バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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清涼祭 ⑥

「はい、胡麻団子です。ごゆっくりどうぞ」

 

 注文通り配膳し、次の料理を取りに戻る。

 相手を変えるだけで同じことの繰り返し。

 働くってのは……社会は、生きてくってのは、ただそれだけなのかもしれない。

 

「やー、結構人気なもんだねー……」

 

 シオンも代表さんも試合でいない。

 何故かカメラマンもどこかにいって……首脳陣がほぼほぼ空になるというどうかと思う状態になってはいたものの、レールは敷かれてるから喫茶店は問題なく運営できている。

 これといった迷惑客もなく、妨害の手は引いたのだろうか、シオンに始末されてしまったのだろうか。

 

「そうですね。人気者の気分になれたり、少し恥ずかしかったり……」

「でもこの調子なら、クラス設備も改善できるはずよ」

「そうだねー……まぁ2日くらい頑張るか……」

「シャキッとしなさい!葉月の手本になるくらいにね!」

「やはは……あの子も元気だね……」

 

 妹さんはまばゆい笑顔で男女問わず笑顔にしている。

 人の役に立とうとする精神性、素晴らしい。

 と……思っていたら、何やらこちらに駆け寄ってきた。

 

「あの、となりまちのこーほーぶ、という方からせんでんようの写真を撮りたいからウェイトレスたちに少し時間をくれ、とのことですっ!」

「広報部?他校かしら?」

「めんどくさそ……断れば?」

「写真は恥ずかしいです……」

 

 よくあるあれ……あれ、何て名前だったか……新聞屋……?まぁいいか。

 

「そうね……でもこれはチャンスじゃない?明日の売り上げに貢献できるチャンス」

「んー……そうかもしれないけど、私たちまで店離れて大丈夫?」

「アンタ……そういうとこ律儀よね」

「失敗したらシオンに怒られるんだから」

 

 なんかまだこの学校は必要だからーって……ほんとに試験召喚システムで何しようとしてんだろ……

 プライムトリガーにはギルガメッシュオルタ経由でサーヴァントシステムも取り込んでたはずだし今更フェーズ2作らなくても3までいけるはずで、3までいけばおおよそ全て解決できてるはずなんだが……

 

「話は聞かせてもらった」

「須川?」

「素晴らしい機会だ、行ってこいよ。その間、俺たちが全身全霊で店を回す。設備向上への思いは一緒だ」

「悪いわね。じゃあ行くわよ。葉月、その広報部の人たちは?」

「人混みだと悪いから一階の準備室前で待ってるって言ってたです!」

「なるほどね。早めに行きましょ」

「あー……気が乗らない……」

「そんな事言わない。美人顔は写真に映る!」

「んー……言うほど美人か……?」

 

 自分が標準になるんだから美醜の判断はしかねる。

 そのまま首根っこ掴まれてずるずると引き摺られてしまう。

 うう、まだ服持ってくれるだけ温情だな。遠慮無く髪引っ張る輩も別世界に存在するからなこれな。

 

「あの人たちかしら」

 

 一階の人気の無い廊下奥に大きなカメラを持った2人組を見つける。

 ウェイトレス集団は躊躇いなく近づいて行く。

 

「やーな予感するなー……」

「え?」

「動くなよ……もう手遅れだぜ」

「……っ!?葉月っ!」

 

 カンが察知した予感を伝えた時にはもう遅く、他に見えないように妹さんが捕まっていた。

 しまった……カメラの2人組に気を取られていた私は、背後から近づくもう2人組に気付かなかった。

 

「おっと、声も出すな。わかるな?」

「アンタ達っ……!」

「待って。妹さんが危ない。ここは従うべきだ」

「……!」

「お、白髪の嬢ちゃんは物分かりがいいねぇ。じゃあ、怪しまれないようについてきな。不審な動きをしたら……な?」

 

 恐らくナイフだろう物がハンカチ越しに妹さんの頬に当てられる。

 ここからどうしても妹さんが傷を負う。

 私やシオンなら無視して良いが……このままじゃ綺麗な目が人間みたいに傷付いてしまう。

 

(何よ!葉月が捕まってるのに黙ってろっていうの!?私が脅しに屈するわけないでしょ!?)

(落ち着きなよ……きょうだいを思う気持ちはわかる。だからこそ今はまだだ。妹さんの顔と心に傷跡を残したくないならね)

(何かあったら……覚悟しなさいよ)

(私もシオンに余程の事がない限り暴れるなって言われてるから)

(一応アンタが姉なのよね?)

 

 この程度ならまぁ……一応まだ……セーフかな?

 誘いに乗って来たのは私たちだしね……蜘蛛の巣にかかった獲物には蜘蛛の巣を避ける選択肢があった、って話。

 そして私たちは前後を男たちに挟まれて……近くのカラオケボックスの一室に入れられる。

 

「来たか。あとは隅に放っておけ」

「きゃあっ!」

「あ……っ」

 

 4人揃って投げられる。

 いったいなぁ……ヒビでも入ったかも。

 しかももう1人いたのか……

 

「さて。この後どうする?コイツら人質にして坂本と……後なんか言ってたが、そいつら呼び出すか?」

「いや待て。坂本は下手に手を出すとマズい。話によるとあの坂本らしいからな」

「あの悪童か?」

「だがよ、依頼はそいつら動けなくするってんだから、何もしねーわけにもいかねぇだろ?」

 

 目的はやっぱり妨害か。

 とはいえ……私もどうするかな。

 

「もう我慢ならないわ!アンタたち!」

「はっ、大人しくしてな!」

「きゃあっ!」

「お、お姉ちゃん……」

「おねーちゃんだってよ!かっわいー!」

「ギャハハハハハ!」

「もーいいか、こいつらヤっちゃって捨てに行こうぜ!」

 

 ポニーテールが突き飛ばされ、机の色々を巻き込んでいく。

 はぁ……下手に突っかかるから……分かり合える生物じゃないのに。

 

「けど……流石にアレだ、暴行罪成立だ」

「あん?最初は白髪のねーちゃんが相手してくれんの?」

「ヤるってのは……アレだ、強姦罪だ」

「いいねぇその反抗的な態度!どんな鳴き方してくれんのかねぇ!」

「つっ……」

 

 右頬を平手打ち1発。

 軽い私は反対側の壁まで飛ばされる。

 なんで……

 

「フタガミさんっ!」

「げほっ……暴行……はもういいか。脅迫罪も追加といこうか」

「なー、さっきから何いいてぇの?そんな何罪だぁ並べて助けて貰えると思ってんの?あぁ!?」

「言わせてやれよ面白い!ギャハハハハ!」

「ハッハッハハハ!」

 

 なんで……こんな……

 

「助ける……?違うね。ただの確認だ。あなたたちのしてる事は犯罪だって」

「あーん?犯罪だから?捕まりたくなければ解放してくださいってか?」

 

 なんで……こんな……人類が私を下に見てるんだ。

 

「あなたたちみたいな愚か者を守る為の法だって言ってるの。弱者は法を守る事で秩序を形成し、法に守られる。法を犯すなら、法に守られない。当たり前だよね?そんな奴を守ってやる義理は無い」

「あー……?何小難しいこと言ってんだ?」

「島田さん。今までごめんね。でももう安心して。みんな無事に帰れるよ」

【閉じろ】

 

 世界の物理法則を書き換える。

 この部屋から音も振動も匂いも気配も、何も外には出ない。そしてドアも中からは開かない。

 入ったばかりのカラオケボックスに……時間延長のコールも無い。

 

【守れ】

 

 ウェイトレス3人を保護。

 彼女らには私が解除するまで如何なる物理、概念攻撃も通じない。

 

「ちょっ、何する気よ!?」

 

 明確に敵対する意思を見せた私を案じてか、心配する島田さん。

 さっき突き飛ばされたので擦りむいてる。自分の心配しときなよ。

 

「何って……今人権を失った人類が目の前に5匹いる。世界のゴミは消さないと。もうよっぽどの事だよ。だから暴れていい」

「そういう話じゃないと思うわよ……?」

「シオンならこのニュアンスで言う」

 

 ビルドドライバーをセット。

 

「法に従って罪が裁かれる。けどもうここに法は無い。だからあなたたちは何をされても文句は言えない。警察も守る筋は無い……今日があなたたちの命日だ」

 

《ハザードオン!》

 

《ラビット》

《タンク》

 

《スーパーエボルマッチ!》

 

 シオンのトリガーと同じアイテム。

 私もフェーズ3程度の力を持って、犯罪者に違法行為を叩き込もう。

 未だ私をナメた目で見てる馬鹿を殺す。

 

《ドンテンカーン!ドーンテンカン!ドンテンカーン!ドーンテンカン!》

《ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!》

 

 トリガーを使う前のプラモデルではなく、重厚な金型みたいなのが私の前後を挟むように展開される。

 

《Are you ready?》

 

「変身」

 

《チーン♪》

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!》

《ヤベーイ!》

 

 金型が私を挟み、変身完了。

 ふーん……ブラックホール……なのか?

 真っ黒ではあるけど……

 

「はぁ?何こいつ、ダセェコスプレし始めたぞ」

「変なモン出してビビらせやがって」

「こーこーせーにもなって恥ずかしくないのか?」

 

 まだ自分の危機を認識できてない男たち。

 一般常識からすれば恥ずかしいのはわからんでもないが。

 

「まぁ……発言は自由だ。そもそも、私達は縛ることはしない。さぁ、誰から死にたい?」

「ギャハハハハー!いいねぇ!イチバンは俺だぁ!」

 

 足りない頭で殴りかかってくる男。

 

「なっ……!?いってぇ!?」

「……」

 

 仮にも女の顔面を平気で殴る男。

 とはいえ所詮はただの人間。トンを単位にするライダーシステムに全く無意味。

 

「諦めなよ。あなたたちの優位はもう無い。大人しく死ねば許してあげるけども」

「ふっざけてんじゃねぇ!」

「かかれ!」

 

 全員が私を囲む。

 私はまだ何もしてない。

 四方から殴られ、蹴られるけれど全くダメージは無い。

 そりゃそうだ。前の世界では何メートルか吹き飛ばされても支障無いくらいだったんだ。

 

「さぁ、もういいね。まずは君だ」

 

 目の前にいた男の首を掴み、宙に浮かせる。

 

「おっ……!は、離せ……!」

「ヤスオ!」

 

《Ready Go! 》

《ハザードアタック!》

 

 男の胸に必殺キックを叩き込む。

 胸が陥没する感触を味わい、手を離れたそれは壁に打ち込まれた。

 

「ヤス……っ!」

 

 飛ばされた男に声をかけるがすぐに黙り込む。

 控えめに言って死んでるからね。意味無い。

 

「や、ヤベェぞコイツ……!」

「シャレになんねぇ!逃げるぞ!」

「無理だ!ドアが開かねぇ!」

「ふざけんな開けろ!ぶっ壊せ!」

「ビクともしねぇんだよ!ドアノブさえ微動だにしねぇ!」

 

 1人やられただけでさっきの威勢は消え去り、我先にと唯一の出口へと群がる。

 

「入り口が必ず出口になるとは限らない。もうあなたたちの出口は天に還る道しかない。次の世界では真面目に法を守って生きるんだよ」

「ひっ……!やめ、やめろ!悪かった!俺たちが悪かったぁ!」

「許してくれ!命だけは!」

 

 数歩近付けば男たちは叫びながら土下座。

 相手をナメて襲い、無理なら逃げて、それも無理なら謝罪……

 こんなのが地上最大の知性なんて言われても信じられないな。まだコバエの方がマシな思考回路してる。

 

「無理なんだって。悪かったって、何に謝ってる?」

「お前らを攫って坂本を潰せって命令だったんだ!依頼主も喋る!だから!」

「謝るんならさぁー、なーんで殴りかかってきたかなぁ?煽ってたよね?逃げるしさ、証拠隠滅、逃げるが勝ち?自分が害されないって思い上がってたんでしょ?たかだか10か20の歴史しかない生命体がさぁ!」

 

 みんな死んでくれないかな。

 ニュースでは面白い様に毎日毎日誰かが捕まって罪状は〜なんて報道されてるのにさ、何で自分もそうなると思えない?

 捕まりたいのか?罰を受けたいのか?死にたいのか?

 なら納得だ。是非死んでくれ。人の目に付かないように迅速に死んでくれ。お前たちがもたらす幸福より不幸と不快の方が遥かに大きいんだから。お前たちを産んだ血縁も環境も漏れなく死んでくれ。産まれてこないでくれ。産まれてくるだけ不幸が増えるだけなんだから。

 

「ひっ!」

「すっ!すんませんでした!ほんとマジで勘弁して下さい!」

「靴でも舐めます!何でもします!」

「いいよ、そんなの……逆の立場なら絶対しないんだか……ぅ……?」

 

 頭痛が……

 

「……?」

「……急になんだ……?」

 

 アルコールの離脱か……?違う、経験した事ない事態だ……

 対抗策は……とりあえず……自分の身体を保護しておくか……

 

【守れ】

 

「う……」

 

 ヤバい……限界だ……!




変身音声してみたけど面倒だからもうやんないかも……
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