ヌメロンとDDしか知らなかったから学習に時間がかかる。
最悪ワンキルしても構わない……はず。本筋と関係無いし。
「えっちゃんおかえりー!シオンどーだったー!?」
「おお、長かったな、Xオルタ。特異点は大丈夫だったのか?」
「戻りました……ええ、特異点はフタガミウタネの手で並行世界もろとも書き換えられた様なのでもう大丈夫かと」
カルデアに帰還したえっちゃんことヒロインXオルタは、抱きつくソラの懐から饅頭をくすね口へ運ぶ。
「しかし神さまに呼ばれるほどなんてな」
「もむ……このカルデアには神性は腐るほどいるではないですか」
「サーヴァントと違ってオリジナルの神さまだろ?そんなのレイシフトしてようやくお目にかかるレベルだ」
「まぁ……そうですね。あの神はそんな価値のある神ではありませんが」
「……?」
ウタネとシオンのお目付け役として神の間に強制召喚されたXオルタはそれを思い出し苦い顔をする。
「アレはただの害悪です。年端のいかぬ少女……いえ、幼女にしか欲情しない、私のような見た目さえ老い果てた醜い姿と吐き捨てる真性のロリコン。ソラが嫌悪するには十分な気色悪さでした」
「ひ、酷い言いようだな」
「フェルグスさんに引けを取らないレベル……いえ、それ以上と言えばいいでしょうか」
「……よく世界を救ってくれた。お前のおかげで全ての並行世界は守られた」
女と見れば誰であろうと時と場合を無視して手を付ける当カルデア最大の問題児、『強姦魔・フェルグス=真っ黒い』を例に出され、強引に話題を逸らす藤丸。
Xオルタの肩に置かれた手は誤魔化しもあるが労いの思いも確かに含まれていた。
「ねーねー、私のこと無視しないで?シオンどうだったーって聞いたよ?仮にもマスターだよ?無視しないで?」
「ああ……いたんですかソラ。てっきりまだ冬木にいるものとばかり」
「私ずっと密着してたけどね!冬木も3つほど救ってきたけどね!」
「私たちが1つ終わらせるまでに3?どうしたのです?」
「うん、全マスターの四肢を削いで……」
Xオルタがソラを引き剥がし、ソラが目を閉じ指を振りながら回想を始める。
「ストップです。もういいです。他の方の情報にしてください。プレシアさんはどうされてました?」
「うん、冬木全域に魔法陣展開して紫電で全マスターとサーヴァントの四肢を……」
「ストップ!次!アインスさんは!?彼女は穏健派でしょう!」
「うん、ある程度サーヴァントやマスターたちの望みを聞いてあげてて」
「お、流石アインスさんです。それでそれで?」
「その世界ごと、無限月読で永遠になった」
「……………………まぁ、理想的な終焉ですが」
唯一の常識人、穏健派の結果を聞き、やはりか、とばかりに顔を下ろすXオルタ。
「無限月読?」
「ああ、藤丸さんは知りませんでしたか。全ての生命に理想の世界の夢を見せ、その魂を喰らい、肉体を無機物の兵隊に変える術です」
「……えげつないな」
「ああ、ですが心配はいりません。アインスさんは事実上不死身で不老不死なので、それを活かしてアインスさんが死ぬまで夢を見ることができます」
「はぁ?」
「本来なら生命が死ぬまで夢を見せる術なのですが、それを逆転させてアインスさんが死ぬまで生命に夢を見せる能力となってます」
「流石えっちゃん、私達についてよく知ってるー!」
「……すぐくっつくのはやめて下さい。私もまだ、手が震えてます」
「お……?え!?どどどうしたの!?フタガミウタネに何かされた!?」
「いえ……フタガミウタネ以前に、シオンに」
「え……シオンが?何で?」
「ソラもちょくちょくこちらに来ていたからわか……りませんか。単に私がウタネさんを殺そうとしたので、罰です」
「ぐだ、どうしよう、私のえっちゃんが裏切り目論んでた……私もう生きてけないかも……」
若者らしくハリのあったソラの顔から水分が抜け、痩けた頬に乾いた髪、骨ばった指ととても5秒前と同じ人物とは思えないほど。
「お前がどうやったら死ぬんだよ。そもそもXオルタにも考えがあったんだろ?」
「はい。私も単独で何人かは処理しましたが埋葬機関がヴィーナスを狩りにきていた事、追加七騎のサーヴァントが召喚された事、その全てをマトウが手中にした事、諸々を含めてウタネさんたちが世界を破壊すると考え、そうなるくらいならリセットしてしまった方がマシ、というところです」
「シオンがどーにかできたでしょ」
「あぁ……そうですね。シオンはあの時ギルガメッシュ相手に必死だったので……」
「ギルガメッシュ?ウチにもいるけど1人で相手してたのか?」
「ええ。しかも違法改造されて慢心無し、リソース無限となったオルタです」
「よく勝てたな……」
「全くです。プライムの大盤振る舞いでしたよ」
「プライム?シオン自身が使ったの?」
プライムは能力の強化、拡張を目的にシオンが並行世界の能力を他人に永続付与するもので、シオン自身が使えるものでは無い、というのが、リリカルなのは世界を共にしたソラの認識。
「ええ。プライムは私たちの大勢に付与されました。ひとつはコレです」
「ん?ナニソレ」
「何か書いてるな?」
「ギンガウォッチです。私のプライムとして……永続付与ですので……その、死んでも、世界を超えても、私の手に残ってました」
「お、おいおい、Xオルタのパラメータ!追記されてるぞ!」
「うっそぉ!うわホントだぁ!」
【プロフィール7】
仮面ライダーギンガの力を継承したウォッチの所有者。
全身七ヶ所にある重力子制御装置により各リングの力場の差を利用する事で宇宙空間での移動や大気圏内での飛行に加え、パンチやキックの破壊力も自在に変化でき、光学兵器を湾曲させ物理攻撃を遮る重力場を生成する。
その大いなる力は世界を守り、世界を破壊することもできるだろう。
「……あれ、インフィニティ黒餡子って六つの力で無限になるんだよね?七つ目?」
「無限を超える力と言うことでしょう。事実Xさんはこの能力で優位に倒せましたし、VNAの能力以外には敗北もありません」
「おのれシオン……私のえっちゃんをよくも……!」
「しかしすごいな。ギルガメッシュを超える力なんて、今後の戦いでも大活躍間違いない」
「ふざけるなよぐだぁ!わぁーたしのえっちゃんを前線に立たせるわけないだるるぉ!?」
最高最大の英雄王を上回る力ともなれば、カルデアとしては使わない手はない。
しかもその所有者が比較的柔軟で温和なXオルタであれば尚の事。
無理はさせないにせよ、主戦力に数えるに意義は無い。はずだった。
「せっかくの力だぞ……被害減らす意味でも使ったほうが」
「いえ……この力も所詮、シオンの踏み台でしかなかった」
「何?」
「おおそうだよ、肝心のシオンのプライムってなに?」
「……シオンは並行世界の自身の能力によって自身の能力とライダーシステムを融合させ、エボルプライムなるライダーへと変身しました」
「鏡と融合……?」
「そして私のプライムを回収し、ギンガの力、サーヴァントシステムを更に融合。これで宇宙の力とサーヴァント由来の力をも取り込みました」
「……」
「そして……ギルガメッシュオルタの宝具を吸収し、プライムトリガーなるアイテムを精製、使用することで半神の神性とブラックホールを生成、操作する力も手に入れ……」
「「……」」
「プライムフェーズ3、完全なあの力はカルデア全体を大きく超えます。ソラもチョーシに乗ってる場合ではありませんよ。シオンの能力はその限界を伸ばし続けている。次の世界の彼はもう、ロリコンにさえ届くかもしれません」
油断、慢心さえ無ければほぼ無敵のギルガメッシュが圧倒的に葬られるフェーズ3。
それはライダーシステムによる能力を事実上ほぼ無効化し、フウシャボトルの効力により相手の能力を使用でき、サーヴァント、半神以下の能力を遮断、宇宙の力とブラックホールに由来する宇宙を破壊する力を操る。
まさに無敵。それひとつであらゆる世界が破壊されてしまうだろう。
「でもそれじゃ私に届かない。無限のパワーなら、私が僅かに上回るはず」
抑止力ソラ……その能力は自身が戦闘範囲と認める内の全ての力を筋力として発揮する。
例えば国、例えば星。自分の視線が届かなくとも認識できる限りその範囲は縛りを持たない。
そして力とは単なる筋力だけではなく、硬さ、鋭さと言った武器のスペックによる力、思考力や知識といった知性による力なども全てをカウントする。それは根源、両儀より下の現実改変さえ対象にし、その影響を受けない。
それは即ち、相手の攻撃の全ての硬さ、鋭さ、圧力を兼ねる筋力を発揮する。
全ての力は戦闘において筋力の機能の一部を代替する下位互換のものでしかないと豪語するに十分な能力。
「そうですね。ブラックホールを抜けられるなら可能性もあるでしょう。シオンがもう1つを使わなければ」
「もう一つ?」
「え……もしかして、1枠しか使ってないの、それ」
「はい。シオンは2つまで同時に能力を使用できる。フェーズ3はあくまでフェーズ3。それひとつです。まだそれでも全力ではない」
「……頭痛くなってきた。マシュ!いるか!?ちょっと休みに行こう!」
『はい。先輩。すぐ向かいます。ブーティカさんにスイーツをリクエストしておきますので』
規模の大き過ぎる話に頭痛を覚えた藤丸がマシュを呼び付け離れていく。
「……あれま。で?えっちゃんもそれに負けてーって?」
「そうですね。フェーズ4に敗北後、マジェスティリバイブに消されました」
「4?」
「あくまで戦争停滞を目的としていたので、3では殺してしまうと」
「あーたしかに。で?4ならもっとじゃないの?」
「いいえ。フェーズ4開始のためシオンは3まで使っていたベルトを破壊して発動しました」
「……ほ?」
突然の能力破棄にあんぐりと口を開けるソラ。
「そうだ、それで思い出しました。ソラ、フェーズ4とは何ですか?」
「……は?」
突拍子も無い質問に喉までがっぽり開いたソラ。
「シオンが『オレ達の戦闘法』と言っていました。その言い方はVNAを指してますよね?」
「ぼほっけっ……んぁ……ああ……アレかなぁ。戦うのをやめさせる戦いってことかなぁ」
開き切った喉で空気を吸ったソラはその乾燥に呼吸不全を起こし、涙と脂汗がにじむ。
「それです。詳しく」
「なこと言ったってぇーほぼウタネの専売特許だよ?私は別に殺したくない相手は攻撃しなければ相手はどうせ私殺さないからほっとくってだけだし」
ソラの防御はその身の筋力に依存するが、その場合【相手の全能力+自力=ソラの防御力>相手の個々の攻撃力のみ】であるため能力使用中のソラにはまず攻撃は通じない。
「……だからヤガたちに無抵抗で立ち尽くしてたんですか!いくら死なないとはいえ身を守るくらいして下さい!」
「あっはっは、何言ってんの、ちゃんと能力で守ってるよ」
「多数相手なら絶対傷ひとつないでしょうけどね!心配なんです!」
「嬉しいなーえっちゃんが心配してくれるなんて」
「では続きを!フェーズ4、戦いを止まる戦闘とは!?」
「なんで怒るの。とは……アレだよ、私達って争いを望んでるわけじゃないじゃん?」
「全世界に戦争をふっかけておいてそれですか」
「違うよー、なんか知らないけど勝手に敵認定されてるのー。私達は永遠を求めるだけの存在。正直なところ、私達は誰1人平和なんてのに興味無い」
「……ではソラは、今の今まで抑止力として動いてきた事も個人的感情は無いと?」
「ううん。あるよ」
なぜ?と疑問を否定するソラ。
Xオルタの感情は2人きりということもあり高まっている。
「矛盾しています!うやむやにして私を遠ざけるつもりですか!?」
「違うってー。私の象名は抑止。抑止力として動くに相応しい動機だと思うけど」
「では……ソラの永遠は?」
「……?抑止だよ?」
「それが何なのか聞いてます!答えていただけなければ私は契約を破棄します!」
「やーめーてー!誰もそんなの望んでないー!」
「では答えてください!貴女も……!全てを、破壊するのでしょう……?」
「……」
Xオルタの瞳に映る、ウタネやシオンの能力行使。
それは破壊。全ての命を、物を、未来を破壊する圧倒的暴力。
「……ごめんね。怖かったね。ウタネは単に、争ってるのが嫌いなんだよ。争いを無くしたい。それだけ。シオンもね、ただ死にたくないだけなんだ。どんな外敵からもウタネを守れるように」
「……」
ソラに再び抱きしめられたXオルタは、それを抱き受け入れる。
そう、Xオルタも知ってはいた。ソラにも、ウタネもシオンも悪意は無い。ただただ自分の理想の世界の為にしているだけ。
「プレシアだってさ、愛娘の歩む道を整えたいだけ。アインスは闇の書の悲しみを、今の喜びで打ち消そうとしてるだけ。私も……今ある世界を、護りたいだけなんだよ」
「……そうですよね。皆さん何も、ただ世界を破壊するだけでは──」
「まぁ最終的に生命は根絶されるけど」
「台無しです!?」
「あっはっは、ウタネはそりゃ殺すし、シオンもブラックホールとか使い出したんでしょ?プレシアはミッド全域は片手間とか言ってたし、アインスは言わずもがな──私も、人類のあるがままを護るために」
人を、人間を思う志。
それは誰よりも強いはず。
争いの無い世界を、成長し続ける世界を、世界を保存し続け、世界を愛で満たし、夢を見続けられる世界。
その行く末に、仕方なく現存の生命が滅亡する……
「って!それでは
「んぁ?あぁ……えぇ?私もプレシアも抑止力なんだけど」
「……ゲーティアがこの真実を知ると多分発狂しますね」
「あー、だからヴィーナス呼びされて狙われてるのかな」
「世界の敵として……ですか」
「じゃないかなー?滅びるって意味なら間違ってないし」
ビーストは人への愛が行き過ぎた厄災。決して初めから人を滅ぼそうとは思っていない、結果的な悪。
ソラ達には酷似する点も多い。
「このままではシオンが全てを巻き込む可能性も……?」
「あるよ?ブラックホール、それが更に成長すれば並行世界ごと巻き込んでこのカルデアも無事じゃないかも」
「ブラックホール以上の成長は無いでしょう……」
「やーするよ。シオンは中立だから」
「……日本語で喋っていただいていいですか。英語でも構いませんが」
「セイブツってのは生存競争に勝ち続けないといけない。常に変化し続ける世界でそれに中立を取るなら常に変化するしか無い。そして完成したセイブツに生きる意味は無い。だからシオンは際限なく成長していく」
「中立だから──?成長する──?」
「あっはっは、まぁアレだよ、起源ってやつだよ。誰もその方向から外れない。ねぇえっちゃん。なんで水は透明だと思う?」
「は──?水……確か、屈折率がどうこうだったかと」
「──それはね、透明に見えないといけなかったからだよ」