バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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清涼祭 ⑫

「ふぅ……結構な稼ぎになったんじゃないか?」

「あの小童も悲惨じゃったのぅ、よもやシオンに目を付けられるとは」

「秀吉、オレが悪者になってないか?デュエル吹っかけてきたのはアイツだぞ」

 

 エンターテイナーには負けた罰として胡麻団子を10人前ほど食い切って貰って帰ってもらった。制限時間も設けたからな、代表の言う回転率もしっかり考慮した。

 

「ほんじゃ、店仕舞いは頼むわ」

「ん?代表、何処へ行く?サボりか?殺すぞ?」

「……ちょっとな。明久ー、行くぞー」

「あ、うん。みんなごめんね。また後で!」

 

 代表と吉井が教室を出る。

 ……契約の遂行か。大会後も特に動きは無かったからな。チケットなんてくだらんもんの為にご苦労だ。

 

「……やっぱり2人で休む(・・)んでしょうか……」

「間違いないわ……暗がりの体育倉庫で……」

「……?体育倉庫?何でそんなとこ行くんだ?」

「「……っ!?なんでもありません!」」

「……?とりあえず片付けするぞ。アイツらも無責任だよな、こんなとこに荷物置いて。やれや……?」

 

 吉井の置きっぱなしのカバンを八つ当たり気味に壁に叩きつけてやろうかと手にした所、その中に例のチケットを発見した。

 

世界(ザ・ワールド)

 

 即座に時間を止めた。

 何を考えてるんだ?というか代表が持ってるもんだと思っていたが……

 とりあえず即回収して生成した茶封筒に仕舞い込む。

 表には『エンターテイナーの墓』とでも書いとくか。

 時は動き出す……

 

「む?どうしたのじゃ?急に固まって」

「ああ……そういえばあのエンターテイメントから受け取った小切手を代表に渡すのを忘れていた」

「おお、例のレオコーポレーションというやつかの?」

「少額とはいえ売り上げには違いない。大会から使いまくってすまないが、これを届けて来てくれないか?」

 

 姉さんの貯金の数%に満たない額だが……小切手という形であればいくらでも改ざんできる。オレがレオコーポレーションから姉さんの口座に書き換えたのだ……

 

「む?構わんが……主がいかんでよいのかの?」

「オレは片付けするよ。お前より効率が良い」

「むぅ……まぁよいじゃろ。行き先はわかるかの?」

「あぁ……」

 

 密かに行き先を伝え、封筒を持たせて秀吉を送り出す。

 アイツなら中を改めることも持ち逃げも無いだろ。

 

「さぁバカども!あれだけ売り上げがあれば設備は改善されるだろう!迅速丁寧に片付けるぞ!」

「「「ちょっとまててぇぇぇい!」」」

「……おぅ、なんだよ」

 

 ハイテンションで返ってくると思ったから少し困惑している。

 ハイテンションはそうなんだが。

 

「な、なんだよ、もう清涼祭は終わりだろ?片付けて帰ろうぜ?」

「いや、終わったのは確かだ。終わったから待てと言っている」

「……?須川、頭でもおかしく……いや、Fクラスの頭は元々おかしいな。何が言いたい?」

「お前……言ったよな、清涼祭が終わったら説明するって。お前らなんなんだ?」

「……ああ、オレの事か」

 

 そー言えば言ってたっけか……

 

「んー、やー、まいったねぇ、説明するもなにもオレはウタネに違いないんだが……」

 

 出自の説明しても無駄だしな……前このシチュでどーしたかなー……

 

「よし。お前ら」

「何だよ」

「やっぱりその話、無かった事にしてくれ」

「「「できるか!」」」

「クラスメイトが分身したんだぞ!?」

「しかも顔の良い女子が!」

「その理由を知らずに今日寝られるか!」

「……んー、そーだなー……今ここで服を脱げばお前らはそれで収まるか?」

「「「ぶっふぉぁ!!!?」」」

 

 教室中が血に染まった。

 

「だ、ダメですよウタネちゃん!」

「そーよ!まだ懲りないの!?」

「まだ……?何の話だ?何なんだ……?」

 

 オレのいないうちに姉さんが何かしたのか……?

 

「ともかく現状、オレの説明をする術を持たない。単なる双子だって事で納得してくれ」

「じゃあ、お前は別の学校に通ってるのか?」

「……ああ、そういう認識になるのか。オレは無所属だ。ついでに言うなら……やっぱいいや。他のクラスや教師にチクるなよ、場合によっては17の肉片にするからな」

 

 オレに実体はない……なんて言っても普通の高校生に通じるはずも無い。

 

「島田、説明はこれくらいでいいか?」

「?なんでウチに聞くのよ」

「お前、何か知ってるんだろ。オレ達について」

「そうね。いいんじゃない?優勝できなかったからウチからも教えてあげないけど」

「……覚えてたか。まぁそれもいい。オレは中立だからな。さぁもういいだろ、ハッキリした説明は無理だ。まだ1年あるんだ、ゆっくり考えろ」

 

 ♢♢♢

 

「よし、大体片付いたか」

「そうね。じゃあ今日の片付けは終わりよ!みんなお疲れ様!」

「「「おお──っ!」」」

 

 喫茶店となっていたクラスは大体元通り。

 後はゴミやらテーブルやらを処理するだけ。テーブル寄付にできねぇかな。いらねぇ。

 

「…………フタガミ、急用」

 

 ムッツリーニが他に聞こえない声量でオレに耳打ちする。

 

「……何だ」

 

 急用、心当たりはチケット関連だが……

 

「…………腕輪の話を盗聴されていた」

「……腕輪?」

 

 サッパリだが緊急事態らしい。

 

「…………今雄二たちで犯人を探している。恐らく常夏コンビ」

「……例の妨害組か、懲りん奴らだ」

「…………会話内容が暴露されれば学園が危ない」

「……いいだろう。オレも探しに行く」

「…………散」

 

 ムッツリーニが消える。

 大会主催が賞品の回収なんて自体はどこのどの時代でもバッシングの対象だ。

 妨害組──召喚大会で当たった3年生。

『何でここにいる』なんて言ってたのは拐った事実を認識してなきゃありえない。

 大罪だ。

 

「島田、済まないが後は任せる」

「どこ行くのよ、この後打ち上げよ?」

「それには必ず参加する。少し急用だ」

「はぁ……いいわよ、また後でね」

「すまん」

 

 さて……まず逃走経路。学園の外に出るならルートは限られる。

 しかし……そこにはまだ人ごみがある。捕まることを恐れるなら選ばない。

 暴露……暴露ね。知られちゃマズい事実ならその場で拡散するべきだ。目的は情報による脅迫等じゃなく学園の信用失墜。

 

「ああ……島田、そう言えばなんだが、放送室、どこだったか」

「ん?この上の突き当たりじゃなかったかしら」

「サンキュー」

 

 今なら放送室は無人のはず。

 閉会後に用はない。

 居ればまずソイツらのはず。

 

「……いねぇな」

 

 放送室は電気も消えており、人気も無い。隠れている訳でもない。

 

「シオン!」

「……秀吉か。いたのか?」

「まだ見つかっておらぬ。儂も放送室じゃと思ったのじゃが……」

「ならもう学校敷地内にいないか」

「っ!シオン!向こうの屋上じゃ!」

「屋上?」

 

 別校舎の屋上、慌ただしく動く人影が2つ。

 

「屋上で愛を叫ぶつもりか?」

「違う!あそこにも放送設備があるのじゃ!」

「……マジか」

「ここからではもう間に合わん!雄二に連絡を!」

「よし……じゃあそれは任せる。オレは止めてくる」

「任せた!」

 

 距離はあるが人目があるわけじゃない。

 だったら話は簡単だ。

 校舎内の人目を避けてオーロラカーテンを跳ぶ。

 

「……チャオ、3年生。いい加減にしてもらおうか」

「げっ……フタガミ」

「言わなかったか?次は殺す……そういうニュアンスのつもりだったが」

「けっ!やれるもんならやってみろ!ここは学園ど真ん中!そんなことすりゃテメェの未来もクラスも終わりだ!」

 

 これは脅迫になるのか?自爆にすら届かない強がりだな。

 

『フタガミさーん!ソイツら逃がさないで!雄二とムッツリーニが向かってる!』

「ん」

 

 校舎の外、ここを見上げるように吉井が手を振って叫んでいる。

 代表たちが来るなら合法的に無力化できるな。

 

「スキありぃ!喋くってんじゃねぇぞ!」

『あっ!?』

 

 夏川3年生が吉井を見下ろした隙を見てオレを殴る。

 

「ぐぅ……!?」

「夏川!?」

 

 オレはまともに一撃を受けたが……夏川3年生の腹部にはオレの刀がしっかりと貫通している。

 ペンダント型のサイズチェンジ可能な武器。使う気は無かったが。

 ……そして能力──『ナギナギの実』──この場での音は外に漏れない。

 

「……げぼっ……!?」

「……ふん、欲をかくからだバカが。力の差は前回で理解できただろうに……どこまでも救えないな、お前ら」

「ひ、ひぃっ!?」

 

 常村3年生は刀を引き抜いたオレから逃げるように腰を抜かし、フェンスに倒れ込む。

 

「はぁ……っ、はっ……っ!し、っ死ぬ……!」

「ああ。で?」

「た、たすけ……て、くれ……」

「ほら見ろ、お前らは何度同じことを繰り返す?どこぞの不良がソレしてどうなった?お前らに一言でも報告があったか?あれからなかったろう。反撃受けたとたんに逃げ、無理なら謝り、離脱を目指す……逆の立場でやらねぇって言ってんだろうがよ!テメェらみてぇのが平然と生きてるから社会は停滞してんだよ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「な、夏川…………!」

 

 倒れた男の両の手のひらを刺し、握力を奪う。

 

「ほら、データを寄越せ」

「わ、渡す!渡すから助けてくれ!」

 

 録音機器らしいガラクタを投げてよこす無事な方。

 

「……他は?まさかこれだけか?」

「ほ、他!?し、しらねぇ!」

「……」

 

 ここまでしつこく妨害してくる奴が一つだけしか証拠を持たないとは思えない。

 それともコイツもただの使いか?

 

「知らないならそれはそれでいい。元凶は?お前ら主体じゃないだろう?」

「……言えねぇ」

「……この状況でよく言うよ。なぁ、夏川3年生」

 

 上腕に刀を突き刺し、骨を貫通させる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

「ぐぅ……」

「今話せば助けてやるよ。少し記憶を奪うけどな。そうしないなら……殺す」

「っ……!」

「……はぁ、これでもまだ渋るのか。言えば少なくとも命は助かるのに。お前らの記憶をどうこうするくらいワケ無いんだ。少しは秩序的に成長しようと思わないのか?」

 

 分かってる。喋ればコイツらの未来は無い。

 生き延びても大元に潰されて終いだ。

 つまり初めからコイツらに先は無い。

 ……愚かな。

 

「オレはもう、現存する人類にさして期待をしていない。お前たちは権力などという身内だけのステータスに依存し過ぎた。絶対的ステータスは力、頭脳、能力。分かるか?息子を馬鹿だと殴り倒している下っ端中年親父みたいなもんだ。そんなもんに意味なんて無い。ただ自分が楽になるだけだ。家庭内に自分の親が来れば死ぬ。社会に出た途端底辺だと言われ死ぬ。だったら少しくらい、自分の能力を向上させようと思わないか?息子が銃を持った瞬間お前らの『力』は崩壊する。何の価値も持たない虚勢だ。だったらそんな親──法の元に消しておくべきだと思わないか?」

 

 元々いなくていい存在なら必要無い。

 コイツらで言う社会──オレの鏡に映る全てに通用するモノ。それを得なければ死んでいるも同然の価値。

 成長しないならそれは完成している証明。

 完成したソレは生きる意味を達成した存在ということだ。全ての存在は完成することを目指して生き、成長し、世代を紡ぐ。そこから脱したということになる。

 なら……殺しても、何も変わらない。

 

「反論無し。お前もオレ達を超えるものではない。永遠じゃない」

 

 カラオケボックスに潰された不良と同じ反応。

 最終的には目を見開いてこちらを見るだけ。できるだけ後退するように背後に体を埋め込もうとするだけ。

 

「お前らは──存在そのものが悪だっ……!?ね、姉さん……!?」

 

 ♢♢♢

 

「はぁ……シオン、最近私の暴走咎められなくなってきてない?一応だけど、この子たちも生かしておきなよ。記憶は消してね。ケガは任せるけども」

 

 私もこんな感じで発狂してるんだろうか。

 流石に学園関係者殺すのはマズいでしょ。現実改変しなきゃ何かしら問題になる。してもいいけれども。

 

「さー……じゃ……とりあえず解散かな……シオン、ちゃんと関係者の記憶は抜くんだよ?」

 

 とりあえずシオンは2人の記憶を抜いた様で、傷も塞がって呆けてる。

 意識戻る頃には何もかも……って感じかな。はい解散!クラスに合流!終了!

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