バカと無気力で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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3.5巻とかはまた詰まったら……


誤解戦争

「お疲れ様」

「……おう」

 

 全ての生徒を部屋に入れ、戻ったところに島田から缶ジュースを受け取る。

 

「割と苦戦したみたいね」

「……ワザとそういうシチュエーションにした。悪かったとは思ってるよ」

「そう」

「……姫路はどうした」

「ああ、そこいるわよ」

 

 島田が指差した先、部屋の隅に布団を敷き、毛布に包まる姫路。

 

「何してんだ。そんな季節でも無いだろう」

 

 夜間とは言え半袖で十分な気温。

 事実島田はそうしている。

 

「いえ……気にしないでください……」

「……?そうか……因みにだが、女子風呂にあったカメラは全て破棄しておいた」

「ちょっと待ちなさい、カメラ?初日に全部外したはずよ」

「言ってなかったか。お前らが得意げに外してたのはブラフだ。清水も考えたもんだ」

「美春?何のこと?」

「盗撮犯その人だが?」

「アキたちじゃなかったの!?」

「ああ。結局はオレのせいで覗けなかったわけだし、誤解くらい解いてやろうと思ってな」

 

 ……実際、姉さんからの情報もあってだが。

 初日にサーチした分以外は無かったし、特段気にすることもなかったか。

 

「美春はどうしたの、殺したの!?」

「……お前はオレを何だと思ってんだ。姫路もいるとこで平然と殺すとか言うな。オレは中立。カメラは破棄したが本人へ問い詰めることはしていない。ヤツからすればカメラが消えただけ、ともすればバレることを恐れてるくらいじゃないか」

「そう……後で私が問い詰めておくわ」

「勝手にしろ。初日からあったから、欲しいなら復元するぞ」

「要らないわ。復元元も破棄しなさい」

「そんなもんか。了解」

「で、男子たちは?」

「全員気絶させて部屋に置いた。女子も相当の疲労だったから軽く疲労感は抜いておいてやった。帰る頃にはいつも通り、少々疲れた、くらいだろ」

「そう」

 

 多分、この合宿での問題は解決したはずだ。

 帰りに代表にも犯人については話しておくか。

(他の人には話さないの?)

 他の奴らは個人で復讐やらを考えかねん。代表なら最終的に理性的な判断するだろ。

(ふーん……まぁいいや、どうでも)

 攻略できればプライムを、という話も無しだな。

 まぁ、オレもオレだから保険が欲しい、という部分だけ聞いてやった、という結果論でいこう。

 

「アキたちには悪いことしたわね」

「……オレが言えたことじゃないが、よくもぬけぬけとそんな事が言えるな?」

「なんで?」

「お前らがした事は勝手な決めつけによる冤罪。私刑だ。女は特にそのケがある。不当で無自覚な攻撃性に気付かない。あまつさえ……」

「だってそれは普段のアイツらを見てれば分かるでしょ?」

「あまつさえ自分の意思で行った行為を相手のせいにする。この後に及んで主語が相手だ。何故『覗きをするならアイツらだと私が思ったから』と口に出ない?」

「う……一緒でしょ、それも、ウチが言ったのも」

「意味合いとしてはな。主語の違いだ。ま、どうでもいい。オレ達は支配しない」

「なら突っかかってこないでよ」

「無自覚は言い訳にならない、と教えておいてやる。言葉にしないと他人には伝わらないからな」

 

 少しでも伝わるなら、少しは変わる。

 オレが少しでも言っていれば、なのはは致命傷など負わなかった。

 この世界ではそういうのも無くしていくべきだな。姉さんが全部殺すくらいなら、それまでは……

 

「じゃ、今日は寝る」

「ええ、お疲れ様。ゴミは捨てとくわ」

 

 島田に空き缶を渡し、姉さんに変わることもなく布団に入る。

 ……姫路は何をしてたんだ?

 

 ♢♢♢

 

 ──その後、文月学園史上最大の事件として、男子生徒その全てが1ヶ月の停学処分を言い渡される。

 

 男子生徒反省文より抜粋

『ムラムラしてやった。後悔はしていない』

『熱にうなされてた。どうかしてた』

『本音を偽ることの是非について学ぶ機会となった』

 

 ♢♢♢

 

「……さぁ姉さん、今日から男子どもも再開だ。いい加減学校行くぞ」

「ぶぁ……もうそんな経つの?早いねぇ……」

「早いじゃねぇよ。本来なら西村教諭に謝罪しなきゃいけないのにこれ幸いと1ヶ月サボったんだ。男子どもは停学だが、オレ達は無断欠席だぞ」

「いいじゃん、別に内申点とか必要無いんだし」

 

 シオンの必死さに対して、私はまだ布団から起き上がれずにいる。

 男子が覗き未遂で停学になったのに、それを幇助した私達がお咎めなし、というのはダメだろう。

 だから、1ヶ月自主的に出席を控えた。ちゃんと謹慎の意味も込めて外出も一切していない。

 ……する意味が無い。

 

「おーい、聞いてるか?」

「んぁ……何だっけ、Aクラス代表を倒す話だっけ」

「それはそれで必要だが、オレだけで学校行くか?姉さんも行くか?」

「んー……そーだね、久しぶりだし……連れてって」

「……一応、一応で言っとくぞ。本来なら姉さん主体だからな」

 

 体を一つにまとめて、女子用の制服を着る。

 私はウタネで、高校生。1ヶ月もするとそれすら忘れてる。

 今回の件、私は陰からのサポートだったけど。

 だからこそ近くで見てしまった、生身の熱。

 取るに足らない一時の快楽のために。多数の害になると分かってても。

 私は、拒否以外の理由で、あれほどの、熱を、持った事が……

 

 ♢♢♢

 

「はぁ……ったく、どうしたよ、まったく……どうした?ほんとに」

 

 準備をすませた途端に引っ込んで……だいぶ考え込んじまってる。

 姉さんらしく無い。

 熱がどうこう言ってたが、姉さんの体温は平均して32度。

 そもそも熱なんて無いだろうに……

 

「んで、Aクラス代表どの。アレは何だ?」

 

 久々の学園に到着すると、恐らくFクラスの黒ローブが代表をドナドナしているのが見えた。

 Aクラス代表、霧島翔子がそれを大人しく見ているはずが無いので、何かしらの理由があると断定。

 

「……あ、フタガミ。この前はありがとう」

「ん?なんかあったか?」

「……覗き、止めてくれてありがとう」

「……あー、悪かったよ。あ、そうだ、お前にも……いや、やっぱいい。で、アレ……はもうどっかいったが、何だったんだ?」

「……あ、雄二……」

 

 しまった、と姉さんばりに薄いリアクション。

 

「困り事になってるのか?謹慎明け早々に騒がしいな。理由を教えてくれりゃ、少しは手助けしてやるぞ?」

 

 倒すべき敵ではあるがあくまで戦争時のみ。

 現実での争いの無いこの世界での平時は良き学友として、生前のように振る舞うべきだ。

 

「……さっき、吉井にキスしてて、私も雄二にしたこと話したら連れてかれたけど、口にはしてなくて……」

「……おいおいおい、一言に纏めたいのは分かるが順序良く喋れ。時間かかっていい。誰が吉井にキスして?」

「……姫路」

「……なんで?」

「……それは分からない」

「……んで、それに嫉妬したクラスの連中が吉井と代表を拉致って、というとこか」

「……そんな感じ」

 

 まぁ……覗きで停学になってた奴らが原因なら流石に見捨てたが、無いとは言えないイベントでの死は流石に一考の余地がある……か?

 

「で、どうしたい?」

「……あの2人は何も悪く無いから、誤解が解けるなら解いておきたい」

「……なるほどね。いいだろう、そのくらいなら聞いてやる」

 

 これも外的要因。

 あくまでその場に居合わせて、たまたま頼まれただけだ。

 どうせプライムを渡すなら、こういう霧島みたいな優秀な人間に渡したくなってきてるからな。

 

「……ところで」

「あ?」

「……貴女も1ヶ月、学校来てなかった」

「……ああ。戦場を引っ掻き回した自省……でもないか。ある程度やりたい事したしな。まぁ……いいか。ま、代表は救ってやるよ。あとは手段なんだが……殺しは無しか?」

「……無し」

「……了解。やりたかねぇが、やった事が無いわけじゃない」

「……何する気」

「……自分を売る」

「……?」

 

 既に存在しない過去において、どこぞの万屋だか副長だかにそんなことをした覚えがある。

 

 ♢♢♢

 

『静粛に。被告、吉井明久』

「だっ……だから何もしてないよぅ!」

『罪状を読み上げろ』

『……死刑であります』

「罪状で!?そんなご無体な!?」

『そうだ。それはあまりに理論が飛躍している。異端審問は無実の者を弄ぶものではない。厳格な規律によって秩序を保つ為のものだ』

「お……おぉ!須川くん!僕は君を信じていたよ!君こそ真の親友だ!」

『静粛に。では、罪状を』

『はっ……被告、吉井明久(以下甲とする)は停学明け早々に学園のヒロイン姫路瑞稀(以下たゆんたゆんとする)と不純異性交遊に及び、またそれを我ら級友に見せつけ、学園内秩序を崩壊させようと試みた疑いがあります』

「え……?」

『ふむ。では死刑だ』

「……?」

 

 教室内から流れ出るマイナスのオーラ。

 どんだけ負のエネルギー放ってんだこのクラス。

 

『よし、次、坂本雄二……ついでだ、死刑』

「うぉい!俺の方こそ無罪だろうが!あと誰かツッコめよ!何のための()だったんだよ!バカどもが!」

『そういうな。お前には以前から鬱憤が溜まっていた。あの霧島翔子と幼馴染で今現在も家族ぐるみの付き合いをしているなどと……死刑以外にあるものか』

「ざっけんな!お前らに俺の苦悩が分かってたまるか!表面しか見てねぇだろ!だからバカなんだよ!」

 

 おっと、救出対象が死刑宣告されているな。

 教室前で首を4回、左側を指でつつく。

 ふぅ……

 

「みんな聞いて!今朝のことは全部私が仕組んだの!2人は誤解よ!」

「「「……!(ドヨドヨ)」」」

『な……何を根拠に』

「「ウタネ(さん)!」」

「いい?確認よ。ここに転がってるのは学年の底辺。大した顔面も頭脳も能力も無いくせに合宿での覗きを扇動し、男子全員を停学に追いやった腐れ下郎。でしょ?」

『『『然り!然り!然り!』』』

 

 揃って足を踏み鳴らすローブ共。

 我が救世主に見せてやりたい気分だ。

 

「そして、その議題の相手は学年のツートップ、才色兼備の完璧超人2人。誰がどう見ても釣り合わない。万が一があるのなら、それは外的な要因が強制したとするのが妥当。でしょ?」

『『『然り!然り!然り!』』』

「納得いただけたようで良かった。だから、代表の拘束は解いてあげて?姫路に嫉妬したフリでありもしない嘘を言わせただけだから」

『ふむ、確かに。だが一つ疑問だ。なぜそんな事を?』

「そうだね。理由はあるけど、こんな事になるとは思わなかった。拘束外した後で教えるよ」

『よかろう。おい、坂本雄二を解放しろ』

『御意』

 

 誰だかわからん奴の指示によって誰だかわからん奴が代表の拘束を解く。

 コイツら多分、全員が逆の立場になったら躊躇わんよな。その指示系統はどう生成されてるんだ?

 ……中身が変わっても出力の変わらない理想組織だったりするのか?

 

「た、助かった……今度礼をさせてくれ」

「要らない。霧島に次から変な事言わないように言っておけ」

「あ、ああ……」

「ちょっと!?僕は!?まさか僕は生贄にされるの!?」

「あぁ……お前に関してだが」

『吉井明久は現行犯だ。極刑に変更は無い』

「だから何なんだよぅ!知らないって!」

『黙れ。飛ばすぞ。紐なしで』

「紐なし!?バンジー!?バンジーなの!?」

 

 いかん、対象が減った分殺意が増している。

 今度合宿みたいな熱量になれば止められんぞ。

 一瞬で納得させるインパクトが……何か……あ。

 

「今回の件は!私が島田を吉井から寝取ったからでっちあげたカモフラージュだったの!吉井が島田……美波を捨てたのが悪いのよ!」

『『『何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!???』』』

「ちょっ!?どっ!?なにそれ!?僕何も知らないんだけど!?」

「ちょっとシオン!アンタ何言い出してんのよ!?」

「でっ……お、島……美波。お前も道連れだ」

 

 ナイスタイミングで島田が登校、カバンでオレの後頭部をしばく。

 身売りしたんだ、ついでにコイツを巻き込んで……オレの過去と取引までできれば最上だ。

 

「ふざけんじゃないわよ!何で大声でそんな事言うわけ!?」

「……ね?こんな照れちゃって、可愛いでしょ」

「「「……」」」

 

 オレの素体が女である事が功を奏したか、熱が引いていく。

 コイツらはオレの事を学園祭で知ってるはずなんだが……まぁ、秀吉がそうならオレもそうなんだろう。

 

「じゃそういうこと。吉井はあげる。私のためとは言え姫路をキズモノにしたからね」

「まさか、姫路を洗脳してたか!」

「ま、どうかな」

「須川、明久を処分しておけ」

『御意』

 

 教壇に立ってた奴が代表の指示を受けせこせこ働く。

 スムーズに入れ替わる指示系統、反発せず受け入れる手足。

 先まで極刑対象だった代表の指示を死刑を言い渡した奴が聞く、信じられんが目の前で実際に起こっている。

 観察の余地がある。これを体系化できれば、文明は統一される可能性がある。

 

「さて、授業の準備でもするか」

 

 黒ローブが吉井をどこぞへ拉致し、いつもの教室に戻る。

 オレも首の右側を4回つつき、いつものオレまで戻す。

 

「ちょっとシオン、本気なの?」

「……あ?何が」

「ウチと付き合うって……」

「……無い。Aクラス代表から受けた依頼のための出まかせだ」

「ウチと付き合えば、イイコト知れるのに……」

 

 頰を染めて呟く島田。

 視界の隅でムッツリーニが死んだ。

 

「オレの過去だろ。それも目算あったが興味の対象が移った」

 

 そもそも読心術の能力は無限に存在する。その気になればいつでも分かる。

 姉さんがぶっ壊す直前で問題無い。

 どーでもいい情報である可能性もあるしな。蒐集能力ってのが気になるが……どうでもいいか。

 

「何に?ウチより大事なもの?」

「変な言い回しをするな。オレの過去より可能性のある方が良いだろうに」

「何の可能性よ」

「進化」

「進化……?」

 

 島田は聞いたくせに呆けてる。

 ひとまずは異端審問会の観察と、システムの開発、あとは点数か。

 

「じゃ」

「ちょっと!答えは!?」

「……なんの?」

「ウチと付き合う話」

「……否定したはずだが?まぁ……しばらくならそういう匂わせでいい。信憑性が無いとまた代表が血祭りにされるからな」

「やった♪じゃ、これからよろしくね、シオン」

「……」

 

 コイツ、こんなだったか?




ウタネとシオンには銀魂世界でお登勢さんと近藤さんを人質に歌舞伎町と戦争した過去もありました。
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