バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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清涼祭 ⑩

「じゃ……木下さん、最後までお願いね」

「お主……シオンかの?1人見えんようじゃが?」

「うん……えっとね……えー……?」

 

 決勝戦直前。

 最後まで茶番に付き合わせてる木下さんに声をかけるものの説明不能の事態になっていた。

 どうしよこれ……

 

(話していいだろ。今更だ)

「えぇ……」

(どうせオレが決勝戦やるんだ、隠しても意味無いぞ)

「そもそも別れればいいんじゃ?」

(……あの3年生相手に1人だって言っちまったからな。ひとまず清涼祭のうちはこのままだな)

「ふーん……せーごーせーってやつか」

「お主……何を1人でブツブツと言っておるのじゃ?」

「あ……うん。話していいみたいだから言っとくよ。私とシオンは今この体を共有してまーす」

「……?」

「やはは……そーだよね。変わっとくよ。ちゃお」

 

 ♢♢♢

 

「さて……まぁなんだ、特に変化は無い。作戦は変わらず。だがそうだな、注目の集まる決勝だ、何もせず自決は心象が悪い。開幕突っ込んで良い感じに死んでくれ」

「それもそれで無茶な注文じゃのう……」

「報酬は弾むぞ、期待しておけ」

 

 代表よりむしろ、コイツにプライム渡してやりたいくらいだ。

 オレに近い属性を持つコイツならオレの使い慣れた能力で十分適合するだろうしな。

 

「姫路の転校が阻止できればそれで良いわい」

「……知ってたのか」

「儂も多少は明久たちとつるんでおるからの。そのくらいはの」

「……友情、だな」

「そうじゃの。じゃから、お主も信用しておるぞ」

「……?」

「お主も儂の友人じゃ。良い結果を期待しておるからの」

「……ふぅ。お前もやっぱり馬鹿だよ。普通、常識から外れてるオレ達をそう簡単に信用しない。オレ達はむしろ迫害すべき、お前らの……敵だ」

「ふふ、そういう病は卒業しておくべきじゃぞ。明久のようにならんうちにの」

「……オレがどうあってああなるんだよ。はぁ……いいだろう、行くぞ。これが最後の見せ物だ」

「そうじゃな。頑張ると良い。姫路や島田を救ってくれた事、感謝しておるぞ」

「……それもオレ達の不手際だ」

 

 舞台へと進む。

 特に何も準備はしていないが、この勝負にこの世界への干渉具合がかかっている。

 

『レディースエーンドジェントルメーン!ついにここまで来ました拍手を喝采!文月学園清涼祭、試験召喚大会!決勝戦です!』

 

 会場の方ではヤケにテンションの高いアナウンスが叫ばれている。

 流石に決勝、控えからでも人が多いのがわかる。

 

『それでは!選手入場です!まずは2年Fクラス、坂本雄二君、吉井明久君です!盛大な拍手をお願いします!』

 

 代表たちが入場、文字通り割れるほどの拍手と声援が上がる。

 

『対戦相手は同じく2年Fクラス、双神詩音さん、木下秀吉さんの入場です!こちらも盛大な拍手を!』

 

「……やれやれ、なんて見せ物なんだ」

「良いではないか、劇でもここまで人が集まる事は少ないぞ?」

「……」

 

 舞台へ入場、盛大に人目に曝される。

 最悪だが相手が最強女子でない事に安堵する。

 あの時は能力無しとはいえオリジナル魔法に魔力放出全開の姉さんが死んだからな……

 

『さぁこの決勝戦、どちらもFクラスの選手が勝ち上がってきました!文月学園のシステムを知る方ほど予想外だったのではないでしょうか!学力でクラス分けをするこの学園でFクラスは最も下に位置するわけですが、試験召喚システムは学力以外の要素も含めての競い合い!多くの要素を拾い集め、FクラスがAクラスを破ってきました!』

 

 何故か我が魂を揺らす大いなる力がこの身に宿りそうな声してるなこのアナウンサー。

 ごちゃごちゃとシステムの説明まで始まったので意識をアナウンスから外す。今のうちに代表に秀吉抹殺を指示しておくか……

 

「フタガミ、約束は覚えてるな?」

「……もちろんだ。はじめから破る気も無い」

「ならいい。正々堂々やろう」

「……その件だが、秀吉を突っ込ませるから先に殺してくれ。フェアじゃない」

「わざわざ先に?」

「後からやっても印象の悪いだけだ。それまでオレも戦うフリはするがボトルも使わない」

「わかった。嘘は無いな?」

「ねぇよ、そんなセコいことするか」

 

 承諾は得られた。

 

『では始めて参りましょう!選手の皆さん、どうぞ!』

 

「「「「試験召喚(サモン)」」」」

 

 合図と共に4体の召喚獣が召喚される。

 まずは様子見で突っ込む……フリをして、秀吉をリタイアさせる。

 

「では行くぞ明久、雄二!」

「さぁこい!」

「はぁっ!」

「おらぁ!」

 

 繰り広げられる圧倒的茶番。

 着実に秀吉は点数を減らしていき……脱落。

 

「く……すまぬ……」

 

 マジの激戦後の様な疲労具合、流れる汗。

 この茶番でその本気で悔しそうな声と表情は何だ……?演技なのを忘れてるのか?

 

「まぁいいだろう。ここからが本番だ」

 

《フウシャ》《試験召喚システム》

《エボリューション!》

 

「変身」

 

《プライム!》《プライム!》《エボルプライム!》

《フッハッハッハッハッハ!》

 

 双神詩音──28点

 

「プライム、フェーズ1、完了。これでお前らを倒して終わりだ」

 

 フウシャの能力で相手の武器をコピーする。

 右手に木刀、左手に……メリケン?

 

「……なんて貧相な装備だ。CやDでも金属ではあったのに」

 

 メリケンも金属と言えばそうだが……ほぼ素手だしな。

 

「うるせぇ!勝ちゃいいんだよ!」

「そうだよ!僕はこんな馬鹿と違ってちゃんと武器だし!」

「んだとごるぁ!」

「やんのか!」

「上等だ!」

「……自滅してくれるのか?それはそれでありがたいが」

 

 馬鹿2人は自分の武器の弱さで争い始めてしまった。

 ささいな事に感情を動かせるのは若さの良いところだ。 

 

「違う明久!今は奴だ!何としても勝つぞ!」

「……!ああ!足ひっぱるなよ!」

「ちっ!これは互いに武器変えて相手する方が良さそうだな!」

 

 急激にこちらへ矛を向ける2人。

 リーチを揃えるため木刀にはメリケンを、メリケンには木刀で対処する。

 代表の点数で吉井を消してしまえば後はどうとでも──

 

 坂本雄二──28点

 吉井明久──28点

 

「……!!?」

 

 点数が……オレと全く同じ……!?

 

「どうした?顔色が悪いぞ?」

「ち……甘いぞ!オレの操作技術なら──」

「残念だけど僕の左に操作精度で出るものは無いっ!」

「つっ……!」

 

 同じ点数で揃えるのなら、オレのアドバンテージは武器が2つ使える事のみ。

 操作技術も元は吉井のコピー。

 

「2方向からの同じ攻撃力に1人で対処できるか!」

「クソ……勝算ってのはコレか……準決までは3桁用意してたクセに……!」

 

 いくら馬鹿でもBクラスに通じるくらいには科目絞って来てた奴らが決勝の科目をサボるとは思えない。

 点数はあえて、狙ってオレに揃えてきた。

 左右から縦横無尽の攻撃が繰り出される。

 データから転送されてる召喚獣にオレの未来視は使えない。

 技術的にも互角、やや劣勢。

 

「だがまだだ!オレが今までに多人数戦をどれだけ越えてきたと思ってる!」

「うっ!?」

「しまった!雄二!?」

 

 メリケンで受けた木刀を流すように対面の代表の召喚獣へ向ける。

 未来視じゃなくとも馬鹿2人の行動を予測する程度の知能は持ってる。

 

 坂本雄二──24点

 

 吉井の咄嗟の引きもあってダメージがほぼ無いな。

 先に代表を落としておきたかったが仕方ない。

 技術のある吉井にまずは退場してもらおう。

 

「お前らじゃオレに勝てん!お前らFクラスのカスではオレを越えられん!」

 

 メリケンとかいうほぼ無いに等しいリーチを躱しつつ吉井を集中的に攻撃する。

 

 吉井明久──20点

 坂本雄二──22点

 双神詩音──24点

 

 木刀をこちらのメリケンで防ぐ事ができるためにじわじわとではあるが削れてはいる。

 このペースなら時間はかかるが持久力を超えるものではないな。

 

「ちぃ……!やはり俺たちを超えてくるか!明久!」

「よしきた!」

「……?」

 

 2人が退く……今度は正面から。

 ……何か他に作戦があるのか?劣勢とはいえ、左右から挟む以上のことが出来るとは思えないが。

 

「……なんだ?引き分けか?次があるんだろう?出せよ、全力をよ。勿体ぶってちゃ日が暮れちまうだろ!?」

「望み通り見せてやる!行け明久!覚悟を見せろよ!」

「ああ!当然だ!」

 

 2人の召喚獣が縦に連なって突撃してくる。

 吉井が先、代表が後ろだ。

 ……それに何の意味がある。メリケンではそのまま攻撃はできない。ならば吉井の攻撃をオレが回避ないし防御した所を横から?いや、当たればいい武器ならともかく、勢いも重要な素手ならそんな事をしてもダメージにならない。

 ……つまるところ、何ともない。

 何の覚悟だ?何故これまで勝てる気でいる……?

 

「……無駄だ、吉井の木刀さえ防いでしまえば後は同じ」

「明久っ!今だ!」

「……!」

 

 代表の声で、吉井の召喚獣が木刀を投げる。

 オレにではない、自身の頭上にだ。

 

「……!?何を……!」

「うりぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……っ!?」

 

 木刀に気が逸れた隙に吉井の召喚獣は勢いを殺さずオレの召喚獣に覆い被さるように突っ込み、地面に組み伏せる。

 

「雄二ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

「まかせろ。これが俺たちの力だ!」

「……まさか」

 

 後ろから跳んだ代表の召喚獣は空中で木刀を掴み……そのまま切先を、オレと吉井の召喚獣に向けて落ちてくる。

 勢いは十分、標準は固定。

 味方ごと……しかも、分かっているのか!?オレも吉井も、召喚獣の受けるダメージがフィードバックする観察処分者なんだぞ!?

 覚悟ってのはコレか……!自分の身が砕ける痛みに耐えようってか……!

 だが……!オレはドライバー以外にも能力を使用できる。衝撃の瞬間、時を吹っ飛ばせばオレとオレに通ずる召喚獣はそのダメージを回避できる!

 

「「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

「……」

 

 ……大人気ない、か……

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