ウタネとはまた違う生命根絶、不幸のゼロ化、幸福の最大化。
それはそれでアリでしょう。
今この瞬間が夢でないとは限らないのですから。
光の中、真っ直ぐ伸びる道がある。
全部が白なのに、横幅2メートル程度の区切りが認識できた。
自分は今、その道を歩いていたのだと思う。
意識は曖昧だ。
歩いていたことさえ、今ようやく気づいたのだ。
振り返ると、その道は水平線まで続いていた。
それはあまり長いとは思わなかった。
今までどれだけ歩いていたかわからないが、気づいた今からすればどうでもいいこと。それは昔のことだ。
「あ……」
前に向き直ると、人がいた。
自分と同じ背格好。
道はその辺りで途切れている。
「誰……?」
思わず問う。
声らしい声も出なかったが、そう意味するだけの言葉にはなったはずだ。
聞こえなかったのなら、もう一度だって。
「アナタだよ」
「アナタ……?」
「あはは、分かんないか。自分の事だよって」
「……?」
人は、幼子に諭す柔らかさをもって、言葉を使う。
どういう意味だろうか。自分自身?
あぁ、そういえば、自分には同一人物の姉がいた。
この人は姉で、そういう意味で言っているのか?
「あ……え」
疑問は多いのに、それが口に、言葉に出ない。
そもそも全てに戸惑っている。
刃物に怖じけている?違う。
まず、聞くべきは……
「ここは、どこ?」
「ここはね、夢の世界。5番目、理想の夢ではなくて、人なら誰でも見る夢のこと」
「ゆめ……」
ゆめ、夢。
道理でハッキリしないはずだ。
思考と言葉がリンクしないのも、その影響だ。
けど少し慣れてきた。夢の中、あやふやなソコに、少しずつ現実の輪郭を置そうになっている。
「じゃあ、次。誰?」
「あはは、さっきも聞いた。アナタだよ。忘れちゃった?」
聞いただろうか。
とはいえ素直に答えてくれた。
目の前にいる人は自分だと。
「次。何してる?」
「うん、交代の時間を待ってる」
「交代?」
こちらに顔だけ向けたまま、待っている?
それに、交代?誰と?何の?
「うん。交代。明日からは、私。目が覚めたら、私の番」
ああ……そうか。
コレは、
後ろに続く道は生まれてからの時間なんだろう。
そうするなら、そうだ。歩いてきたはずだが、ここに来て振り返るまで、意識すらしなかったはず。何も感じなかったのも当然。
そして目の前のオレを名乗る人物は疑いようも無くオレなのだろう。
今日までのオレは今日まで。
いや、ともすれば、昨日の夢の世界ではオレが。
別人になる、とは違う。
けど誰もがそうするはずだ。
昨日までの自分を殺して、明日から別の自分が生きる。
「わかった。じゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみ」
歩いて近づき、自然にナイフが胸を貫く。
あぁ、なんて事ない。
多分、今まで何度も繰り返してきた。
けど流れるそれは、空間より更に白い。
見つめる内に、段々と目が痛くなってくる。
『シオンー?私が先なんて珍しいねー!おはよー、ご飯食べる?』
「あぁ……おはよう」
朝日が眩しい。