バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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Dクラス ③

 

「じゃあ、行くか」

「そうじゃの。補充もそこそこ、下校しておる生徒も見えてきた頃じゃ」

「ウチも瑞稀も万全よ」

「そりゃありがたい。よし!お前ら行くぞ!勝利の時だ!」

「「「おうっ!!」」」

 

 補充試験も終了し、代表の声と共に揃ってクラスを出て行くFクラスの面々。

 この場合、オレは頭数に数えられているのだろうか。

 数えられてはいるのだろうな。だがメインじゃない。替えの効く歯車のひとつ。

 

「まぁ、それも良いだろう」

 

 最底辺の雑兵の1人。これまでそうそう経験の無かったポジションだ。

 こちらも足早に合流する様に動くか。

 

「う……この密度、未成年とはいえ流石に……」

 

 姉さんは当然、オレも人混みは得意じゃない。

 そりゃあ下校生も含めた総力戦なんだから人数は飽和する。

 そんな中に……突っ込みたくはねぇなぁ……若さが眩しいなぁ……

 

「仕方ない……影薄くして……」

 

 生徒全員の位置と次の動作を予知して、その隙間を縫うように潜り抜け、相手代表の背後に立つ。

 

「Fクラスフタガミ、Dクラス代表に勝負を挑みます」

「っっ!!???いつの間にそこに!?」

『Dクラス玉野、サモン!』

 

 背後からの奇襲も流石に召喚のタイムラグで防がれてしまう。

 召喚された姿は……おお、制服だ。白地に黄色の縁取りしてある上にベレー帽でコルセットしてマスケット持ってるが。ここの制服黒に赤だぞ。何事だよ。

 

「く、残念だったな!観察処分者!最下層が戦争に勝とうだなんて思い上がりも甚だしい!」

「……まぁ、それで勝ちなんだろう?吉井明久」

「っ!?」

『また助けられたよフタガミさん!』

『Fクラス姫路瑞稀です!Dクラス平賀くんに勝負を挑みます!』

「え──な──はぁ!?」

 

 ──Dクラス代表 平賀源二 討死

 

「ふぅ……」

 

 終わった。

 やってみればなんて事ない事だった。そりゃあそうだ。

 

「く……観察処分者2人と姫路さんだと……?信じられん組み合わせだ」

「それは私もそう思う」

「す、すみませんでしたっ!」

「いや、それもこちらが甘く見積り、調査を怠った結果だ……ルールに則り、クラスを開け渡す……が、もう下校時間だ、明日でも構わないか?」

 

 敗者は全てを失う。

 こちらが下校時間だろうがやれと言えばやらねばならない。

 話によれば敗北クラスは3ヶ月間、戦争を起こせなくなるらしい。あのカスみたいな環境で4分の1を過ごすのか……この体も素で保たんかもしれん。

 

「いいや、その必要は無い」

「……あ?」

 

 だが代表からは信じられん言葉が出てきた。

 

「雄二、それどういう事?」

「そうだよ代表。なんでクラス設備を交換しない?しない理由が無いと思うけど」

 

 吉井明久も同じ意見だったようで、交換を迫る。

 姉さんの体調的にもこの問題は必須だ。

 

「俺たちの目的はあくまでAクラスだ。忘れたのか?」

「そうだけどそれなら、初めからAクラスに挑めばいいじゃないか!」

「そのくらい自分で考えろバカ。そんなだから近所の中学生に馬鹿なお兄ちゃんなんてあだ名を付けられるんだ」

「やめて!そんな中途半端にリアルな!」

「すまんすまん、小学生だったか」

「……生きててごめんなさい……」

「「……」」

 

 衝撃的な話につい代表と顔を見合わせてしまった。

 だが、代表の話も衝撃だ。

 

「もう興味無い。帰る」

 

 小学生にバカにされる高校生だぁ……?

 敗者に然るべき処分を下さない代表だぁ……?

 

「ん……?」

 

 何でここ……Fクラスじゃないのに窓ガラス割れてんだ?廊下だぞ……?

 

「やれやれ……」

「フタガミ。随分と活躍したそうじゃないか」

 

 教室で鞄を取って帰ろうとした所に現れた西村教諭。

 

「……!どうですか、オ……私だって、勝利することが出来る。勉強だけが全てじゃない」

「そうだな。勉強だけしていればいい、そんな考えは間違いだ」

「ですよね」

「だが」

「だが!?」

「社会的に平均程度の学力は意思疎通の面からも重要だ!近年ではお釣りの計算もできん若者というトピックもあるらしいからな!まぁそれについての見解は様々であるからどうとも言わんが、今のお前では、まだ社会では何もできん!『自力で考え、生きていく』に足るだけの学力や規律については教育してやろう!」

「……」

 

 まぁ確かに。バカと喋ると疲れるし……今までコネとなあなあで社会組織を生きてきたオレ達からすると人間の社会性は確かに学んで然るべきだ。

 

「まぁ、お前たちが掴んだ勝利だ。存分に喜び、今日はゆっくり休むといい」

「では失礼します。私は負けませんよ、誰にもね」

「良い言葉だ。気をつけてな」

「はい」

 

 西村教諭の言うことは一部肯定できる。

 そしてオレ達とは交わらない。

 しかし……折角の設備交換、他に条件を突きつけるとしても、交換しておいて良いと思うんだがな……

 

 ♢♢♢

 

「うぼぁ……」

 

 死ぬ……死んだ……

 戦争翌日。朝から現在お昼休みまでテスト漬けだった。

 シオンが解くと能力使ってピンクの人と同じかちょっと下くらいになるからそれは不自然が過ぎるって事で私が受けたんだけど……

 思ったより自分の頭の悪さに絶望した。というか忘れ過ぎてる。

 ここ10数年は勉強なんてものに触れてなかった気がするから高校テストが分かんなくても仕方ないよね……?

 

「や……ほんと頭潰れそう……」

 

 これは確かに観察処分されても良いくらい勉強アンチになりそうだ。

 

「フタガミ、良かったらお前もメシ行かないか?」

「……代表さん直々に指名だなんて、光栄ね?」

「お前の働きは評価してやろうと思ってな。明久が奢ってくれるらしいぞ」

「ちょっと!?僕が今日水と塩でどうこうしようと話してるのを知ってるよね!?」

 

 親なし小学生転生された場合以外で水と塩で生きようとしてる人間がいると思うと涙が止まらない。

 この学校はバイト禁止なの?試験学校だからそれも普通にあるかも。

 

「……まぁ、そうね。いいよ、私も水だけで」

「どうした?テスト疲れで食欲無いのか?」

「いや、元々お昼は食べないし……」

「マジか。明久以外に食費に追われてる奴がいるとは……」

「フタガミよ、少しでも口にしておかねば生活に支障が出るぞ」

「いいよ、いや……やっぱり普通に食べよう。普通は食べるんだからね」

 

 基本的にこの体……心身機能が脆弱過ぎて消化能力が低い。シオンがいないと昼間から食事なんて下痢止め無いとほぼ不可能だ。

 けど……シオンなら食べたものを即時消化吸収できる。大食いキャラなんて無限に存在するからね。感謝。

 

「あ、あのっ、皆さん」

「うん?あ、姫路さん。姫路さんも一緒に行く?」

 

 体内に異物を入れ込む覚悟を決めて教室を出ようとした所、ピンクさんに声をかけられる。

 

「えっと、その……お昼なんですけど、昨日約束してた……その」

「おお、もしや弁当かの?」

「は、はいっ!迷惑でなければ皆さんどうぞっ!」

 

 そう言って背後から勢い良くバッグを差し出してきた。

 反射的に避けようとしたけどカンがそれを否定して真逆の動作が同時に起きた事で左膝でイヤな感じがした。おのれ……

 

「迷惑なもんか!ね、雄二!」

「ああ、ありがたい」

「そうですか?良かったです」

 

 私が無言で脂汗と戦っている中、わいわいとピンクを讃える子たち。

 ふぅ……一瞬シオンに代わって、即治してもらおう……

 首筋を人差し指で7回ノックして、手のひらを添えて右に倒す。それで交代だ。

 

「……ふぅ」

 

 ……関節割れてて草。

 治療して姉さんと左右逆の手順を行い交代。

 

「……」

「あの、フタガミさん……その、お邪魔でしたか……?」

「わ?」

「いえ、その、不機嫌そうな感じがして……」

 

 意識が戻るとピンクが若干涙目で私を見てた。

 なんで……?

 

「フタガミ、一飯の恩に与ろうって奴の態度じゃない。謝罪だ」

「……あ、そういう事か。ごめんなさいね。お弁当について機嫌を損ねたりだとかでは無いの。有り難く頂戴するよ」

 

 切り替えの動作が……なるほどね。確かにそう見える。

 しなくても良いけどルーティン的にこれが楽なんだけどな……強制チェンジとなると左右どちらかから顔面を殴り飛ばすとかいう方法になるしな。

 

「ま……空気を悪くするのも良くない。じゃあお前らは先に屋上にでも行っててくれ。こんな錆びついた教室で食うなんてそれこそ失礼だ」

「雄二はどうするの?」

「飲み物でも買ってくる。昨日の礼だ」

 

 じゃ、と分かれようとする代表さんに、ポニーテールの子が話しかける。

 

「あ、じゃあウチも行く。この人数分だと1人じゃ持ちきれないでしょ?」

「そうか。悪いな」

「じゃあ私も行こうかな。確かに相応しくない反応しちゃったから、私が出すよ」

 

 一応これからも仲間であろうという人たちだ、取り入るのも選択肢だろう。

 因みにこの世界でも貯金はランダムではあるが毎月7倍される。サイコロ2個分。前の世界の貯金を引き継いでるので、現在でも4桁万円入ってた。使い放題だ。

 

「いいのか?食費に困ってるんだろ?」

「や、困っては無い。単に食べないってだけなのに」

「そうか。悪いな。じゃあ女性陣の分出してやってくれ」

「ん……」

 

 さらっと半分にされた。おのれ。

 

「む……フタガミも意外と……」

「何?えーと……誰だっけ?」

「っ!島田美波よ!」

「あぁ、貴女が私を戦地に残して撤退した……いたの?今日、初めから?」

「居たわよ!何なのよその態度!嫌われるわよ!?」

「ん……ごめんなさい。私、社会性が欠如してるから……」

 

 コミュニケーションって難しい。ナンデモアリの殺し合いにならないかしら。

 

「ん、じゃあ……そうね、島田さん、何が良い?」

「ホントにいいの?」

「うん」

「じゃあお茶でいいわ」

「了解。じゃあピンクの子と男装の子も同じのでいいかな」

「「は?」」

「うん?えぅ……えっ」

 

 代表さんと島田さんがナニイッテンダコイツみたいな声を漏らす。

 うん……?お茶が苦手?アレルギー?同じのじゃなくて種類買って選べるようにするべきだった……?まさか通常高校生特有の選び方とかなんかある……?それともまさか……知ってて当然のセレクトがある!?

 

「ご、ごめんなさいごめんなさい……と、取り敢えず全種類3本ずつ買ってけば間違い無いよね!?気分で選べるね!?」

「お、おいおいテンパるな!出せ出せ!」

 

 自販機にありったけ札をぶち込んだところで代表さんに止められる。

 ヤバい……詰められる……記憶喪失にするか……?いや、現実的じゃない……1番現実的じゃない転生を隠す手段がボロを出さない以外現実的じゃないってのに……!

 

「お前……秀吉を女だと思ってたのか?知らんはずが無いと思っていたが……」

「秀吉……?」

 

 誰だそれ……

 不信感ではないな……呆れてる……?

 回避できそうか……?

 

「あんたの言う男装の子よ。木下は見た目あんなだけどちゃんと男なの」

「……アレで?」

「「……アレで」」

 

 これマジか。シオンの生き写しか?

 というかシオンが見ても男装女子って印象だったのに……

 

「フタガミは後姫路の分だけで良い。俺はあのバカ3人分と」

 

 ガシャン、と勝手に4人分のお茶を買い……私に1つ手渡す代表。

 

「えっ、これ私が出す分じゃ……」

「何の事だ?数は揃ったんだ、行くぞ、明久に全部食われてたら最悪だ」

「そうね。瑞稀の腕、ちゃんとチェックしとかないと」

「……まぁどうだろうな。頑張れよ」

「何よその目は!」

「べーつに。ほら行くぞ」

 

 知らん間に2人は飲み物片手に階段を登る……

 

「……」

 

 これが若さか……いざって時の反射以外でスピード感についてけないな……

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