「能力は──確か、相手の力を蒐集する能力、だったはずよ」
「──……!?」
さして問題ではないだろうという島田。
力を蒐集する?そりゃオレじゃない。オレは映すだけ。ウタネの写鏡以外の何ものでない。
「アナタのベルトもそうじゃなかったの?瑞稀とアキの力を蒐集して使う。それだと思ってたんだけど。姿を消すのは何?土屋の力?」
「……」
ペラペラとこの女……
コイツが言ってるのは5番目、
そしてそれはあり得ない。オレの能力はアインスが蒐集したから使えるのは当然だが……いや、ありうるのか……?
「……その当時のオレはどんなだった」
「どんなって、どんな?パッと見は変わらないわよ」
「オレの見た目がどうこうはどうでもいいんだよ。ヒトガタなんだろう事くらい分かってた。中身だよ中身」
「んー……そうね、別に……めぼしい能力あったら蒐集して、ポイ捨て……変わらないんじゃない?」
「……お前、オレをどんな目で見てんだ?」
コイツ……オレをロクな人間として見てないのは薄々だったが……それでも尚、オレの能力に侵害されないと慢心している様に思う。ナメてんのか?
「んー、アレよ、そこそこの能力持ってるくせにズル賢いことばっかりして結果だけ掻っ攫ってく……卑怯者?」
「……」
開いた口が……塞がらない……
♢♢♢
「へー、私ってばそんなヤツをシオン認定してたんだー?因みにソレ、どうなったの?」
「あれ?ウタネ?シオンは?」
「凹んじゃった。思ってた以上にカスい自分が存在してる事に」
「バカねぇ。別の自分なんかに拘るからそんか事でメンタルやられるのよ」
「やー、そー言われると私も厳しいなー」
シオンのカタチのおおよそを把握してるレベルだな……
しかもこの人類、私に対して上から物事を話そうとしてるぞ。
「あ、あの……能力って何ですか?」
沈黙してた姫路さんが口を開く。
能力……能力かぁ……そりゃそうだよねぇ。
「えーっとね、能力ってのは……こう、ねぇ?」
「ウチを見ても何にも無いわよ。ウチは普通の人間なんだから」
「んー……」
ウチは、ねぇ……
「まぁ何でもできる超能力みたいなもんだよ。貴女も相応の対価を示せば、好きな人と結ばれるなんて造作も無い」
「えっ……」
「気が向いたら私でもシオンでも声かけてくれればいいよ。相応のものを示せるのなら、それも叶えてあげる」
「……」
「ウタネ、そんな事言っちゃっていいの?シオンに怒られるわよ」
「何なら貴女もどう?私達の過去を話すなら、貴女の思うままの世界を作ってあげる。死ぬまで遊んで暮らせる。死にたくないならそれもいい。良い悪いも好きも嫌いも貴女の価値観そのままの、貴女の世界」
「お断りよ」
「ん……」
望む世界を作る。それは恐らく、誰も逃れられない誘惑じゃないのか?
命さえ使い捨てる私達にさえ、それには抗えないというのに。
「理由は聞いてもいい?」
「いいわよ、興味無いだけだから」
「興味、ない……そう」
「何でもそうでしょ?人に与えられてばかりは面白くない。自分のいる世界を感じる事が人生よ」
「過程を楽しむ、ってやつね……」
この価値観は私達が排除したものだ。
私で言うなら世界を壊すまでの過程に価値を置かない。
「ま、そんなのいいわよ。お酒、もうないの?」
「あ……もう飲んだんだ。高校生にしては飲み慣れてるのね。けどごめんなさいね、お酒とか出せるのシオンだけなんだ」
「ふーん。じゃあいいわよ。瑞稀、呆けてないであなたも寝なさい。明日もどうせバカどもが騒ぐんだから」
「……はっ!?は、はいっ!それじゃあ2人とも、おやすみなさいっ!」
「はーい……おやすみー」
♢♢♢
「……」
「ウタネ?何見てんのよ?」
翌朝、朝食時間。
島田さんに何やら視線を追われる。
「や……見てると言うか……」
「Cクラス男子の方よね?なに?なんやかんや言いつつ気になってたりする人いるの?」
「違くて……けどなんか、言わない方がいい気がするからやめとく」
「なにそれ?」
なんか男子だけで何かしてる気がするんだよな……
でもこれ指摘するとシオンの企みも潰れそうな気がする……
「まーいいじゃない。と、流石学園貸し切りの旅館だね、この人数の食事でも上等だ」
「そうね、美味しいわ」
「本当です……食べ過ぎちゃいます……」
「いーじゃない瑞稀。たまにはね」
「そ、そう言って美波ちゃんも控えてるじゃないですか!」
「あら、バレちゃった?じゃ、2人でおかわり行きましょ。食べてもシオンがどうにかしてくれるわよ」
「え、えぇ……」
シオン任せの勝手な事を言いながら姫路さんを連れて行った……
うーん……私はもういいかな……
最初に取った分で一人前くらいあったし……多過ぎ……
「あの、私部屋帰るんであのポニテとピンク戻ってきたら伝えてもらっていいですか?」
「え……?あ、はい」
近くにいた……知らん子に声をかけて立ち上がる。
やっぱり男子なんかしてるんだよなー……
♢♢♢
「……んで?教師の目を掻い潜って女子部屋に無事潜入できたわけだ。念願叶ったな、ムッツリーニ」
「…………それは……たしかに……ある……っ!」
姉さんが戻ってしばらく。
オレが勝手に酒飲み始めたところにムッツリーニが部屋をノックしてきた。
血ぃ吹くのだけやめてほしいな。無かったことにするだけなんだが。
「んだよ、姉さんの体提供すれば覗きは収まるのか?」
「…………ッッッッ!!!(ブッシャァァァァァァ!!!)」
服を少しはだけるだけでコレだ。
お前と同じ体に脂肪ついてるだけだっっーのに。セイブツだなこいつらも。
「んで本当は何なんだよ。お前なら盗撮くらいわけないだろ」
コイツはオレだけの時間を狙って来てるはず。
そうでないならコイツはただのバカだ。
「…………今回の覗きの件、保険が欲しい」
「保険だぁ?てめぇらが失敗したのに報酬をくれってか」
「…………こちらも出来る限りの手段は尽くす。それでもお前が立ち塞がる限り勝機は無い」
「そうか?現にやつらはオレの能力を打ち倒し、召喚大会に優勝している」
「…………お前はまだ隠している」
「ほう?何故そう思う。オレは昨日でもいっぱいいっぱいのつもりだったが」
代表の腕輪を見破れなかったとはいえ、
何の能力も無いただの高校生程度のガキにだ。
これはまだオレが相手の土俵では敗北しうるという事だ。それを無理矢理なかったことにしてオレの土俵に引き込んだだけ。
「…………お前は保身を考えなければ全男子を全滅させられる」
「ん?」
「…………武器掃射は敵全員の武器がコピーされている。自分の武器だけでも苦労するのを好き放題飛ばされたのでは話にならない」
「……それも代表たちが止めた、ってのはそうか。オレごと攻撃するなら密着しようが裏を取ろうが無意味だってことか。まぁそうなんだが、それはしないから安心しろ。オレは相打ちも嫌いだ」
オレ1人と相手全てを殺す戦術か。
それは可能だが、それではオレの進化は無い。
必要に応じ、仕方なくするならそれもギリギリ認められるだろうが、それをすると相手を止められんと認めるのと同じこと。
相打ちを仕掛けるのは相手より弱いやつのすることだ。永遠を生きる奴のすることじゃない。
永遠を生きるなら、逃げてでも生きなきゃならない。未来の強敵を逃すより、敵に捕えられない事を最優先するべきだ。相手が有限ならいずれ死ぬ。同じ永遠なら……やむを得ないが。
「…………なら、ウタネを他の生徒へ変装させて欲しい」
「……変装?」
「…………お前には骨格ごと変えて見せる変装技術がある。できるはず」
「……?んな事してどうする?そんな事しても西村教諭は倒せないぞ。ウタネとしてオレが隣にいるんだから観察処分が他にいるのはおかしい」
「…………鉄人は明久が、お前は雄二が倒す。それに変わりはない」
「面白い!やってみろ、その暁にはお前ら4人にプライムをくれてやる」
「…………プライム?」
「あぁ……一旦忘れろ。変装は開戦前でいいな?どんな奴にするかだけ日中に連絡しろ」
「…………感謝。では失礼する」
律儀に礼して出たったな。
何なんだ?何の目的か……まぁ、良い結果を待つ……前に、ムッツリーニの血を無かったことにしておくか……