「どうするか……」
無限掃射は継続中。
抜けてくる高得点者もいるがオレの召喚獣やオレ自身は棒立ちで攻撃を受け続けるばかり。
ダメージはまるで無い。エボルの装甲を超える余力を誰も残していない。
貧弱なこの体も、貧相な点数の召喚獣もプライムにだけで耐え切っている。
西村教諭もオレの声は届かないが毎秒4人を吹っ飛ばしている。
その内半分以上は手当てしなければ自然治癒せず悪化を辿るだろう。
そして、代表も吉井も指示を飛ばすだけで自身が向かってくる気配が無い。
自分たちがキーになるのを理解してはいるのだろう。
だが、現状でオレを超える策がない。
あるなら戦力低下前に仕掛けてきているはず。
「オレの期待違いだったか……」
ここにオレの成長は無い。
この状況でなら、追い込まれた上でなら何かあるかもと思ったが……そうではないと確信した。
似た状況で闇の書に能力を蒐集させて使い方を見た時があった。そこではオレの想定以上は出なかった。
アーチャーはオレの想像を超えてきた。プライムを利用し、勝手にオリジナルへ至った。
「自然の進化が最短か。よし、もう終わりだ。西村教諭!召喚獣を全て消し飛ばすから、後は2人で制圧するぞ!」
指示は届いただろうか。
どうでもいいか。オレ1人でも可能だ。
「おまえらは全て性犯罪者として世に知れ渡る。オレ達に歯向かうべきではなかった……」
『うお……マジか……!』
前にいる奴らから恐れが見える。
当然だ。まだ待機させているが、掃射密度を3倍にしたのだから。
「召喚獣は全滅。お前らもこのフィールドは超えられない」
全掃射。
密度を増した武具は召喚獣を蹂躙し、オレの召喚獣もその跳弾によって幾ばくか被弾。
当然点数の高いものが混じっていて、それは激痛と共に点数を奪い取る。
「く……コレもリスク。だが全滅には変わらない。後は1人ずつ殴り飛ばして終わりだ」
存在していた全ての召喚獣は……オレのものも含めて爆撃により死滅した。
後は召喚フィールドを消されない内に全てを殴り飛ばす!
《ラビット》《タンク》
《エボルマッチ!》
「オラァ!終わりだバカども!生身じゃオレには敵わない!」
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
ラビットの機動力をもって乱雑に屠っていく。
通過する直線上、毎秒3人以上を吹き飛ばし、戦闘不能に追い込む。
許せ、帰る頃には治療してやる。
「く……!」
召喚獣爆死の自傷ダメージも相当だ。流石に全身に爆撃と裂傷。
ラビットの加速度にさえ肉と骨が危険信号を発している。
治せはするが……それじゃ意味無いよな。
だがこれで吉井も戦闘不能。坂本でもエボルは突破できない。
「だが、これで……オレが……」
「そう、これでお前は手駒を失った!」
「何ぃ……!?」
オレの進路に現れたのは、吉井の召喚獣。
「何だと……?全ての召喚獣は爆殺したはず……」
「本当にそうか?俺と明久はまだ、生き残ってるぞ!」
「僕らは自爆するのを待ってたんだ!いくぞ!」
「……!」
見れば確かに、他の奴らは死滅してるがコイツらはほぼ万全の点数で残ってるな。
なるほど、後ろで指示ばかりしているとは思っていたが……自分の、観察処分の召喚獣を温存して、オレが自爆を選ぶだろうと待っていたのか。
だが代表の召喚獣はオレには触れられない。
吉井の召喚獣さえブチのめせば……
「いずれにせよお前らの負けだ!」
「甘い……ねっ!」
吉井の召喚獣へ向けた拳は代表の召喚獣が吉井のを殴り飛ばし……代表の召喚獣はオレの拳を透過した。
「……!」
「ぎゃぁぁぁぁ!やっぱり多少痛いなぁ!?雄二ぃ!」
「うるせー、アレに殴られるより遥かにマシだろ」
「なるほどね」
吉井の召喚獣はオレの拳にあたるが、オレを打倒しうる。
代表はオレを打倒し得ないが、オレに対して無敵と。
さっきみたいに不意の攻撃で吉井の召喚獣を吹っ飛ばせば、オレの攻撃範囲から安全に離脱させられる……
そしてなるほど、どうりで──
《総合科目》
吉井明久──648点
坂本雄二──142点
代表の点数が壊滅的なわけだ。
これなら殴っても響くダメージにはならない。
「なるほどな。オレが代表に触れられないだろうとの予測か」
「俺たちの召喚獣を確認せず自爆したのは悪手だったな」
「確認する余裕を無くすための人海戦術だろ?」
「正解だ」
「……」
やってくれた。
これでオレは……吉井の召喚獣の動きを予知し……おそらく打ち合わせしていないだろう代表の召喚獣の動きを更に予知。
そして気力と情熱だけで立ち上がってくる他生徒を殺さず対処し続けなければならない。西村教諭の助力は期待できない。
……とはならない。
「哀れだ、それじゃあ救世主と変わらない。お前らはどう足掻いてもオレ自身にダメージを与えるためには吉井の召喚獣が必要だ。そして他はフィールドを抜けられない。オレが男に溺れたとて……吉井だけ殺せば問題無い!」
「ちょっ!?その言い方は語弊が出る!」
「オラぁ!」
「明久!ボケっとすんな!」
「はぐわっ!サンキュー雄二!」
いくら均衡しているように見えても、オレは当たり前に制するだけ。
吉井の召喚獣へ拳を振るう。
代表が庇い、透過する。
常に動き続ける吉井の召喚獣に、そのテクニックを踏まえた回避先を考察する。
召喚獣の動きはおおよそ生身のそれに近い挙動。
だが生身では無いためにオレ自身の予知は通じない。
そして代表が無理に移動させるために代表の攻撃を踏まえての攻撃が必要になる。
「そこ!」
「甘い!」
「……!」
代表の召喚獣が動いたのを見て攻撃を置きにいったが、それを見て代表の方も攻撃を止めた。
吉井の召喚獣はそのまま移動し、オレの拳は空振り。
厄介だ。このままでは千日手。あいつらもいつまでやる気か……
「……さぁいくら持つか、じゃあない。いくらどころじゃねぇぞ!お前ら2人だけってなら、もうこれで終わりだぁ!」
「2人だけってはずないだろ!ダブル!」
「ちっ……だが甘いなぁ!」
《Ready! GO!!!》
ラビットタンクの必殺技を起動、召喚フィールド左右から放物線が2人の召喚獣をまとめて封じる。
「しまっ……!」
「明久!抜けられるか!?」
「あーごめん、多分無理」
「ふざけてんなお前!」
バカはバカのままだったか。
放物線に拘束された2人は身を捩るだけで移動もできない。
狭い廊下で、召喚獣ではなくオレ自身でやるにはかなり低めの軌道でもって放物線を沿うように跳ぶ。
「悪いな吉井!もういっぺん死ね!」
「やばいやばいやばい!もう次は死ぬ!」
《エボルティックアタック!》
《チャオ!》
2体の召喚獣は無惨に爆散。
「……」
「あ“あ“あ"あ“あ"あ“あ“あ"あ“あ"あ“あ“あ"あ“あ"あ“あ“あ"あ“あ"!!!」
「……終わりだな」
これでオレを打倒し得る存在は無くなった。
これ以上の進展は無い。
「くそ……!」
「代表、オレの勝ちだ。じゃ、悪いが全員寝てもらう」
後はフィールドから出られない生徒を潰して終わり。
西村教諭……もまだ立ってはいるな。流石に疲労感が見える。
とは言え少し、少しは見えた気がするか。