「やー、部屋まで一緒とはねぇ」
「そりゃFクラスの女子は私たちだけなんだから、一緒でしょ」
「良かったですぅ。よろしくお願いしますね」
到着後、割り振られた部屋は私、ポニーテール、姫路さんの3人部屋。
どうも普通は4人部屋らしいけど、まぁそれはそれで問題無い。
「しばらくは自由時間なんだよね?私ちょっと寝てていいかな」
「……アンタ、やっぱりシオンに変わりなさいよ」
「やー、まぁ必要があれば変わるよー……シオンも別に出たいわけでもなさそうだしー……」
劇薬の消化に能力使っちゃったみたいだしねー……
「島田さん!姫路さん!フタガミさん!いる!?」
バン!と開け放たれた先には複数の女子生徒。
「ナニゴト……?」
「覗きよ!きっとFクラスのバカに決まってるわ!」
「何ですって!?」
「コレが証拠!心当たりは!?」
「小型カメラ……!土屋かしら!?」
「決まりね!行くわよみんな!」
私の疑問も即答され、はや気が付けば私1人残されることになった。
すごい。スムーズ過ぎる。
「えぇ……?覗きぃ……?男子高校生が?んなバカな……」
前の世界の男子高校生は薄着で寝てる私に布団をかけて下着を丁寧に収納してるくらいだぞ。女のソレより遥かに理性はあるはずだが。
「まぁいいか。ついてってみよう」
1人でいるとどうせ寝るし……行事ごとなんだ、多少は関わってみるべきだろう。
「フタガミか。どこへ行く?」
「あぁ……最強先生……」
道中バーサーカー先生に声をかけられて足を止める。
対応分かんないし交代しよっか。
♢♢♢
「……男子生徒の覗きだというので、走って行った女子を追おうかと」
「ああ……どうも小型カメラが見つかったようだな。どうにもFクラスのバカどもだと憶測が飛んでいるようだ」
ため息をつき、どうもなぁ、と溢す西村教諭。
「……違うんですか?」
「わからん。事実は確認できていない。が、まず思い浮かんだのは土屋だ。ヤツほどそれに長けた生徒を他に知らん。だが逆に、ヤツがそう簡単に見つかる様な設置をするか?という疑問も浮かんだ」
「……確かに。ムッツリーニの隠密、機械技術は相当なものだ。そこらの女子生徒が即時発見できるとは思わない」
そもそも到着してそこまで時間も経っていない。そんな中で何故浴室のカメラを発見するほど探索している……?
いや、現地集合のオレたちと違って他クラスは早かったのか?そんな気はするな。
「そこでだフタガミ」
「……」
「念のため、今夜は入浴時間に先生たちで女子風呂の警護を行う事にした」
「……教師も休みたいだろうに、ご苦労です。だがもしヤツらが徒党を組んで突撃などしてきたらどうする?数は力になる。止めきれるか?若い男たちを先生数人で」
「何も直接やるわけではない。教師用の召喚獣は観察処分者と同じ様に物理干渉できる。Fクラス程度なら造作も無く制圧できるだろう」
「……そうだったのか。なら問題無いじゃないか」
この旅館でも召喚獣を召喚できるのか……学校敷地内だけかと思っていたが、意外にも拡張性があるのか?
「とはいえ俺はアイツらを過小評価していない。坂本と吉井はあの手この手で突破してくるだろう」
「……で?女子生徒は諦めて覗かれてくれと」
「そうじゃない。当然俺もいる。だが生憎俺は試験を受け損ねてな、点数が無い。そこでお前の力を借りたい」
「……観察処分の要件か?オレ個人にか?」
「お前個人だ。試験召喚大会の実績もある」
「……いいだろう。どちらにせよ協力する気ではあった。負けた借りは返さないとな」
「ではお前は俺の前に出ろ。出てくるとしたら坂本、吉井だ。他の奴らは先生たちで止められるだろう」
「……思ったより、奴らを買ってるな。西村教諭」
「奴らはバカだが、その行動力と閃きは常人のそれではない。何としても先生たちの妨害を超えてくる。そこにトドメを刺すのが俺とお前だ」
「……Fクラス相手に大した信頼だ」
「俺は正当な評価をしているだけだ。では後ほど頼むぞ」
「……了解しました」
理由はどうあれ、ヤツら相手に召喚獣でやれるなら受ける価値は十分ある。
2人と言わず、より大勢を相手にしても良い。
(それ……負けて覗かれたらどうするの?)
……今更覗きなんぞ知ったこっちゃない。何なら初めから脱いでても良いが、一応覗きは軽犯罪法に引っかかるはずだからな。罰は受けるだろ。
(違くて、私達はどうでもいいけど生身の子たちはいいのかって)
被害者である女子生徒の心情を察しろと。それこそ想像も出来んから知ったこっちゃない……が、まぁ、そうだな、未来ある若者にトラウマを作る訳もいかないか。
そもそも止めるだけなら召喚獣なんぞ必要無いしな。通路に無限でも置いとけばいいし。
さて……適度に待機するか。
♢♢♢
「あら?ウタネ、入らないの?」
浴室前で西村教諭と待機していると入浴後の島田が声をかけてきた。
「随分と早いな。そんなもんなのか?」
「アンタ……先生のまえで……いいの?」
「ああ。オレはウタネだからな」
「まぁいいけど。ウチは今日だけ早めに。明日からはゆっくり入るわよ」
「……?理由を聞いてもいいか?」
「……美春って子がいるんだけど」
「……誰だ?」
名前からして女子だろうが、クラスにはいない……他クラスなんぞさして記憶してないからな。
「その子……ウチの事が好きみたいで……」
「で?」
「……夜中の逃走経路を探しておこうと思って」
「……お前も中々苦労してそうだな」
同性に夜中襲われる可能性があると。
覗きよりよっぽど案件だな。
「……念の為だ、コレ」
「……?何このスイッチ」
「ヤバそうなら押せ」
「優しいのね、ありがと」
渡したのはなんて事ないスイッチだが……オレに分かるようになっている。流石に止めてやるくらいはしてやろう。そもそも同室だしな。
島田を送り出し数分経過。
「流石に……正面突破は無いんじゃないですかね」
「それが1番ではあるがな」
「ああ……いや、バカはバカみたいですね」
「らしいな」
上の階から走る音、声、そして召喚獣のフィールド展開。
よくもまぁ……
「くっ……鉄人!フタガミさん!」
「西村先生と呼べと言っているだろう!」
「行くぞ鉄人!僕らには覗きをしなければならない理由があるっ!サモン!」
吉井が召喚獣を召喚。
単独で来たあたり他のメンツは先生で食い止められたようだな。
「いくら点数操作をしてたって僕の操作技術が……」
「そんなわけなかろう。先生は先生で勉強しておるのだ。お前のような阿呆を叩きのめすのは簡単だが、不祥事は同じクラスで責任を取ってもらう事にした」
西村教諭が脇にそれ、オレを吉井の前に出す。
「フタガミさん……!」
「そういう事。1人のところ悪いが、この前のリベンジをさせてもらうぜ」
《フウシャ》《試験召喚システム》
《エボリューション!》
「
──総合科目
──吉井明久──929点
──双神詩音──496点
「当然分かってるな?1人じゃお前はオレに勝てない」
「くっ……」
木刀をコピーし、正面から叩く。
受けられはしたが、操作技術も同じ以上、先手を取れば……逆転は無い。
「ふっ……けど甘いよ!僕だって手にした力がある!
「なっ……」
吉井の召喚獣が2体に分裂、オレの木刀も空を切る。
──総合科目
──吉井明久(主獣)──464点
──吉井明久(副獣)──464点
点数は半分程度になっている……点数を二分して2体召喚する力か……そして違う動作をしてるとなると別で動かせるのか。
「ソレが腕輪とやらの力か!」
「これなら同等!この前の大会と同じだよ!」
「くっ……」
相手が増えた事でこちらの木刀も2本に増えた……が、代表より操作に長ける吉井の攻撃に回避と防御で攻撃に手が回らない。
「ふむ……フタガミ、手を貸そうか」
「いや……大丈夫です」
オレの召喚獣が2体を正面に置くように逃げ回っているのを見かね、西村教諭が助け舟の提案。
このまま続けてもいずれ負けるのは目に見えてる。当然の提案だが断る。
「ち……もうフェーズ1を攻略されるなんてな。だったら……お前と姫路から抽出したコイツで相手してやる」
「それは!」
《ラビット》《タンク》
《エボルマッチ!》
《Are You Ready?》
「っと……!なるほどね、コレなら攻撃も止められる……」
「硬い……!?」
左腕と右足で簡単……ではないが十分木刀を止められる。同じ点数ラインならノーダメージ。十分だ。
「更にこの加速力!」
左足で踏み込むと強力なバネが効いて驚異的な加速度を生じる。
高得点武器で加速したのと同じようにした加速を自力で行けるのはかなり便利だな。
「っと……しかし制御は少し難しいか」
全力で踏み込んだ分速度はかなりのもので、吉井の召喚獣2体の間を素通りできる程だったが止まるのが難しい。魔力放出同様加減を知らないとただのジェット装置だな。
「速い……」
「もう無理だな!下手に数を増やすからタンクを突破する火力を失った!」
縦横無尽に飛び回り、タンク側を盾にしてラビットで切り付ける。
しかもタンクで蹴ってもいいおまけ付き。
「でも……くっそぉ!」
──総合科目
──吉井明久(主獣)──240点
──吉井明久(副獣)──220点
着実に点数を減らす吉井の召喚獣。
対してこちらは防御を抜かれる事なく点数に変動無し。
観戦する西村教諭にも安堵が見えている。
「さぁ、大会では使わなかった必殺技ってのを見せてやるよ!」
「えっ!?」
召喚獣にハンドルを回させ、エネルギーを溜める。
宙に放物線グラフが2本現れ、フィールドの端から中央へ挟むようにして召喚獣を纏めて捕獲する。
《ready GO!》
オレの召喚獣が飛び上がり、グラフを滑るように動く。
「うぎゃっ!?」
そして頂点から最大加速度を得てタンクの足でキックを仕掛ける。
《エボルテックアタック!》
《チャオ♪》
キックは召喚獣2体を貫通し、爆発。
吉井の点数はこれで尽きた……オレの勝ちだ……
「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?痛いっ!全身が爆発するような痛みがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「……あ」
のたうち回る吉井を見て致命を思い出した。
フィードバック……2体分か……しかも胴体貫通に爆破……
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!全身余す所なく隅々まで痛いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「……西村教諭、流石にやりすぎたか?」
「……流石にな。過剰なダメージだろう」
「……流石に、な……」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!お腹が!皮膚がぁっ!焼き焦げるように痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
のたうち回る吉井を前に渋い顔をして立ち尽くすオレと西村教諭。
……多分今、前の世界なら介錯してやるくらいだが……この世界では、無理だからな……
「な、何があったんです……?」
「明久!どうしたのじゃ!?」
「あぁ……制圧終わりましたか、先生方……」
圧倒的生徒虐待場面を前に、鎮圧を終えた先生と捕まった代表、ムッツリーニ、秀吉が信じられん物を見る目で近寄ってきた。
……何もいう言葉が見つからない。
何せ必殺技……必ず殺すものであるからして、それをまともに受けて文字通り死んだんだ……しかもオーバーキル。そんじょそこらのダメージとは比べ物にならないはずだ。
……それはそれとして、姫路の弁当よかマシだろと思ったりもするが。
「……仕方ない……」
「どこへ行く?」
「バスタオル取ってくるだけ」
「……?」
叫び喚く吉井を背に浴室へ。
入浴も大概終わったようで着替えながら喋る女子で埋め尽くされていた。
「あ、あの、フタガミさんっ」
「……何だ、姫路」
「何だ、というより、外から明久君の叫び声がきこえるんですけど……何があったんですか?」
「……揃って出てきてたのはそれが原因か」
姫路の声に全員の注目が集まる。
やっぱり聞こえてたか……誰も出ようとしないのは恐怖か、面倒に関わりたく無いからか……まぁそれはいい。
「……何でもないから気にするな。数分すれば大人しくなる」
「そ、そうは思えないくらいですけど……」
他は無視してカメラらしいものを探知するだけして、バスタオルを抱えられるだけ抱えて出る。
「代表、コレで吉井をくるんでくれ」
「はぁ?」
「早く。うるさくてかなわん」
「どうせやったのお前だろうに」
「まぁな」
バスタオルをぶちまけ、教師に拘束されてる代表に指示。
当然だがオレもバスタオルを吉井に巻き付ける。
「フタガミ、何してるんだ?」
「……とりあえずうるさいから遮断する。あとは部屋に寝かせておく。明日には回復するだろう」
「……ふん。まぁいいだろう。坂本、お前ら3人はこれから補習だが……吉井が起きたら俺のところに来るように伝えろ」
「は?補習!?しかも何でそれを今──っ!ヤバイ!コイツ本気の目をしているぞ!秀吉!ムッツリーニ!撤た……」
西村教諭の目を見て恐ろしい結末を悟った代表が逃走を選択するがすでに遅く。
周囲には着替えを終えた女子生徒、先生数人が愚かな罪人を見下ろしていた。
……その隙に吉井を包み込み、能力で痛みを抜いて寝かしておいた。
ニキュニキュ神威のなんと便利なことか。
「……ま、未遂とはいえ現行犯、罪は罪だ。法に則って贖罪しておけ、代表」
未遂だったとか、吉井が痛めつけられたからとかどうでもいい。
覗き未遂は現行犯で捕まった。ならその罪相応の罰が必要だ。
そうでなければ……法で守られる意味が無い。法を犯して生きるなら、集団の中には居られない。
コイツらは世界で生きる以上、その生き方は望めない。
「チャオ」
「何処へ行く?お前は入浴まだだろう。時間は気にせずゆっくりしていけ」
「……配慮、ありがとうございます。けど大丈夫……何分公共の場ってのが苦手でね。衛生も問題無いから……明日、時間が合えば」
……能力を探せば洗身の能力くらいあるだろ。
先生とバカ4人を背にして部屋に戻る。