「「「おおおおお……お?」」」
突撃する男子生徒は無限の壁とそこに立ち塞がるオレの召喚獣に戸惑い、行動を止める。
「バカな……干渉はした、フタガミも鉄人も越えたはず……!」
「フタガミさん、何を……!?」
「……お前たちが『召喚フィールドを消し、覗き行為を達成した』事実を無かったことにした。その効果で、再びこの戦況を作り出した」
……これは今日終わればまた質問責めだなぁ。
オールフィクション。腕輪の発動と干渉効果、突破された事実を無かったことにした。
このまま腕輪を使われると同じ展開になるが……そうしないだけの能力は勿論用意できている。
「くそ……あのボトル、まだ能力を隠してやがったか……!」
代表が悔しそうに呟く。
……ボトルの能力判定になるのか。
まぁそりゃそうか、オレが過去改変できるなんて想像もできんだろうな。そもそも現実改変系を理解できるかどうか。
「ここを超えるにはオレの召喚獣を倒すしか無い。諦めてかかってこい」
「「「く……!」」」
「くそ……っ!こうなりゃ力押しだ!点数の高い奴らは召喚獣を!死んだ奴は鉄人を継続!点数低い奴はフタガミを物理で叩きつつ召喚組とフォローし合え!」
「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
戦略は尽きたな。今日はこれで終わりか。
《フウシャ》《ライダーシステム》
《エボリューション!》
「ま、物理でもオレはお前らには負けないがな」
『西村先生!上はもう時間の問題です!そいつらで終わりです!』
「……島田か。めんどーなのが来たな」
「フタガミ!聞いたか、もう少し堪えるぞ」
「もう全員潰して終わるよ、援軍待つ必要も無い」
島田も姫路も召喚獣を出さないなら、姉さんにやられたか。
「ってやっぱり!アンタ大丈夫なんでしょうね!?」
「……あーうるせー。今から全員やんだから。お前も手伝え」
「男子と喧嘩させる気!?」
「お前がそれ言うか……まぁ離れてろ。もし抜けた奴がいたら頼むわ」
「まったく……」
♢♢♢
「と……!?」
「そこです!」
「くっ……甘い!」
一瞬気を抜いたところに鋭く飛ぶ鞭。
それは私には避けられるけど……今さっき、現実が書き換えられた。
とは言えど私みたいに世界そのものを変えたわけじゃない……限定的な……
多分シオンだけど急にやられると……
「もう潮時かな……高橋先生?」
「なんでしょうか」
「こーさん。私はこれで手を引くよ」
「意図が読めません。今貴女が負けを認めれば、他の男子生徒も敗北します」
「そうだよ。ここはもういいよ。それに、多分もう先行組も終わるから」
「終わる?」
「うん。覗き。今日は終わり。だから、降参」
時間逆行みたいな感じの能力使ったって事は一応想定外のことされたんだろうね。
だからもう力技で止めてるはず。
「分かりませんね。貴女は先ほどまで本気で私たちを倒す気でいた。それが何故、急に」
「倒す……?なにそれ。私と戦うつもりだったの?」
「私では相手にならないと?」
「そーだね……ほら、点数差?すごいし」
「その割には長い時間避けられていましたが」
「それはそれ、これはこれ……ね、罰も受けるから。出頭でも?」
ここでの行動にもう意味は無い。
さっさとシオンと体戻さないと……どうしよっか。ダブルガシャットはシオンが持ってるし……バレ無いようにどうにかしてもらうしかないか。
「ではそこで待機していてください。他の男子を止めます」
「ああ……じゃあそれ協力するけども」
「不意打ちでも狙っていますか?」
「まさか。そんな事しないしない。というか男子ー、今日はもう終わり!もう負けだよー!」
「「「…………!!?」」」
「な、何言ってんだフタガミ!俺たちが時間稼がないと……!」
「えーと……須川さんか、今日はどうあっても無理。これ以上しても罪が重くなるだけだよ」
「くっ……」
「他も……いいかな」
「「「…………」」」
男子沈黙。
今日はこれで完全に終わり。
「あらら、もう終わり?僕まだ不完全燃焼なんだけどな」
「セクハラ女子……ちょうどいいや、貴女、私とお風呂の方行こう」
「あれ?一緒に入ってくれるの?」
「まぁ……それでもいいから……」
「待ちなさい。貴女も男子と共に補習です」
「はぁ……そんなもん後で受けてあげるよ。今は黙ってて」
【止まれ】
「じゃあ行くよ。他は好きにしておいて」
「あ、待ってよフタガミさん」
セクハラ女子も追ってくるようだから答えず先に進む。
他は追ってくる様子も無く、男子も抵抗していない。
シオンとの合流には少なくとも1人以上の目撃者が必要だ。そしてその全ての記憶をシオンに消してもらうことも。
「ねぇねぇ、フタガミさんってさ、結構召喚獣の使い方上手いよね〜」
「別に……カンで」
「へぇ〜?観察処分者だから、ってのもあるよね。じゃあさ、覗きに加担してるのは何で?」
「それも別に……」
「ふーん?男子に好きな子いるとか?協力したら付き合ってもらえちゃうとか?」
「あー……?あぁ、そんなの無いよ。それに覗きは失敗するし」
2人で歩く中ひっきりなしに喋ってくる。
当然の疑問なんだろうけども……一般人用の答えは無い。
さて……そろそろシオンと合流しようか……
【行け】
テキトーに天井付近を伝って空気を動かす。
召喚フィールドに接触すればシオンに分かるでしょ。
「覗きは失敗するのに覗きに加担する……あぁ、もしかしてカメラ仕掛けてるの、フタガミさん?」
「うん……?いいや?そんなタイプに見える?」
「ううん。見えないけど不自然でしょ?こうやって覗き騒ぎがあれば浴室内は安全だ……って思わせられる」
「は……?盗撮用のカメラがバレたから覗こうとしてるんじゃないの?」
「え?あぁ、フタガミさんは知らなかったっけ、まだ1つ、小型カメラが残ってるんだよ」
あっけらかんと話すセクハラ女子。
「それは……貴女も覗きに加担してるのと同じじゃない?」
「あははー、そうかも。明日の入浴時間まで残ってたら外しとくよ」
「貴女の仕掛けたものじゃなくて?」
「違うよー。私ならこうやって……」
「わっと……」
「堂々と触りにいくからね」
背後から胸を鷲掴みされる。
その衝撃で倒れそうになったけど身体能力のザコさがバレるのは遠慮したいから能力で補助。
「ふーん……ま、お盛んなのは結構」
「あれ?抵抗無い?もしかして結構慣れちゃってる?」
「残念ながら……これまでの人生、そういう試みはできなかったからね」
全く……こちとら何歳だと思ってるんだ。
突出してる部分は弱点になる……私が言うのもなんだけども、極論手足や頭さえ無い方が機能的だ。
手足と同等の機能を胴体が持つのなら、細く弱い器官の存在は不要。その分胴体の強度を上げたりもできるはず。
うーん……リーチが短くなるか。一長一短だ。
「ふーん?結構モテそうな顔してるのに。残念。なら尚更だよ、高校2年生、花の女子高生だよ?彼氏の1人や2人、作ってもいいんじゃない?」
「まぁ……気が向けばね」
女子高生も何回目だか……銀さんの時も数えると……5回目か?何の恩恵も感じてないが……私が不適合だからか?
「ん……」
「お、やってるねー」
「よし、シオーン!」
「わっ!」
珍しく大声出した私に驚くけど、それも無駄だ。
『
小さな呟きと共に時間が止まる。
止まった世界で気兼ねなくシオンと対面。
「へろーお、目的達成?」
「ぁあ……微妙だ。結局召喚獣では決着ならずだ。トリガーの再開発も視野だな」
今持ってるボトルじゃ代表さんたちを攻略しきることはできなかったと。
「んー、微妙か。カンだけど明日はもう無理そうだよ」
「だな。流石に同じ宿に2人は無理がある。戻すぞ」
「はーい」
『ダブルガシャット!』
『ガッシューン』
♢♢♢
「ふぅ……やれやれだ。時は動き出す」
『えっ、あっ?あれ?フタガミさん!?』
所定位置に戻ると姉さんと来てた女子が周囲を見回し姉さんを探している。
……そうか、今ライダーシステム使ってるから分からんのか?
「まぁいい、これで……終わりだ」
残り数人となった男子を西村教諭と沈める。
これで今日も暴動鎮圧は完了。
「後は任せていいか?島田」
「何よ、最後まで運びなさい」
近くにいる島田に処理を頼むと睨みつけられ指示される。
「それだとオレと西村教諭の負担が大きいだろ。メインで止めたのはオレたち。お前らは後処理を担う事で負担を分配する。役割分担だ」
「どこまでも自分勝手ね」
「じゃあ後始末してやるから明日はお前らだけで止めてみろ」
「む……」
「秩序のためならしてやろう、とも言いたいが、誰かだけに権利を集中するのも好ましくない。オレ達は支配しない。お前たちにも役割があるからオレは中立に動いてる」
1人の王が全てを管理する世界は成長が無い。
新陳代謝の無い生物は腐り落ちるしか無いように、世界も循環しなければならない。
「社会で役割の無い者は自身を否定する。道具は放っておくより使っている方が長持ちするものだ」
「どこまでも自分勝手。けどいいわ。明日もよろしくね」
「ああ」