──準決勝。
後2戦か。もはやオレの相手が可哀想になるね。折角頑張って勝ち上がってきたのに、変なベルト付けてるやつに負けるなんて。
にしてもなぁ……
『シオン、絶対勝ちなさいよ』
『あ?』
『アンタが負けたら、アキたちだけになる。Fクラスが優勝しないと、瑞稀が転校することになっちゃう。それだけは阻止して欲しい。私に払えるなら、何でも払うから……お願い』
『……オレを都合の良い兵器とでも思ってないか?オレはオレの目的の為に動く。優勝なんてのはついでだ。まぁそうだな、お前にはまた聞くことがある。優勝したら聞かせてもらおう、昔のオレの事をな』
『いいわ。そんなことでいいなら』
『……そんなこと、では済まないんだがな。チャオ』
店を出る前に言われた島田との約束。
優勝するなんて訳ない。しかし負けてもどうでも良かった。オレが欲しかったのはシステムへ介入する許可だけ。
この準決勝を勝ち上がり、相手が代表たちならオレは不戦敗で構わない。
如月ハイランドのチケットは回収され、学園は存続する。
だがこの世界の過去を知れるとなると……話は別だな。まぁ、普通に聞き出せば良かったが言ってしまったものは仕方ない。
「……で、お前は何なんだよ」
(影武者だ。ど……どうだ?俺、木下に見えるか?)
隣を歩くのは秀吉……と同じカツラを被りメイクで顔を変えたクラスの男。
声は流石にどうしようも無いので小声で。
「……まぁ、だいぶ髪で隠れてるし、そこまで違和感は無い……と思う」
(……!ほんとか!俺なんかが木下に見えるのか!)
「自信なさげだな……」
いくら背丈が近いとはいえな……
秀吉は何やら作戦がとかで代表たちと話した後どっか行ったしな……
とはいえバレて困るのはオレも同じ。
……この試合終わるまで能力で顔変えといてやるか。
「……あぁ?なんでテメーがいやがる?」
会場に着くと初手からケンカを売られる。
「……テメー呼ばわりは気に食わないな、何の話だ?クソ坊主」
「んだとぉ!?」
相手は坊主とソフトモヒカン。
こっちも腰くらいまで髪伸ばしてるから強くは言えんがその髪型はセーフなのか?仮にも進学校だろ?
「けっ、まぁいい、サモン!」
「サモン!」
3A──202点
3A──196点
「ほう、3年生。Aクラスともなるとこの時期でも余裕あるもんだな」
「あ……?ちっ、そうか、コイツ高城に勝ったやつか」
「だが本気じゃなかったろうし、大丈夫だろ」
「サモン──変身」
フタガミウタネ──28点
「けっ、やっぱりな、貧相なもんだぜ」
「恥かく前に降参してもいーんだぜ?」
「……ふん、良いだろう。お前らも1人相手に負けたなんて恥をかく前に自害した方がいいぞ?」
「ケッ、余裕あるのも今のうちだ!」
「いくぞ!」
2人の召喚獣が両隣から攻撃を仕掛けてくる。
だが、同じ武器をもってそれを受ける。
とはいえ長く押し合うと本体性能ですぐダメになる。
体を回して受け流し、返しで攻撃するがそれを潰される。
「っ……と」
「行くぞ常村!」
「おう!」
「……!」
3年生の操作性でもまだこちらが上。
とはいえ2人のコンビネーションに中々攻めきれない。
「うっしゃあ!止めだ!」
「くたばれぇぇぇぇ!」
「ぬぅ……!」
上段から力任せに叩きつけられた武器を受け……
フタガミウタネ──20点
受けられはしたが、かなり削られたな。
「ち……流石に厄介だな。なら、1人ずつ潰すまで!」
2人を同時に相手にしてやる義理も無い。
どんな戦法だろうが1対2は揺るがない。
狙いはモヒカン。坊主の攻撃は避ける、流すにすませ、2つの武器をモヒカンの攻撃に集中する。
3A──156点
「常村!」
「大丈夫だ!1発入りゃあいいんだ!当たればやれる!」
「ふん……」
左手の剣を地面に叩きつけ、その反動で召喚獣を動かしていく。
姉さんの魔力放出に近い動き方だな。
「くそ……!2桁のくせにすばしっこく動きやがる!」
「そこだ!おらぁぁぁ!」
軌道を見切ったモヒカンが剣を振り翳してくるが、こちらは2刀。
ほぼ倍の点数とぶつかるのだから、当然負けるしかない。
「ぐお……!」
3A──42点
「さぁ、次はアンタだ、坊主」
「ふざけやがって……覚悟しやがれ!」
「もうこっちの優位だ……はあっ!」
もうこちらの優位は動かない。
段々と互いの点数が近付いていき……隙を突いて首を落とす。
「ふん……オレの勝ちだ、3年生」
♢♢♢
「……お前ら、もう少しくらいはまともに戦おうと思わないのか?」
「ああ、今戦ってやるよ、明久を始末してやる」
「ま、まぁまぁ雄二、僕のおかげで勝てたんだからね?」
準決勝、代表と吉井の試合は何とも悲惨なものだった。
オレの試合に同席するはずの秀吉は戦闘に参加しないのを良いことに背丈の近いクラスメイトを女装させて影武者にし、代表たちの相手になるAクラス代表と木下姉ペアの姉に成り代わるべく奔走。
しかしその作戦を読まれていたために縛り上げられ、観客の見せ物として床に打ち捨てられていた。
それをひとしきり写真に納めたムッツリーニにより解放された後、代表を吉井が締め上げ、秀吉の声真似でAクラス代表を籠絡。
残った木下姉にはオレですら躊躇うような禁じ手、代理召喚によりムッツリーニの保健体育で瞬殺。
吉井の策で勝ったとはいえ、ひでぇもんだ。オレの様に正攻法でしてほしいね。全く。
「いや、お前も正攻法ではないだろ。そんなモン使いやがって」
「エボルドライバーか?これは学園長に許可を得て使用している。試験召喚の宣伝にもなるだろう」
「とはいえだな……」
「…………雄二」
「戻ってきたか!大変なのじゃ!」
「どうした秀吉、ムッツリーニ」
教室が近付くと秀吉とムッツリーニが慌てた様子で近づいて来る。
「…………ウェイトレスが拐われた」
「儂らが戻った時には既に連れて行かれた後じゃった」
「連れてかれた……?姉さんがいてなんでそんなことに」
戻ってすぐってならまだ時間は経ってないか……?
とはいえ何故だ?姉さんを誘拐だなんて不可能だ。相手の命が危ないとまで断言できる。
「すまん!俺の責任だ!」
「いいだろう、説明しろ須川。内容によってはお前を殺す」
「まて、落ち着けシオン。須川、何があった?」
「ああ……広報のためウェイトレスの写真を撮らせて欲しいという奴が現れた。クラスの宣伝の為と乗り気じゃないアイツらを俺が行かせてしまった……」
「その後は?」
「…………一階に仕掛けた監視カメラ」
「……」
そこには島田妹を人質にされ歩く島田、姫路、姉さん……
「チ……!相手は4人か……!ムッツリーニ!相手の場所を探せ!まだ間に合うかもしれん!」
特定して突撃、これは急がないとマズいな。
「待つのじゃシオンよ!1人で行っても返り討ちじゃ!」
「違う!心配するのは相手の方だ!オレは姉さんによっぽどじゃない限り暴れるなと言ったんだぞ!」
「……?言っておる意味が分からん。どういうことじゃ?」
「コレはよっぽどの事だ!暴れ出したら姉さんは容赦無くコイツらを殺す!早く止めねぇと島田たちの命も危ない!」
「なんじゃと!?」
「そんな事ができるか……?いや、ライダーシステムなら可能か……?ちっ!どうだムッツリーニ!」
「…………3人に付けてある発信機は作動していない」
「……!お前らはもう店に戻れ!オレが止めてくる!」
ムッツリーニの機械技術は中々なもんだ。
ならば姉さんが能力で覆ってるかもしれない。
そうなればまず助かってないかもしれない……せめて島田たちの命でも救えれば良いが……
「場所わかるのか?」
「姉さん個人の場所なら大体。じゃあな、覚悟だけしとけ」
とりあえず人目の無い場所を目指して走る。
姉さんの場所までならオーロラカーテンでどうにでもなる。
よしいくぞ!人目が切れる角でカーテンを潜る。
生きててくれ……!
《ドンテンカーンドーンテンカン!》
《ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!》
状況は宜しくない様子だ。
既に壁に沈んでる生ゴミ、今まさに二つ目になろうとしている2人目。
変身してるのはラビットタンクのビルドだが……あの色は何だ?
「やめろ姉さん!もう終わりだ!」
「……」
「……?」
声をかけると獲物を投げ捨て、こちらに向き直る。
「げはっ!が……」
「シオン!?ウタネが……!」
「とりあえず黙ってろ、姉さん、終わりだ。変身を解除しろ」
「……」
何故黙ってる?
《MAX!ハザードオン!》
「……っ!?姉さん!?くそ、変身!」
《フウシャ》《ライダーシステム》
《エボリューション!》
いきなり必殺キック。
「ぬぉ……!?なんだこの威力……!」
「きゃあっ!?」
「シオン!」
島田たちの悲鳴。風圧で飛んだ机やらのせいだろう。
前やった時もラビットタンクだったはずだがここまでではなかった……
違うな、ハザードトリガーか。エボルトリガーの模造品だと思っていたが、想像以上のパワーみたいだな。
「ち……!フェーズ3……2くらいか……?ギンガボトルもねぇからな……!」
「……」
「姉さんなんか言え!コイツら殺したいなら我慢しろ!」
返答は一切無い。
どころか動作にも姉さんらしさが無い。
近接格闘に無駄が無い……俺より長けてるのは確実だ。
なら……デッドヒートマッハの様に暴走してるのか。
「トリガーも他のボトルもねぇ……ジリ貧だな……」
ハザードとエボルラビットタンクはウタネが使ってる……
オレの鏡はこのオレ自身と姉さんを映せない。姉さんに限りオレは他のもので相手しなきゃならんのだよな。今の今まで無かったが中々面倒なシチュだな。
「くっ……!中々キツいねぇ、けど……暴走への解答は……コレか?」
「……!」
いつまでも見る黄色のリボン。
無限に出現しては対象を縛り続ける。
バーサーカーさえある程度封殺した能力だ、初手抜けられなかった時点である程度の時間は担保されるな。
「島田、大丈夫だったか?」
「ええ……助かったわ……」
島田の手を引いて立ち上がらせる……
違和感を感じて直死で視てみると、姉さんの能力で保護されていた。
なるほどね。最低限のフォローはしてたのか。
「あ、あの……!あの人は……」
「姫路……島田姉妹。お前らはここで見た事は忘れろ。ここにいる男たちは元々世界に存在していなかった。お前らはただ……妖精に拐われただけだ」
「うっ……!」
「瑞稀、大丈夫!?」
姉さんが拘束されてある程度現実が見えてきたのか嘔吐する姫路。
島田はその背中をさするが……妹見てやれよ、気絶してるぞ。
「アンタら何なんだ!もう警察でもいい!この部屋から出してくれ!」
「……お前らは姉さんを怒らせた。忠告くらいはされたはずだ。それを無視して好き勝手した……だから死ぬ」
「ふ……!ふざけんなよっ!んなことして良いと思ってんのか!?」
「お前らこそ誘拐、脅迫、暴行、婦女暴行未遂……していいと思ってるのか?誰の意志だなんて関係無い。お前らがやったんだからお前らがまず刑を受けるべきだ」
「ざけんな、限度があるだろうが!」
「限度が無ければこの世界は瞬時に滅びていた。少なくともお前らは姉さんがキレた後1秒とて存在していられなかった。だがお前ら、まだ若そうだもんな」
カスが何を言っても無意味だ。
どうせコレを見た以上生かしておけない。
「どーせその様子だとそのドア開かないんだろ?姉さんのことだ、この部屋全体覆っててもおかしくない。だから死ね。お前らは正常社会を脅かす世界の癌。切除する」
「ひっ……!」
手頃な男を掴み、ハンドルを回す。
《Ready Go! 》
《エボルテックフィニッシュ!》
既に埋まってた男の隣に埋め込む。
《チャオ♪》
残り3人。
同じように始末していくか。姉さんの対応はその後で……
《デュアルガシャット!》
《The strongest fist!What's the next stage?》
「何っ!?」
《デュアルアップ!》
《Are you ready?》
「デュアルガシャット……!そういえば使ってたな!」
自我もねぇクセにフォームチェンジ……!
しかもパーフェクトパズルの能力で……
「……」
「やっぱりリボンも操作できたか!島田!姫路と妹を角の方に下げろ!オレが死んだら精神を保て!お前らはその状態ならダメージは無い!」
「……!死ん……!?」
「クソ……!トリガーさえあれば……!」
これで姉さんのフェーズ2とするか。
ヤバすぎる。同じ能力使ってこっちが劣る……!
「スタープラチナ・ザ・ワールド!」
時間停止……2秒……
だが単に止めた世界では姉さんも動ける……
「
静止時間4秒。
二重に止めた世界なら姉さんは動けない。認識はできるだろうが。
とはいえどうする……変身解除させるにはどうするか……