バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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Dクラス ②

 

「……ふぅ」

 

 シオンから代わっても私のやる事は同じ。

 役割が回ってくるまで待機だ。

 

「けほっ……」

 

 軽くため息を吐いたところで咳き込む。

 う……信じられない、何この設備……生前引きニートしてた私の部屋より酷いんだけど……廃墟か……?

 周りを見渡してもそれを特に問題とはしていなさそうな人ばかり。

 唯一はシオンがテスト投げ出す原因になったピンクの人……誰だっけ……ダメだ、ピンクでシグナムが連想される。名前覚えるの苦手なんだよな……こうなれば……

 

「ねー代表さん?私、サボってていい?」

「さっきまでの威勢はどうした。もうそろそろ動いてもらおうと思っていたんだが……もう飽きたのか」

「んー、そういう訳じゃないけど……ほら、戦闘行動って疲れるでしょ?」

「まぁ……お前の体力からして相当粘ったんだろうな。よし、いいだろう、平賀を獲る時までは許してやる」

「ほんと!ありがとう!」

 

 よしよし、代表さんの許可は得た。

 確かシオンも休暇許可得てた気がするけど……

 

「よし、フタガミに男性教師を釣ってもらうかと思ったが……そうだな、須川。それなら明久をダシに船越先生を戦場から外すよう誘導してくれ。アイツの提案だ、それくらいは考慮の内だろう」

「いいのか?今後の人生に支障があるかもしれないぞ」

「構わない。オレたちの目的はあくまでAクラス。最高のクラスに観察処分者は必要無い。そろそろ数学に動く盤面だからな」

「わかった。行ってくる」

「ああ、よろしくな」

 

 船越先生……これも初めて聞く名前だ。

 呼び出しただけで人生に支障が出るって……何?まさかあの西村先生並みに規格外の存在だとか?

 

「あの、代表さん?船越先生を呼び出すってどういうこと?」

 

 この質問は転生特有の難しさだ。

 一年まで生きてた私なら確実に知ってる筈の先生について直接聞くわけにはいかない。

 怪しまれれば今後……この世界か私達が消えることになる。

 

「ふはっ、なんだ、分かってるだろう?まぁ少し待てよ、すぐに面白いモンが聞けるから」

「……?」

 

 堪えきれないとばかりに口角がニヤつく代表さん。

 

《ピンポンパンポーン》『連絡致します』

 

「くはははっ!始まるぞ!」

「……?」

 

 いやに嬉しそうな代表さん。

 この声はさっき指示受けてた子の声だけど……

 

『船越先生、船越先生。吉井明久君が体育館裏で待っています。生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです』

 

「はははははははは!聞いたか野郎ども!コレが至高の喜びってヤツだ!」

「……あの、代表さん?私、まだ分かってないんだけども……」

 

 周囲の生徒も笑いを堪えるつもりさえ無い様子……何?先生呼び出すだけで何がそんなに……

 

「ああ、フタガミは女だから知らないのか。船越先生は今や生徒にさえ手を出すほど逃した婚期に追われててな。アレだけ焚き付ければ明久の未来を生贄に船越先生の数学は封じられた」

 

 終始半分ニヤつきの抑えられてない代表さん。

 なるほど。婚期、ね……私も存在年数で言うなら50超えて80、100と行くのではないだろうか……そんな話、一切無かったからなぁ……

 まぁどうでもいいや。繁殖が必要なのは永遠じゃないからだ。

 

「ま……笑いもここまでだ。行くぞ、とりあえず明久たちを回収する」

「ん……?勝ちにいくんじゃないの?」

 

 50人とはいえ自陣の2%を切って得たチャンス、そのまま押し切るもんだと思うのに……

 

「いいや、まだ敵の本陣までは動いていない。数を整え、強襲で刈り取る。戦況のリセットだ」

「なるほど……?ちなみにそれ、私いります?」

「……行きたくないならいいぞ。下手に戦死しても困るしな」

「了解。待機してます」

「やれやれ。よし、行くぞお前ら!」

「「「おう!」」」

 

 代表さんと数名の男の子が教室を出て行った。

 残された最低点の私と恐らく最高点のピンクさん。ちなみにピンクさんが最高点で無い場合には時間停止でも何でもして得点するとシオンが叫んでる。

 

「お、お疲れ様ですっ」

「……お疲れ様……?」

「同じクラスでしたね、ウタネさん」

「みたいですね。貴女もそんなに体の強いわけじゃ無さそうだけど、大丈夫?」

「はい、ここ数日は落ち着いてます」

「そう……」

「……」

 

 話題尽きたんだが。

 単純に会話に興味無いのもあるし、情報出し過ぎて一年時との食い違いも困る……何も話せない。さっきの先生の話題だって迂闊にも死ぬところだったし。軽率だった。

 

「あの……フタガミさん」

「何?」

「あの時、ありがとうございました」

「……?えっと……ごめんなさい、何しましたっけ……?」

 

 死んだかもしれない。全く心当たりが無い。あるはずも無い。

 シオンに代わって心読んで貰うか……?いや、全く心当たり無い感じを出した手前、急に理解を示すとそれはそれで……

 く……こんな所で……!

 

「ごめんなさいね、私、記憶力無くって……」

 

 必死になってみたものの、私である以上記憶力は壊滅してるはずだ。そんなもんあったら生命にキレて発狂してるはずだ。

 

「い、いえ!とんでもないです!すみません。私の思い上がりで……」

 

 ……?

 ただアタフタするピンク。なんだコイツ……肝心の内容が全然出てこない。

 

「何?私なんかマズいことしてました?」

「いえ……振り分け試験の時、私を庇って、吉井くんとフタガミさんの2人が……私のせいで、Fクラスに……」

「……は?」

「あの!私、本当に嬉しかったです!まさかフタガミさんが私を庇ってくれるなんて!そのせいで点数が無くなって、Fクラスになってしまって……本当に、ありがとうございました!そしてごめんない!」

「……えぇ、えー……?」

 

 ガバッと頭を下げるピンク。

 これ、どう判定するべきだ……?

 

「ちなみに私、その時なんて言ってた……?」

「え、えぇと……『コイツが不正なんかするか!私の点数なんていらねぇから、コイツの再テストをさせてやれ!』……と、とても力強く抗議されてて……」

「……」

 

 これマジか。私の前の私も同じ体にシオンいた可能性出てきたなこれな。

 私が私らしく生きてるならコイツだとかいらねぇとか言わないと思うし……

 

「理解した。それは気にしなくていい。私達は支配しない。私達の行動に感謝する必要は無い」

「それはできません。フタガミさんが私にしてくれた事、同じくらいの事は返します。必ずです」

 

 この病弱の意思は固いようだ。

 そもそも私自身は何もしていない。

 他者からの干渉は煩わしいだけだ。

 自分のために人が動いているなんて耐えられない。

 無視してその辺に捨て置いておけばいいのに。

 

「よし……」

(バカか!交代だ!)

 

 ♢♢♢

 

 姉さんの発狂を止めるため交代。

 毎度発狂して世界滅ぼしてるからスイッチ押すのがかなり軽くなってるな。

 何してんだほんとにバカか?

 

(うー……ごめん)

 

 ただでさえ新環境の初動が苦手だと言うのにそんなハイペースで1日目を繰り返せるか。

 

「……?あの、フタガミさん?」

 

 しばらく姉さんを外で歩かせるわけにはいかないな。

 せっかく召喚獣以外は普通の学生らしい学校なのに。

 

「フタガミさん!」

「ん」

「大丈夫ですか?」

「大丈──」

 

 ──ガッシャァァァァン!

 

「っ!?」

 

 突然の破砕音。

 外からは戦争とは別種の騒がしさを感じる。召喚獣は召喚獣以外には干渉できない。なら人為的なもの。

 ……ここも、目的のためなら何でもやるって世界か。

 

「ふぅ、よくやった、明久、島田」

「えぇ、相当な粘りだったでしょ?」

「ああ、今度何か褒美をを出そう。他の奴にもな」

「ほんと!」

「「「おおおおおお!」」」

「ねぇ雄二、それなら僕のお願いも聞いてくれる?須川くんの居場所を知りたいんだけど」

「ん?もうすぐ戻ってくるんじゃないか?」

「……やれる、僕なら殺れる……!」

「やるなっての」

 

 どうやら代表たちが戦力を回収して戻った様子。

 観察処分者は謎に殺意を燻らせてるが。

 

「ちなみに明久。あの放送を指示したのは俺だ」

「ッシャァァァァァァァァアッ!」

 

 代表の言葉に対して殺気と共に踏み込み、取り出したのは──包丁!?

 奴の目に迷いは無い。止めなければまずやるだろう。

 迷う暇は無い。

 

「……世界(ザ・ワールド)

 

 小さく呟き、能力を起動して時を止める。

 静止時間は4秒ほど。即刻包丁を叩き落とし、元の位置に戻りリスタートする。

 

「っ!?」

「お、どうした明久。包丁なんか落として危ないな。料理上手は良いが場を弁えろよ」

「……次は無いぞ」

「ふん。さて、とりあえずは消耗してる順に補充試験を受けてくれ。そんなに時間も無い。2科目も受ければ十分だ」

「「「了解!!」」」

 

 吉井明久当人は不可解な現象に驚愕していたが他はさも包丁が当然かの様な対応。

 代表の指示により補充試験が行われる。包丁をそのままに。

 

「……」

 

 オレの倫理観が高過ぎるのか?

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