「し、死んでる……?」
遅れて着いた屋上。
屋上にはロクな思い出が無いな。激辛党お姉さんと一緒に攘夷ボーイに爆破されたり、半吸血鬼と腕相撲したり、闇の書覚醒したり……
と思っていたものの一つ追加された。
先に到着していた代表さんが痙攣しながら倒れていた。
不審な点は無い。ポニーテールの子は何やら急いで階段を下ってったけど多分無関係、ピンクの子はキョトンとして、男の子3人は怯えきっている。
「あの、代表さんどうしたの?」
不明点が多すぎる。
「あ、ああ!いや!雄二もクールぶってたけど相当に疲れてたんだろうね!姫路さんの美味しそうなお弁当見た途端目の色変えて全部食べちゃったんだ!」
「全部?」
「そう!全部!しかも階段上がってきたでしょ?雄二みたいに筋肉質だと攣りやすくなるみたいで、足攣って立てなくなったみたいなんだ!だからごめんフタガミさん!僕らでお金出すからお昼は学食でいいかな!?本当にごめん!」
「……」
1人で全部というには明らかに無理量の重箱に見える。
さっきまでの代表さんには心身ともに嘘偽り無い余裕があった。私のカンは絶対だ。
そもそも量を食べて息苦しくなる事はあってもこうも瀕死体になることは無いだろう。退場したポニーテールも不自然だ。
……毒か。
動機は……まぁ、クラス交換しなかったことかな……
「わかった……貴女も食べられなかったのよね?作ってきてそれは酷だから好きなの奢ってあげる。ポニーテールの子も拾って学食行きましょ」
まぁ見たところ死んでは無さそうだし……ね?
「えっ、あの、え……」
「貴方たちは?食べられたの?この子のお弁当待ちだったなら他に無いんでしょ?今日なら奢るよ、希望があれば」
頭が裏切られるなんてのはまぁ、無くもない。
傀儡政権なんてある種当たり前のものだ。イイ汁だけを啜りたい、なんて全人類の思想だろう。別に否定はしないけども。
その凶行が私に向けられる前に少しくらい恩を売ろう。今の私に比肩するほどのバカ共なんだから。
「えっ、ほんと!?いや、でも……今日は姫路さんがわざわざ僕らのためにお弁当を作ってきてくれたんだ。それを食べられなかったからって他に手を出すのは違うと思うから、僕は遠慮するよ」
「そうじゃな。フタガミよ、ワシも遠慮しておく」
「…………女子だけで行ってくるといい」
「そう……まぁいいけども」
「あ、あのっ、でしたら私も」
「姫路さんは食べてきてよ。その方が僕らも罪悪感少なくなるからさ」
「えと……でも……」
断られてしまった。
まぁ……いいか。
「じゃあ行こうか。折角だし私もたまには何か食べよう」
ピンクの子を連れて屋上を……出る?屋上から校内に入る。
「んー……あ、ポニーテールの子。お弁当死んだから学食行こう。奢るから」
「そうなったのね。坂本、大丈夫そうだった?」
「まぁ死んではなさそう」
「あの量を1人で食べたらそうなるわよね」
「他の子も誘ったんだけど断られちゃって」
「アイツらも何だか頑固よね」
よく分からん会話をしながら食堂へ。
メニュー表には高校とは思えないほど充実したラインナップ。
電子マネーまで実装しているとは流石だ。
Aクラス設備を見る限りこれが世間の標準と言わんばかりだろう。
「ほ、チキン南蛮定食なんて学食で存在するのか。これと……これだけでいいか」
学食にしては豊富なラインナップについつい選びまくろうかとも思ったけど流石に異物の喫食は限度を選びたいから……
「フタガミ、本当にいいのね?好きなの頼むわよ?」
「いいよ。学食くらい」
「ありがと。次は私が奢るわね」
「いいのに。ピンクの子は?」
「ひ、姫路です。えっと、私は自分で……」
「チッ……」
「えっ?」
「私が奢るってんだから買え。仮にも仲間だってなら、好意を遠慮するな。食べたく無いならそれもいい。だけど男の子3人は食べてこいというし、私が奢るって言ってる。貴女もお弁当食べてくれなかったり、残されたら嫌でしょう?私達は支配しないけど、そういうのは嫌いだよ」
私からすればほぼ初対面で押し売りしてる変質者の老婆なんだが……遠慮のせいで馴染めない、ってなる場合も分かる。
良い悪いはあるだろうけど……この場は私に奢らせるのが正解なはずだ。
「で、では……」
「ところで姫路さん。お肉と魚、どっちが好き?」
「え?えっと……そうですね、お魚の方が……」
「よし。じゃあこれから好きなのを選べ」
「えっ??何で全部買って……?」
「いいから選びなよ。もう買っちゃってる。もう選ばない選択は無い」
「……すみません。これで」
差し出した4枚の魚メインにした食券から、1枚を取る。
「ありがとう、でいい」
「はい。ありがとうございます」
無理に選ばせたけど……まぁ、これでいいか。
「じゃ、2人はそのまま食べてて。私、ちょっとお手洗い行ってくる」
「席取っとくわ」
「ありがとう」
2人を置いて食堂を後に。
さてさて……シオン。見られないように瞬間移動できる?
……何でそんな提案?
や、貴方前の世界で普通に瞬間移動してたじゃない。
……ブラックホールのスペックありきだ。が、まぁ良いだろう。3バカのとこでいいな。
せーかい。
瞬間的な切り替えで瞬間的に場所を移動する。どこだここ……お。
「ちゃお。どう?代表さんの様子」
「あ、フタガミさん。いや、もう少し時間かかるかな」
「ん……じゃ、これ」
「……?何?食券?」
3枚の食券を差し出すと、訝しみながら受け取った観察処分者。
「姫路瑞稀さんに奢ろうと思ったらそうなったの。ちょうど3人だし、食べてきて。代表さんは私が見ておくから」
「え、ほんとに?いいの?」
「ワシらとしては有難いが……」
「…………救いの女神」
「行ってらっしゃい」
男の子3人は食券を握りしめ凄まじい速度で走っていった。
若者は元気でいいわね。
「……女神、かぁ……」
ヴィーナス、愛と美の神、金星の女神。
意味の分からんこじ付けでそう言われてた。全く関係無いのに。
『……』
代表さんを受け取った廊下で立ち尽くしてると、どこからか視線を感じた。
「……生徒には違い無いな。放っておけ」
一瞬だけシオンに感知してもらう。
生徒以外の存在は無いらしい。じゃあいいか。
「さて……代表さん、起きれる?」
「う……ああ、フタガミか。すまん」
「体調、大丈夫そう?」
「ああ……かろうじてだが、何とかな……」
「みんな学食行ってるよ」
「あの裏切り者ども……すまんな、迷惑かけた」
「いいえ。元気そうだからプレゼント」
「ん……?」
「男の子3人にも渡したんだけどね、それのあまり。チキン南蛮、嫌い?」
「いいのか?」
「いいよ。時間も時間だし、早く行ってきて」
「すまん、恩に着る!」
代表さんは私の手からチキン南蛮と書かれた食券をひったくる様に取って他の男の子同様走って行った。
これで……クラスの主要人物には餌付けできたか。少なくともこの恩の限りは捨て駒にされる事は無い……と思いたいね。
「さて……次……システムについて……ウォッチ……じゃなかった、ボトルにできそう?」
この世界的に、基準となりそうな能力。それは試験召喚。
世界を乗っ取る相方に、それを問い掛ける。
(……まだだ。使用に関して浅過ぎる。そもそも知ってる物でもないから、魔法や魔術より不便だ……サーヴァントシステムを応用して何とか……って感じだ)
「んー……流石に難しいか。よし、なら次の戦争中までに急ごう。この世界の基準を満たしておこう」
自身の使い魔、としてサーヴァントとの共通点を介して試験召喚獣を自身の範囲に入れようってことか。
シオンの持つ能力、現在の最大出力はエボルドライバー。
惑星を喰らう力と地球最大の神秘を取り込み生成されたエボルトリガープライム……プライムトリガーによってブラックホールを生成、操作することができる。
「まぁ、サーヴァントシステムで変身できるか」
(……いいや、それは不可能だ)
「は?」
(……スロットに入れるシステムはその世界に順じたものでなければならない。原点ではないオレの能力ではまず、その世界のシステム解析が必要だ)
「ライダーシステムでフェーズ1してたよね?」
(……その時点でプライムライダーが多過ぎた。この世界もサーヴァントまみれにするならサーヴァントシステムも使えるだろう)
「やめとこ。そもそも変身する意味無いし」
使えるなら安心だと思うけれど、この世界ではそこまで必要でも無さそうだ。最悪試験の点数だけ上げられれば大丈夫だし。
(……ちなみに、世界を越えた事でオレのボトルも生成された。フウシャボトルだ)
「能力名そのままね。効果は?」
(……あ?別に)
「えぇ……あなた中立でしょ?攻撃無効とか無いの?」
(……最強か?中立ってのは広義的に見て同じ現象が起こり続けるって事。身代わりが近いか)
「進化でも無いんだ」
(……進化はその過程だ。何もかもを消滅させない限り変化は起こる。その中で同じ事を続けるなら進化するしか無い。そしてその進化は、能力、ステータスアップでしかあり得ない)
「よくわかんない……次の授業もテストだから、それまで教室で寝よう……」
(……まぁ、語る意味も無い。おやすみ姉さん。いつでも代わるぞ)
「ありがと……」
タグにエボルドライバー付けてたから最後の会話無理に置いたんですけど、そのうちエボリューションするから……