか有り得ない。

 

「さぁいくぞ!」

「まず私が相手です」

「1人じゃ無理だね!」

 

 こちらの急加速に的確についてきた相手の女。

 流石素人の2年生とは違うな。

 初手に対し的確な防御。更にはもう1人の高城から木下弟への射線まで通してきた。

 

「私たちの武器を……なるほど。高城くん、気を付けてください。恐らく私たちと同じ攻撃力を持っています」

「そうですか……それで一回戦を一撃で突破できたと」

「……天然の割に考察力は一級品だな」

 

 一応相手は3年生、1年の貯金がある分試験召喚獣の操作は2年生とは比較にならないだろう。少し警戒していくか……

 

「とはいえ、新学期初日から戦争を起こした2年生とは違い、3年生はあまり戦争に積極的ではなかったので」

「みてぇだな。操作能力もオレの方が圧倒的だ」

「く……」

 

 高城雅春──238点

 木暮葵──152点

 

「どうせ召喚獣の外部アピールに駆り出されたんだろうが、残念だったなぁ」

「……いいでしょう。今回は我々の敗北です」

 

『決着です!勝者はまたしてもFクラス!点数では劣りますが勝敗はそれだけでは決まりません!』

 

「またお会いしましょう。フタガミウタネ嬢」

「……お断りだね。くんさんどころか嬢なんて付けるやつとはな」

「……?おかしいですね、丁寧に接するほど印象は良くなるはずなのですが」

「人の好みがあるだろ。オレはお前が気に入らない。多分この学校で指折りだ」

「悲しいですね。敗北した上罵倒までされてしまうとは」

「木暮3年生、卒業までに常識を教えておいた方がいい」

「できれば苦労しませんわ」

「……だろうな」

 

 終わった勝負に長話は無用。

 バカを相手にするとストレスだ。

 

「悪かったな木下弟。行くぞ」

「儂は何もしておらんから良いのじゃが……秀吉で構わんぞ、呼びづらいじゃろう。儂も区別の為にシオンと呼ばせて貰うからの」

「そうか。ならそうさせてもらう。秀吉」

「うむ。引き続きよろしくじゃ、シオン」

 

 区別なんてする必要もないがな。

 どうせどっちも同じだ。

 

「お、シオンおつかれー」

「……あ?なんだ姉さん、中いなくていいのか?」

「んー?や、なんか客足途絶えたから客寄せパンダしてる」

「途絶えた……?」

 

 クラスに戻ると姉さんが入り口で看板持って突っ立っていた。

 いくら見た目が良い寄りでも無表情無言では意味無いだろう。

 それはそれとして姉さんの言う通り店の中の客はかなり減っている。

 調理を増員しなければ追いつかなかった時とはえらい違いだ。

 

「何かあったのか?」

「んーん?店には何にもないと思う。あれじゃない?クレーマー2人組」

「……他の要因に心当たり無いならそれか」

「うん。私のカンもそう言ってる」

 

 客足が遠のく理由なんてそれくらいしかないか。

 

「流石に見過ごせないレベルだな。正当な進化じゃない」

「私なんかしようか?」

「いやいい。店で大人しくしててくれ。よっぽどじゃない限り暴れるなよ」

「ん、了解。か弱い高校生しとく」

「秀吉、代表どこかわかるか?」

「2人も大会ではないのかの?」

 

 そりゃそうだな。

 

「お、戻ったか。坂本と吉井なら食材取りに行ってもらってるぞ」

「ナイスだ須川。で、どこに?」

「ああ、教室知らないんだったな。案内してやるよ。木下、店を頼む」

「うむ。しっかり呼び込みしておこう」

 

 須川の後を追って準備室とやらへ走る。

 幸い人が少なくなってるので簡単に進める。

 

『あ……二、ちょ……に』

『ん……なん……ら?』

 

 聞こえてくるバカ2人の声。

 

「よし場所は分かった。お前は戻っていいぞ」

「まだ先だがすごいなお前。まぁどっちでもいいから俺も手伝うよ」

「まぁいいが」

 

 先に見えたのは教室から出てきた吉井。

 代わりに代表が中に入ったみたいだ。

 

「吉井、代表に話がある。妨害を潰しに行くぞ」

「あ、フタガミさん。いや、中」

「あ?」

「妨害。雄二がお望みだったみたい」

「……?」

「そのうち出てくるよ。ちょっと待ってよう」

 

 中の声や音からするに喧嘩だろう。

 数人いるようだが……

 

『ちいっ!覚えてろよ!』

『この借りは必ず返すからな!』

『夜道に気を付けろよな!』

 

 明らかにこの学校の生徒ではない男3人がボコられて出ていった。

 ……その捨て台詞まじで言うんだな。

 

「ちっ……」

 

 扉の前にいたために3人の男の全力脱走を耐える事はできず、無様に尻餅をつく。

 

「大丈夫!?フタガミさん!」

「……気にするな。姉さんの体は脆いからな」

「すまんなフタガミ。逃してしまった」

「代表、さっきのが妨害の首謀者か?」

「いいや、アイツらはそこらで雇われたチンピラだろう。相手は常夏コンビ、元凶は教頭だ」

「教頭?なんだその話。オレは聞いてないぞ」

「まぁ……色々あったんだ」

「とりあえずフタガミ、ほれ」

 

 須川の手を借りて立ち上がる。

 

「……いいだろう。なら教頭を暗殺する。ここまでの妨害は成長を妨げる。誰も進化せず衰えるだけだ」

 

 こちらの成長はおろか相手も進歩しない。

 それは成長し続ける世界にとって退化だ。そんなもの、許しておけない。

 

「まて。そんな事すればこの清涼祭自体が中止になりかねない。この行事は継続させなければならない。しかし同時に目的を果たさなければならない」

 

 簡潔な結論が目の前にありつつも、それ以外の手段が最適解──

 

「……ふっ、ははははははは!まさに戦争だ。進行に縛りのある戦争は経験済みだ。いいだろう、そいつらを正規にぶっ潰してクラス設備を向上させてやる」

 

 前の世界では殺せば終わる戦争を全員生存させる理不尽を敷いていた。

 この世界ではオレがプレイヤー側だ。だが問題無い。

 たかだか生身の高校生、点数も数百点程度。オレをして相手になるものでもない。

 

「ふはははははははははははは!いいだろう!オレが全て正常に収めてやる!」

 

 常夏コンビとやらの顔は代表の記憶から抜き取った、教頭はただの指示厨木偶の坊。

 全ての秩序を正す!世界は進化し続けなければならない!

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